【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】 作:ウェットルver.2
最近、仮面ライダーやシンフォギアの二次創作が増えて楽しみです。
でも全部追える気がしないので、ゆっくりニチアサの録画消化しながら追いつきたいと思います。………いや本当にめっちゃ増えましたね!? (〇w〇)ナズェダ!
※2022/04/27(水)本日、「完全なる肉体」「ファストローブ」「マクロコスモスとミクロコスモスの照応」の概念を含めた、アニメ【戦姫絶唱シンフォギアAXZ】公式サイトでの設定紹介ページをふまえた本文中における地の文、脚注の再編集を行いました。
「OK、最初から確認するぞ」
“はじめ”、その名を与えられた少年が鍛錬を始めた日、合同訓練終了後の深夜。
その名を与えた少女のもとへと駆けつける前、少年は武装組織のボスと語り合っていた。バル・ベルデ共和国の紛争地帯の一角を治めるテロリスト、善く言って自警団の彼らに対して、上層部にのみ伝える情報を共有するにせよ、真に彼が認め、彼を認める男は首魁たる男のみ。
ゆえに、だれにも聞かれないよう、倉庫の中での対談であった。
少女“雪音クリス”が、己の虚しさに胸を裂かせる、その間での話である。
「この星の霊長類を決める、生存競争の試練。
霊長類って言うのは、なにも『人類だけ』を指すわけじゃない。
そのうえで再開された
「
その虚しさが、いつの日か。
彼女の無力感から罪悪感に変わってしまう可能性を、少年は想定していた。
全人類種絶滅、衰退の運命、それらを彼女では止められない。
残酷な事実のひとつを悟られぬように、あるいは、「今弱いからすべてが悪いのか。できなければ何事も意味がないのか。昨日も明日も価値がないのか。そんなわけがないだろう」と、ただの事実に唾を吐き捨てるように、抱かせるかもしれない罪悪感を忌み、少年は少女を信じて前へ進む。
人類種の命運など、子供ひとりが背負うべきものではない。
生まれた
「ほかの連中が優勝するのも、避けたい。
クリスがどうなるか、おまえでもわからない……」
「
元を
己の限界を抱えて死に、怪物の肉体で妄執に挑み。
何者でもない怪物に成れ、慣れた自分を、ただの人間に引き戻す生者のために。
できないこと程度で、できることのすべてを捨てさせないために。
義務でもなく、責務でもない、ただの生きることを諦めさせないために。
同じ立場と生まれならば、自分で自分を責め殺せる痛みだとわかるから。
「だから、同じ意志を持つ怪物が、あとひとりは必要。
だが、今回近づきつつある怪物は進軍からして『友好意識はない。』
……聞き間違いも、勘違いもないな?」
「
わかりあえない敵ならば、封印するしかない。
わかりあえる
「………おまえ、なんでそんな、こう、おまえなあ………………………」
ただ、この彼の姿勢、ただの人間からすれば、
「人類贔屓にも程があるだろう!?」
武器庫に男の叫びがこだました。
「法螺話だとしても、だ!
言っていて内心、ちょっとは『気恥ずかしい』と思わないのか!?」
「ツッコまないでよ、
やたらと人間へ友好意識のある、ただの面白怪人にしかならない。
どれだけ真剣に行動しても、ただの善い面白怪人にしか映らないのである。
あんまりにも、ひたすらに、ひたむきに人間に寄り添いすぎて、話を聞いた側が怪物としての恐ろしい形相へなんとも思えなくなるほどに、容貌に対しての言動と意志と感情表現のギャップに親近感を抱かせ、警戒心を失わせ、残った目立つ特徴は「ある少女を特別に大切にする」という、当たり前のような情緒だけ。
そんな死神、からかう隙がありすぎて「面白いヤツ」と思われないように振舞うなど難しいだろう。対話を放棄して道化を演じているほうが、まだ恐ろしかったのに。
焦りのままに、少年は口を開く。
「とにかく、今回の相手は!
無数のイナゴの集合体みたいな、ひとりで軍隊できるヤツで!
人間のみんなだと危なくて、だから、
「”力を貸せ”、か? いいぞ?」
「…………え?」
だからこそ。
少年は気づかない。
「なんだ、そういう話じゃなかったのか?」
「………本気で?」
目の前の現実の、できる解決、できない問題を受け入れるとしても。
目の前の人間の、『できないなりに抗う意志』までは軽んじていたことを。
「おまえなぁ、……仮にも、おまえを本気でだな、」
おおきく溜息を吐くと、噛み煙草*1を咥えて噛み始めた。
「………『死神を
そう思っているんだが、どうにも手応えが足りなかったらしいな」
心の
当時、怪物を少年として見なかった男は、目の前の少年に背を向けて歩む。
直視をすれば罪悪感に呑まれ、本題を忘れてしまう気がするからだ。
「あの日、対怪物用の兵器を、なにも用意してなかったわけじゃない。
どこにでもある兵器のひとつだが、な。」
倉庫の奥の、無数の兵器群のとあるスペースへと近寄る。
ただし、銃火器ではなく、爆発物でもなく、刀剣の類でもない。
ガスを封入した危険物でも、人間に搭乗可能な車両でもなかった。
「こいつを見てくれ。怪物がどうなると思う?」
「………っ、それだ!」
少年は目を見開き、叫ぶ。
「それなら、もしかして――――!」
なるほど、やはりそういうものか、と。
かつての己の着眼点を認めながらも、ああ、使わなくてよかったよ、と男は目を閉じる。あたりまえだ、自分の予想通りに「この兵器」が通用するのならば、戦史のうえでは人間がただですまなかったように。
ただ鉛玉を受けるだけよりも、後遺症と痛覚の幻覚症状に苛まれてしまう、人道面に問題がある兵器であるがゆえに、目の前の少年ならば。
ただの怪物に戻っていたかもしれないのだから。
今を生きる男は、かつてに死んだ者の現実、絶望を踏み越える。いつだって。
そうしようとしたからこそ、不老不死の怪物に抗えたのだから。
数多の部下たちの逃げる最中、己だけでも「最後まで抗う」と決め、人質を取ろうとしたからこそ、死神の望みを察することができたように。
なにも変わらない。この男の強さは、最初からなにも変わっていない。
何度でも諦めない。何度でも立ちあがる。
彼我の強さには絶望が見え、見つけた勝機に根拠はなくとも。
己の希望のため、信じられる同志や己を賭す覚悟だけで。
間違えてはならない。忘れてはならない。
彼は、バル・ベルデ共和国で、英雄と呼ばれた男なのだ。
明日の昼から作戦会議をしよう。
そう伝えられた後、雪音クリスの寝室で彼女の手を握り、そのまま眠ったジョーカーアンデッド/はじめ。その間、彼女が起きていたか否かを知る術はなく。
なにも知らず、朝を迎えて目覚めて早々、彼は自分の正気を疑った。
「ラウズカード、貸してちょうだい」
「なに言ってんの、君???」
いや、むしろ、目の前にいる淑女、櫻井了子/フィーネの正気を疑った。
彼女の科学力について、まだ彼は知らない。知らないが、知らないなりに相手の焦燥感ある表情で己の様子を伺っている姿勢までは理解できた。
どれだけ細心の注意を払って研究を続けても、その力を利用したものは遺伝子情報を組み替えられていき、常人ならざる超能力を得るまでが幸運、人類種とすら呼べない
それらの末路を知らずとも、生物化学兵器も同然のラウズカードを利用しよう、などと考えている時点で正気ではない。
「あのねぇ、ボクたちは伝説上の魔人とかじゃあないんだぜ?
科学的な問題が生まれると思うんだけど。
「
ね、ほんの一枚でいいのよ。治療後に廃棄された包帯とかから復元させて研究するには、ちょっと無理や制御に難がある、細胞単体だと安全を保障できない研究で……むしろ、ラウズカードのほうが安全かもしれないのよ。
「やらかした後の責任追及、どうする気?」
「あなたの判断に任せるわ」
「……OK、『トンズラする』に有り金全額かけていい?」
こちらの判断に任せて
そういうことなのだろう、と解釈し、冷淡な目で見つめる少年。
まぶたを開いた少女クリスは、そんな少年を見あげながら問いかける。
「………はじめ、どうしてだめなの?」
「クリス、それはね、このひとが好き放題研究して大変なことになったら、ボクは怪物仲間を封印するためにまた戦うから、その間に自分だけ逃げられるからだよ」
「きたない。」
「はぐぅっ!」
突然、無垢な少女のひとことが、魔女のドス黒い腹に突き刺さった。
「い、いえ、ちがうの、ちがうのよ、クリスちゃん。
仮に問題が起きたとしても、私が研究しているその場で起きるはずで、」
「席を離れたタイミングで事故が起きるのって、火災だとよくあるよね。
コンロの消し忘れとか。」
「よく知っているな、ジョーカー!?」
言葉巧みに逃れようとする魔女の背中を、静かに貫く戦士からのたとえ話。
「くっ……そうだとしてもっ………だとしてもッ!」
それでも折れない。
「この研究と実験さえ終われば、クリスちゃんのシンフォギアをアップデートすることができるのよ。対
「だとしても、次にくる
「それ、ほんと!?」
顔を寄せ、櫻井了子の表情を伺うクリス。
「………ええ、本当よ」
「……できたとしても、次にくるヤツは分裂能力があったはずだから、へたに実戦投入しても特殊武装の隙間から素肌を噛んで捕食しようとするはずで―――」
「それはそれ! これはこれよ!
言ってくれれば対処してみせるわ!」
「う、まあ、そりゃあ、そうだろう、けども、そういうことじゃなくてだね?」
食い気味に返す了子に、思わず身を引く“はじめ”。
「そもそも、シンフォギアには装備した子が受けるノイズからの侵食への防護だけじゃないわ、不意の衝撃にも対処可能なバリア機能もある!
女の子の身体に配慮しない兵器を平然と渡せるほど、私たちは外道ではないわ!」
(……え、『女の子にしか使えない兵器を渡す』時点で外道なんじゃないの?)
もちろん、ふたりの認識は噛みあわない。
【シンフォギアの世界】における特殊武装「シンフォギア」とは、あくまでも特殊なエネルギー「フォニックゲイン」を生成するほどの歌唱力を発声可能な者……かつ、エネルギー固着式のプロテクターとの適合率の問題により、生物学的に上位である女性体、「完全なる肉体」の所持者にのみ使用可能な超兵器でもある。*4*5
基本的に女性のみが装備できるため、結果として大人が「女の子にしか使えない兵器を渡す」しかないのが兵器運用における現実だ。
声帯や音域次第では男性でもフォニックゲインは生成できるのかもしれないが、そもそも男性歌手には第二次性徴により声変わりが生じる問題はあり、幼少期であれば女性体に近い少年体も加齢により男性体に近づいてしまう。
フォニックゲイン生成可能な声帯ではなくなるどころか、「完全なる肉体」との近似値が失われエネルギー固着式のプロテクターに適合できなくなる可能性も高く、最前線で戦える男子はもって中学生男子まで、であろう。
長期のシンフォギア装者としての活躍は不可能と見るのがよく、実際のシンフォギアを使用する装者は第二次性徴、声変わりを終えた高校生女子が多い。
男子の場合、なんらかの方法で性差を突破しなければならないだろう。骨格が女性体に近い、というだけの男性に元より装備可能か否かは、だれにも知りようもないが。
しかし、肝心の彼は【仮面ライダー剣の世界】および【ブレイドの世界】における兵器運用、つまり、いち企業が所有する生物兵器同然のライダー・システム、および【前世の世界】での質量兵器の運用を前提に解釈するため、根本的に【シンフォギアの世界】での倫理観あっての葛藤までは理解できていないのである。
アニメ【戦姫絶唱シンフォギア】を知らないが故のすれ違いだ。
元より、装備者の身の安全を高めることが装甲服の役割なので、防護性にジェンダーもなにもなく、あるとしても男性用と女性用の内部構造の差異程度の違いしかない、というのが余計に彼のシンフォギアへの理解を困難にさせていた。
(※正確には、櫻井了子からの“余計な表現”による誤認が原因であろうが。)
女性だから、男性だからと特別にどこそこを守らなければならない、というような珍妙な配慮はあるはずもなく、性差ゆえの骨格、体格からくる着崩れ擦れが生じにくい程度の必然の配慮しかないのだから。
言葉を口にしても、すべてが伝わるとは限らないのである。
当然、相手が愚かであるからだ、という主張と自己弁護は通らない。
「私の研究結果に基づけば!
シンフォギアでも
「………できたとしても、どうやって封印するのさ?」
そこに、どんな真意があったとしても。
「そこは、ほら。
封印状態のラウズカード、できれば貸してほしいなーって?
不死生物の細胞から未封印状態のラウズカードを生成できれば、それだけでも不死生物に対抗する手段を増やせるのよ~」
「はい、
腰のバックル、「ジョーカーラウザー」の右腰にあるホルダーから白紙のラウズカード、「コモンブランク」*6*7*8を取り出した少年は、そのカードを櫻井了子に握らせ、右手の甲を見せ、塵でも払うかのように振る。
「これもラウズカードだから、文句ないよね?」
「そうだけど、そうじゃないのよっ……!
……こんなのもあったのね、ラウズカードって………」
怒りも悔しさも興味関心も好奇心も浮かべた複雑な表情になるまでくしゃりと顔面を歪め、まじまじとコモンブランクのラウズカードを見つめる天才考古学者、兼、天才科学者。彼女の姿に思うところがあるのか、クリスが少年の服の袖を引く。
「はじめ、いじわるしないで」
「……いいの? クリス。
クリスのこと
「やらないわよ、そんなこと。」
「できるわけがないじゃない。
「……?」
怪訝な目を向ける少年を見返しながら、ちいさく咳払いをする
声を荒げた痴態を受け入れ、己が最も信じたくはない”もしも”を為さないためにも胸を張る。
「……本気で日本国内で研究するのなら、貴重な装者かつ被験体のクリスちゃんと、ラウズカードや
少年には目を逸らさず話しかける了子に対し、まったく目をあわされないクリスは首を傾げ、すこし退屈そうに白紙のラウズカードへと視線を移す。
「ふーん。そういうところは強かだね」
「どういうところが強かではないと言うつもり?」
「最初から。
「…………………ぐうの音も出ないわね」
こっそりと彼のデッキホルダーに手を伸ばし、取り出した♡6のラウズカードと見比べ始めるクリス。ある意味、ラウズカードを彼女に盗まれているに近い状態なのだが、はじめが警戒しない理由は所詮“掲示板”からの知識によるものか、あるいは現世で培った個人的な感情によるものか、どちらにしても櫻井了子への警戒心が勝る現状に変わりはない。
「あ、マークがちがう。
(図鑑で見た)雪の結晶みたい。」
「ああ、それはアスタリスク(*)って言うんだよ」
「ふうん」
マークに目を向けるクリスに近づきながらも、はじめには近づかないように回りこみ、それぞれのラウズカードを確認する櫻井了子も続けて呟く。
「Asterisk、“ちいさな星”を意味する名前よ。
文章表現なら、脚注番号や強調で使われる記号ね。論文でもよく使うわ」
「………ちいさな星、かぁ」
なにを思ったのか、機嫌を良くしたのか、鼻歌を始めるクリス。
彼女の様子を見た二人は顔を見合わせ、わずかに距離を離す。
「とにかく、私は本気よ?
クリスちゃんの気持ち次第だけど、クリスちゃんのシンフォギア『イチイバル』にあわせた調整は、いちいち日本に帰ってするなんて手間暇かけられないのよ」
「まあ確かに、今のほうが実験体には困らないだろうね、
だけど、そっちが君の研究施設もある本拠地、ってことじゃないの?
なのに日本に逃げ帰らないの?」
少年の
「……そもそも聖遺物を欠片であれ完全聖遺物であれ、
私がクリスちゃんのママを探したのは、今、クリスちゃんの首飾りになっている『イチイバル』を起動できる数少ない音楽家だと踏んだの
「湯沸し器ならあるから、御白湯でいいなら」
「なら沸かしましょう。水道……は、日本じゃないんだったわ、そこのミネラルウォーターで……よし………」*9
湯沸かし器にミネラルウォーターの水を足しながら、言葉を続ける。
「……そのうえでの『イチイバル』専用の微調整や新規のカスタマイズとなると、適合者であるクリスちゃん抜きに話を進められるものではない。試験運用による理論値との誤差の確認だけじゃないわ、クリスちゃんの使用感の問題もあるもの。
さらに
最初から、ふたりの協力なしにできないのよ」
スイッチを入れ、沸くのを待つ間は手持ち無沙汰になるからとコップを探す櫻井了子に対して、クリスは指先でコップのある場所を示す。
「……ありがとうね、クリスちゃん。
毎日、短い時間での貸し借りでいいわ。
最終的に新しいシステムの開発に辿りつけるなら、時間がどれだけ足りなくてもやってみせる。クリスちゃんを応援する側としては、それ以上にできることがないのよ、……シンフォギアの技術者としてよ? だから、」
「はじめ、本当にだめなの?」
ふたりの間を割るように入ったクリスは、
「クリス?」
「本当に、信じないの?」
じっと少年を見つめる。
ほんのすこし目を逸らした少年は、櫻井了子を睨み、その表情を確かめる。
間もなくクリスへ見つめ返し、まぶたの上に震える水滴が
目を閉じ、ちいさく溜息を吐いた。
「………五時間。五時間を越えたら、許さないからな」
彼らの心の
それは特別に意識する者が関わると、まったく非情に戻れなくなることである。
思い入れのある相手を直視したら、激情が出ちゃうから目をあわせない。
あると思います。探検隊も「そうだそうだ」と言うかもしれません。
前回の裏面、というか前回が”掲示板”やフィーネの動向を含めた物語の「裏面」で、今回が「表面」、というのが正確なところなので、ここまで書いて「あれ?これ出す順番逆のほうが(作業に)苦労しなかったのでは………?」と気づきましたが続投します。
あれこれ変えると苦労するのは読者なので。
先の物語は二話…三話分くらいの文章量で すでに書いていますが、文脈の微調整があるので、またしばらくお待ちください。
某骸骨騎士のOPの特撮感が最高すぎて草。