退魔世界の一般人   作:てんたくろー

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柊幻魔・4

 今日はバイトも休日、しかも土曜日のためか朝から千早ちゃんと、もう一人魔法少女の子がやって来ている。

 何でも先日やって来た青華ちゃんが、いつまた来るかもしれないから俺の護衛のために来てくれているらしい。

 曰く、俺一人だと押しきられかねないからとか。

 よくご存じだこと、まったく。

 

 朝食のベーコンエッグにサラダ、味噌汁に白米。

 見事なもんだ……千早ちゃん。

 俺の朝食は誰かしら、やって来る友人知人らが作ることがほとんどだ。魔法少女だけではなく、頻繁にこの家には客が訪れる。

 

「契約者、ですか。聞いたこともない話ですね……ましてや幻魔さんがそんな珍妙キテレツな代物だなんて」

「やっぱりそう思うかい、楓夏」

「珍妙キテレツ……俺は至って普通の一般人なんだけど」

 

 美味しく朝食をいただいている俺と、例によってソファに座る千早ちゃんと。

 そして俺の隣にこれまた椅子を一つ、用意して座るもう一人の女の子が喋っている。

 クールな印象を受ける、つり目がちで若干、ウェーブがかっている茶髪の子だ。

 

 千早ちゃんにも負けず劣らず美人な彼女の名は楓夏ちゃん。

 三代目の魔法少女『サード・タイフーン』であり、初代魔法少女『ファースト・キック』千早ちゃんとはまさしく、先輩後輩の関係にある。

 

 俺からすれば何で? という感じではあるのだが、どうも七人の魔法少女たちは年功序列の縦社会らしき関係性にあるみたいだ。

 今だって悠然と構える自然体の千早ちゃんに対して、楓夏ちゃんは少しばかり居住まいを正している。

 これがたとえば楓夏ちゃんと更に後輩の子だったとしたら、そっくりそのまま立ち位置がスライドしているのだろう。

 何ともはや、体育会系なことである。

 

 そんな風に若干、先輩への畏敬を覗かせる楓夏ちゃんは肩を竦めて、千早ちゃんへと続けて言った。

 

「正直、千早先輩と幻魔さんお二人から直接聞いていなければ、ホラ話にしか捉えてなかったでしょうね」

「違いない。私にしてみたって、実際にあの青華とやらを目の当たりにしなかったらそう思っていたよ」

「青華ちゃん、そんなにすごいの? たしかにこう、人間じゃなさはあったけど」

「すごいさ。こないだも言ったけど私でもどうにかやりあえるかも、って感じだからね。一人じゃ手に余りかねないってのは恐ろしい話だよ」

 

 ものすごく青華ちゃんを警戒している千早ちゃんが、淡々と超越存在とやらの危険性を語る。

 

 うーむ。

 

 いやたしかに彼女は恐らく怪異の類だろう。超越存在、だったか? と自称する通り、超自然的な何かしらであることは間違いない。

 さらには千早ちゃん自身、自分に匹敵するとまで言っている。

 俺が知る限りでも相当強い部類に入るだろう魔法少女の一人である『ファースト・キック』がそうまで恐れるような彼女は、そりゃあ強いに決まっている。

 警戒するのも当然だ。

 

 けれど、どうにもなあ。

 あのひどく申し訳なさげに涙を流す、彼女はどうあれ善人なのじゃないかと思ってしまえるのだ。

 だったら恐れる必要もないんじゃないか、とも。

 

 だって千早ちゃんや楓夏ちゃんたち魔法少女は、紛れもなく正義の味方だ。

 善人の代表みたいな子たちだ。

 であるならば手に手をとって、和解の道もあるんじゃなかろうか。

 

 そんな、自分でも甘いこと言ってる自覚はある素人意見に対して。

 千早ちゃんはさも当然と言わんばかりに否やを返した。

 

「買い被ってくれるのは嬉しいけれどね幻さん。少なくとも私たち魔法少女は、とりあえず善人っぽかったら誰彼構わず手を伸ばすようなお人好し集団じゃないよ」

「そうですね。意図が読めない実力者は、こちらとしては警戒します。それにそもそも私たちは、正義のために戦うわけでもありませんし」

 

 楓夏ちゃんが憂いげに、けれどまっすぐこっちを見る。

 正義のためではない。彼女だからこそ言える、重みのある言葉だ。

 

 彼女は、楓夏ちゃんは……魔法少女として契約を結ばされる際、最愛の姉を妖魔に殺されている。

 姉妹揃って洗脳されかけていた折、妹を守ろうとしたのだ。

 それゆえ彼女は当初、千早ちゃんや美琴ちゃん──二代目魔法少女『セカンド・パンチ』の制止を振り切って無茶な復讐行動に出ていた。

 

 結局、最終的にはどうしたことか俺がしばらく面倒を見ることになり、何とか彼女の中で折り合いがつけられるようになるまで見守っていたのだ。

 懐かしい話だ。

 楓夏ちゃんも思い返していたのか、郷愁と惜別と、そして感謝の眼差しで告げてくる。

 

「……私たちは、私たちのような者をもう二度と出さないように。犠牲者をなくし、平和な世界を作るために戦っているんですよ。幻魔さんのような方々が日常を謳歌できる、そんな平和のために」

「そう、か。そうだね……だから青華ちゃんみたいな得体の知れない、強力な存在には目を光らせる必要がある、と」

「ええ。ましてや今回は幻魔さんが主として巻き込まれているんですから。私たち魔法少女の総力を挙げてでも迎え撃ちますよ」

 

 何とも頼もしいやら、物騒やら。

 信念の光が宿る鋭い眼光で闘志を燃やす楓夏ちゃんに、ありがたいやら反応に困るやら、俺は苦笑いを浮かべるのみであった。




(^q^)<どこか陰のある、実は情熱的なクール系女子すき
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