転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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初期プロット時は単なる閑話で済ます予定だったのに、どうしてこうなった……



そしてな、なんと……髑髏の火炎竜様から挿絵をご提供頂きました!!
まさか自分の作品に支援絵を頂ける日が来るとは……ありがとうございます!

こんな素晴らしい絵を自分の作品の挿絵として飾れるなんて作者冥利につきる……

頂いた挿絵は

ウルトラ警備隊に死ね《前編》(Ⅵ)
昨日捜したミライ(Ⅰ)
超兵器R2号(Ⅲ)

に早速貼らせて頂きました!



再防御作戦(Ⅰ)

作戦室に入ってきたソガが、きょろきょろと周囲を見渡す。

どうやら誰かを探しているらしい。

 

「……あれ? アマギは?」

「ここにはいないわ。なんだか最近、ラボに籠りっきりだそうよ」

「ふーん、そうか。研究に行き詰ってんのかな」

「ええ……ちょっと元気がなさそうなの。ソガ隊員、差し入れがてら、様子を見てきてあげてくれない?」

「オッケー、まったく世話が焼ける奴だ」

 

もうそろそろスパイナーを運ばなきゃならんって言うのに、こんなところで倒れられちゃかなわんからな。

コーヒーとチョコレート缶を持って行ってやろう。

 

ああなんて素晴らしい先輩だろうか。

 

彼の個人ラボに辿り着くと、暗い室内で、小さな電灯を頼りに何かをいじくり回しているアマギがいた。

いつもは齧りつくように図面を引いている割に、今日はなんだかぼんやりしているようだ……アンヌの言う通り、普段と様子が違うぞ? どうした、宇宙人と入れ替わってるのか?

 

「ようアマギ、差し入れだ! 糖分足りてないんじゃないか? ……ご苦労さん」

「……どうも」

 

おいおい、元気が無いな。

……ははーん、成程。

 

「なんだ? この前の新兵器エイトの出来栄えが、そんなに不満か?」

「……ああそうだ、せっかくアンヌが危険を顧みず囮になって、あの宇宙人を誘い出してくれたのに……僕のエイト連装砲は、数基がかりで渓谷に集中砲火しても、奴に傷ひとつ付けられなかった……失敗作だよあれは……」

「おいおい、いくら威力があっても精神体に効果がないのは当たり前だろ? 幽霊みたいな奴とは相性が悪かっただけじゃないか」

 

いやほんと、あれは相手が悪かった。

 

「いやそれだけじゃない……この前のアレだって……」

「あー……あれはなんというか、ダンがロボットに過剰反応しすぎなんだと思うぜ? 奴はあの手のに、いい顔はせんだろ……気にすんなよ!」

「そうかな……」

 

確かについこの間お披露目した作品も、あんまり評価されなかったというか……ダンが珍しく批判的だった。それを気にしているのか?

あれはアイツの個人的なトラウマによるものだから、気にしなくていいのに……

 

「……ソガ、君は何も感じないか?」

「何を?」

「仕事の事さ! 我々ウルトラ警備隊がどんなに頑張っても……セブンさえいればいいんじゃないか……?」

「ブフォッ!! ゲホッ! ゲホッ!!」

 

思わず飲みかけていたコーヒーを吹き出してしまうところだった。

オイオイ、こりゃそうとう重症だな……どうしてこう、頭脳担当はどいつもこいつもナイーブな奴ばっかりなんだ!

 

「僕がどんな新兵器を作っても、たいてい役にたたんじゃないか!」

「馬鹿いうなよ……ウルトラガンが何人の侵略者を撃退してきたと思ってるんだ……これを作ったのは、確かお前なんだろ? すげえじゃねえか!」

 

そう、オレもびっくりしたが、なんと防衛軍の全隊員が携行しているウルトラガン。これの設計案は、もともとアマギが提出したものらしい。その功績と頭脳を買われて、警備隊入りしたのだ、この男は。

 

「だがそれも……再現しようとしたマルス133の数%程度の出力しかない……到底あの人には敵わないんだ、僕は……」

「そりゃあ仕方ない。マルスはレーザーの発振器に、なんとかっていう青い鉱石が必要なんだろ? 拾えた破片が二つだけだったから、二丁しかないって聞いたぞ?」

「そうだ」

「じゃあやっぱり、特別な素材もなしに量産できるコイツの方がよっぽど凄いよ! 133回打てばマルスと変わらんぜ」

「……」

 

それでも顔が晴れないアマギ。こりゃ根深いな。

次の戦闘でセブン来てくれとか叫び出さなきゃいいが……

 

「……あの時、見たんだ僕は」

「何を?」

 

アマギは何かを言うべきか否か逡巡しているようだったが、やがて俺の顔を一瞥すると、耐えかねたようにぽつりと漏らした。

 

「R2号の冷気の向こうで、あのパゴスが消えるところをさ……あれは……ウインダムとかいうロボット怪獣の消え方とよく似ていた……」

「あー……」

「隊長や参謀たち上層部は、あのパゴスをたまたま現れた野生の怪獣だと思って……いや、あえて分かっていないフリをしているのかも知れんが……間違いなく、セブンの仲間だよあれは……」

 

そうか、あの時アマギはホーク3号に乗っていたから、上空からパゴスの出現と消失の瞬間を見ていたのか……彼の観察眼なら、カプセル怪獣の共通点を見抜くのは容易いだろうな。

 

「我々は結局、ウルトラセブンに事態を収束して貰ったんだ、愚かな失敗の後始末を……僕たちが余計な事をしなければ、あんな悲劇は起きずに済んだんだ……違うかい?」

「あの時だけだ。あの失敗をバネにして、次に活かせばいいんだよ!」

「僕は、新兵器を開発することが、平和への道だと思っていた……けどそれは……違ったんだな……地球防衛軍なんていらないんじゃないか……?」

 

いじっていたパーツをそう言って放り出してしまうアマギ。だが、それは違うぞ!

 

「おいおい、地球防衛軍が居なかったら、キングジョーはどうなってたんだ? アイアンロックスやガンダーだってそうさ! それにあの時、俺達がアイロス星人の目にSMJ弾を撃ちこまなかったら、セブンは奴にやられてたかも知れない。持ちつ持たれつだよ!」

「そうかな……僕はウルトラセブンさえいれば、充分だと思うんだ……」

 

……やれやれ、言葉だけじゃ足りないようだ。

R1号の事はアマギにとって相当にショックだったらしい。

警備隊も、この世界じゃ原作よりずいぶん頑張ってるんだけどなぁ……むしろそのせいもあるのか。

セブンが居なくても大丈夫なようにと、どんどん兵器を開発してきた結果があれだったから、今までの反動で心がポッキリ折れてしまったと……

 

さてどうしたものか……

 

そんな時、ビデオシーバーに着信が。

こんな時になんだよまったく……

 

「大変だ、ソガ! 旭沼に女が倒れていると通報があったんだが……どうやらお前の後輩の婚約者らしいぞ!」

 

……あ、そうだった……今日は通信員のノガワが、フィアンセを連れて長期休暇の挨拶に来るんだった……

というか、そのためにアマギを探してたのに……今回は役に立ちそうもないなコイツ。

 

捕まえた地球防衛軍の隊員を、サイボーグへ改造して工作員にするというのが、ボーグ星人の策略だ。

 

せっかく先手が取れるかと思ってたのに……アテが外れたな……

 

しょうがない、アマギを励ますのは後回しにして、今はボーグ星人の相手だ!

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ノガワ隊員の捜索は、何の手がかりも発見できないまま打ち切られたが、その後、アサヒ沼を含めた第33地区をはじめ、その他の地区にも何ら変わった事件は起こらなかった。

 

そしてノガワはMIAとして処理される事となる寸前……ひょっこりと基地へ姿を現したのだ。

 

「ノガワ! 貴様、心配かけやがって、どこほっつき歩いてたんだ……」

 

どこか芝居がかったソガを無感動な顔で眺めるノガワ。

 

「婚約者を放りぱなしで何をしてるんだ、防衛隊員の風上にも置けない奴だな……!」

「まあまあ、待て……。とにかく無事に帰ってきたんだ……」

 

沼に車ごと転落して死んだと思った後輩が、無事に帰って来た興奮からか、不自然な程に嬉しがるソガを、キリヤマが宥める。

 

「ノガワ君、今日はゆっくり休みたまえ」

 

隊長の気遣いに、無言で一礼して退室するノガワ。

普段とはまるで違う、どこか無機質な彼の様子を見て、ダンは訝しむ。

 

(あいつ……まるで死人のようだ……)

 

周囲はそれを、事故による一時的な精神性ショックのせいだと思っているらしい。

 

「チクショー、思いきりとっちめてやろうと思ったのに……奴を部屋に案内してきます」

「一眠りしてから、気の済むまで締め上げてやるんだな」

「もちろんですよ!」

「ハッハッハッハ」 

「……ちょっと、見てきます」

「待てよダン!」

 

病み上がりの後輩が心配なのか、ソガがお人よしを発揮してついて行ったが、胸騒ぎのしたダンは二人の後を追った。

すると……

 

「ウ˝ッ˝!!」

 

保安室の中へ二人が消えたと思ったら、ソガのくぐもった悲鳴が聞こえてくるではないか!

慌てて飛び込んだダンが見たのは、床に倒れ伏す保安部員達とソガ。

 

「ソガ隊員! 何があったんです!」

 

ウルトラガンを抜いたソガは、腹部を抑えて失神していた。ソガの早撃ちよりも素早い攻撃とは……

そしてその他四人の保安部員も、辛うじて死んではいないものの、腕が折れたりと重傷だ。そしてその誰もが一撃の下に昏倒させられていた。

ダンが目を離して、僅か一分にも満たない間に、五人の精鋭を叩き伏せたのか!

 

基地に警報が鳴り響く!!

 

「隊長、ノガワ隊員を探してください。様子がおかしいんです!」

 

集まった警備隊が、ノガワを捜索するも、途中で見失ってしまう。

ダンの透視もまるで役に立たない。なんと高度な光学迷彩だろうか!

 

彼らがノガワを再び見つけたのは、周波復調室。

 

「あっ、あそこだ……」

「様子がおかしいな……」

「何か、仕掛けているようです」

「隊長、僕が見てきます」

 

変電装置に小型の円形物体を仕掛けているノガワの前に、立ちはだかるダン。

しかし、ダンに見咎められたというのに、男は余裕を崩さない

 

「ノガワ隊員!」

「……フッフッフッ……騒ぐのは止めたまえ。午前6時、この基地が、勤務交代の隊員でいっぱいになるときが、地球防衛基地の最期なのだ。地球はあと数時間で、我々ボーグ星人のものになるのだ!」

「なにッ!」

 

血相を変えたダンが、素早く組み付こうとするが、それをまるで赤子の手を捻るように軽くいなしたノガワ。

それどころか、隊でもフルハシとトップを競う格闘の実力者であるダンを、簡単に締め上げて、機械に押し付けると、真っ向から叩きのめしてしまうではないか!

 

とても人体から発せられるとは思えぬ程に、重く硬質な打撃音を響かせて、さながらデンプシロールのように、両の拳でダンの顔面を散々に殴りつけるノガワ。ハンマーで殴りつけられたかのような衝撃が、ダンの脳を揺さぶった。

 

「ふたりともやめろ! やめないか!」

「ぐっ……デヤッ! デュ! ジュオッ!」

 

キリヤマがマイクで叫んだ制止もまったく意に介さず、今度はダンも本気で殴りかかった! それこそ、人間態時に出せるフルパワー、つまり、通常の人間では内臓が破裂してもおかしくはない威力のダイナマントパンチが炸裂する! 

 

ところが、帰ってきたのは、まるで岩か鋼を殴ったかのような手ごたえだけで、ノガワは涼しい顔でビクともしない。明らかに人間離れした相手に、ダンは半ばウルトラセブンとしての戦い方、つまり、怪獣を本気で殺すつもりでかかったにも関わらず、この人間の皮を被った化け物にまったく歯が立たないという事実に戦慄した。

 

「ダァ―!?」

 

片手であえなく投げ飛ばされてしまうダン。

そうしてダウン寸前の彼の首を、ぐぐっと力任せに持ち上げるノガワ。

いかん! このままではダンが撲殺されてしまう!

 

「仕方がない……ショックガンでノガワを!」

「あの揉み合う二人にですか!? ダンを傷つけずにそんな芸当が出来るのは、ソガくらいですよ……!」

「くっ……」

 

肝心な時にいない射撃の名手の顔が、焦る隊員達の脳裏に浮かぶ。

しかし、そこでアマギは思い至ったのだ、ここが何の部屋であるかを。

そうだ……ここならアレが待機状態で置いてある!

あのバカが強請った玩具を充電していたのは、この部屋だ!!

 

「頼む! ダンを助けてくれ……!」

 

慌てたアマギが祈るように、何かの起動スイッチを押した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「う、ううっ……」

 

くらくらと焦点の定まらないダンの目の前で、ノガワの拳が高々と振りあがる。まるで撃鉄のように……

そしてそのハンマーが振り下ろされようとした瞬間。

 

「グワーッ!」

 

突然、ノガワの右手に光弾が命中し、弾かれたように痙攣する。

 

いったい何事かと二人が視線を向けると……

 

 

「ソ゜コ゜ノ゜フ゜タ゜リ゜ト゜マ゜リ゜ナ゜サ゜イ゜」

 

 

朦朧とするダンの視界には、ピーピーと甲高い電子音でがなり立てる銀色の機人が、丸太のように太い腕を振り回しながら、どしんどしんと重たい足音を響かせて、こちらへ向かって来るのが見えた。


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