退魔世界の一般人   作:てんたくろー

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京子視点


京子/魔法少女シクスス・ワイルドⅠ

 むせび泣く弟さんを、抱きしめてあやす幻魔の兄さん。

 柊家の次期当主らしいけれど、その姿はどう見ても可憐な女の子で、しかも頭まで撫でてもらっているものだから。

 良いなあ弟さん、なんてあたしは思っちゃったりするのです。

 

「しかし珍しい組み合わせだな、十名山に京子くんとは」

「今日が初めてだよ。まさか嬢ちゃんの後輩とは、驚いたぜェ」

「あ、あたしも驚きましたあー! まさかテレビによく出る有名人と、幻魔の兄さんが知り合いだなんて!」

 

 魔法少女『シクスス・ワイルド』ことあたしは、大先輩である『ファースト・キック』、千早先輩からの問に答えつつ、十名山さんを見た。

 とても大きな人で、寝そべるとソファを大きくはみ出しちゃってる。

 特別退魔警察機構のエース『ギア・ダイナミック』。

 今や退魔界隈のトップ層の一人で千早先輩とも肩を並べて戦ったことも数知れない、これまた雲の上の人。

 幻魔の兄さん、相変わらず意味分かんない人脈してるよお……

 

 千早先輩が寝たままの十名山さんを軽く蹴って、デカブツどけ、せめて座れ私が立ちっぱなしだろ。

 なんて無理矢理座らせて、その隣に腰掛けた。

 渋々応じた十名山さんが、口を尖らせて言う。

 

「ったく、相変わらず無茶だよな嬢ちゃんはよ。後輩が6人もできりゃあ普通、ちっとは落ち着くもんだが」

「落ち着いてるだろ? それに今回、言われる程の無茶をした覚えもない」

「名家の御曹司叩きのめしてとっ捕まえといて、よく言うぜこいつ……」

 

 あはは……どうしようか、こればかりは十名山さんの方が正しいことを言っているように思えてしまう。

 いきなり現れるのはともかくとして、土産に柊家の次期当主を持ってくるなんて想定外にも程がある。

 というか、柊家や六門道家を恐れていないのかな千早先輩。

 魔法少女としてあたしだって、あの人たち相手には一歩も引かない自信はあるけれど。

 政治というか、社会的に敵に回すとまずい気がしてそこは、どうにも二の足を踏んでしまいそうなものなんだけれど。

 

 そんなあたしの疑問に、千早先輩は不敵かつ強気な笑みで答えてくれた。

 

「柊にしろ六門道にしろ、以前に叩きのめしたことがあるからね。今さら関係悪化なんてしようがない。だってすでに最悪なんだから」

「えぇ!? い、一体何があったんです!?」

「魔法少女を自分たちの戦力に組み込もうとしやがったんだよ。あいつら」

「強権振るって十名山さえも、だろ? それで怒って私と美琴、十名山の三人で一暴れしてやったんだ。楓夏が魔法少女になる直前だったから、もうかれこれ6年は前になるのかな」

 

 知らなかった。

 というか、何気にやっぱりそういうこと、過去にあったんだ。

 考えてみればもちろん分かる話で、今や独立した、少数精鋭集団みたいに扱われるあたしたちだけれど、千早先輩や美琴先輩がメインだった頃は当然、色んな所から目を付けられていたはずなんだ。

 そしてそれが退魔の名門、柊や六門道であってもおかしくはない話だよね。

 

 とはいえ、柊や六門道も無謀なことをするなあって思う。

 初代にして最高の魔法少女『ファースト・キック』に、直系の弟子とも言える『セカンド・パンチ』。

 加えて特退警が国力の粋を結集して製作したとされる対妖魔特別兵装『ギア・ダイナミック』を相手にするとか。

 私があの人たちの立場なら即座に夜逃げしてるよ……

 

「え。そんなことあったん?」

「肯定。柊、六門道、敗北。悪夢」

「本当にあったんだ。しかも悪夢って……ていうか知らなかったの、幻魔の兄さん?」

 

 呑気に言う幻魔の兄さん。

 いやいや一応立場……というには繊細な話だけど、兄さんは知っといた方が良いんじゃなかったのかな?

 思わず千早先輩を見る。

 肩をすくめて、彼女は言った。

 

「あんな不愉快な連中の話なんて幻さんは知らなくて良いよ」

「ましてや界隈の内輪揉めみたいな話だしなァ。今もって世間様にゃ知られてねえ、いわゆるスキャンダルってやつだな、これは」

「あわ、あわわ。とんでもない秘密を知っちゃった……!?」

「何言ってんだか『シクスス・ワイルド』が」

「君がメインで相手してた連中だって、人間社会で結構、幅を利かせていたワルどもだったじゃないか」

「それはそうかもですけど……」

 

 怖いものは怖いよお。

 千早先輩はおろか十名山さんまでことを言うものだから、すっかりネガティブなあたし。

 都会ってやっぱり恐ろしいところだなあ。

 幻魔の兄さんの家くらいだよ、安心って言い切れるのは。

 

 それにそもそも、あたしの場合とは違うもん。

 だって、

 

「奴らはたしかに表向き大企業でしたし、世間的にも凶悪な力を持ってましたけど……どのみち、最終的には関係者全員力づくで叩き潰すんですから怖くもなんともないじゃないですか」

「……うん?」

「何もできなくしちゃえば安心ですけど。別に大した悪さもしてない柊や六門道はさすがに潰せないですし、そうなるとこっちに打つ手ないですもん。実力行使なんて、やっぱりあたしには無理ですよおー」

「えぇ……?」

 

 かつてあたしが相手をしていた妖魔組織と柊、六門道は違うよって話をしていただけなのに、十名山さんや幻魔の兄さんの顔つきが怪訝なものに変わっていく。

 あれ? 何かちょっと、怯えられてる?

 なんで?

 

「前から思ってたけど君、私らの中で一番過激派だよね? 下手に隙を伺ってる分、余計にたち悪くない?」

「えっ……!?」

「無垢にショック受けてる風だけど、発言の怖さは取り返せないと思うよ京子ちゃん」

「恐怖……『シクスス・ワイルド』、怪物……!」

「ええええ!? 嘘おっ!?」

 

 この流れであたしが引かれちゃうのお!?

 引き攣った顔の千早先輩と、ドン引きしている十名山さん、幻魔の兄さんと。

 恐怖に慄きまた、兄さんにしがみついている次期当主さんの姿が、あたしには過去のどんな敵よりショッキングな姿だった。




(^∇^)ノ♪<基本いい子だけどナチュラルに世間体的にまずいかまずくないかを判断してから相手を何もできなくなるまで叩き潰しにかかる思想の女の子すき
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