かつての許嫁、六門道沙羅さんが急にやって来てから何日か経った、ある日のこと。
その日も例によって複数人、友人が家に遊びに来ていた。
「相変わらず狭いなァこの家」
「普通ですけど? 勝くんが大きいんだよ」
「そうか? そうかもなァ」
二メートル近くある長身に、がっしりしたマッチョな体型。
俺と同じくらいの歳なんだが、一回りは上に見える濃い……と言うと失礼かな? 何だろう、劇画タッチっぽい顔の、昭和的男前。
何ならファッションだって昭和だ。ジーンズに色シャツを中に入れ、レザージャケットを羽織って腕捲りまでしている。
挙げ句にどこから仕入れたのか指貫グローブを装着しているんだから大したもんだ。いつの人だあんた。
とにかくそんな大柄の男が俺の家のソファに寝そべっている。
正直、そうしているだけで部屋が狭くなる程だ。
彼──名を十名山勝というのだが、俺の友人の一人に相違なかった。
そんな勝くんを見て、俺の隣で椅子に座る、制服姿の女の子が感心したような声をあげた。
「へぁー! 都会の人は背ぇ高いんだぁねえ! あたし驚いちゃったよ幻魔の兄さん」
「都会の人が皆こうなら、俺とか千早ちゃんも大概大きいことにならない?」
「んー? ……あ、そっかぁ!」
相変わらず何ともすっとぼけた感じの子だ。
これで学業の方は千早ちゃん並にそつなくこなすんだから侮れないよ。
ていうか今日、平日じゃない? 学校どうしたのよ。
「うぇっへっへ! 今は丁度テスト期間中だし半ドンなの! 半ドンドーン!」
「半ドン……古い言葉を使うねえ。勝くん世代くらいおじさんの語彙じゃないか」
「幻魔くん? そこまで歳いってないよ幻魔くん? あと俺世代ならお前もそうだろ幻魔くん?」
知らないよそんなおじさんの言葉。
俺は10年前から年を取らないことにしたんだ。永遠の18歳なんだよ!
……とまあ、それなりに気心の知れたやり取りを交わすくらいには、俺と勝くんは付き合いが長くて深い。
よくまあ飽きずにこんなところに足繁く通うよな。たしか新婚だろ、こいつ。
新婚の旦那の癖に嫁ほったらかしで友人の家に遊びに来る馬鹿を見る目には気付かず、勝くんはむしろ、俺に対してまるで、犯罪者を見る目を向けてきた。
「にしてもお前な。どこから連れてきたんだこんな可愛い子。しかも学生服着てるってことは、そういうプレイじゃなけりゃガチで未成年ってか? アレか、逮捕されたいのか?」
「勘弁してくれお巡りさん。違うよ、この子は千早ちゃんの後輩だ」
「……あ? てことはまさか、魔法少女か」
「言って良いの、幻魔の兄さん?」
「良いよ良いよ。こいつ、特退警のエースだからね。千早ちゃんとも顔馴染みだ」
「え」
俺の言葉でおじさんと少女の双方、ぎょっとして互いを見る。
そうだよこの二人、これが初対面なんだよな。
勝くんの方は千早ちゃんとも古馴染みだし、何となく魔法少女全員が知っている気がしてた。
ここは間に立たなきゃな、俺。
そう思い、彼と彼女に互いを紹介する。
「こちら、特別退魔警察機構の十名山勝くん。機動なんたらのエースだよ。聞いたことない? 何だっけ」
「機動退魔部隊長、対妖魔特殊装甲『ギア・ダイナミック』装着者だよ。聞いたことないか?」
「は、はわわわ! テレビで見たことある! 有名人だサインくだせえ!」
「お、おう……良いけど。ペンある?」
「あるけど……」
突然のミーハーと化した少女に、俺は困惑を隠せないまま素直にペンを渡すけれど、なんか納得がいかない。
え、何? 勝くんて現役女子中学生にここまでキャーキャー言われるん?
しかも若干、手慣れてるじゃないか勝くん。サインがこなれてるぞ勝くん。ボールにサイン書いてる野球選手か、勝くん。
いやまあ、日夜、妖魔怪異から人々を護る国家組織が誇る最強の戦士らしいし。
たしかにたまに、テレビで活躍とか映ってるし。
そう考えると人気があっても当たり前だな……俺も後でサインもらお。
「こほん。さておき今度は勝くんへ。彼女は」
「あっ! そうだ初めまして、魔法少女『シクスス・ワイルド』こと京子です! 幻魔の兄さんにはいつも、お世話になってます!」
「まあ、そういうこと。例によって千早ちゃん経由でここに入り浸ってるよ。住まいが遠いから、そこまで頻繁じゃないけど」
「変身すればすぐだよ、幻魔の兄さん」
ただの移動にわざわざ魔法少女になるのか……
それはさておき、まさしく京子ちゃんは六代目魔法少女『シクスス・ワイルド』だ。
元々は緑深い山郷で生まれ育った、野生児さながらの身体能力を持つ、日焼けした肌に黒い短髪が陸上選手めいた姿の、中学三年生の女の子である。
性格はとにかく陽気で喜怒哀楽の感情表現が激しい。
総じて、魔法少女の中でも特に元気一杯な子だろう。
勝くんが、ふむと何かを思い出すように呟く。
「『シクスス・ワイルド』……六番目か。たしか資料では『セカンド・パンチ』並のパワーで、他に類を見ないラフファイターと聞くが」
「うひゃあぁっ、そんなこと資料で!? は、恥ずかしいぃ」
「いやまあ、そりゃ魔法少女ったら謎の退魔師集団だしなぁ。どこかしこでも調べるさ……まさかそのうちの一人に今日、会うとは思っちゃいなかったが」
苦笑いを浮かべる勝くん。
何となく、『ここには色んな奴が来るなあ』と考えている気がする。
君もその一人なんだよ。
(^q^)<日焼け野性的女子すき