転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

7 / 193
今回は原作本編のお話とは関係ない閑話です。

時系列が多少前後しますが、既に序盤の何話かが終了した時点のどこかに挿入される話という想定。

主人公の計画で大事なのは、なにも戦闘で頑張る事だけではないのだ、というお話。


赤のひみつ

このところは目立った事件もなく

ウルトラ警備隊の司令室には

しばらくぶりの平和な時間が訪れていたのだった。

 

 

「うーん……」

「ソガ隊員、眉間にシワなんか作っちゃって、何を悩んでるの?」

「悩み? ……ないない! コイツに限って悩みなんか! いつも能天気にニコニコしてるのだけが、ソガ隊員のいいところだぜ、なあ?」

「失敬だな、これでも大真面目に考えてたんです」

「へぇ! 今日の晩飯に何を頼むかってんじゃなけりゃ、ぜひ聞かせて欲しいもんですね、ソガ先生?」

「いいでしょう、そんなに言うなら、みんなにも考えて貰おうじゃないか」

 

そうすればオレの悩みもちょうど良く解決しそうだ。

 

「……ウルトラセブンの倒し方について、さ」

 

より正確には、それをどうやって皆に伝えるか、だが。

すると、たちまち目を三角にして俺へと詰め寄るフルハシとアンヌ。

 

「酷いわソガ隊員! そんなこと!」

「そうだぜ、今となってはセブンが俺達人類の味方だって事は分かりきってるじゃないか! それを……」

「まあまあ落ち着きなよ、お二人さん。俺だってセブンの事を大事な仲間だと思ってる。……だからこそじゃないか」

「……どういう事?」

「例えばねアンヌ、あそこにウルトラアマギがいるだろう?」

 

机を挟んだ向こう側で、なにかの図面を睨みながら険しい顔をしているアマギ隊員を指差す。

どうやら開発は難航しているらしいので、息抜きがてらこちらの話に付き合って貰おう。

自分が引き合いに出された事に気付いたのか、顔を上げこちらを一瞥するが、直ぐに視線を下げるアマギ。

……つれないなあ。

 

「ウルトラアマギは、我が防衛軍の誇る名プランナーだ! 頭部のスーパーコンピューターでどんな恐ろしい怪獣だって、直ぐさま弱点を見抜き、素晴らしい新兵器でたちどころににやっつけてしまう」

「……やけに褒めるじゃないか、どういう風の吹き回しです?」

「ところが! ばったりソガ星人と戦う事になってしまえば、出会い頭の早撃ちで、得意の閃きを得る間もなくやられてしまうという訳だ。……ブォッフォッフォッ」

「……オッ、やるか!? デュワッ」

 

おどけた俺がピースサインを振りかざすのに合わせ、アマギは真剣な顔で額に指をあてたり、頭頂部で手を合わせたりと構えをとる。

君のそういう、ふだん真面目な癖にわりかしノリは良いところ好きだよ。

でも、ワイドショットの真似を間違えてるのは戴けないな。

アンタがその間違え方すると別のもんが飛び出しちゃうから、色んな意味で危ないんだが? 

頼むから気をつけてくれ。

 

「じゃあ、ウルトラアマギがやられてしまったら、ソガ星人を誰が倒すの」

「うん、そうなると我々としては、ウルトラフルハシを連れてくればいいのさ。そうすればエイヤァ! と、たちまち投げ飛ばしてくれる。ソガ星人は腕力勝負でウルトラフルハシに勝てないのが弱点だったわけだ」

「すごいわ、フルハシさん」

「え、そうかい? エヘヘ……デュワ! デヤァ!」

 

後輩に持ち上げられてすっかりその気だ。

ちょろい先輩だなぁ。

一人だけ不服そうなアマギが異議を申し立てる。

 

「おい、そりゃあ不公平ってもんだ。フルハシ星人の弱点も教えてくれよ」

「え? そりゃあ……」

 

俺はみんなの顔を勿体つけて見渡してから、自分のこめかみを人差し指でゆっくりと三回叩いた。

その意味を理解した途端、三人分の笑い声が響くが、若干名の怒りを買った。

 

「言いやがったなこのヤロウ……もう許さねえぞ!」

「うげぇ、勘弁してくださいよ!」

「食らえ、フルハシバックブリーカーだ!」

「ア゙ア゙ァ゙~↑!」

 

本人は手加減してるつもりだろうけど、胸板と二の腕が分厚すぎて普通に苦しいんだが!?

このままでは腹部から爆発して機能停止してしまう!

そんな時、フルハシの肩を叩く何者かがいた。

 

「ハハハ、そこまでにしておいてやれ。このままじゃあ、ソガが真っ二つになってしまう」

「た、隊長!? 失礼しました!」

「……みなさん、僕は知っていますよ。ウルトラフルハシの弱点は、隊長に頭が上がらないことです」

「……おい、ダン!」

「これは一本取られたな」

 

再びの笑い声をバックに定例会から戻ってきた二人が、コーヒー片手に席へ着く。

 

「しかし、その話は私としても大いに興味がある。ぜひ続けてくれ」

「え? 隊長も?」

「そうだ、セブンが我々ウルトラ警備隊の7番目の隊員だというならば、私の部下も同然だ。部下の長所と短所を把握しておくのは、隊長として当然の責務だからな」

 

なるほど……と頷く面々。

冗談めかしてにこやかに話していた隊長だが、すぐに真剣な顔で続ける。

 

「……真面目な話、我々のセブンは連戦連勝、向かうところ敵なしだが、いつまでもそれが続くとは限らん。いつか彼でも対処しきれない敵が現れた時、地球を守る最後の砦はこのウルトラ警備隊だけだ」

「……そうか、それでセブンの倒し方か」

「えッ!?」

「……そういえばダンは聞いてなかったな。さっきのソガの続きじゃないが、今まではウルトラ警備隊がいて、それよりも強い敵が来ると、セブンがやってきてそれを倒してくれた。ところが、セブンを打ち倒すような強大な敵に対して、我々が強いという保証はどこにもない」

「まるで不公平なジャンケンだわ」

「そう、ジャンケンだ! セブンがグーなら我々はチョキでなくてはならないんだ。例えセブンには勝つ必要がなくとも、セブンが負けた相手にだけは絶対に勝たないといけない」

「そう! それが言いたかったんだよ。流石はウルトラアマギだ」

「ソガ星雲人にしてはいい着眼点じゃないか」

 

俺達のやりとりをみていた隊長は、コーヒーを飲み干すと続きを促してくる。

 

「では、どのような策であれば彼を倒せるのかという点さえ分かれば、我々の仮想敵もおのずと見えてくるというわけだな」

「ところが、俺にはセブンが負けるイメージが今一つ浮かばないんです」

 

そりゃそうだ、あれだけ強いセブンが寒さと女に弱いなんて誰が思おうか。

だから、親切な誰かが教えてくれたりしないもんかな~

……特にえらく物知りなどっかの元風来坊とかがさ。

 

「……案外、誰かさんみたいに高いところが苦手かもしれんぜ」

「そんなバカな話があるもんか、マッハ7で空を飛び回る相手だぞ。……だいたい、僕だってホークの操縦くらいできるんだ! いったいどんな文句があるっていうんです!?」

「冗談じゃないか、そんなに怒るなよ……」

 

フルハシゴンはアマギラスにも勝てなかったようだ。

 

「そうね……いくらセブンでも頭や胸は攻撃されると痛いんじゃないかしら」

「そんなのは当たり前だろ、吸血鬼も心臓を杭で刺されりゃ死ぬってのと同じだ」

「いや、案外悪くない」

 

しかし、アマギは感心したように頷いている。

……え? 今のが?

アンヌに甘すぎじゃないか?

 

「ああ、我々はセブンの強力さにばかり目を向けて、彼もまた一人の生命であるという視点が抜け落ちていたかもしれない」           

「……なるほどね」

「頭部や胸部といった急所への連続攻撃を食らえば、さしものセブンといえど大きなダメージになるはずだ」

「その時こそ、我々の出番ってわけだ!」

 

こりゃあ思いがけずセブン援護の気運を高める事ができたぞ。

あとは……

 

「ダンはどう思う?」

「僕ですか? ……ううーん、きっと寒さに弱いのではないでしょうか」

「いや、それは有り得ない。彼はなんといっても宇宙を渡ってこの地球へとやってきたんだ。零下240度だぞ」

「ひゃあ、俺の故郷、北海道でも、せいぜい零下30度だってのに」

「宇宙と地球がまったく同じというわけではありません。なんといっても空気が無いのです。寒いとすら感じませんよ。それに常に恒星の近くを通るようなルートを選べるなら、むしろ熱いくらいです」

「……そうか、真空状態では熱交換も起きず、体温の奪われる速度が著しく低いというわけか。それにオゾンのある地球と違って、遮るものが何もなければ太陽光で直に炙られるようなものだ」

「しかしよくそんな事知ってたな、ダン」

「ええまあ……」

 

……あ、そうなんだ。全然知らなかった。

流石は恒点観測員。    

 

「……確かに、日本アルプスで雪男を退治した時もセブンはやって来なかったな」

「あの時は我々の気化爆弾が強過ぎて、セブンの出る幕が無かっただけでは無いのか?」

「だが生命体であるというならば、高温や低温に弱いというのは十分あり得ますね」

「それなら逆に、そんな高低温を武器にするような生命がいるかしら?」

「……おいおい、南極の地下基地を建設するときも随分と苦戦したのを忘れたのか? 地球にだっているんだ、宇宙には冷凍光線や灼熱光線を吐くような怪獣がいてもおかしかねえぜ……」

「じゃあもし冷凍星人が来たら……」

「その時は火炎銃があるじゃないか!」

「あの火炎銃、射程が無くて頼りないんだよ。ゴビやワイアール星人を焼くならまだしも、セブンを倒しちまうようなサイズの相手にあれで挑めっていうのか? それとも冷凍怪獣はみんな苔に弱いって言う訳じゃないだろうな」

「それもそうか……」

「いつまた吸血植物が襲って来るとも限らん」

 

よしよし、なかなかいい具合に話題を誘導できたな。

これで大分インスピレーションを得られただろう。

 

「よし、ならば私も今度の参謀会議に出席した際は、既存の装備がより過酷な環境でも実戦に耐えうるものであるか、見直しをすすめるように進言しよう」

「僕の方でも耐熱性や特殊環境下での使用を踏まえた改修案を考えてみます」

「……さて、悩みも解消されたし、俺は寝るとするかな」

「あら、もう寝ちゃうの?」

「そりゃそうだ、なんたって、ウルトラソガ唯一の弱点は、……朝に弱い事だからさ」

「じゃあ次に襲ってくるのはバクの怪獣かもしれませんね」

 

縁起でもないこと言うなよ。

……なんたって、そろそろ明日あたりに事件が起きそうな気がするからな。

英気を養っておかないと。                                            




というわけで日常回&考察回でした。

主人公は本編外のちょっとした会話でも、ちょくちょく布石を打っています。
まあ、この小説を読んでくれる読者の皆様なら、何に対する布石なのかはバレバレかもしれませんが……

今回の会話がどういった形で今後影響するかは、当該話のお楽しみという事で。

問題は、その話までたどり着くのがいつになるかという事です……

気長にお待ちください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。