退魔世界の一般人   作:てんたくろー

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柊幻魔・22

 飲みすぎたぁ……頭がガンガン痛む。

 しかも寝過ぎ。一年以上は寝てた気がする。なんだ?

 

 勝手知ったる俺の部屋、昨日はそうだ、清吉爺としこたま、深夜まで飲んでたんだ。

 ふとテーブルの向かいを見ると、清吉爺が大の字になって寝ていた。顔真っ赤で酒の匂いすごい。これ、ついさっきまで飲んでたな?

 

 しかしまあ子どもの姿で酒瓶転がして寝てるのは、控えめに言って犯罪的だ。もしここに勝くんとか来たら俺が逮捕されそう。

 まして清吉爺、見た目だけならすごい美少年だもんな。中身がとにかく好色というか、助平なのが惜しいくらいだ。とはいえ、本気で女の子にあれこれと無体を強いる真似に及んだって話は聞かないし、もしも聞いたとしても信じられない程度にはこの人を信頼しているけども。

 

「くかー、すぴー、ぴよぴよー……」

「ひよこかな」

 

 よくわからない寝言、寝言? を言いながらも気持ちよさそうに眠る清吉爺はさておき、窓から外を見る。夜明けらしくうっすらと日が空を照らして、薄暗がりが徐々に光を帯びてくるのがとても綺麗だ。

 今日も、世の中いろいろあるだろうけど美しい。それが何よりのことに思えて、俺はなんだか気分がよかった。

 

 ──と、そんな時。

 不意にインターホンが鳴って、俺はえ? と玄関を振り返った。

 

「誰だろう? 何かな、こんな時間に」

 

 来客にしたってずいぶん早いなと、訝しみながら玄関へ向かう。深夜とか早朝にこうやって誰かが訪ねてくるってのは、ないことはないけど珍しいのはたしかだ。

 まさか強盗とかじゃないよなあ、怖いなあ。などと警戒して、ドアの覗き窓からこっそり外を見てみる。これでドアップで誰かの目とか映ってたら俺はもう、清吉爺を叩き起こして彼に対応を任せる所存だよ。

 

「…………うん!? 日葵ちゃん!?」

「わひゃん!?」

 

 覗き窓から見たところ、バッチリ面識のある女の子がいて俺は慌ててドアを開けた。珍しい顔ではないけど、とんでもない時間に訪ねてきたからつい、焦ってしまったのだ。

 急に開いたドアに、びっくりして飛び跳ねる女の子。この近くの中学校の制服を来た、桃色の髪がとても愛らしい美少女だ。

 唖然として、俺は少女に話しかけた。

 

「ひ、日葵ちゃん……? なんでこんな時間に」

「え、えへへ……来ちゃいました、幻魔さん。ごめんなさいこんな、朝早くから」

 

 申しわけなさそうにはにかむ少女、日葵ちゃん。

 千早ちゃんを始めとする魔法少女達の中でも最年少にして、最新である『セブンス・ライトニング』その人がまさかのお出ましだった。

 ……いや、何してるのさ中学生。思わず苦言を呈してしまう。

 

「来るのは構わないけど、いくらなんでも早すぎるよ。魔法少女たって中学生の日葵ちゃんが、うろついていい時間帯じゃないでしょうに」

「えへへ、ごめんなさい。ちょっと夜通し、妖怪をやっつけてたらこんな時間になっちゃいまして。たまたま幻魔さんのお家の近くでしたから、寄らせてもらおっかなーって」

「あ、そうなの……? いくら退魔活動だからって未成年が夜、うろつくなんて良かったっけ……」

「あんまり良くはないんですけど、魔法少女なんでナイショってことで! ね?」

 

 かわいく笑って首を傾げるこの子は、見た目の愛らしさとは裏腹に結構、横紙破りの常習犯だったりするんだよね。

 先輩魔法少女『ファースト・キック』こと千早ちゃんと同じタイプで、目的のためなら手段を選ばないところがあるのだ。

 

 退魔師とはいえ未成年ともなれば、普通は深夜帯での活動についてはご法度なんだけど……いかんせん魔法少女という存在自体は退魔界隈の中でもグレーというか、退魔師という範疇にくくれるかどうか微妙らしいんだよね。

 千早ちゃんも美琴ちゃんも楓夏ちゃんも、以降に続く後輩魔法少女達もみんな、自分達がメインで戦っていた時にはそうしたグレーな身分であることを利用してよくよく深夜なんかでもあちこちうろついてたとは聞いている。

 

 だから俺としても、今さらという感じはあるんだけれど。さすがに現在進行系でやらかしているのを目の当たりにして一言も注意しないってわけにもいかない。

 あまりガミガミとは言わないけれど、と前置きして、俺は努めて優しく言った。

 

「魔法少女である以前に、日葵ちゃんは女の子だし子供だし人間なんだ。深夜に一人で外出するのは危ないし、みんなを心配させちゃうってことはわかって欲しい」

「う……はい、ごめんなさい」

「ん、よろしい」

 

 日葵ちゃんも普段はしっかりした子で、人の言うこともしっかりと咀嚼して自分の意志で応えてくれる賢明な子だ。

 今回も彼女なりに反省して、頷いてくれたように俺には思えた。だったら、こちらからはもう言うことはない。

 

「ま、来ちゃったものは仕方ないし上がりなよ。清吉爺と呑んでたからその、ちょっとお酒臭いかもだけど」

「ありがとうございます! 清吉お爺さんが来てるんですね」

「酔い潰れて寝てるけどね。さ、どうぞ」

 

 清吉爺も日葵ちゃんとは知り合いだ。久々の再会だろうし、起きたらビックリしつつも喜ぶかもね。

 そう思いながらも、俺は日葵ちゃんを家へと招き入れた。




(⁠^⁠∇⁠^⁠)⁠ノ⁠♪<久しぶりに更新ー
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