東方香霖記   作:超絶暇人

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何十年も前…

それはまだ霊夢や魔理沙が生まれるずっと前…

博麗の巫女が異変を解決していた時代…

スペルカードが存在してなかったその時代に、たった一人の男が素手で異変を解決していた。


それは博麗の巫女ですら凌駕する程の力と実力の持ち主。

だが彼は表舞台を嫌った…「自分の居るべき世界じゃない」と…

故に彼は博麗の巫女が異変を解決する裏で別の異変を解決していた。


いつしか異変も収まって行き、時代は流れて行った…

そしてスペルカードルールが誕生した直後、また異変が起こるようになった。
その裏で別の異変を解決するのが彼の役目。

彼はまた異変に対し動きを見せるのだろうか…


紅魔郷篇
“英雄”の名、それは霖之助


 

 

 

 

ある日の朝…

 

 

いつも通りに目が覚めた僕は、眼鏡を掛けて布団から出る。

 

欠伸(あくび)をしながら窓に手を伸ばし、ゆっくり開ける。

 

 

だが、窓を開けた瞬間 周囲の空気が一気に反転し、僕の半開きの瞼が全開になる。

 

「何だこの紅い空気は…? 魔の力で溢れている…!」

 

僕の目には“紅い霧”で覆われた景色だけがあった。

 

何なんだコレは…一体何が起きている。

 

状況が把握しづらく、やや混乱してきた。が、僕はいつものように落ち着きを取り戻し、眼鏡の位置を片手で直す。

 

今時に至って非常に珍しい異変だ…“紅い霧”…不気味だ。しかも霧自体が魔力を帯びてる。普通の人間が吸い続ければ確実に身体に害が及ぶ…

 

どうやら、この霧を発生させた主の力もかなり強いようだ。霧から直接 僕の身体に伝わってくる。

 

誰が一体このような事を…

 

僕は深く考えた。が、直ぐやめた。何故なら…

 

「何を深く考えている霖之助…心配しなくても霊夢や魔理沙が居るじゃないか」

 

僕は自分に対してそう言い、両頬を叩いていつもの店の席に座った。

 

そして座るなり早速 本を取り出し、挟んだ栞の部分から読み始めた。

 

 

 

 

 

~ 30分後

 

 

 

暫らく本を読み耽っていた頃、ふと気が付く。

 

“紅い霧”が消えた?

 

本を読んでいた為 気が付かなかったが、肌に感じる魔力が消えていた。

 

どうやら霊夢達が解決してくれたみたいだ。

一息吐いて僕はまた本を読み出した。

 

 

ところが…

 

 

本を読んでる途中、魔力が薄れると同時に狂気が現れていた。

 

別の異変か…

しかもこの狂気…唯ならぬ力を持っている。先ほどの紅い霧など比べモノにならない程の力を…

 

僕は不吉な予感を無視出来ず、店を飛び出した。

 

 

 

 

 

~ 紅魔館

 

 

 

狂気の力を辿って来たら…まさか紅魔館(ここ)とは、驚いたモノだ。

紅魔館の人達は僕の店のお得意様だ。

 

だが、店に初めて彼女達が現れた時、妙なモノも感じていた。

 

あのお嬢様(レミリア)…彼女の周囲に僅かに漂っていた狂気…

アレは彼女のモノであり、彼女のモノでは無かった。

 

では一体?

 

あの狂気は感じるモノは僅かだったが、思い付く限りかなり恐ろしいモノだ。

 

止めなければ幻想郷が危うい…

 

 

僕は紅魔館の鉄門を蹴破り、急いで入り口の扉まで駆けた。

 

そして扉を蹴飛ばして開けた直後、目の前に紅魔館のメイド長、十六夜 咲夜(いざよい さくや)が立っていた。

 

少しだけ服が汚れていてボロボロだ。

 

「あっ、あなたは…」

 

彼女が僕に『何故 紅魔館に居るのか』訊こうとした為、僕は振り払うように館内の奥へ駆け抜けた。

 

「すまない、ワケは後で話す。今は見逃してくれ!」

 

横切る瞬間に彼女の耳元でそう言い、僕は館の最深部へ向かった…

 

 

 

 

 

~ 紅魔館内部

 

 

しかし、さっきから不思議だ。この館、異常なまでに広い…

 

まるで何かの力が働いてこの館内の空間を広げているかのようだ。

 

誰の力だ?

 

生憎、この空間を斬りたいが“草薙の剣”を持って来てない。

忘れ物には気をつけなければいけないな。

 

僕は仕方なくこのまま走り続けた。

 

 

と、その時、突然奥の方から途轍も無く禍々しい気が流れてきた。

 

この先に狂気の元凶が居るのか…

 

僕は更に走るスピードを上げた。

 

 

 

 

 

~ 紅魔館内部 地下階段

 

 

 

ここだ、ここから狂気が流れて来てる。

色も紅くドス黒い…

 

ここまで密度が高い狂気は初めてだ…

体に伝わる感覚全てが麻痺しそうだ。一体何がこんなにも狂気を強くしてしまったのだろうか?

 

他人の事情に首を突っ込むつもりは無いが、さすがにこればかりは黙っていられないな。

 

放って置けば確実に幻想郷の脅威になる。

 

僕は目の前の階段を下って行った。

 

 

 

 

 

~ 紅魔館最深部

 

 

 

さすがに発生源が近いだけある。狂気が隅々まで充満している。

これでは毒の霧と同じ効果を持つ上、例え吸わなくてもこの空間に居るだけで命の保障は無い…

 

僕はどうやら問題は無いらしい。先ほどから狂気を吸っているが、身体に害は全く無い。

 

だが万が一を考え、口元を塞ぎながら歩いている。

 

 

暫らく歩いていたら、目の前に鋼鉄製の巨大な扉が見えた。

明らかに“それらしき”モノだ。

 

と、巨大な扉に目が行ってたが、ふと全体を見ると、扉の隅に紫髪の少女がうつ伏せで倒れていた。

 

何…⁉

 

僕は急いで少女に駆け寄り、抱え起こした。

片手で少女の首辺りに触れる。

 

まずい…脈が僅かしか存在しない。

オマケに狂気が充満した空間に長く居た為か、拍動まで不安定だ…

 

それに彼女はパチュリー・ノーレッジ。僕の記憶が正しければ、彼女は喘息(ぜんそく)持ちだった筈。

 

このままでは本当に危ない、もし喘息が今 発症したなら、彼女の今の容態では死を意味する…

 

仕方が無い…一度戻るとしよう。まずはこの娘の命を助けるのが一番先決だ。

 

それに、扉の向こうは焦らなくても待ってくれるようだ。

たった今狂気が少し引いたからね。

 

 

 

 

 

~ 紅魔館 医務室

 

 

 

急いで階を上がり、誰か居ないか叫んだ。

 

するとメイド長の咲夜が現れたので、急いで医務室に運ぶよう頼み、今に至る。

 

 

「これで少しは問題無いでしょう」

 

咲夜はそう言いながらパチュリーの身体の上に布団を掛けた。

そして、こちらを振り向きながら彼女は訊いてきた。

 

「先ほどは訊けませんでしたが、あなたは何故紅魔館にやって来たのですか? 真っ先に妹様の居る地下へ…。あなたはただの古道具屋の店主さんでは無いのですか?」

 

さっき“後で話す”と言ったばかりだし、約束を果たすか。

 

「……僕は確かにしがない古道具屋の店主だ。が、そうであってそうでない。僕は昔、この幻想郷の異変を解決していたんだ」

 

そう言うと、咲夜は何も言わず黙って聞く体制になった。

 

「昔と言うのは、まだ霊夢や魔理沙が産まれる前の話だ。恐らく、君も産まれていない。僕はその頃、霊夢の先代の“博麗の巫女”と共に異変を解決していた。昔はよく魔界や地獄から異変が起こっていた。博麗の巫女が表の異変を解決し、僕は裏で別の異変を解決していた。正直表舞台は嫌いなんだ。今となっては異変は疎か、天変地異すら起こらなくなった。それの方が僕としては嬉しい。争いは好きじゃないからね」

 

「…では何故、今になってまた?」

 

訊かれて当たり前な事が来たか…

 

「ふぅ…何故なのかな。今はもう霊夢達が居るのに、身体が勝手にね…まだ、昔のクセがたまに出るし、恐らく幻想郷を守るべき者としての意志かもしれないね」

 

「意志…ですか」

 

「ああ。じゃあ、そろそろ行くよ。君の言う“妹様”を止めに、ね」

 

そう言って僕は医務室を出た。

 

 

 

 

 

~ 紅魔館最深部

 

 

 

さて、再び戻って来た…

 

僕は君を止めなければいけない、君の狂気を…

 

 

そして僕は鋼鉄の巨大な扉をゆっくりと押した…

 

 

 

 

 

 

 

続く




次回は 霖之助の“裏の異変”の解決…

おぞましい狂気の正体、英雄は再び動き、平和を導く


ではまた次回
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