退魔世界の一般人   作:てんたくろー

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柊幻魔・11

 これは、俺としてはいまいちピンと来ない話の一つなんだが。

 千早ちゃんをはじめとする魔法少女にしろ、勝くんこと『ギア・ダイナミック』にしろ、退魔界隈をも超えて一般社会にも人気沸騰中なのだそうだ。

 

 まあ、基本的にテレビを見ない俺でも時折、賑やかしに付けたニュースで『ギア・ダイナミック』を見かける。

 ネットのSNSなんか眺めていると、魔法少女の誰それが現れただのと投稿があり、あまつさえトレンドに乗るのも何回か見た。

 匿名掲示板だとそれぞれの魔法少女のファンやアンチがスレッドを立てて、まるでアイドル合戦やっているような有り様なのは、一度千早ちゃんに面白半分で紹介されたことだってある。

 

 まあ、つまり。

 そういう、現代退魔社会の中でも高い人気を誇る有名人さんたちが、何を思ってかこんな安アパート暮らしの、退魔とは別に関係ない人間の家に入り浸るのか。

 それを思うと縁とはつくづく、おかしなものだと思い知る今日この頃なわけ。

 

「いやはや千早嬢にはもったいない後輩だなァ。あいつ、先輩風びゅんびゅん吹かせてるんじゃないか?」

「うぇ!? い、いえいえそんなことないですし! 千早先輩は魔法少女全員にとっての大先輩ですからぁ!」

「動揺してるなあ……」

「千早ちゃん、ちょくちょく圧のあるタイプの先輩になるからねえ」

 

 ちなみに俺の見たところ、千早ちゃんはもちろん美琴ちゃん、楓夏ちゃんで一まとまり。それより若い年代の子たちとでもう一まとまりと若干、グループが分かれている感じがしている。

 まあ、一番年上の千早ちゃんと一番年下の日葵ちゃんとで7年、歳が離れているんだ。

 ジェネレーションギャップもあるかも知れないし、そうした区切りというのも仕方がない気がする。

 

 さておき、そんな魔法少女年長組の中にあっても、初代である千早ちゃんの畏怖されようは結構なものだ。

 別に、怖かったり厳しかったりするわけじゃない。むしろ美琴ちゃんの方がどちらかと言えば、スパルタ気味な傾向はある。

 それにしたって本当の体育会系から見るときっと、甘々なんだろうし。

 

 千早ちゃんはむしろ逆で、相当後輩たちを高く評価している。

 本人たちには面と向かって言わないだけだ。何でも恥ずかしいからだそうだが……

 そんなだからどこか近付き難いのだとか、後輩の子たちから俺が節々で聞かされることになるんじゃないかな。

 

「自分たちの始まり、大先輩。歳も離れていて大人だし、畏れ多くて中々お近付きになれそうにない。だっけ」

「……千早嬢、ずいぶん偉くなったもんなんだな」

「う、ううう!? 幻魔の兄さん、それ内緒だよぉ!」

 

 ぽかぽかと柔らかく叩いてくる可愛らしい少女の、頬は赤い。

 何を隠そう今のはいつぞやか、京子ちゃん本人から熱弁された、魔法少女『ファースト・キック』の武勇伝と、そんな彼女の後輩として生きていかなければならないという、誇りと裏腹のプレッシャーについての一部分だったりする。

 もっと言えば似たようなことは他の魔法少女たちからも聞かされていて、もう耳にタコができそうなくらいだ。

 

 要するに、雲の上の存在として見られているわけだな、千早ちゃん。

 割合的には美琴ちゃんと楓夏ちゃんが大体、後輩たちの相手をしているもんだから、必然的に接する機会も少なくなるし……そんなだから余計に、言ってしまえば神格化されがちなわけだ。

 

 そんな経緯を勝くんに説明したところ、彼は基本、デリカシーがない人だから、

 

「面倒だなァ。互いに腹を割って話せば良いんじゃないのか? 千早嬢、連れてこようか今から?」

 

 なんてことを言う。

 いかにも勝くんらしい、海辺で殴り合えば友情が芽生える考え方の発言なんだが、誰彼構わずそれが通るとも限らない。

 そこは彼も分かっていての発言だろうから、俺も分かった上で、あえて京子ちゃんにも聞かせるように返した。

 

「無理に割って入ってもろくなことにはならないと思うよ、勝くん」

「だったら幻魔くんが連れてこいよ。嬢ちゃんなら幻魔くんの一声どころか、電話1コールだけでも次の瞬間、すっ飛んで来るぜェ」

「強引なのは話をややこしくするだけだってば。こういうのはね、結局当人らでちょっとずつ歩み寄るのが一番なの」

 

 俺の言葉に、勝くんはふむと、そんなもんかと頷いて一口、持参していたビールを飲んでいた。

 さすがに長い付き合いだ。

 うまいこと、話の落とし所を作ってくれた。

 

「……ちょっとずつ、歩み寄る」

 

 そして、京子ちゃん。

 俺と勝くんのやり取りを、自分なりに受け止めて咀嚼しようとしてくれている。健気で、聡明な子だ。

 心酔することは必ずしも、その対象を理解することに繋がるわけではないのだと──彼女ならば遠からず、気付くだろう。

 

 あとは千早ちゃんにも少しばかり、助言させてもらおうかな。

 大切に思うなら、それならそうときちんと伝えた方が良いと思うよ、と。

 俺や勝くんだって偉そうに言えたもんじゃないけれど、それでも魔法少女の皆よりは少しだけ長生きだ。

 何かの参考程度にでもしてもらえれば、嬉しいんだけれど。

 

 ──ガチャ、と。

 玄関のドアが開く音がしたのは、そんなタイミングだった。

 

 勝手知ったる感じの入り方だ、白昼堂々の強盗でなければ、十中八九知り合い友人の類だろう。

 また誰かやって来たかな? どこの誰かな?

 と、俺も勝くんも京子ちゃんも興味津々とその人物が、居間まで来るのを待っていると。

 

「やあ幻さん……と、十名山に京子くんもいたか。そら、お土産だ」

「不覚……被捕縛……」

「千早先輩!?」

「土産ェ!?」

「誰ェ!?」

 

 千早ちゃんがやって来て、片手で首根っこを掴んで引きずってきた、中性的な美少年をこちらへと放り投げたのであった。




(^∇^)ノ♪<そわそわしながら兄との再会を待ちかねてたら化物に捕まって土産物扱いされるブラコン男の娘すき
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