転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
思わず駆け寄ったキリヤマが、ふらつくソガの肩を支える
「ソガ! ……ダンはどうした? 一緒ではないのか?」
「ええ、奴は酷い低体温症です。ポインターに置いてきました……ダンを回収する為にも3号を……」
「待て、ソガ。ここへ来るまでに聞いたかも知れんが、基地の動力がストップしていて使えない。今から富士山頂の地熱発電所を起動するところだ」
「だからですよ……隊長……1号も2号も、発進には二子山をスライドさせて、発射台までジャッキアップする必要がありますが、3号は二重ゲートさえ開いてしまえば、そのまま発進できますから……」
1号と2号の発進口は、基地直上の二子山にカモフラージュされており、敵の攻撃に晒されても、分厚い岩石の蓋によって保護されるという利点があったが、それらのエレベーターを起動するには莫大なエネルギーを必要とする。
対して、3号の発進口は基地真横にある崖の、滝の裏に隠されていて、ゲートの開放に必要な電力も、先の方法に比べれば、圧倒的に少なくて済む。これだけならば、出力の不安な予備動力でも、充分に可能であるはずだ。
なんならソガはこのとき、それが叶わないのであれば、爆裂ボルトでゲート扉を吹き飛ばしたって構わないとさえ思っていた。
「なるほど、そうか! ……だったら、私が行こう、お前は帰ってきたばかりじゃないか」
「いいえ隊長。今の人員で手が空いているのも、また私でしょう。私には……先輩のように、溌溂と修理を行う体力もなければ、アマギのような器用さで配線できる訳でもない。アンヌがいなけりゃ凍死する奴がきっと出るし、この状況で指令部から隊長を欠くなんてもっての外です! 私に出来るのはね隊長……敵の最も脆弱で、一番突かれたくないポイントを、素早く正確に撃ち抜く事だけなんですよ!」
「ソガ……」
「私には何かを作ったり直したりする事よりも、何かをブチ壊す事しかできませんし、その方が性にあっています。あの怪獣に、今こそ攻撃を加えるチャンスなんです!」
「なにッ!? 怪獣と言ったか? 外にいるのか!?」
……そうか、レーダーも通信機も止まっているから、隊長達はガンダーが暴れている事すら気付いてないのか。これは先に説明すべきだったな。
「そうです、基地の外では、二匹の怪獣が争っているんです」
「なに、二匹も!? それはもしや……片方はカタツムリのように飛び出た目をしていなかったか?」
「そうです!」
「地下で我々が撃退した奴だ! やはり生きていたのか……よくぞ無事に戻った、ソガ!」
「いえ、隊長……銀のロボットみたいな怪獣が、私を逃がしてくれたんです……一度ならず二度までも……もうアイツは紛れもなく命の恩人です! 私は奴に、大きな借りがある!」
「……行かせてやれ、キリヤマ隊長」
「ヤマオカ長官!」
「男が二度も命を救われた以上、余人がしゃしゃり出て、その借りを返す機会を止める権利は、持ち合わせておらん。……ソガ隊員、例え怪獣と言えども、地球防衛の志を同じくするならば、もはや戦友も同じだ。急いで救援に向かう事」
「……拝命いたします! 長官!」
その時、基地の非常灯が瞬き、作戦室が真っ赤に染まる。富士山頂に隠された予備電源が、今までに蓄えた電力を供給し始めたのだ!
「隊長、得られた電力は動力室、メディカルセンター、そして3号の発進口へ優先的に回し、復旧作業に当たらせよ。手漉きの整備班は3号の発進準備!」
「……了解!」
「会議でのキミの献策のおかげだ、キリヤマ隊長。我々は、この窮地において、その戦力を完全に喪失することを免れた」
「ハッ……一部の部下が、しきりに言い立てるものですから……」
キリヤマは、先程ホークの発進口へ駆けていった部下の背中を思い出す。
(基地の警備計画を見直していたんですがね、隊長? そもそもゴドラ星人やユシマ博士の時みたいに工作員を送り込まれた時、動力室は一つで大丈夫でしょうか? 超兵器も出動不能。レーダーも動かない……スチームもストップ。一発心臓部を破壊されると、さすがの科学基地も脆いもんです……)
まさか奴の懸念通りになるとは……それもこんなに早く。せめて、もう少し後であれば、地熱発電所も十全にその機能を発揮したろうに……
とはいえ、備えが一部とはいえ間に合ったのもまた事実。あまりそういった類の予想は、当たって欲しくないのだが……
「部下の意見を容れるのも、また指揮官の務めであり功績だ……地球防衛長官として、直々に礼を言う」
「では奴には今度、私からお言葉を伝えさせて頂きます」
だがそれは、この難事が全て解決してからだ……
―――――――――――――
「ソガ隊員、本当に全部換装してしまっていいんですね……?」
「ああ、勿論。それもありったけ積み込んでくれ。外部ポッドも、ハンガーラッチも全部埋まるくらいに。どうせすぐ近くに全部落としてくるんだ、機動性なんかまるっきり考えなくていいぞ」
「分かりました、とにかく限界まで搭載してみます!」
「ああそれと……俺が出て行ったら一号にも同種の装備を頼む。出来る範囲でいいから。……ケーブルはムカイ班長や先輩達がきっと直してくれる。その時にドタバタするよりいいだろう?」
「そりゃそうだ。だったらやれるだけ、やっておきましょう。ソガ隊員も、お気をつけて」
「……ありがとう」
出撃準備が整うまで、暖かいコーヒーとスチームで、寒さを凌ぐ。
……早く、早く。あいつらが待ってるんだ……
彼らにも、この暖かさを存分に味あわせてやらないと。
「換装完了! いつでも行けます! Both Gate Open! Both Gate Open!」
「作業員退避!Quickly! Quickly!」
「20 seconds before!」
「Both Gate Open! Both Gate Open!」
二重扉開放の合図と共に、第三ゲートが上へ上へと開いていき……
視線の先では、すっかり凍り付いた滝が、まるでクリスタルの壁のように立ちはだかる。
「これよりレーザーで氷塊を強制排除する! 総員耐ショック……All out!」
俺が発射レバーを引くと、機首から発射された光の筋が、凍てついた滝を粉々に吹き飛ばした!
「フォースゲートオープン!」
「Pull the throttle! Pull the throttle!」
「
「ウルトラホーク3号、発進!」
輝くダイアモンドダストの中へ、銀の翼が飛翔する。
小回りの良さを活かして、ぐるりと基地の後方へ旋回すれば、そこでは二頭の巨獣が、雌雄を決する為に、大激闘を繰り広げていた。
しかし、銀色の騎士は、今や生きた氷像に踏みつけられ、必死にレーザーを乱射して抵抗しているが明らかに劣勢だ。
お前……俺のウインダムに、よくもやってくれたな!?
「こいつを食らえ!! ナメクジ野郎!」
翼の根元に二段重ねで設置された、三連装ロケットポッドが立て続けに火を噴いて、空母の飛行甲板のように四角く広いガンダーの背中へ、ソガの怒りを存分にぶち撒けた。
計12門が叩きだす小型支援機とは思えぬ瞬間火力が、敵の背面を抉り、痛みでその巨体を仰け反らせる。
敵の足元から転がるように脱出したウインダムが見たものは、轟々と燃え盛る炎を背負い、消火しようと雪の中を転げまわる、ガンダーの姿。
「おい、何を勝手に寝っ転がってやがるんだ、クソ雑魚ナメクジ……ここは富士山じゃねえ……カチカチ山だ!」
仰向けになったガンダーの上空を、ホーク三号が素早く通り過ぎる。その機体からは燃料タンクのような何かが、無数にばら撒かれており……怪獣の腹に落下した途端、大きく炸裂したかと思うと、辺り一面を炎の絨毯で覆いつくした!
「どうだナパーム弾の味は? 五臓六腑に染み渡るだろうが、ええ? 心配するな、限界まで積んで来てあるぞ……お前の為にな!」
ホーク三号は、確かに小ぶりで、よく偵察用に用いられるが……ミサイル攻撃を主眼に設計された、爆撃機体でもある。
そのペイロードに、ありったけのナパーム弾を詰め込んで来た。それも、保管性と取り回しを重視した、歩兵用のキュラソナパームじゃなくて、火力至上主義の防衛軍が開発した正真正銘の機載用ナパーム爆頭をだ。
熱量なんと摂氏1300℃以上!
ナパームは親油性のあるゲル状燃料なので、生体表面に一度くっ付いたら水では消火できない。こんなものを人間に使うのは言語道断だが、相手が侵略者の怪獣なら話は別だ。火達磨になったガンダーの背中へもう一度、焼夷ミサイルを撃ち込んでやる。どうだ明くなつたろう。
投下された熱と光の死の二重奏はガンダーにとって地獄の黙示録であった。ソガの
「ナパームの匂いは格別だ」
真っ黒に燃え上がって、塩をかけられたナメクジのように溶けるガンダーを見て、ソガは勝利を確信するが……焼けただれた皮膚が、ナパームゲルと共に崩れ落ち、その下から随分と体積の小さくなった怪獣が、それでも死に絶える事無く弱弱しく立ち上がったのを見て、驚愕と共に舌打ちした。
「っち、マジか……グローザムかよ……」
さもありなん。彼は、ガンダーがここまで高い生命力と再生能力を有している事を、知らなかったのだ。だが、例えナパームが弾切れでも、ウインダムと共闘すれば……ウインダムはどこだ?
ソガが見渡すと、銀色の忠臣は、ガンダーから背を向けて、少し離れた地点に屈みこんでいた。よく見れば、真っ白な雪を、両手でかき分けているではないか。
「FUAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
ウインダムが空を仰ぎ、高らかに宣言する。
彼が掘り返したのは……自分と同じ色をした四角い箱。
あれは……ダンの乗ったポインターだ!
「そうか……お前は本当に忠義者だな……」
だが哀しいかな、オレには隊長のような、タッチ・アンド・ゴーでポインターを引っかけて回収する操縦テクは流石にない。
VTOL飛行で垂直着陸すると、下部ハンガーを開放して、ポインターを回収する。
そこへ迫るガンダーの影! せっかくここまで弱らせたウルトラセブンを持ち逃げされては、今までの計画が台無しだ。ポール星人の命令で、冷凍光線を猛烈に噴射しつつ、戦闘機ごとセブンを踏みつぶしてやろうと幽鬼の如き気迫で這いずってくる。
だが、そのような無礼を、この忠犬が許すはずもなかった。ひしゃげた関節を軋ませながら、なんとかこの軟体動物を押しとどめようと、自重を活かしてプレスにかける。切っても切っても再生する敵には、細胞を押しつぶしてしまうのが最も有効だ。それには少々、ウインダムは細身すぎたが。
ロボットの下でジタバタと藻搔くガンダーは、それでも使命を全うする為、めいいっぱい首を伸ばし、ホークへ冷凍ガスを何度も何度も浴びせかける。
しかし、ウルトラホークのエンジンはそのような攻撃で凍り付いたりは、しない!
悔しがるガンダーの雄叫びを後に残し、垂直離脱して、一目散に基地へと帰還していくホーク3号。ウインダムは、ついにやり遂げたのだ。
「FUAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
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非常電源で、及第点の治療行為が可能となったメディカルセンターへ、ダンの肩を支えたソガが入ってくる。
「アラキ隊員……!」
「ソガ隊員! モロボシ隊員!」
「……ダン!」
「アンヌ、ダンを頼む。奴に暖かいコーヒーとスチームを……」
ダンを、アンヌに預けると、そのまま床にドウッと倒れこむソガ。
「ソガ隊員!」
「酷い低体温症だ……アンヌ隊員、すぐに二人を!」
「はい!」
メディカルセンターもまた、戦場であった。
今回の発進シーンに関して、感想欄でご質問頂いたので、触れておきます。
有名なフォースゲートオープンに関して、あれは
「Forth」4番ゲートなのか
「Force」軍用ゲートなのか
というのはよく取り沙汰されます。(満田監督によれば4番ゲートらしいですが、監督、そういう部分は結構無頓着な方だったらしいので……)
しかし、作者かつて興味本位でそれについて調べていた際、そのどちらでも無く、あれは本来ボゥス、つまり両方のゲート、だったのが、監督の勘違いでフォースになったのでは? という説を見かけました。(根拠も気になる方は調べて見て下さい、まだあるのを発見しました)
作者はこれを非常に面白い!と思って今回の3号に採用したわけです。
その説を見るまでは、「格納庫の隔壁を一番として、それからエレベーターで二番三番と通った後、最後の発進口こそが4番目」なので、1号や2号だけでなく、別ゲートの3号だろうがハイドランジャーだろうが最終的に4枚目のゲートをくぐっている。というスタンスでした。
しかし、この世界に置いては、「二子山の発進口こそが4番ゲート」とし、お誂え向きに3号とハイドランジャーの発進口は二重隔壁になっているために、あちらは「二重ゲート開放!」と叫んでいるのだ。という裏設定にした訳です。
因みに、カタカナの「フォースゲートオープン!」は低体温症でテンションのおかしくなったソガが、景気付けに叫んだだけのもの。
これをあえてカタカナ表記としたのは
凍った滝をこそ、4枚目の壁に見立てたソガの洒落たジョーク
「Forth Gate Open!」(第4ゲート開放!)と言う説と
レーザーでゲートを強制的(Force)に開通したソガの掛け声
「Force Gate Open!」(ゲート強制開放!)と言う説を
同居させるためです。
あまりに自己満的な小ネタだったのでサラッと流すつもりだったのですが、混乱を招いてしまったために、後書きで釈明させて頂きました。
これを読んでいる貴方は、どっち派ですか?