転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる!   作:Mr.You78

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再防御作戦(Ⅲ)

メディカルセンターで、ダン、ノガワ両隊員の様子を見守る警備隊メンバー。

ダンの診察を手伝いつつ、心配そうな顔で後輩の寝顔を見つめるアマギを、白衣のアンヌが優しく宥める。

 

「大丈夫、すぐに意識は回復するわ……」

「うん……」

 

その傍らでは、キリヤマ隊長とキタムラ博士が、ノガワのレントゲン写真を見つつ、彼の状態を確認していた。

 

「ノガワ隊員は、完全ではありませんが……サイボーグになっています」

「サイボーグ?」

「それから彼を操っていたのは、脳の中に仕掛けられた催眠プレートですねぇ……」

 

ノガワは側頭部、こめかみの辺りに小さな金属板が埋め込まれていた。

ここが受信機になっており、どこかにある敵の本拠地から、遠隔で傀儡のように操られていたのである。

 

「ノガワ隊員は、もう元の人間には帰れないのでしょうか……?」

「いやぁ、なんとかなるでしょう……アンヌ隊員、手術の用意を!」

「はい!」

 

キタムラ博士は、宇宙医学の権威であり、かなりの自信家でもある事で有名である。

かつて、とある天才的科学者の下で助手を務めた経験を持ち、常に冷静で、どんな常識外の事態にも動じない。

 

既に故人となった、かの恩師の下で東奔西走した日々で、そんなものは見慣れてしまったからだ。火星の化け物や、疑似空間に比べれば、いくら中身が宇宙合金でも、所詮はインプラント化された人間であり、摘出など地球の外科手術の延長線だ。彼の優秀さに裏打ちされた楽観さは、その場の皆に希望を与えた。

 

とはいえ、この短時間で大規模手術ができる訳では無いので、今は電波遮蔽網のシートで頭部を覆い、催眠プレートに電磁ショックを与える事で、一時的に支配を弱める事だけだ。彼の脳波に影響が出ないよう、細心の注意を払いつつ、準備が進められていく。

 

そしてそれと並行して、基地内にノガワが仕掛けたプレート爆弾の捜索と解除も行われた。ノガワが持ち込んだ爆弾は計10個。

 

これが各所で一斉に起爆すれば、極東基地はひとたまりもないのだ。

隊員達を総動員して、基地が虱潰しにされていく。

 

 

ハチの巣を突いたような騒ぎの基地を余所に、メディカルセンターで苦し気に呻くノガワ。

朦朧とする意識の中で、何かを懸命に伝えようとする。

 

「う…ううっ……ア、アサ…アサヒ……」

「あさひ……? 旭沼か……!」

「隊長!」

「キタムラ博士、彼をお願いします。……アンヌ!」

 

ホーク1号で出撃していく隊長とアンヌ。

 

 

――――――――――――――――

 

 

旭沼の上空。

度重なる捜索では何の異変も感知出来なかったが……あるいは……

 

「アンヌ、熱ミサイル発射準備!」

 

ホークの下部から、気化爆弾の持続力をより高めた大型ミサイルが投下される。

ぐつぐつと煮立った旭沼は、一瞬にして干上がり、何億何千の微生物や魚類の命と引き換えに、敵の宇宙船が姿を現した。

 

「攻撃開始!」

 

急旋回したホークから、泥に埋もれた宇宙船へ、ミサイルが滝のように降り注ぐ。

しかし敵の円盤は、ただでさえ硬いボーグメタルで装甲化されているだけでなく、まるで兜を模したような独特の形状から来る避弾経始にも優れ、全ての攻撃を弾き返してしまう。

 

このままでは埒が明かないと、業を煮やしたキリヤマはついに、虎の子の使用に踏み切った!

 

「マグネチックセブン投下!」

 

爆弾倉が開き、パラシュート付きの新兵器が投下される。

昆虫のような脚の先が磁力吸盤になっており、ゆっくりと降下して機体表面に密着するマグネチックセブン。

 

「爆破!」

 

アンヌがレバーを引くと同時に、全ての爆弾が、一斉にエネルギーを噴射する。

装甲の隙間から、猛烈な爆風を注入され、内側からパイがはち切れるように膨らみ、火柱を猛烈に吹き上げるボーグ星人の宇宙船。

 

攻撃は成功だ! あとは基地の爆弾だが……

 

――――――――――――――――

 

メディカルセンターでは、フルハシとアマギが冷や汗をかいていた。

 

「ちくしょう……あと10分しかない……」

「あと一個はどこにいったんだ……?」

 

プレート弾が一つだけ発見されていない。

このままでは……

 

「……ご両人、お探しのモノはコイツかい?」

「……ソガ! お前ようやく目を覚ましやがって……それは!」

「最後のプレート弾!」

 

ひょっこりと顔を出したソガが、得意げに差し出したのは、全く見つからなかった残りの一個!

 

「ダンのくるぶしに引っ付いてましたぜ、灯台元暗しって奴?」

「そうか、あの揉み合いの一瞬で……」

「ノガワ、恐ろしい奴だぜ……」

 

ようやく10個全てを回収し終え、安堵のため息を吐く隊員達。

 

そこへ突然、自動ドアを開いて何者かが入って来る。

隊長達が帰ってきたのかと振り返ると……銀の衣装に身を包んだ、全く見覚えの無い女が突っ立っていた。

誰何をする暇もなく、手にしたブローチから眩い閃光を放ち、ソガ達やキタムラ博士を気絶させて、ノガワの眠るベッドに近づく謎の女。

 

「もはや作戦は失敗だ。……しかし、お前は裏切った」

 

作戦が頓挫し、たった一人退却する前に、裏切者であるノガワを抹殺する事が、このボーグ星人の目的だった。

光学迷彩を駆使すれば、爆弾の捜索で混乱した警備の隙を突くなど、造作もない事。

裏切り者を抹殺し、プレート弾を再起動してばら撒くのも、また簡単だろう。

 

女がフラッシュブローチの出力を、速射モードから照射モードへ切り替えて、ノガワの頭部へ向けて掲げる。

 

だがそこへ間一髪、ブローチに突き刺さるレーザーの光!

気絶から回復したダンが、狸寝入りをやめて、ベッドの中からウルトラガンでの奇襲を仕掛けたのだ!

 

手持ち武器を破壊され、即座に逃走を選択するボーグ星人。

例え相手がウルトラセブンでも、屋外で心臓部分の空中元素固定装置を作動させて、巨大化すればまだ勝ち目はある!

 

踵を返したボーグ星人は、メディカルセンターから飛び出そうとして……開いた自動ドアの向こうで何かにぶつかり、たたらを踏んで部屋に押し戻された。

 

一体なにが邪魔を……

 

「シ゜ン゜ニ゜ュ゜ウ゜シ゜ャ゜ハ゜ッ゜ケ゜ン゜」

 


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