そしてその"組紐"を構成する各種の紐が極めて細い為に個別の紐として認識できなければ、その集合体である"組紐"自体が一つの紐として『限りなく連続した物質に見える』と言う話だ。
ん? キミ達もこの話を聞いた事があるのかい? そうか。これ、実に興味深い話だと思わないか?
僕は今、永遠亭に居る。
先程、屋敷の名前を聞いた。永遠亭────何か、彼女達に共通する名前と、僕は思う。
まぁ今のところはただの勘と言うだけで、特に根拠は無い。ただ、そうだな……今回の"偽物の月"を思い出してみれば、接点は少なくとも一つは見出せる筈だ。
うん、そうだな、案内をされてる最中だが、考察と行こうか。
今回の騒動──もとい異変の第1の事象は、"夜"だ。
僕が起きたのが朝では無く夜だったのは、最初は僕の早過ぎ起きの所為だとも思ったのだが、その思考は直ぐに彼方へ消え去った。
理由は、"月"。同時に、この月が第2の事象となる。
魔理沙の発言からも本来朝になってもおかしくは無い時間であるのは確認済みだ。そして、この二つを加味した上で導き出せる第3の事象……それは────
時間……つまり"時"だ。時間の経過が恐ろしく遅い、と言うより、もはや止まっていると宣ってしまっても差し支えが無い状態だった。
聞いた話に依ると紅魔館のメイド長、十六夜 咲夜の能力は『時間を操る程度の能力』らしい。同じく時間に関する技を持つ身としても解るところは有る。それが今回の異変で起きていた。咲夜の仕業で無いなら、術と行使する方法も在るには在るのかもしれない。仮定としてはやはり霊夢と紫さんが行ったと言う部分が外れない。
だが、気になるのは異変の最後だ。時間が止まっていた今までが嘘であったかのように突然夜が明け始めた……それも一瞬では無く、確実に素早く、遅れをしかと取り戻すように。
満月が維持されたままの状態は
なら、その拮抗元────いや、術元か? どちらとも言えるのかもしれない。その大元が恐らく……
時間に関する能力。永遠亭……永遠とは、無限に引き延ばした時間の事を指す。永遠は"無変"の証だ。変わらない、変わりようが無い、ずっと同じままなのだから、当たり前ではあるか。反対に一瞬とは、極限まで圧縮した時間を指す。一瞬は"認識の外"だ。介入する何かを持たない限りその流れを認知する事は叶わない。
掛けたか掛けられたかは不明だが、この考察をする中で一つ確実にそうだと断言出来る事を発見した。それは、
「ここです。ここに、貴方に会いたがってる人が居ます。姫様、連れて来ましたよ」
「ありがとう。入って頂戴、永琳」
「失礼します」
女性は正座の姿勢になってから襖に手を掛け、両手で引いて開けた。襖が開かれた先の光景に、僕の目に、その人は映っていた。永琳さんが月明かりに反射して輝く銀髪なのに対し、朝焼けで照らされて輝く黒髪のその人。
年齢は外見のみの判断になるが、霊夢や魔理沙よりは上だろうがまだ全然幼い。この子が永琳さんの呼んだ姫で間違い無くて、僕の考察の通りなら……
「よく来てくれたわね。さぁ近くに来て座って、お話でもしましょう? 永琳、貴女もこっちへ」
「はい姫様」
この子の正体は、確実に……
「さて、まずは自己紹介。私は────」
かの有名な月の姫君、竹取物語にも載る、あの……
「────
かぐや姫────羽衣を纏い月に帰った、と史実にはあるが、実際此処に居るのはどう言う事なのか全くわからないな。全く、頭の痛い話になって来たな。言われた通り僕は歩み寄って正座で向き合い、永琳さんは姫の隣に座った。
「まさかあなたがあの有名なかぐや姫だとは思いませんでしたよ」
「あぁ、そんな名前もあったわね。でも今の私は今の私よ、出来るなら一緒くたにしないでくれると嬉しいわ。それより、貴方があの有名な幻想郷の英雄なのよね?」
おい待てよ? 有名とはどう言う事だ? こちらは目立たないようにやって来たつもりだったのだが、何処から情報が出ているんだ?
「有名? あぁいや、英雄と言う点は否みませんが、有名とは、何故?」
「あ、違った。結構マイナーな英雄だったわね。まぁでも少なからず知ってる人が居るのだから、有名と言えば有名で間違い無い筈よね? それに博麗の巫女よりもずっと強いんでしょう?」
何だ、そう言う事か。まぁ知ってる人物が居るのは仕方の無い部分だ。情報を秘匿するのにも限界がある、だからある程度は諦めている。しかもまた運の悪い事にその情報を知っているのが幻想郷でもかなりの
つい此間僕を襲った萃香と四天王の残り三人、紫さん、神綺さん、後は悪魔の姉妹とか言うのも居たな。咲夜と、あと魔理沙も含まれるかもしれないな。とにかく僕が思う限りではそのくらいだ。
取り敢えずこれ以上知ってる人が居ない事を願うよ。
「さてそれは如何でしょうか? 僕も衰えてますし、昔より弱いのは確実に言えますよ」
「そう。なら、一つ試しましょうか」
姫が指打ちを行うと、直後彼女の横に座っている永琳さんが何処から取り出したか、突然弓を構えて矢を番え始めた。狙いは、僕で間違い無い。
「今から貴方を攻撃する。それを阻止しなさい。同時に、私はその阻止を阻止する。貴方はそれを掻い潜りつつ、彼女の矢を回避しなさい」
勝手に話が進み、勝手に視界が真っ暗になってしまった。恐らく何らかの術を掛けられたと考えられるが、一体何の術か全くわからない。ただ、
この剣、店から持ち出した非売品の一つだが、これは草薙の剣と言う名前の剣だ。今まで僕はこいつを
つまり、迚も便利な飛び道具なのさ。
「なにッ!?」
「────まさか、私の永遠を破るなんて……ただ者では無いと思ってたけど、これ程までとは……」
納刀状態の剣を振った時、真っ暗な視界が明瞭な部屋の景色に変わり、同時に矢も弾いていたらしい。そして"永遠"か……姫は僕に能力を行使したと見て良いのだろうな。
「お試しは済んだとみて良いのなら、僕はこれでお暇させて頂きます」
僕は剣を散らせた後に立ち上がって帰ろうとした。すると驚愕の様子から戻ってきた姫が僕を追いかけようと立ち上がって引き止めた。
「ま、待って! 貴方の実力を見込んで頼みたい事があるの。ある女を退治して欲しくて」
「退治? 悪さをする妖怪か何かですか?」
「そう言っても良いくらいね。何せ不老不死なのだから」
また良からぬ予感がするな。如何する? 断るか、受けるか……選択肢は二つあるが、永琳さんが矢を番えたままこちらを睨みつけている。断ろうにも、これでは断れないか。仕方がない……
「わかりました。但し今と言いさっきと言い、あなたにも永琳さんにも殺されかけたワケですから、それなりの対価は頂きましょうか?」
今度何かあった時は考えてから首を突っ込むか突っ込まないか決めよう、そうしよう。
続く
時間とは永遠の課題だろう。文字通り、永遠に掛かる話だ。
それと組み合わさってよりややこしいのが、"不死"と言う存在だ。世界の基本上、寿命は何にでも必ず有る。それを無視する存在が居ると言うのだから、奇々怪々にも程があるね