東方香霖記   作:超絶暇人

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東方


プロローグ
始まり、ちょっと前の話


幻想郷…

 

 

幻想の者達が住まう世界、幻想となった者達が降り立つ世界…

 

 

 

外の世界にはもう存在しない、この幻想郷(せかい)では当たり前に存在してる…

 

妖怪…

 

鬼…

 

天狗…

 

神…

 

 

そして、外の世界にも今も存在しているであろう…

 

 

霊…

 

 

そして、人間。

 

他にも沢山の種族が幻想郷で暮らしているが、敢えてそこは言わないでおこう。

 

僕が面倒なのもあるが、これから始まる物語にその種族が出てくるからだ。

 

 

 

 

 

……それは、ある晴れた昼下がりの事…

 

 

 

 

 

僕はいつものように店で本を読んでいた。

 

僕の店は自宅 兼 道具屋、僕の好きな本はいつでも読める。

 

 

「今日も良い天気だ」

 

 

天気は良いが、あまり外に出るつもりは無い。

面倒なんだ。

 

出る時は大抵 買い物か無縁塚で道具を拾いに行くくらいだ。

 

いつも通りにこうして本を読んでいる事が僕にとって何よりの幸せだ。

 

 

……ところが、どうやら今日はそうはいかないらしい。

 

さっきから妙な胸騒ぎがする…

気になっておちおち本も読んでいられない…

 

僕は本を閉じ、仕方無く立ち上がって店を出た。

 

 

 

 

 

~ 香霖堂 外

 

 

 

つい3日前に外出した以来なのだが、久しぶりに外に出た感じがする。

 

運動も御無沙汰だ…それが原因だろうか。

いや…運動なんてもう何十年もやってない。そんなのが理由な筈は無い。

 

それより、胸騒ぎの元へ行かなければ…

 

 

僕は何も持たずにただ感じる胸騒ぎの元へ歩んだ。

 

 

 

 

 

~ 森

 

 

 

店を離れてから1分弱、胸騒ぎの原因はこのまま真っ直ぐ先にある。

 

しかし、この森は相変わらず異様な気配が漂うな。

嫌でも視線を感じる…

 

妖獣が彷徨いているのだろう、先ほどから殺気ばかり感じる。

それだけならまだ良い。実は幽霊も大量に居る。

 

妙な悪寒が身体を走る…

 

だが幽霊は僕に対しては特に影響を及ぼそうと言う気は無いようだ。

“昔”の経験がまさか此処で役に立つか…奇妙なモノだ。

 

その時、僕の目に入った光景…

 

 

長い金髪の幼い少女が大量の妖獣に囲まれていた。

 

「あの金髪、どっかで…」

 

その瞬間わかってしまった、大量の妖獣に囲まれている少女が“霧雨”さんのところの子である事が…

 

「魔理沙ッ…!」

 

僕は地面を強く踏み、走り出した。

 

 

 

金髪の少女は腰が抜けた様子、涙を流しながら抜けた腰を必死に上げて逃げようとしている。

だが腰が抜けてしまった以上、歩く事は疎か、立つ事すら出来ない。

 

僕は神速で駆ける。そして…

 

 

ベギィッ

 

 

妖獣の一体を右の拳で殴り飛ばした。

吹っ飛んだ妖獣は地面に激突し、抉りながら木々を何本も折っていく。

 

そして吹っ飛んだ一体の妖獣が木にぶつかり、静止した瞬間、他の妖獣の群れが僕の方を一斉に向いた。

 

「貴様ッ! 何者だッ!」

 

妖獣の一体が威嚇をするように僕に訊く。

 

「僕は通りすがりの半妖だ」

 

名はあまり明かさないでおこう、後々面倒な事になりそうだからね。

 

「半妖が一体何の用だ」

 

「その子なんだが、僕の知り合いの子でね。見逃してほしいんだが…」

 

僕がその言葉を言った直後、頭領らしき妖獣が群れの中から現れ、笑い出す。

 

「ンッフフフフフ…残念だがそれは聞けない、我々は人間を喰らわねば生きていけない。それは重々承知している筈であろう? 半妖よ」

 

「わかっている。だが、その子は僕の恩人の子だ。喰わせるワケにはいかない」

 

「そうか、ならば、お前も一緒に喰ってやろう」

 

頭領の妖獣がそう言うと、突然妖獣の群れが僕の周りを囲み始めた。

 

「行け…」

 

頭領の合図と共に一斉に妖獣の群れが僕に向かって襲い掛かる。

 

どうやら話は聞いてもらえないようだ…仕方無い。

 

僕は目を閉じて眼鏡を外し、懐にしまう。

 

 

そして、動く…

 

 

ズゴゴゴゴォッ

 

 

僕は近かった妖獣四体を刹那に殴り飛ばした。

 

殴り飛ばした妖獣は宙で暫らく舞い、地面に叩きつけられるように落ちた。

 

直後近づいて来た妖獣を右回転の勢いで左拳で殴り、後ろから近づいて来た妖獣を左に振り向きながら右拳で顎を打ち抜く。

 

そして次に来た二体の妖獣を右の横蹴り突きで払うように吹っ飛ばす。

 

と、下段から妖獣が低く攻めて来た。

それに対し僕もしゃがむように姿勢を低く執り素速く右に回転して右脚を伸ばし、足で妖獣を払って浮かす。

 

そこから軸の左足で立ち上がりながら回転の勢いを殺さずそのまま右の後ろ回し蹴りを妖獣にぶつけ、更にその状態から即座に右足を振り下ろして地面に強く叩きつける。

 

妖獣を叩きつけた地面は音を立てて大きく割れてへこむ。

 

すると妖獣の頭領が群れを止める。

 

「なかなかやるな半妖。これならどうだ?」

 

頭領が言い終わると妖獣の群れが突如形を作り、フォーメーションを執る。

 

何のつもりだ?

 

「見せてやれ、我々 “獣” の速さを!」

 

頭領の言葉の瞬間、一斉に飛び交う妖獣達。

 

動きはかなり速く、捉えるのは難しい。

 

と、飛び交う妖獣が一体こちらに向かって通り過ぎた瞬間、服の腹部辺りがいきなり切れた。

それからどんどんとこちらに向かって飛び交い、服の腕や襟、ズボンの腿、そして頬を切る。

 

何とかかわしてはいるが、少々厳しい。

 

「フフフ…どうだ、あまりの速さに反応できまい。このまま八つ裂きとなるがいい…」

 

そうか、妖獣とはつまり名や容姿の通り “獣”。

素速い身のこなしならかなりの実力だ。

 

その身のこなしで獲物を狩るのを得意とするワケだが…

 

 

この程度の速さ…鴉天狗にも及ばない。

 

 

僕は少しの間目を閉じた…攻撃はまだ来ない。

 

「そろそろトドメを刺してやれ…」

 

頭領の声が聞こえる…この後に来る攻撃を見極める…!

 

 

「やれ…」

 

 

………

 

…今だ

 

 

僕は目を開き、一気に集中力を高めて迫る妖獣全てを順に攻撃する。

 

直後、まるで止まっていた時が動き出すかのように僕が攻撃した妖獣が全て同時に吹っ飛ぶ。

そして吹っ飛んだ妖獣は木や地面に激突し、起きなくなった。

 

それを見ていた妖獣の頭領は目を見開いて驚いていた。

 

「クッ…貴様…一体何者だッ…この強さ、ただの半妖では無いな…」

 

ふむ、流石(さすが)と言うべきか、妖獣の頭領。

では、そろそろ名乗っても良い頃か…

 

「流石、妖獣の頭領か。長く生きてるみたいだな。僕の名は 森近 霖之助」

 

僕が名前を名乗った瞬間、頭領と後の残った妖獣の顔が変わった。

 

「も…森近 霖之助…! あの幻想郷最強の半妖人…! まさかそうなのか⁉」

 

「幻想郷最強は大袈裟だ、頭領」

 

「いや、噂には聞いていたが…予想以上だ。凄まじい…」

 

「だから大袈裟だと言ってるだろ。もう何十年も前の話だ、今はもうすっかり衰えてるさ」

 

僕が自分を下げてると妖獣の頭領はそれを無理矢理上げようと声を張る。

 

「いや! 私の目に狂いは無い、力は今も健在だ。先の無礼、申し訳無い…」

 

「あぁ…好きにしてくれ。僕はもう衰えて弱い。君達がどう言っても構わないさ」

 

「あなたに会えた事、誇りに思う。ではさらばだ」

 

そう言うと妖獣の頭領と残りの妖獣が直ぐにトップスピードに乗って走り去った。

 

全く、今じゃ幽香に勝てるかどうかも怪しいのに…

 

僕は懐にしまっていた眼鏡を取り出し、掛けてからヘタレこんでいる少女に近づいた。

 

「大丈夫かい? 魔理沙」

 

そう、もうわかってると思うが、少女の名前は霧雨 魔理沙(きりさめ まりさ)

 

この頃はまだ幼かった。

 

妖獣に襲われた理由は恐らく森の危険地帯に気付かず入ってしまったからだろう。

 

「怖かったろ? もう大丈夫だ」

 

僕はヘタレこんでいる魔理沙の目の前にしゃがみ、頭を撫でた。

 

すると安心したのか急に思い切り泣き出し、僕に強く抱き着き、離さなかった。

僕の胸の中でも魔理沙の泣き声が漏れて聞こえる。

 

よっぽど怖かったのだろう。

 

「よしよし。じゃあ一緒にお家に帰ろう」

 

僕は魔理沙を抱き上げながらそう言い、頭に優しく触れて歩き出した。

 

 

その後、僕は魔理沙を霧雨の家に帰し、挨拶もそこそこに店へ帰った。

 

 

 

 

 

 

 

続く




いかがでしたでしょうか?

感想を頂けると嬉しいです。


では…
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