転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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昨日捜したミライ(Ⅲ)

メディカルセンターで、アンヌに軽い火傷を治療してもらう隊長。

そこへヤスイを連れてやってきたフルハシとソガ。

 

「隊長、ただいま戻りました!」

「た、隊長さん! やっぱりお怪我を?」

「いやヤスイ君、何も心配することはない。軽いものだ。むしろキミの忠告がなかったら、もっと酷い事になっていただろう……礼を言うよ。そして無事でよかった……本当に!」

「いやいや、そんなとんでもない! 私の方こそ、こんなに頼れる部下の方々をつけて頂けて……おかげで命が助かりました!」

 

ガーゼを当てた隊長の顔を見て、予言が当たってしまったかと気遣うヤスイ。

彼に対しキリヤマは、穏やかに敬礼で返した。

 

「隊長、申し訳ありませんでした」

「何もフルハシがあやまることはない」

「いえ、ソガが強引に引き止めなかったら、そのまま帰っていたところでしたよ。我々は隊長を笑っていたんですから……」

「ふっ……そうだろうと思ったよ……」

「ああもう、そんな顔をなさらないで……そりゃ、寿命が縮むくらい怖い思いはしましたが……わたしゃこの通りピンピンしてます。それで良いじゃありませんか……」

「いや、私の判断が甘かった……」

「いえ! 追い出した我々の責任です」

「殺されるから助けてくれと頼んでいた……それを私は断った……窮鳥懐に入れば猟師も殺さず……それなのに私は……懐に入った窮鳥を……みすみす死のジャングルに、追いやってしまう所だったんだ!」

「隊長さん……」

「同じ轍は踏まん! こうなったら、ヤスイ君の安全の為にも、あの敵を一人残らず倒さなくては!」

 

そこにアマギが、変な装置を抱えて部屋に入って来た。

 

「ダン、これでいいかい?」

「うん! ……隊長、これはこの部分から放射線を出して、見えない敵でも見ることが出来ます!」

 

ダンの発案で、ワイルド星人の放射線カメラを改良して、透明な敵に対する対抗策にしたのさ。

今回のシャドー星人は、地下に円盤を隠しているから、空から噴霧装置で塗料を撒いても、あんまり意味ないしな。

流石はダンだ。自分の魂すらも捉えて見せたカメラを、こんな風に転用してしまうなんて。

 

「やつらの秘密基地を、これで突きとめてやりますよ!」

「でも、それ一台だけで、あの広い富士見ヶ原を探すのか……」

「……そういえば、捕虜を一人捕らえたのだったな? 奴から何か情報を聞き出せないか?」

「はぁ、それが……どんなに尋問しても、頑として口を割ろうとしませんで……ヤスイさんの助言で、気絶中に口の中を改めておいて良かったですよ。危うく服毒自決されるところでした! 恐ろしい奴らです!」

「そうか……」

 

俺も捕虜から何か吐かせようと思ったが、やっぱり宇宙ゲリラシャドー星人の名は伊達では無かった。お土産の意味があんまり無くってガッカリだ。

仕方ない、地道に探すしかないのか……

 

「あのぉ……よろしければもう一度、私に彼女を見させてやっては、くれませんでしょうかねぇ……?」

「え? 虫も殺せなさそうなヤスイさんが? 拷問とか出来るんですか?」

「ええ……今なら何か分かりそうな気がするんです……なんとなくですけど……」

「はぁ……」

 

凶悪殺人犯もかくやといった様相で、厳重に拘束されたシャドーの女戦士に面会するヤスイ。警備隊が固唾を飲んで見守る中、目を瞑って彼女の頭に手を翳すと、何やらぶつぶつ呟いていく。

 

「うんうん……なになに……シャイン星との革命戦争で、この地球が橋頭保として丁度良い……この辺境から、油断したシャイン人へ、後ろから逆撃を……なんて恐ろしい奴らだ……地下に円盤を隠して……誰か、地図を!」

 

ヤスイの要求通り、富士見ヶ原一帯の地図が広げられると、彼はその一点を指し示した!

度重なる生命の危機に、生存本能を激しく刺激されたヤスイの第六感は、この短時間で著しい覚醒を遂げていた。もはや予知夢どころではなく、テレパスの域へ片足を突っ込んでいたのだ。これでも脳波を弄られていた原作程の覚醒ではないのだから、彼の持つ潜在能力は本当に計り知れないものだった。

 

「よし……、フルハシはここに残って、ヤスイ君を守ってくれ……みんな、俺に付いて来い!」

 

 

―――――――――――――――――――――ー

 

 

富士見ヶ原山中のうち、ヤスイの指し示した地点にポインターで到着した警備隊一行。

アマギが進み出て放射線スコープを構えると……

 

「隊長、いました! 敵の歩哨です! 以前の捜索時同様、自分の姿が見えていないと思って油断しています!」

「よし、どこにいる……?」

「あの木の影に一人!」

「あそこですね、行ってきます!」

「気をつけろよ……ダン!」

 

音もなく忍び寄ったダンが、アマギの誘導に従って、木にもたれていた歩哨へ後ろから襲いかかり、まずはその武器を奪う! 無手となってしまった歩哨だったが、木の下を潜り肉弾戦を仕掛けてくるが……

スマートな見た目に似合わず、あの怪力のブラコ星人とすら生身で競り合う腕力を発揮し、隊の中でも、フルハシと1、2を争う格闘能力を有する、精鋭モロボシ隊員の敵ではなかった。

シャドーの崇める戦神(ゼガン)は言っていたのだ……ここで死ぬ定めだと……

 

見張りを打ち倒し、敵地下基地へ潜入した警備隊は、獅子奮迅の大活躍。無防備な警邏を真正面から急襲し、通路での挟み撃ちも咄嗟に役割を分担して対処していくメンバー達。

確かにシャドー星人は、恐ろしい攻撃性と高い士気をその身に宿していたが……逆に自分たちが攻撃されると弱かった。敵を翻弄し、隙を晒した重要施設を、こちらの任意のタイミングで襲撃する。イニシアチブが自由にとれる遊撃戦を主体としていた彼らは、拠点防衛がとことん苦手だったのである。

 

「急ぎましょう! 気付かれて円盤が飛び立たないうちに!」

「ああ……ここで根絶やしにしてやる!」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「……ハッ! いけない! 行っちゃダメだ……!」

「や、ヤスイさん? 突然どうしたんです?」

 

基地のベッドで正座していた男が、唐突に叫び出す。

 

「……フルハシさん、後生です。今からあのヒコーキで飛んで行って下さい。みなさんが……セブンが危ない!」

「な、なんだって……?」

「あなたが未だに私を信じ切っていない事は、重々承知しております。その上で、どうか頼みます! あの時セブンがいなけりゃ、わたしゃ死んでいたでしょう……私の恩人を助けてくださいよぉ! 今は、あなただけが頼りなんです!」

「セブン? あんたセブンに会ったことが事があるのかい……? そんな筈はないし……それに、今の俺の任務は、あんたの護衛だよ」

「私の事は大丈夫。あいつらは、天然光の中でしか姿を消せません。この基地の隊員さん達が十分に守ってくれます。そんな事より、セブンを……ソガさんや隊長さんを、救うんです! あなたの手で!」

「……みんなを……」

 

血気迫るヤスイの訴えに、少しばかり逡巡したフルハシだったが……

 

「ぃよし! 分かった! 俺はどうすりゃいい!?」

「円盤です……円盤を攻撃なさい。何があっても、どんな光景でも、円盤だけをただひたすら一直線に撃つんです! ……いいですね?」

「円盤だな? ……任せろ!」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

警備隊が宇宙船の隔壁内へ突入した直後、地響きを上げて崩れ落ちる基地!

先行していた三人をそのまま上空へ連れ去りながら、カメラを持った二名を置き去りにすることで、戦力の分断を図ったのだ!

 

「あっ、しまった!」

「ダァァアン!」

「アマギ―ッ!」

 

瓦礫に埋もれ、気を失ったアマギを余所に、ダンはウルトラセブンに変身し、敵の円盤を追跡する!

 

「デュワッ!!」

 

セブンの剛腕が、円盤の外壁へ水平チョップを叩き込み、飛行能力を奪ってそのまま軟着陸させた。

大きな足跡をたてて歩み寄るセブンに向けて、もうもうと煙を噴き上げる円盤から、シャドー星人の降伏宣言が聞こえてくる。

 

「降伏する……これ以上乱暴しないでくれ!」

 

敵の宣言を信じ、セブンが歩みを止めて頷くと……その足元から爆発と共に、銀色の異形が、巨体をうねらせセブンに躍りかかった!

 

口から猛毒の涎をだらだらと滴らせながら、シャドー星の誇る生物兵器、合成獣ガブラがセブンに迫る!

シャドー人は、異なる生物を融合させ、兵器に適した新たな生命体を造り出す技術に長けていた。

母星に生息する唇脚網の生命力と毒性を、食肉目の巨体と狂暴性に付与した……地球で言うムカデとライオンのキメラとも言うべきこの戦士(ガブラ)は、持ち前のフィジカルで、セブンと互角の格闘戦を繰り広げる!

 

黄金に輝くたてがみを振り乱し、馬乗りになったセブンへ銀の尻尾を叩きつけ、そのまま盛大に振り落とすガブラ。肉弾戦では分が悪いと悟ったセブンは、しかし敵の甲殻が節目で連結されている事を見て取ると、素早く解き放ったアイスラッガーを、ウルトラ念力で巧みに誘導すると、その首筋を正確に跳ね飛ばした!

地面をごろりと転がるガブラの頭部。

 

崩れ落ちた敵の切り札を尻目に、今度こそ円盤へのっしのっしと近づくセブン。

 

「待ってくれ! 今度は本当に降伏する。三人を返すから許してくれ!」

 

円盤から解放された警備隊のメンバーを、セブンは巨大な両の掌で大事に掬い上げると、テレパシーで無事を確認する。

 

《怪我はないか?》

「ああ、ソガとアンヌが気絶してしまったが……ひとまずは無事だ! だが……油断大敵だぞ、セブン! 奴らがそう易々と降伏するとは思えん!」

 

その時! 隊長の懸念通り、ガブラの頭部が起き上がり、反重力飛行でセブンの首筋を狙って飛びついてきた!

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あっ! セブン危ない!」

「デュオッ!?」

 

敵の奇襲を間一髪躱したセブンであったが、ガブラの首は執念深く彼をつけ狙う。

警備隊の三人を慮って、満足な回避も迎撃もできないセブンは、その牙を紙一重で躱すので精一杯だ!

 

そこへ、甲高いエンジン音を轟かせて、フルハシの駆るホーク一号が飛び込んだ!

 

「あッ! 本当にセブンが苦戦してやがるッ!? コイツ……!」

 

戦友の周囲を飛び回る、復讐鬼の首を撃ち落とそうとしたフルハシだったが、彼の脳裏に閃くヤスイの言葉……!

 

「お前の正体は……こっちか!」

 

フルハシの投下した爆弾が、寸分たがわずシャドー円盤に突き刺さり、跡形もなく吹き飛ばした!

途端に制御を失い、その場へぼとりと落下するガブラの生首。

こうして、執念深い侵略者の計画は、昨日の事となったのである……

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「おい、出たかい? 俺の運勢……」

「ダメです……」

 

基地の一室で、水晶玉を覗き込むフルハシは、その強面をぐんにゃりと歪ませて、滑稽としか言いようがない。

 

「頼むよ……今度は信じるからさぁ」

「ダメです……死相が出ちまってます……」

「なんだってぇええ?」

「飛行機……数字の3に気をつけなさい……せいぜいお母さまを大切になさる事です……」

「お、おい……縁起でもない!」

 

その後、ビビったフルハシがホーク3号を隅々まで点検したら、自爆装置のタイマーが遅れてたのを見つけて、感心していた。すっかりヤスイ信者だ。手の平マグマライザーかよ。

ふぅうん自爆装置ねぇ……と思って聞き流そうとしたら……いやいや、マズイマズイマズイ!

 

予言のせいで危うくフルハシが死ぬところだ。

 

そうか……ビラ星人の円盤群との空中戦で、気付かないうちに時間停止を食らっていたのが、彼の明暗を分けたのか……

人間万事塞翁が馬、どんな事が助けになるか分かったもんじゃない……

 

自爆装置が()()()()()()()()、例えセブンがカナン星人を倒しても、フルハシが機体のコントロールを取り戻す前に、木っ端微塵になってしまう!

 

今後、あんまり彼の予知に頼るのはやめておこうと心に刻みながら、俺はホークの自爆装置をこっそり遅らせておくのだった……




というわけで、23話「明日を捜せ」でした。

このヤスイさん、スゴイ能力を持ってはいるんですが……転生主人公のソガが、ほぼ上位互換な為に、お株を奪ってしまいました。

しかし、完全に劣っているかというとそうでもなく……原作に無かったソガの知らない部分については、まだまだ超常の力を発揮します。

しかし、それがどんな結果に繋がるか分かったもんじゃない、という不確定要素から、今後の使用は封印した感じですね。

もっとも、ソガの口八丁の要素として、存分に名前を借りられてしまう事でしょうが……

ひとまず、セブンがガブラの毒で苦しむ事は回避されたので、良しとしようではありませんか。

次回もお楽しみください。

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