退魔世界の一般人   作:てんたくろー

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柊幻魔・5

 朝食を食べ終えた後、俺と千早ちゃんと楓夏ちゃんは三人連れ立って、ちょっと周辺を散歩しに出かけた。

 休日でも、いや休日だからこそ普段は出向かないところに行ってみたいのだ。

 別に俺だけで良かったし、勝手知ったる女子二人に留守を任せるのもやぶさかではなかったのだがそれは断られた。

 まあ昨日の今日だ、そりゃそうか。

 

「んー、いい天気だね」

「ですね。それで幻魔さん、今日はどこか行くところを決めてるんですか?」

「いやあ、行き当たりばったり」

 

 日の光を眩しそうにして背筋を伸ばす千早ちゃん。

 そんな彼女の隣で楓夏ちゃんが尋ねてくるのを、俺はいつも通りの答えで返す。

 返された楓夏ちゃんも呆れるでもなく、分かりましたとだけ微笑んでいる。

 

 こういう、何となくの散策には大体いつも誰かしらが付いてくる。

 彼女たち魔法少女に始まり、バイト先の友だちとか、はたまたひょんなことから知り合った退魔関係の知り合いだとか。

 大概誰かしら一人二人は示し合わせたかのように俺の家で毎日、だらだら過ごしているのだ。

 そこの家主たる俺が散歩するとなると、付いてくるのももはや恒例のこととなっている。

 

 三人ぶらぶらと連れ歩く。

 俺の住むアパートは小川の近い場所にあり、その川を沿ってなだらかな坂を下って行くと、やがては大きな湖に辿り着く。

 海かと見紛う程の広さで、湖畔のベンチに座って波打ち際を眺めているだけでも時間を忘れるような場所ではあるのだが──今日のところは気が向かない。

 

 湖とは逆の方に歩く。

 そう時間のたたない内に国道に出ると、スーパーやら飯屋やらが見えてくる。

 国道沿いに電車も走っているし、最寄の駅まで行けばすっかり繁華街だ。

 そうだな、今日はその辺をうろつこうか?

 

「──ってことでどうかな、二人とも」

「幻さんが良いならそれで良いよ」

「個人的にも、しばらくあちらの方に寄ってなかったですから。好都合と言えば好都合です」

「オッケー。それじゃあ行こうか」

 

 そうして予定が、ある程度の方向性が決まった。

 と言っても基本は適当、雑談しつつ気が向けばふらふらするような散歩道だ。

 千早ちゃんにしろ楓夏ちゃんにしろ、話の種には困らない程度には人生経験が豊富だから、会話が途切れることもない。

 魔法少女としての戦いの経験が多分にふくまれていること──それが良いことか悪いことかはさておくとしても、だ。

 

「この間、日葵の特訓に付き合いましたが……あれは大したものですね。あの歳の頃、私はあそこまで戦えませんでしたよ」

「比較としては難しいと思うよ?  手探りだった私や美琴、楓夏に比べてあの子は参考になる先輩がたくさんいるわけだし。才能はもちろん、すごいけれどね」

 

 千早ちゃん、楓夏ちゃん共通の後輩。

 すなわち魔法少女七代目『セブンス・ライトニング』こと日葵ちゃんの話題で二人が盛り上がっている。

 日葵ちゃんは現状最新最後の魔法少女で、うちにもよく来る明朗快活な14歳の少女だ。

 素直で明るいもんだから、たまたま居合わせた魔法少女以外の俺の友人たちにもかなり受けが良い。

 いわゆるマスコット系の愛らしい子だな。

 

「かもしれませんね……ああ、そう言えばその日葵が今度、千早先輩に会いたいと言ってました。何でも勉強を教えてほしいとか」

「あ、出たね。魔法少女あるある『戦いばっかで勉強が疎かになる』。いやあ、過ちって繰り返しちゃうもんだねえ」

「その節はお二方にはご迷惑をお掛けしまして」

 

 苦笑いする楓夏ちゃん。

 魔法少女というのはとかく、成り行き上どうしても戦いがメインの生活スタイルになる、らしい。

 そのせいで表向きは普通の女学生である彼女らは、成績面での対応にこそ苦慮しているようだった。

 

 実際、今でもうちに来る魔法少女たちはある特定の時期になると教科書を持参してくる。

 テストの時期だろう、わざわざ俺のところにまで来て勉強するのだ。

 最近の子が何を考えているのか、俺にはよく分からない。

 

「よく言うよ優等生。むしろ私たちの場合は美琴だったろう、迷惑だったのは」

「あの人の進学のサポートは、半端な妖魔を相手にするよりキツかったですね……」

「高校進学の時点でこちらの心が折れかけていたのに、まさか大学受験にまで付き合わされるなんて思いもしなかった」

「……就職活動もよろしく! なんて言われた日には私、今度こそ千早先輩に全部投げますよ」

「私はあいつの親か何かかね」

 

 ぼやきにぼやく。

 そこまで言われるか、美琴ちゃん……

 まあたしかに数年前、ちょうど彼女が高校受験の時と大学受験の時、俺まで駆り出されたものなあ。

 

 二代目魔法少女『セカンド・パンチ』こと美琴ちゃん。

 竹を割ったようなさっぱりした性格なんだが反面、勉強の方がからっきしで、だのに天才肌の千早ちゃんを追って大学に行きたい、なんて言い出したものだからもう大騒ぎ。

 先人の千早ちゃんや後進の楓夏ちゃんはおろか、何故か俺まで彼女に勉強を教える羽目になったのだ。

 素直に塾でも何でも行きなさいと喉まででかかったのは、何も俺だけではなかったはずだ。

 

「幻さんも大変だったねえ、あの時は」

「頭が下がります、幻魔さん」

「いやいや二人に比べれば俺なんて。それに最終的には美琴ちゃん本人の努力だからさ。ははは……」

 

 乾いた笑みで当時を振り返り、当たり障りなく返す。

 そんな俺に二人も苦笑いを浮かべる、そんな散歩道だった。




(^q^)<シリアス漫画のキャラが平和な日常を過ごすスピンオフとかすき
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