【Tokyo7thシスターズ】十九歳のひとりごと 作:同大ナナ研
原作:Tokyo7thシスターズ
タグ:Tokyo 7th シスターズ ナナシス サンボンリボン 晴海サワラ 晴海カジカ 晴海シンジュ オリジナル
カーテンを開けると、すがすがしいくらいに伸びやかな太陽の光が、目覚めたばかりのわたしたちを包み込んでくれる。
気持ちいい朝の日差しに当てられていたら、お姉ちゃん、ちょっとイイコト、思いついちゃったかも☆
……てなわけでお姉ちゃん、早速アイデアを発表したいと思いまーす。善は急げって言うもんね。これって善なのかしら? 少なくとも悪ではないわよね!
「ねぇねぇ、カジカにシィちゃん。こんな天気のいい日には、みんなでピクニックに行くべきだと思わない?」
らんらん気分で言ってみたら、二者二様の反応が返ってきたのでした~。こんな感じで。
「……いつものことながら、唐突だな」
くりくりと小さな手で目をこすっているシィちゃん。三女でーす!
「そっか。今日はお店もたまのお休みで、お出かけにピッタリの日だもんね!」
寝ぐせでピンとハネた潤朱色の髪を揺らしているのは、カジカ。次女でーす!
「そうでしょ~? 今日のわたしってば、朝も早くから頭が冴えすぎ? お昼過ぎには大天才になっちゃうかも♪」
ニコニコしながらそんなことを言っているこの人が長女でーす!
というか、わたしでーす!
「いや……時間帯で人間の知能レベルが著しく上昇するといった現象は、現代科学においてまだ観測されていないはずだが……」
「それじゃあ、お姉ちゃんが人類初めての実例になっちゃう⁉」
「万に一つもないだろうが、サワラねーちゃんだと絶対にないとは言い切れないな……」
「うんっ。お姉ちゃん、なんでもできちゃうって感じするもんね」
「二人とも姉を褒めるのが上手ねー。よぉし、お姉ちゃん、一皮脱いでお弁当作っちゃおうかな♪ 確か冷蔵庫に、昨日のお魚の残りと生クリーム、オイスターソースに塩辛もあったわよね?」
意気揚々と台所に向かおうとしたわたしに、なぜだか通せんぼさんの手が回る。
「……カジカ、ここは私がサワラねーちゃんを食い止めておく。急いで台所へ行ってくれ」
「う、うんっ。……そういうわけだから、お弁当の用意は私がやるね! お姉ちゃん!」
青ざめているシィちゃんに急かされて、カジカがあせあせと台所のほうへ向かっていく。
……はて? お姉ちゃん、またなんかやっちゃいましたかな?
そんなこんなでやってきたるは、うららかな春の光舞い降りる河川敷!
「お弁当持ってピクニックなんて、いつぶりかしらね~。シィちゃんが小学校に上がってからは、今回が初めてじゃない?」
遠い記憶を思い起こすように言葉を紡いだら、ビニールシートを脇に抱えたシィちゃんが反応してくれた。
「ピクニックと言えば、確かにそうだろうな。似たようなことは、ナナスタでいくらでもやっている気がするが……」
「撮影なんかだと、外でやることも多いもんね~」
大きなバスケットを両手に提げたカジカが、うんうんとうなずいている。
「……カジカにはそのたびに、弁当を拵えてもらっているな。いつもありがとう」
そんなシィちゃんの労いが、カジカにはとびきり嬉しかったみたいで。
「ううん! お弁当作るの、すっごく楽しいから! 栄養バランスまで考えると大変だけど、その分作り甲斐もあるかなって……」
「カジカもよくお料理するようになったわよねー、小学校のときなんて、三枚おろしのやり方も知らなかったのに」
「えへへ。お姉ちゃんもシィちゃんも上手で、私には……って思ったときもあったけど。いざやってみたら、お料理ってこんなに楽しいんだ、って気づけたというか」
「『自分が何をやりたいか』というのは難しい問題だが、カジカは既にそれを見つけているんだな。私もその姿勢を見習わなくては」
「そ、そんな大げさなものじゃないよ~。それにシィちゃんだって、『それ』をちゃんと見つけてると思うよ?」
「私が、か?」
「うんっ。……たぶん、お姉ちゃんもすぐに分かると思うけどなぁ」
カジカが目配せしてきて、なるほど、これはお姉ちゃんマジメに回答するターンがやってきたみたい。そうね、たまにはちゃんとしたお姉ちゃんでありたいものね!
「……まさかとは思うが、ア――」
「『アイドル』、でしょ? シィちゃんのやりたいことって」
「…………」
シィちゃんはじとーっとした目でわたしを見つめてきます。あれ? お姉ちゃんまたなんか変なこと言っちゃったかな?
「……常々言っていることだが、私は別にアイドルがやりたくてやっている訳では――」
「シィちゃん、まだまだ強情なところがあるのよねー。そんなところもモチロンかわいいけど♪」
そうやってシィちゃんの小さな頭をくりくりくり、と撫でてあげました。
「ぬわっ、ちょ、よ、よせ……!」
必死にジタバタ抵抗するシィちゃん。残念ながら、まだまだシィちゃんはわたしの手から逃れることなどできないのであーる。
……うん。でも、きっといつか。
こうして隣にいてくれる二人の姉妹にも、いつかサヨナラをしなきゃいけない日が――。
……違うわ。そうじゃない。
わたしがサヨナラをするんじゃないの。
カジカが、シィちゃんが、わたしの手から自然と離れていく日がやってくる。今は信じられないし、二人もまた、そのことを信じていない。考えてすらいないかもしれない。
でも、お姉ちゃんにはちゃーんと分かる。
みんな、みんな。少しずつだけど、大人に変わろうとしてる。
まだまだ知らないことだらけで、わたしがいないと戸惑うことも多いと思うけれど。
ナナスタに入って、アイドルを始めてからかしら。二人の成長速度は、今や目に見えるぐらい加速している。加速し続けている。
わたしはそんな二人の成長を見守るのが楽しみだし、ちょっぴり寂しくもある。
妹たちの成長は、姉として当然の喜びでもあり――こういう、なんてことない一日の値打ちを痛いほどわたしに教えてくれる。
今日は二度とこない、と思うと、それだけで胸が詰まりそうになる。涙が溢れそうになる。
それでもわたしは笑う。せめて二人の妹たちが、なんでもない一日を、なんでもない一日として楽しく過ごすことができるように。
「――さぁ、お昼ご飯の前にゲームをするわよー! 題して、『お姉ちゃんとかくれんぼ対決』! ルールは簡単♪ お姉ちゃんに見つかったら、ほっぺをぷにぷにの刑だーっ☆ それ、こんな感じで!」
「ひゃふっ⁉ ひゃ、ひゃへわはひは……⁉ わひゃひゃひはっへふぁいふぁふひゃほ」
「『な、なぜ私が……⁉ まだ始まってないはずだぞ』かな?」
「おー、さすが姉妹の絆ねー! ちなみにわたしはシィちゃんが何を言っているのかサッパリ分かりませんでした。てへ☆」
「……いや、今のはむしろ、分かるほうが凄いと思うが……」
「そ、そうかなぁ」
えへへ、とはにかむカジカと。
そんな姉の奇怪な能力に眉根を寄せるシィちゃんと。
そして、わたし!
これが老舗魚晴、看板娘の台風三姉妹!
いついつまでも永遠なれ! ……って、これもまた、わたしの勝手な願望なのでした。
なんだかんだ言って、わたしもまだまだ子供なのかしらねー。
いいかげん、もっと現実的な『それ』を探したほうがいいかもしれない。特にわたしは。
だって、わたしはもう――。
「……十九歳、なんだもんね」