【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】 作:ウェットルver.2
オタク仲間だろうと、そう思う日があるのです。
「付き合わされる側」からしたら、たまったものじゃありません。
今回こそ2話構成に………収め。たい、です! 収め、ます!()
「先週は怖かったよね、目が。」
「………うん」
ヴァイオリンが帰ってきた日から、まだ週を跨がないくらいの日。
かなり向けられる目線は、どことなく気楽なものになりつつあるけれど、それはきっとヴァイオリンを弾き、歌う、わたしのために向けられたもので。
ジョーカー。
わたしとの旅を先んじて行く、たったひとりの仲間に対しては。
どこか暗さがある。恐怖がある。まるで彼らを見る「こども」の、敵わない相手に怯えるしかなく、怯える心すら凍り付いてしまう絶望の表情にも似ている。
「そんな目で見られたって、(そっちは)まだ悪いことしてないじゃん?
そりゃあ昨日までは(悪いこと)やってたんだろうけど、これから本気でやり直すなら、っていうか、力を貸してくれるなら有難いし……でも、あの調子どうしよう?」
テロリストのひとたち――今は「Freedom “Legion”」と名乗っているらしいが。
彼らの目の前で、ジョーカーが人間になった、あの時。ベルトのバックルに読み込まれた「♡2」のカードは、ジョーカーの手の中から霧吹きの霧みたいに消えていた。
人間を殺して吸い込むように、カードもまた吸い込まれるらしい。
「………………歌えばいいんじゃない?」
もちろん、冗談だ。半分は。
正直なところ、好きな歌のひとつで分かちあえば、それだけで話は弾むと思う。
「それかー。やっぱり歌かー、でも英語の歌はなぁ。
ロックで、英語の、なんだっけ、あれ……『KILLER QUEEN』*1とか?」
「ばかなの?」
どうして人間を大量に殺した怪物が、堂々と“殺し屋”の女王様の曲を歌うの。
余計に怖がられるだけだろうに。
「え? あ゛っ……だよねぇ!?」
相槌を打ちながら、本気で「やらかした!」と笑顔で困り顔をしながら。
ひとの貌で自分の感情を伝えながら、ジョーカーは道化る。
さすがに、良心からの焦りは隠せていない。頬が引きつっている。
どうみても、ただの人間にしか見えないけれど。
その貌は、「♡2」のカードによって得た、ひとの姿だ。
「じゃあ、なんかRock youって歌詞があるやつは?」*2
「なんでロックバンドの【QUEEN】か、日本の歌に偏ってるの………?」
「耳に残っちゃって」
「そっか」
そして、ジョーカーは、どれほどの数の姿になれるのだろう。
「どうしたの?」
トランプと同じ数だけの身体を持つとしたら。
いや、ちがう。同じ数だけの“誰か”になれるとしたら。
……それって、ジョーカー自身は、いったい“誰”なのだろう。
きっと「♡2」の“誰か”だって、名前があるはずなのだ。そんな“誰か”が本当にいるかわからない。ジョーカーの姿のひとつ、衣装のようなものかもしれない。
でも、間違っても「♡2」とか、SPIRITなんて名前なんかじゃない。
じっと、
「どうしたの?」
見つめ返す“それ”は。
死神かもしれない。悪魔かもしれない。
ひょっとすると、見た目が怖いけど、天使だったりするかもしれない。
そういったものですらない、もっと恐ろしいものかもしれない。
そうだとして。
歌が好きで、音楽が好きで、ひとの笑顔が好きで。
死がキライで、戦争がイヤで、ひとを殺すひとを許さない“ひと”を。
いつまでも、そんなふうに思うのは。
なんか、ちがうと思うから。
「ジョーカー、名前、つけていい?」
「え? どういう意味?」
そういうものであったとしても。
わたしは、「そうであってほしい」わけじゃない。
「そうある」しかなくっても、そんなことをしなくていい時まで、死神とか悪魔とか、天使とか怪物とか、「おなじ“ひと”じゃないんだ」と突き放しているようで。
いつまでも、JOKERって呼ぶのは。
「人間の名前。ジョーカーにつけて呼んでいい?」
間違っている。間違っていてほしいと思うから。
「どんなの?」
そんなの、もう決めている。
「………
初めて、信じることができるひと。
今までも、これからも、信じられるひと。
「“はじめ”って呼びたい。いい?」
「やだ。」
「えっ。」
「それは、なんか、やだ。」
ボク、始さん*3じゃないし。
なんなら、四条ハジメ*4でもないし。
“はじめ”っていうか、“HAJIME”って音を名前に含むのがいやだ。
仮面ライダーカリスのファンのひとりとして。
どこにでもいるファンが、同音の名前を名乗るのが……なんか、すっごい、やだ!
「えぇ……?」
「ボクも頑張るから、別のにしない?」
畏れ多すぎて、舌が重くなるから。
「えー…………?」
「気持ちは嬉しいけど、マジで、いやだ。」
「……そっ、かぁ………」
しょんぼりとした顔で、ほんのすこし俯くクリスちゃん。
うん、ごめんね、真摯な気持ちで考えてくれたのだろうけど。
こればっかりは、仮面ライダーのファンとして却下させてほしい。
「………でも、そうか。
君にとっては、ボクが“始まり”なのか」
ふと、過去の思い出を振り返る。
似たような経緯が、好きな作品にあったなあ、と。
特撮【仮面ライダー電王】、その物語の怪人「イマジン」には、主人公である「野上良太郎」の想像力によって、彼との契約によって肉体を与えられ。名前を授けられたものがいる。
桃太郎のイメージから肉体を得たものには「モモタロス」。
同じように浦島太郎から肉体を得たものは「ウラタロス」、金太郎から得たものは「キンタロス」、龍太郎から得たものは「リュウタロス」。
つまり、ボクの場合は。
彼女にとっての「始まり」のイメージから、名前を与えられたのだ。
「………無碍にするのも、なんかイヤだな。」
それって、つまり、彼女にとっての絆の名前でもあって。
こちらにとっては、苗字が“おだ”で名前が“信長”*5、そのくらいの、なんとなく名乗りにくい名前を与えられたようなものなのだ。
その点を指摘するやつは、この世界にはいない。
いちいち“掲示板”で白状したりしなければ、彼女の気持ちを揶揄われるかのようなこともない。自分の中の秘密でさえあればよい、の、かもしれないが。
それって、本当に“HAJIME”と呼べるのか?
というか、ボクって。
「相川始」の名を持つ存在だ、なんて、自称できる
「………いい。」
「クリスちゃん?」
「思いつくまで、街で歌ってる………」
むすっ、とした顔で、扉を開けて出て行ってしまった。
「………やっぱり、もらっておくべきだったかな、名前」
申し訳なさそうに「無碍にしたくない」と言われても。
言われた側が「誠実だ」とか、「正直で好感を持てる」とか思うと思ったら、とんでもない自意識過剰だ。ナルシストだ。
……大間違いだ、気持ち悪いくらいの。
「………ばか。」
気に食わない。
しかたなくプレゼントを受け取られたって、こっちは嬉しくなんかない。
喜ばれなくっても、そう呼びたいだけだから、わたしの勝手なのだけれども。こっちの気持ちを素直に受け取ってくれていないし、非を感じて名乗られるくらいなら、だったら最初から名乗ってくれなくたっていい。
「………おい、“カナリア”が御機嫌斜めだぞ」
「なにしてんだ、あいつ?」
「さあ? 人間じゃねぇから、女の扱い方でも間違えたんじゃねーのか?」
「ガキの扱い方の間違いだろ」
聞こえているけど。本当は。でも。
通路の先にいた兵士たちを無視して、おじさんのいる部屋に入る。
「うん? だれだ!?
……なんだ、お嬢ちゃんじゃないか!
ノックと問答くらいしろ。引き金がタバコより軽いのを忘れるな」
「………ごめんなさい」
怒られちゃった。
銃を見るのは慣れたけれども、向けられるのは、やっぱり怖い。
「怖がらせてすまんな。ジョーカーはどうした?」
「………知らない」
「知らないじゃわからん。出かけたのか?」
「………………名前、あげたら、嫌がられた」
すこし目を逸らすと、おじさんはタバコに火をつけようとして。
何かを思い出したかのように立ちあがり、壁のスイッチを押すと、椅子に座らず。
ほんのちょっとカーテンを閉じたままの窓を開けて、こちらへと振り返った。
「………なんて名前だ?」
「はじめ。英語でFirst。」
「なぜ、その名前にした?」
「………初めて、信じた。じゃなくて。
なんだろう。ずっと信じられる、気がするから」
「ああ、『初めて』、これからも信じられる相手だから、か……なるほどな、」
おじさんは「だろうな」と呟いて、煙を換気扇にむけて吐き出す。
「不死身、己の志を偽れない怪物。
『戦わぬ選択肢がない』に等しいギフテッド。
自分だけがノイズに対抗できてしまう、日本国の“シンフォギア”とやらではない、明らかな生きた肉体を持つ、人類と同じ知性すら持った、最後の切り札。
……そんな
……『人間の名前を持つべきだ』と、俺もまた思わんでもない」
おじさんも、おじさんなりに、同じ気持ちらしい。
「だが、死神だ。
死神であるものが、人間の名前を得て、人間を殺し、俺たちと同じ戦士となって。
やがては罪を『人間として』背負うことを、俺たちはどう思えばいい?」
そこを除けば。
「クリス。
おまえにとっては、あいつへの祝福なのだろうが。
俺には、やつに『人間として』死ぬことを約束させるようにも思える」
「ダメなの?」
おじさんは、わたしを見つめる目を、ちょっとだけ広く開いた。
「………『人間として』生きる覚悟が、死ぬ覚悟が。
あいつにあるのかを知らん。それだけだ……それだけのことだ、クリス………」
「………………そう」
そんなの、なくてもいいと思うけど。
「歌いたい。出かけていい?」
「いきなりだな?!
……まあ待て、警備のものをつける。ライブをやるんだろう?」
「うん。」
こういうときは、だれかの笑顔をみるほうがスッとする。
ぐちゃぐちゃ考えたって、どうせ“はじめ”が認めるまでは変わらない。
退屈な現状と付きあうより、“はじめ”が折れるまで、ずっと歌っていよう。
それから、おじさんが通信機に連絡を入れて、十分。
「で、俺ですか」
「そうだ、頼んだぞ」
めんどうくさそうに、嫌そうに。
わたしを見おろす、おじさんの隣にいつもいる偉そうな、おにいさん。
このひとは、“はじめ”を見ても絶望しない。
むしろ、いちいち立ち止まったかと思えば、敬礼する。そんな日が数日続いて、おじさんに「さすがにしつこいぞ」と叱られて会釈をする程度に抑えて、それでも視線が熱いというか、おじさんのような強いものを感じさせる。変わったひとだ。
そんなひとでも、苦手なものがあるらしい。わたしだ。
「………マジで、俺ですか。
いえ、命令ならば当然です。ですが、」
「わかっているから、やれ。
いつ、やり直す気だ? いつまで待てばいい?」
「……了解。」
仲間を連れて、わたしを車で運ぶつもりらしい。
ジョーカーと行くときは、さすがにジョーカーのほうが強いというか、強すぎるから、歩いて行くのでも問題ないらしい。おじさんが、そう言っていた。
「………えっと、おねがい、します」
でも、今日はジョーカーと、“はじめ”と行かない。行きたくない。
だとしても、今、ものすごく気まずい。きっと、おにいさんも気まずい。
「護送任務を開始する、いくぞ、おまえら」
おにいさんの声に「了解」と返事をする、多くの兵士たち。
わたしのほうを、まったく見ようともしない。
だから、それなりに、わたしも落ちつけたんだと思う。
本当の距離感は、このくらいのものだったのかもしれない。
みんなとジョーカーは、「こども」と「おとな」だ。カードの強さをめちゃくちゃにしたらゲームにならないけれど、めちゃくちゃにして拳で周りを従えるのが、悪いほうの「おとな」なら、ジョーカーは「おとな」が「こども」になるほどの理不尽な相手。
ジョーカーの暴力は、痛みや苦しみを味あわせる方の暴力ではない。
問答無用で死を宣告する、死神と呼ばれてしまうほどの暴力だ。当たり所がどうとか、まったく関係なく殺す存在だ。わたしだって、「ジョーカーが心まで化け物になってしまったら」と思うと、たまに夜に眠れなくなってしまう。
………そういうとき、なぜか騒々しい、不思議な歌い声たちが脳裏をかすめる。
それが“あの曲”を歌うのだ。かえって眠れないから、もう“あの曲”を歌ってから寝ることにしている。ちょうどよく疲れて、よく眠れるし。
そこまでやってもダメそうなら、もういっそ、目の前にいる、心のあるジョーカーでも見ながら寝たほうがいいけど。どっちの貌でも寝顔がおかしくて、落ち着けるから。
じゃなくて、“はじめ”だ。ジョーカーじゃなくて。
そうやって、いつも隣にいたから。なにかと恐怖の対象から離れないから。
わたしへの態度が冷淡なのかもしれない。
冷淡であるなりに、わたしのやりたいことを、気持ちを、ほんのちょっとでもわかってくれるから、おじさんと同じようにライブを許可してくれるのかもしれない。
「ついたぞ、今日はここだな?」
「………うん」
車から降りて、用意されたステージに立つ。
ステージと言っても、木組みで、大人向けのベッドひとつぶん、そんな広さ。
別に踊ったり、いちいちポーズを決めたりするわけではないのだから、そのくらいでも充分に歌えるし、演奏だってできる。あんまり頑丈すぎる必要もない。
たまに、きしむ音が怖いし、演奏の邪魔になるけど。
子供も、大人も、誰も彼もが。
わたしが台に立ち、兵士が散開したのを見て、始まることに気づいたのだろう。
笑みを浮かべて近づいてくる。曲を、歌を楽しみにしていた子が、わたしを指さして母親の手をひっぱる。わたしの曲や歌を、口ずさんだり、鼻歌にしながら思い返すひとが来る。パパとママの見た景色は、今でも、わたしの目の前に広がっている。
この数日間に、ずっと演奏を繰り返したから、だろうか。
ヴァイオリンが戻ってくるより前、先週からも歌い続けていたから、だろうか。
だんだんとライブをするたびに、ひとの集まりが増えていく実感がある。
今日は特に多い。ひょっとして、この地区のひとのほとんどが来ているんじゃあないだろうか。そうだとしたら、すごく嬉しい。ジョーカーがいたらどんな顔で。
やめよう。
あのばかは絶対に、“はじめ”って呼んでやるんだから。
ほかの兵士たちが配置について、周りを警戒して。
おにいさんがサインを送る。やってもいいらしい。
「―――それじゃあ、」
まずは、始めることを伝える、エチュードの演奏から。
ヴァイオリンを持って、弦を引いて、
「―――今だ、やっちまえ!」
ライブ会場となった、街路の奥で。
街のひとたちの中にいた、たくさんのひとたちが。
いっせいに、黒いヴァイオリンのようなものをかまえて、そして。
赤い染みを。
ライブ会場の地面に、広げていった。
「………え?」
目立つ場所にいた、わたしだけを避けながら。
ちいさな機関銃や拳銃によって、みんなを、街のみんなを、兵士のみんなを、次から次へと狙っていく。殺していく。わたしのヴァイオリンの音が途絶えて、消える。
「どういうことだ!?」
おにいさんの怒号が聞こえる。
「まさか、……おまえらか?
おまえたちの組織とは、停戦協定を結んでいたはずだぞ!?
それが、どうして――――!」
わからない。
悪い「おとな」のはずのおにいさんが、「約束が違う」と怒鳴る。
それよりも悪い「おとな」だった誰かたちが、笑顔でおにいさんに語りかける。
「しょうがねえだろ?
『ノイズに追い出されちまったら』、なあ!?」
古代の巫女は嘲笑う。
己の手駒に誘導された、相手方の手駒を見つめながら。
手渡したカードは顔写真。見目麗しい絶世の美女、知らぬものがいない歌姫。
その裏面には、ひとこと。
「こいつの娘なら、おまえたちの“慰安”にはなるだろう?」
踊れ、踊れ。私の計画のままに!
知恵に陶酔した巫女は、己の知性を疑わない。
他者の欲望を、愚かさを疑わない。バラルの呪詛を、だれよりも信じながら。
一方で、進化を求める欲望には。
ジョーカーアンデッドは、己の背筋の違和感に気づく。
「………っ、この感覚って、まさか、」
“統制者”は訴えかける。
―――“バトル・ファイトの参加資格者を発見。戦え。戦え。”
ベルトのバックル、「ジョーカーラウザー」が赤色を濁らせ、緑色のまざったオパールじみた輝きを放つ。緑光の点滅が、少しずつ広がる。そのたびに遠のく意識を確かめるように、拳を握り、息を整え、赤い輝きが潮のように緑光を押し返す。
「うん。まだ、だいじょうぶ。」
親指を立たせて、己の記憶を確かめる。
ひとを模した、ひとならざる肉体を本能ならざるもので奮い立たせ、部屋を出てから……駆け寄る兵士が”雪音クリス”の危機を伝えるまで、あと数分。そして。
すべての生物種の繁栄と絶滅をめぐる、生存競争が。
バトル・ファイトが始まってしまうまで、あと―――
フィーネの文字をどうするのか超悩む。
縁取り文字にすると漢字がつぶれるし、白文字にしたらもう読めないし。
そもそも黄色だと最悪読めないし、茶色はガワの髪の色なわけで。フィーネそのものではないという………黄色の色をキンタロスより黒めにすればいけるか………?
でも、へたするとバッチくなるから、調整しないとなあ。
唐突ですが、アギトいいよね。なんの、なにが、とは言いませんが。
ニコニコ動画の公式チャンネルで特撮【仮面ライダーアギト】放送中。毎週楽しみです。話題が違いますが。