転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
内容はタイトル通り。
マナベ参謀から極秘指令を受け取った俺とアマギは、ダンの運転するポインターで、とある岬まで送ってもらう。
……さあ、ついにこの日が来てしまったか。
オレの内心を他所に、これといった妨害も受けず、指定の場所へと到着するポインター。
下車した俺達の前で、大海原に悠々とその姿を晒すのは……
「マックス号だ! あれに乗るんですね」
「うん」
あんなに堂々と停泊してて極秘任務も何もないと思うんだが……
現に帰り道できっちりダンが襲撃されるし、バレバレなんだよな……
「流石は地球防衛軍の誇る新造原子力船だ。カッコいいなぁ……僕も一度は乗って見たかったんですよ」
「……ダン、遊覧船じゃないぞ!」
ほれみろ、怒られた。
アマギの奴め、さっそく先輩風吹かせてやがる。
先輩の俺にはタメ口利くくせに、後輩が出来た途端、これだもんな。
やっぱり一話にいたのがアマギ隊員じゃなくて良かったなぁ、ダン。
俺とフルハシが細かい事を気にしない性質なのを感謝しろよ?
「成功を祈ってます」
「ありがとう! ……お前も帰りの運転気をつけろよ」
……まあ、言ってもしょうがないか。
ダンというか、セブンは優しすぎるのが長所であって、欠点だからな。
セブンというよりM78星雲人の性なのかもしれんが……
それにしたって、元々が戦士では無いセブンは輪をかけて、疑うとか、断るとか、そういう事が苦手なんだろう。
そんなだからペダン星人に裏切られたりするんだぞ。
こんな純粋なセブンが、本編でヤプールなんかと戦わされる事にならなくて本当に良かった。
エースはよく頑張ったよ、うん。
一方マックス号に乗り込んだ俺達二人を、一等船室で待ち受けていたのはタケナカ参謀であった。
俺達は今から、この人の指揮下に入ることになるのだ。
我々を労いながら、マックス号の性能について自慢気に語る参謀。
参謀の中でも、特に気さくで、部下からの人気も高いこの人らしい。
「……参謀、それよりマックス号は一体どこへ向かってるんですか?」
「地獄だ」
「なんですって!?」
「フッハハハ……いや、場合によっては本当に地獄行きだぞ」
さっきまでの和やかな雰囲気はどこへやら、真に迫った表情で俺達へ説明を始めるタケナカ参謀。
特定の海域で、タンカーや海上保安庁の船が相次いで消息を絶ってしまったという。
何者かの陰謀である線が濃厚であるとして、極秘裏に事件の調査と撃滅の為にこのマックス号が派遣されるというのだ。
そしてまだ何も手掛かりを掴めておらず、危険な任務である為、覚悟してくれと。
……しかし、俺だけは今回の事件の真相を知っている。
そして、先程の参謀のジョークが洒落にならんという事まで知っているのだ。
何せ、ここまでのやりとりは第四話「マックス号応答せよ」の冒頭部分そのままだからだ。
十中八九、ゴドラ星人の仕業に間違いない。
ゴドラ星人は、このマックス号を釣り出す事に成功し、そしてこれからこの船をも捕らえる事で、防衛軍の目をその海域へ釘付けにし、その隙に、捕らえた隊員に化けた工作員が基地へ潜入、爆弾を仕掛ける……という壮大な侵略計画を実行に移してきたのだ。
おまけに、女に化けた別の工作員がダンを襲い、ウルトラアイを盗む事で、セブンの介入すら妨害するという念の入れよう。
……いまごろ、ヒッチハイクされたダンが、エンジンの故障を診てる隙に、レンチでぶん殴られてるところだろうか。
お前、ウルトラアイにキーチェーンとか付けといた方がいいぞホント。
盗られたり無くしたり、し過ぎなんだよ。
俺ですら、家のカギ落としたのまだ一回だけだぞ?
まあ、
なにを隠そうこの俺、今日のこの日の為にずっと、1話の時点から毎晩プランを考えていたのだ。
……我々の乗っているマックス号。碌な活躍もしないまま宇宙空間に連れ去られ、乗組員は全員殺された上に、ラストではゴドラ星人もろとも爆弾で木っ端みじんになる残念新造原子力船。
これを俺は、再びこの大海原に浮かべてみせるのだ!!
……いやね、この世界でソガ隊員になってみて初めて、このマックス号を失った事が防衛軍、引いてはウルトラセブンにとっていかに痛手だったかというのを痛感したのさ。
本編を見てるだけでは気付けなかった、ゴドラ星人の影響力とその悪辣さを諸君にお教えしようではないか。
とは言え、なにもマックス号に戦力として期待している訳ではない。
しかし、俺はこっちで任務をこなしていて驚いたもんさ。
なぜなら、このマックス号が受け持っている哨戒範囲。
……めちゃめちゃ広いのである!!
重ねて言おう、むちゃくちゃ広いのである!!
ざっくり言うと一隻でなんとウルトラホーク三機分……いや、極東基地半個分。
そもそもホークのレーダーが如何に高性能と言っても、主な任務は迎撃戦闘機であるのだ。
専ら基地のレーダーが主で、パトロールはその補助でしかない。
対して、マックス号は始めから単艦運用前提の設計な上、軽量化なんかを考慮しなくてよい分、基地のレーダーとまではいかないが、非常に高性能な物を搭載できる。
しかもさらに、観測用ロケットまで完備。
おまけにホークは二~三人、酷いときは一人で操縦からレーダー監視までしなくてはならないのに対し、マックス号は数十人の乗組員が交代で専任できる。
さらにさらに、航続距離がまるで違うときたもんだ。スピード命のホークは、飛行機としては桁違いの距離を飛行出来るとは言え、一日中飛んでる訳にもいかず、燃料補給が必要だ。
……ところが、原子力船であるマックス号は一度出港すれば数ヶ月間は余裕で帰ってこない。
こんな船が、関東側の太平洋をゆっくり湧き潰しでもしてんのかってくらい念入りに哨戒している間、ホークやその他のパトロールは別の方面に専念できる。
正直、転生してから今まで、太平洋方面のパトロールなんて行った事がない。
だが、本編では海で事件が起こる度にちょくちょく海上をホークでパトロールしている。
……それはなぜか?
マックス号がいないからだよ!!
この船が無くなったから、抜けた穴を埋める為に俺達が空から海のパトロールに駆り出されているんだよっ!!
しかも、さっき言った通りの性能差で、である。
…………
嫌じゃ!! パトロール任務が今の数倍になるのは絶対に嫌!!
こんなん、セブンでなくとも過労死するわッ!!
そりゃあ他の艦艇もいるから、単純計算出来ないとはいえ、少なくともマックス号を失ってから数ヶ月は我々の負担が増すのは間違いない。
それだけは避けねば……!
まあ、生き残ったらどっかの戦いで活躍してくれるかもしれんし。
キングジョーとか、ノンマルトとか、セブンは意外と海上戦も多いし……艦砲で援護射撃でもしてくれりゃ儲け物だ。
とにかく、生還して俺……じゃなかった、ダンの代わりに働いてくれ、マックス号!
そしてそれだけではなくもう一つ、今回の計画は俺にとっても大きな試金石となるはずだ。
つまりオレが何らかの影響を与えて原作改変できるのはどこまでなのか? という疑問をハッキリさせられるかもしれない。
前回、エレキング戦で多少は頑張れた筈だが、大筋はそこまで変わっていない。
ミクラスは負けるし、ホークも撃墜される。
エレキングを倒すのは結局ウルトラセブンだった。
しかし、宇宙で爆破されるマックス号を乗組員も含めて救う事が出来たなら、ウルトラセブンを救うという野望にも希望が持てる。
逆に言うなら、そんな改変すら出来ないなら、運命を変える事なんぞできやしないと言う事だ。
……さあ、気合いをいれろ。オレ!
主人公は果たしてマックス号を救えるのか!?
マックス号はまるで設定が無いからこそ、好きなように盛れるのです。