転生したはいいが、同僚の腹パンが痛すぎる! 作:Mr.You78
そんでもって例の如く閑話です。
そして、またしてもD×3様から挿絵を頂きました!!
R2号で凍ったギエロンの氷像です……!
【挿絵表示】
爆発と同時に内部のアメーバごと凍り付いた姿をイラストにして頂きました、ありがとうございます!!
衝撃でよろけた姿勢が、助けを求めて腕を伸ばしているようにも見え、突き刺さったままのR2号残骸や、パゴスの光線で抉り取られた右翼の傷跡が、より一層痛ましさを感じさせます……
素晴らしい挿絵をありがとうございました!
「釣れないなぁ……」
「釣れませんねぇ……」
男三人、湖畔に椅子を並べて垂らした糸はピクリともしない。
イカンな……これじゃ女性陣にどやされちまうぞ。
「当たり前だ、素人がいきなり釣れるかよ」
「いやー海釣りでも釣り堀でもそれなりに釣れたから、自信あったんだがなぁ……淡水だと違うのかねぇ?」
なんせ一般人が怪獣釣り上げるような世界だ、普通の魚くらい楽勝だと思ってたのに……
「僕は、こうして糸を垂らして湖を見つめてるだけでも、楽しいですよ」
「お前はいいよなぁ、自然派でさ。……でもな? それだとアンヌに呆れられちまうぞ。困るだろ?」
「それは参りましたね……」
「ふん、大見得切るからだよ。だいたい何だ、いきなりピクニックって……」
隣でブツブツぼやいてるのは、見るからにインドア派のアマギだ。
何でピクニックかだって? ……お前の為だよ!
どうして俺達が釣りなんてしてるかと言うとだ……
―――――――――――――――――
先日、宇宙細菌ダリーに、カオリという女子大生が感染してしまった。
いかな電磁バリアも、対宇宙船想定でしかなく、網目が広すぎて寄生虫の微細な卵までは防げなかった訳だ。
今度、ミヤベ博士に言って、プラズマクラスター機能も搭載して貰わなきゃ。
それで、体内に巣食ったダリーに吸血されたカオリの血液型が非常に珍しかった為に、輸血要因として同じ血液型のアマギが病院へ……てな展開だったわけ。
いかに頭脳担当だろうが、あのスパルタ隊長がアマギをあまり前線に出さないのも納得だ。
アールエイチマイナスのAB型なんか、負傷して大出血しようものなら、アンヌが居ても危ないくらいだからなぁ。
でまあ、ダリーに操られたカオリちゃんに吸血されたり、その後、吸血時の後遺症で基地の中でも操られたりと散々な目に遭ったにも関わらず、優しいアマギは昏睡するカオリをなんとか助けられないかと、周囲に懇願したのだ。
僕の血が必要なら、いくらでも使って下さいとまで言って、キタムラ博士に頼み込む姿は、流石のオレでも涙を禁じえなかったね。
それが、宇宙一のお人好しの心を揺さぶらない筈が無く、セブンはミクロ化して、眠りこける彼女の鼻へ突入。
肺に巣食ったダリーを倒すべく、人体という未知のエリアでの戦いに臨んだのだ。
確か白血球に襲われたり、縮小化のせいで光線の出力が落ちたりで大分苦戦してた気がする。キタムラ博士達が抗生物質を打ち込まなかったら、危なかったんじゃなかろうか。
やっぱ名医だわあの人。未知の寄生虫に打つ手なしという状況に、まるで別人のような顔つきになってたけど。
そして後日、アンヌの看護の下、なんやかんや快方に向かうカオリを見舞いに言った時、彼女が呟いた。
「あのう…お会いしましたわ。どこかで……?」
アンヌ曰く、事件当時の記憶が無いと聞いてはいたが、アマギの顔だけは見覚えがあったようだ。
二人仲良く催眠状態で深夜のメリーゴーランドに乗った仲だもんな……
そんな彼女の問いに、なんとこの男は言ったのだ。
「さぁ……」
優しい笑顔で、とぼけるアマギ。
いやいや! さあ……じゃないよ!
どんだけ聖人なんだよコイツ!!
彼女の為に、恐ろしい記憶はそっとしておいてやろうという気持ちは分かる。
だが! アマギだって少しくらい報われてもいいじゃないか!!
「ああ実はですね、カオリさん。このアマギ隊員が……もごもご!! もがもが!!」
「……??」
やめろダン! 放せ!
「ソガ隊員、本人があえて言わない事を、他の誰かが勝手に話すのは、やっぱりいけない事ですよ」
「だがなぁ! あれじゃアマギがあんまりだろ!」
「それでもです」
ダンに阻止され、結局その日はそのまま帰る事に……
んで、このモヤモヤを休日に愚痴っていたら……
「じゃあソガくん、みんなでピクニックしましょ!」
「えッ? ピクニック?」
「そうよ! そのカオリさん、花が好きなんでしょ? お花畑のあるキャンプ場に、アマギさんと一緒に誘うのよ!」
「サエコさん……天才か?」
いっそアンヌとダンも誘って一石3鳥トリプルデートじゃああああああ!!!!
――――――――――――――――
「アンヌさん、流石の包丁さばきね……いつもメスを使ってらっしゃるからかしら?」
「アハハ、違うわよ。そんなんじゃないわ。ニンジンの方がずっと硬いもの」
「あの……剥いたレタスはどうしましょう?」
「あら、もうそんなに出来たの? じゃあカオリちゃん、ピーマンお願いできる?」
「はい!」
おっとりとした娘が、緑色の籠を抱えてニコニコと洗い場へ持っていく。
「カオリちゃん……もうすっかり元気なのねぇ……ソガ君から聞いた時は、なんて恐ろしい目にと思ったけど、良かったわ」
「ええ、だから彼女のリハビリの為にも、丁度いいタイミングだったの。私からもお礼を言わせて、サエコさん。貴方がソガ隊員に提案してくれたんでしょう?」
「ううん、あたしなんて……」
「こんなに良く出来たひとがフィアンセなんて、ソガ隊員も幸せ者よねー? 彼、最近変わったと思っていたけど、納得だわ」
「え? アンヌさんから見てもそうなの!? ……それって、いつ頃から?」
「うーん、そうねぇ……最近って言っても結構前かしら……ああそうだわ、それこそセブンが現れるようになってからよ。突然タバコも止めだして……健康に気を使ったのかとおもったけれど、そういう事だったのねぇ……」
「お二人とも、何をお話されていますの……?」
怪訝そうなカオリに、二人は顔を見合わせた。
そして、我が意を得たりとニヤリ笑うサエコ。
「そりゃもう、女が集まってする話なんて……ねぇ? 一つしかないでしょ?」
「え?」
「こ・い・バ・ナよ、恋バナ!」
「……コイバナって……なんですの? アンヌさんご存じ?」
「さぁ……?」
「恋愛の話よ! 略して恋バナ! この前ソガ君が言ってたの。面白いでしょ?」
「本当に略語を考えるのが好きねぇ、ソガ隊員……」
呆れつつも、やはり何時の時代も興味の対象は同じらしく、一気に声が色めきだつ。
「ねね、カオリちゃん! 貴方は気になる人とか、いないの?」
「ええっ! そんな事……その……」
健康的な頬を赤らめて、恥ずかし気に俯くカオリ。
もじもじと小さな声で、なにかを呟く。
「その……こんな事、恥ずかしいのですけれど……夢の中で、なんだかとても素敵な人と出会ったような気がして……」
「あ! それってもしかしてアマ……もごもご!! もがもが!!」
「ちょっとサエコさん! こっち!」
強引にサエコを引き寄せたアンヌは、彼女にそっと耳打ちする。
「あんまり強引に彼女の記憶を刺激したくはないの。出来るだけ、自然な形で徐々に思い出した方が、負担が少ないのよ」
「そ、そうなのね? ごめんなさい……」
「ううん、私も初めに言っておくべきだったわ、こちらこそごめんなさい」
「……ハッ! いけない私ったら……あ、あの! 私はその……そう言った方はまだ……お二人はどうなんですの? アンヌさんとか!」
夢見心地で顔を真っ赤にしたカオリが振り向き、照れ隠しにアンヌへと矛先を向けた。
突然の奇襲に、すっかり慌てた女医は、完全に虚を突かれ、口を滑らした。
「えっ! 私!? ううん、違うわ、ダンとはまだそんなんじゃなくて!」
「え? モロボシさん?」
「やっぱり……」
「確かに……モロボシさんは紳士的で素敵ですものね」
「だから違うってば! もう!」
失態に気付いたがもう遅い。なんとか事態を納めねばと焦るアンヌは、目を細めて生暖かい視線を自分へ送る元凶に、八つ当たり気味に逆襲した。
「そういうサエコさんはどうなの!? 愛しのソガクンとはどうなの!?」
「よくぞ聞いてくれました! この前ソガ君ったらね……! 服を買いにいったのに、試着しても全部似合ってるしか言わなくて……」
水を得た魚のように喋りだしたサエコの姿に、アンヌは己の失策を悟った。
―――――――――――――――――
「……ふぁ、ふぁ……ぶへっくしゅ!!」
「うわあ! 魚が逃げるだろが!」
「すまん、鼻がムズムズして……やっぱこの時期はいかんなぁ。花畑も近いし……」
「あれ? ソガ隊員って、アレルギーでしたか?」
「ん? ああいやその、染み付いた癖というかなんというか……気を付けろよ、ダン。花粉症ってのはな、例え去年まで大丈夫だったとしても、いつ発症するかわからんのだ。一度なってしまうと、地獄だぞ、あれは」
「……はあ」
というか、せっかく釣りでぼんやりしてるんだ。
こっちからもコンピュータ野郎に水を向けてやらねば。
「そうだ、あー時にアマギよ。さっきからだんまりだが……最近、何か気になる事はないのか?」
「何を突然……」
「ソガ隊員! 露骨すぎますよ!」
「だって仕方ないだろ! これがメインなんだから!」
「気になる事か……そういえば、一つある。 この前の事件からちょっと思うところがあって……」
「「おおっ!」」
これは思わぬ収穫だ! まさかアマギからこうもすんなり引き出せるとは!!
「それでそれで? 何が気になる!?」
「……鼻だ」
「……は?」
何言っとるんだコイツ……?
……あ、そうか! なるほど!
「あーあー成程、確かになぁ! 鼻も大事だよなぁ! やっぱりこう、シュッと鼻筋が通ってた方がいいとかあるもんな! いや、逆に少しぺちゃっとしてたり、獅子ッパナの方が可愛かったりという例もあるわけだし、お前の好みで選ぶのがいいと思うぜ、うん」
俺はねー今は一番サエコさんの鼻が好きだよ。なんちて。
「お前は……さっきから一体何の話をしてるんだ?」
「何ってお前……鼻の話だろうがぁ!」
「……バカ、俺が言ってるのは、セブンの鼻だよ!」
「ハァア˝ア˝ッ!?」
なにか凄く哀れな生き物を見る目で、アマギがこちらを蔑んでくる。
てめぇ、湖にブチ込むぞ。
「そういえばセブンには鼻が無いが、彼はニオイを感じる事が出来るのかという事が気がかりでね。いや、匂いだけじゃない、そこから連想されるのは、あの口で何を食っているんだろうという事が疑問で仕方なくてな。宇宙にもダリーのような未知の細菌が潜んでいると分かったが……例えばセブンには、奴も感染できないんじゃないか? むしろ、ああいった感染症を防ぐ為に鼻も口も塞いでいるとするなら、何を摂取しているのだろうと思ってね」
「……頭のいい奴ってのは、馬鹿だな。」
「お前に言われたくはない」
そんな事、気になった事もないわ。
「……多分、太陽光とかだろ」
「なに?」
「人間の鼻が口の上に付いてるのは、食べ物が腐ってたり毒じゃないかを調べるセンサーの役割だったからだ、って説を読んだことがある。じゃあ鼻がねえのは、口でモノを食べる必要がないのさ。……いつだったかの極寒地獄で戦った時に、セブンは一度どこかに飛び去ってから、すげえ熱量で降ってきたって言ってたじゃねえか。あれって多分、太陽まで飛んで行って、熱だか光だかのエネルギーを補給してきたんじゃないか? ギエロン星獣が、本来は苦手な極寒の宇宙を、無限に降り注ぐ放射能を食いつないで飛べるってのと同じだ。太陽光を食えるなら、宇宙を飛んでも寒くはあるまい」
「ふむ、太陽エネルギーか……となると、寒さに弱いという仮説にも、一定の信憑性が生まれてくるな。……彼の鎧が太陽光をエネルギーに変換できるような真性半導体で構成されているとすると、極低温化では逆に絶縁体のように電気抵抗が増して、変換効率がゼロになってしまう……」
うん、アマギが何を言っているのかは分からないが、セブンが太陽エネルギーで動いているのは間違いない。
その証拠に、ダンが急に我関せずと言った様子で、釣りに集中するフリをしだした。
……おい、魚を回収した後、餌もつけずに糸を垂らすな。
「となると……やはり彼はロボットなのだろうか?」
「んなわけねえだろ。ロボットが痛がったりするもんか。ユートを見てみろよ、お前に撃たれても悲鳴一つ上げずにぶっ倒れたじゃないか」
「……あんまり蒸し返すなよ!」
「いいや、一生言ってやるね。せっかくカオリちゃんの吐く神経ガスを無効化して大活躍かと思ったら、後ろからお前がヌッと出てきて、ウルトラガンで弱点にピピピーだもんよ。 地下での初対面時はあんなに外したのに、操られてる時の方が腕がいいってのは、どういう事だ? 人の気も知らないで……」
「なんだ!? やるか!」
「てめえこそ、河童の餌にしてやるぞ!」
「……ハッハッハ!! これが、喧嘩するほどなんとやら、という奴ですか」
「「ほっとけ!!」」
くるりとコチラに向き直ったダンが、やれやれと言った様子で溜息をついた。
「アマギ隊員。おそらくですが、セブンは匂いを感じますよ。そうでなければ、ヴィラ星人の毒ガスで苦しんだり、メトロン星人のフェロモンで惑わされたりしません」
「え? メトロンのフェロモンって……毒タバコの事?」
「ああいえ、違います。僕も奴らのアジトに踏み込んで知ったんですが、果実が熟すような甘ったるい匂いがするんですよ、奴らは」
「ええっ!? そうなの!? マジかぁ……」
「そういえば、ソガ隊員はあの時寝込んでいましたっけ……そんなに悔しがることですか?」
「そりゃそうだろ! 例えば恐竜図鑑に『エビの味がする』って書いてある生き物がいたら、本当にそうなのか食べてみたいと思うだろ? それと同じだよ!!」
「……頭の悪い奴ってのは、馬鹿だな。」
―――――――――――――――――
「あれ? おかしいな?」
「どうしたの? ダン?」
「ライターがガス欠だ……」
「マッチがあるだろ、ほれ」
「ありがとうございます」
どうやらバーベキュー用の火を起そうと苦戦しているらしい。
見かねて手渡したマッチを取り出しては、ぺキペキと圧し折っていくダン。
……あのさぁ……
「貸してみろ……ほれ」
「わぁ、すごいですね」
「すごいですね、じゃなくて天下のウルトラ警備隊がマッチも擦れなくてどうする」
「いやあ、火をつけるというのが、慣れなくて……」
……そうかお前の場合、いつもは額から熱線チリチリで一瞬だもんな。悪かったよ。……と思ったら。
「あれ? おかしいな?」
「どうしたの? ソガ君?」
「炭に火がつかない……」
「おい、ノロマめ。炭を炙ってどうする。ちょっと退け」
オレをしっしっと追いやるアマギが、ため息交じりに新聞紙をクシャリと丸めたかと思えば、炭をパパパっと竈状に組み直し、どんどん火を付けていく。
うーん……ベル星人の時も思ったが、実はアマギってこういう時に意外と頼りになる。
お前もしかして、キャンプ好きだろ。
「天下のウルトラ警備隊が、火起こしも出来んでどうする。……こりゃ中止した野外訓練をもっかいしなきゃならんな」
「わぁ、すごいアマギさん。もう火が付きましたのね」
「いえカオリさん、ここから炭の中にしっかり火が移ってからが本番ですよ」
……まあ、いいや。結果オーライって事で。
「ソガ君、実はキャンプした事無いの?」
「あるけど、火の起こし方なんてスマホ……ああいう物知りに聞けばすぐ分かるから、いちいち覚えてないよ」
「ふーん……そうねぇ、ソガ君達が使ってるビデオシーバーがもっと身近になれば、あたし達でもキャンプの時になんでもアマギさんに聞けるんだけれど」
「ああ、そうだな多分あと……いやーどれくらいかかるだろかねー」
オレがとぼけると、サエコさんが肩を竦める。危ねえ危ねえ……
ビデオ通話なんて50年もしない内に実用化されますよ、なんて言って、現代のノストラダムスになる予定はないのだから。
第一、スマホの走りみたいなビデオシーバーが既に実用化されてるこの世界で、それが民生用に降りてくるのがいつになるかなんて、オレには予想も出来ないし……
とまあサエコさんはあれから少し、こんな風に試すような言動が増えた。
ああは言ってくれたものの、好奇心は抑えきれんらしい。
……と言うか彼女、一体どこまで知ってるんだろうか……? もどかしいなぁ……
「ん! このお肉美味しいですね!」
「……ダン、お前が食ってるそれ、まだ生焼けだぞ」
「えッ? こんなに美味しいのに……?」
「ダン、こっちはちゃんと焼けてるワ。ホラ、あーん」
「本当だ……もっと美味しい……」
「モロボシさんって、案外お惚けさんなんですね」
「アイツはいつもあんな感じだよ」
「……あらこのお肉、本当に美味しいわ!」
「フルハシさんが、実家から貰ってきてくれたのよ」
「フルハシさんって、みなさんの先輩だって言う?」
「そうです。誘ったんですが、用事があるらしくて……残念だなぁ」
「歯医者の予約でも入ってたんじゃね?」
「なんでも妹さんの友達が、アフリカへ飛ぶのを見送りに行かなきゃならんらしい」
「ナッちゃんて言うんですって……ウフフ」
「先輩の事なんかいいよ! さあ食べよう!」
「いくらなんでも、そんな言い方、酷いですよぉソガ隊員」
ダン、お前がそれを言うのか。
というわけで第31話の「悪魔の住む花」を消化しつつの、ほのぼのバーベキュー回でした。
いやあ、カオリ役の松坂慶子さんのデビュー作として有名ですけど、可愛い系からあんな美人系になるとは……
アマギ、幸せになれよ。