退魔世界の一般人   作:てんたくろー

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三章 柊幻魔と契約者
柊幻魔・13


「ってなわけで幻さん見てよ。世にも珍しい、人に扮したトカゲを捕まえてきたよ」

「おう、あんたが当代契約者、柊幻魔ってかい! 俺ァ超越存在ファフニール、気軽にファフとでも呼んでくれや! よろしくな!」

「いやいやいやいや待って待ってちょっと待って」

 

 千早ちゃんと勝くんが、天羅くんを伴って帰っていって後、京子ちゃんの作ってくれたカレーを美味しく頂いた日から二日経った、夕方の話。

 バイトも終わって家に着いて一段落、珍しく誰も来てないしさあ何をしようかと少しばかり、ゆっくりしていた頃合いだ。

 急に千早ちゃんと勝くんがやってきて、何やら厳しいスーツのおじさんを紹介してきた。

 超越存在っぽいのは、何となく青華ちゃんと似通う雰囲気からして分かるのだが、どうしていきなりフレンドリーなのか。

 

「そりゃ、混乱するわなァ。実はな、幻魔くん──」

 

 困惑しきりな俺を見かねて、勝くんが説明してくれた。

 二日前、天羅くんを連れ立っての帰路の途中、このファフニール……ファフ? さんが襲ってきたらしい。

 何でも超越存在として、千早ちゃんや勝くんの強さに興味を持っての、力試しを強いてきたとのことだ。

 

 この時点で既に付いていけないくらい、戦闘民族濃度が高い話なのだが。

 仕掛けられた二人も即座にそれに乗っかったというのだからもう、言葉もない。

 

「今後、幻さん目当てに色んな超越存在がやって来るかもしれないだろ? だからそれなりの物差しとして、サンプルとしてこのトカゲの力を測りたかったんだよ」

「理屈は分かるけども……ていうか勝くん、契約者の話、知ってたんだ?」

「千早嬢からな。特退警全体で把握してるから、当然国にまで話、行ってるぞ」

「大げさな話になってきたなあ」

 

 高々フリーター一人、安アパートの一部屋程度の規模の話だろうに。

 お偉い方々も実態を知れば肩の力抜けるんじゃないかな? 泰山鳴動して鼠一匹、なんてことになりそうだ。

 

 それはまあ、さておき。というかもう、どうにでもしておいてくれとしか言いようがない。

 差し当たっての話は今、目の前にいるファフさんだ。

 続きを促す。

 あっさりと、千早ちゃんは次のように言ってのけた。

 

「そんなわけで軽く戦ってみてね。思いの外、さっくり倒せちゃったから捕まえて持ってきてみた」

「いやあ契約者よお、お前とんでもねえの取り巻かせてんのな。俺様とてちったあ名も腕も知れた悪竜様だってのによ。ものの数分でボッコボコにされちまったんだから、笑うしかねえやな、ウハハハハ!!」

「つってもファフニールが弱かったわけじゃねえのは間違いないがな。少なくとも天羅くらいなら絶望するしかないくらいの強さはあったぜ、さすがにな」

「天羅くん、柊最強とか言ってなかったっけ……」

 

 変な見栄を張る子じゃないし、本当に天羅くんが柊家の最強の退魔師なんだろう。

 つまりファフさんは柊家や、あるいは六門道家が絶望するレベルの存在だと。

 ひいてはそんな相手を、この二人、魔法少女『ファースト・キック』と特退警『ギア・ダイナミック』は二人がかりとはいえ、数分足らずで鎮圧してみせたというのも、まあ本当の話と思う。

 

 何ともはや。

 客観的な話、界隈のパワーバランスとやらはこれ、グッチャグッチャなんだろうなきっと。

 そのへんは基本、俺には関係のない話だけれど。

 いろんな組織の上の方の人たち、大変なんだろうなあって漠然と感じる今日この頃だ。

 

「そんで特退警で身柄を預かり、事情を聴いてみてな。案外話も意気投合したし、名前ほど悪さもしなさそうだから、ひとまず俺預かりの案件として、ここまで運んできたってわけ」

「人の世に迷惑かける気なんざこっちもひとっつもねえからよお。契約者に興味があったから一目見てえってのと、上手い酒が飲めりゃそれだけでいいやな、おう」

「ファフさんがこれまで何やってきたかってのはいまいち知らんけど。こんな男で良ければ好きに見てってください。あと酒なら買ってきてね、家にはないよ」

「何ぃ!?」

 

 大層驚くファフさんだけど、そりゃそうでしょうとしか言いようがない。

 何で? と、純粋無垢な少年が初めて手品を見た時のような驚愕でもって見てくる。

 苦笑いと共に、勝くんが説明してくれた。

 

「ここ、未成年も入り浸るからな。飲みたいやつは飲める分だけ、自分で買い込んでから来るのが数少ないルールの一つってやつだ」

「ガキは飲めないってやつか。まあ、そんなら従うけどよお」

「酒なら後で買いに行くぞ。どうせ今日は夕飯はこっちで食うんだ、成人しかいないわけだし、酒盛りだってできるだろ」

「時間が時間だからないとは思うけど、何も知らずに後から子どもが来るかも。だからジュースとかも含めて買ってきておいてもらえると良いかな。酒以外なら家でも預かるし」

「おう、分かったぜ! 当世の飯は何でも美味いからなあ!」

 

 俺からの言葉に、ファフさんは素直に頷いてくれた。

 良いね。よくうちに来る、他の酒飲みたちよりよほど理解がある。

 これなら良い友人になれそうだ。

 

「この近くにスーパーあるし、後で行くかな」

「なら私が幻さんとともに留守を与ろう。酒はワインを買ってきてくれよ。最近、ワインに凝っていてね」

「ははははっ! こないだ成人したばかりの子どもがワインに凝るとはまた、背伸びしてんなァ」

「うっさいよでくの坊、総身に知恵が回りかねか?」

 

 古い言い回しするなあ、千早ちゃん。

 ともあれそんなわけで、今晩は酒盛りに決まったのだ。




(^∇^)ノ♪<派閥や立場を超えた溜り場すき
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