【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】 作:ウェットルver.2
追いかける。
どこまでも果てが見えない道路の先。
のろのろと自転車を押し続けながら、次の街へとむかう黒い影を。その足跡を。
どれだけ泣いても振り向かず、どれだけの街の人々が「留まってもらおう」と近寄っても取り合わない道化師を、何度転んでも追いかける。
あまえたって、相手にはされない。
みんなの笑顔を守りにきた道化師は、「次のみんな」のために立ち去る。
ひとりひとりの名前を聞いて、親御さんを探した姿がウソのように。
いいや、そうでなければならないのだろう。戦争の苦しみはバル・ベルデのそこらじゅうで広がっていく。どこかの街ひとつを守って、それで終わりではない。
そうなのだろうと悟る、自分の後ろから。
道化師への怒号が飛び交い、呼び止めようとする泣き声が鳴り響き、まるで道化師なしには生きられないかのような、いや。
両親を亡くした自分のような、憎しみと悲しみの声が街から溢れ続けている。
そこに、自分の居場所はなく。
道化師の居場所もまた、ただの牢獄にしか見えないほど。
ない、気がした。
【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】2スレ目
50:名無しの装者
で、雪音クリスはどうした?
その言い方だと、ちゃんと名前を確認したみたいだが。
51:ジョーカーアンデッド?(>>1)
現在進行形で置いて行こうとしてる。
52:名無しの装者
は?
53:ジョーカーアンデッド?(>>1)
あの子だけ特別扱いとか、さすがに無理があるし。
やるなら子供たち全員を助けないとダメだし、NGO活動していたひとの子供ってことは、現地人ってわけじゃないんだよ。最初は余所者でしかないんだ。
その余所者を拾うの? ボクが? ダメだろそれ。
54:名無しの装者
よし、ギャラルホルン持ってくる。
55:名無しのアンデッド
待て、まてまてまて!!? ギャラルホルン!?
っていうか装者ニキまで【シンフォギアの世界】の住民だったの!?
56:名無しの装者
うるさい、クリスを助けるためだ!
こうなったら、並行世界を特定して直接行ってやる!
これだけ情報が揃ったのだ、アンデッドとやらが実在する並行世界まで
いやまて、【シンフォギアの世界】だと?
57:名無しのアンデッド
え、装者ニキ、いや装者ネキか?
あんた、まさか、自分の世界にも同じ“現象”が働かないと思ってたのか?
仮面ライダーの平行世界は、総じて【○○の世界】っていう原作を再構成したような、原作の御本人が再登場しない場合が多い、
舞台劇、劇場版で脚本・配役名を大幅変更された作品とか、結構あるだろ?
あれと同じ“現象”で、装者ネキも「役割が同じ別人」に転生したんじゃないの?
58:名無しの装者
………そんな、馬鹿な。
59:名無しのアンデッド
あ、ダメだ、装者ネキに図星どころか自覚症状なかったっぽい。
ちょっとまって、解説するからみんなコメント投稿しないで。長文投げる。
60:名無しのアンデッド
>>59
OK、どんなのがくるか楽しみにしとくわ。
61:名無しのアンデッド
仮面ライダーの平行世界、【○○の世界】って、ようするにだな。
俺達転生者や桐生戦兎*1となんも変わらねーんだ。自覚をしたら、な。
仮面ライダー履修済みの転生者でもないと、「そういう覚悟」……いや、狂気か?
を、決めて全力全開で生き抜くなんて、まず精神的にきっついんだよ。
自分の人生のほとんどを、「原作にひっぱられ続ける」んだから。
どんなに自分の手で未来を掴み取ったつもりでも、最後の最後で「まったく原作と大差ない」状況にまで至って、絶望して怪人になるケースは“掲示板”じゃ珍しくない。
でも、そんなの知らなくっても。
本物の仮面ライダーも、全員、そう、全員が、なにかしらの運命を自覚したら、なおさら守りたいもののために、その運命と戦い続ける! 抗い続けるんだ。
クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、ディケイド、ダブル、オーズ、フォーゼ、ウィザード、鎧武、ドライブ、ゴースト、エグゼイド、ビルド、ジオウ………………みんなそうだった。
シェイクスピアも言ってただろ。
人間、ほとんど役者みたいなもんで、死ぬまで舞台で踊るもんだって。
仮面ライダー組にとっての「運命」って、そういうものなんだよ。
ジョーカーアンデッドに転生したニキは、人類が絶滅するかもしれないバトル・ファイトに抗うしか、「人類絶滅を回避するべく生きる」しかなくなるんだ。
原作の剣崎や始と同じ役割、運命を担う。
そのうえで頼み事してんだよ、あんたは。―――落ち着け。
62:名無しの装者
>>61
…………そうか。
すまん、ジョーカーニキ。
雪音クリスを置いて行こうとする、詳細な理由を説明してくれ。
63:ジョーカーアンデッド?(>>1)
あ、うん、もういいの? じゃあ、いくよ?
64:名無しのアンデッド
スルーされてて草
65:名無しの装者
>>64
してない。
おかげで落ち着いた。
防人のさだめと似たようなもの、と思っていた。
「解決!うたずきん」……怪傑だったか? とか、あっちと似たようなナニカだとも。
実際には、おまえたちにとっては舞台劇の演目のような、「もう逃げようがないもの」だと聞かされて、やっと理解しただけだ。すまなかった。
66:ジョーカーアンデッド?(>>1)
ええと、説明がまずかったのかな、これ。
「雪音クリスちゃんを置いて行こうとした」んだ。
だって、そうだろ?
誰かひとりを特別扱いしたら、「そうされなかった側」が雪音クリスちゃんを恨むようになるだけだ。というか、そういう命の選別みたいなの、本当はやりたくない。
さんざん殺しておいてなんだけど、殺さないでおいたら、それはそれで我が身可愛さで八方美人にも程があるというか、ふざけているからね。被害者に対して。
だから、雪音クリスちゃんを連れては行かない。「ボクからは。」
彼女が望むのなら、自分の足で来てくれればいい。
って思ってたんだ、けど。
………………特別扱いしないと、物語がどうこうとかあるの?
いちおうの最後の確認だけど。
67:名無しの装者
ある。
あるが、【シンフォギアの世界】の役割という概念で置換すると、「雪音クリス」という役割を担う人間は、聖遺物を扱うことさえできれば「だれでもいい」が正しい。
フィーネと呼ばれた女は聖遺物の適合者として、音楽家のサラブレッドである「雪音クリス」に着目しただけで、実際のところ「だれでもいい」と思っているはずだ。
68:ジョーカーアンデッド?(>>1)
ふーん。聖遺物って?
69:名無しのアンデッド
ああ! それって、ハネクリボー?
70:名無しの装者
おまえたちの言葉に置換すれば、の話だが。
「ノイズ」という“怪人”を倒すために必要とされる、「シンフォギア」という武器を作るための原材料、または「シンフォギア」になる伝説の武器だ。
71:ジョーカーアンデッド?(>>1)
………………………………………は?
72:名無しのアンデッド
>>70
あー、なるほど。
仮面ライダーで言うところの、「変身ベルト」みたいな。
73:名無しのアンデッド
おおもとが超古代文明の科学技術って意味では、ノイズもシンフォギアも、仮面ライダーと怪人の関係性と大差がないんだよな、そういえば。
74:ジョーカーアンデッド?(>>1)
………………マジで?
75:名無しの装者
おい待て、また新しいロジックが増えたぞ。
仮面ライダーと怪人の関係性ってなんだ? 説明しろ、誰か。
76:名無しのアンデッド
>>75
ようするになー?
「怪人と同じ力を使って戦う」んだよ、仮面ライダー。
ノイズを倒すために「ノイズになる」か、「ノイズみたいな別のなにかになる」か、そっちみたいに源流が同じ「シンフォギアを使う」かの三択になるわけよ。
77:名無しの装者
…………おい、おい。ちょっと待て。
融合症例みたいなものか? 仮面ライダーというやつは!?
78:名無しのアンデッド
そうだぞ装者ネキ。
その融合症例を作る原材料、ノイズでもいいけど。
79:名無しのアンデッド
装者ネキの脳破壊やめてさしあげろ。
どっちも知ってるから言うけど、当事者からしたら地獄だぞ、それ。
…つーか、毎回口調変えてるけどさ。
装者ネキ、あんたまさかアイツか? アイツなのか?
80:ジョーカーアンデッド?(>>1)
話を戻していい? 戻すよ?
どんな選択にせよ、彼女の気持ちを優先することにしたんだ。
NGOのみんながいた場所から出ていくときは、自転車じゃなくて徒歩で行くことにした。そのほうが追いかけやすいだろうし。それでね、
81:名無しのアンデッド
どうした、ジョーカーニキ?
82:ジョーカーアンデッド?(>>1)
疲れて座りこんだみたいだから、ママチャリの後ろに乗せてるとこ。
83:名無しの装者
………ひとつ、聞いていいか。
クリスがいた街からどのくらい歩いた?
84:ジョーカーアンデッド?(>>1)
地平線に建物が半分消えたくらいかな
85:名無しの装者
歩きすぎだ!!!
―――“涙が溢れるのは 君が傍で微笑むから”*2
どこまでも遠く、どこまでも近い彼方で。
その身ひとつ、軽やかに。雪音クリスは太陽を見あげた。
―――“抱きしめたくなるのは 君が傍にいるから”
空の向こうで、両親がいるような気がする。
そこに手を伸ばして、追いかけようとして……「めっ」と母親に叱られて、頭を撫でられて、そのまま地面に向かって、ゆっくりと落ちていく。
青空の世界から、追い出されていく。
―――“なぜに生まれて来たかなんて 考えてもわからないんだ”
荒涼とした、さみしい道路のうえ。
そこを歌いながら、自転車を押し続ける怪物と。
眠り続ける、涙で顔を腫らした自分がいた。
―――“だから生きる 魂燃やし生き抜いて 見つけ出す いつか”!
子守唄のように、己を鼓舞するように。
道化師は歌い続ける。その姿はどことなく両親と似通った、別物だ。
「―――“同じ時代に 今出逢えた仲間たちよ”
“我ら思う、故に我ら在り”――――」
ふわふわと浮き続ける、自分の意識が遠のき。
自転車に揺られている、自分の眼が開いていく。
「………ふわ、ぁ、」
「………………。」
道化師は黙っている。
あくびの音を聞いて、起こしたことに気がついたのだろうか。
あれだけ楽しそうに、自転車を押すつらさを誤魔化すように、歌っていたのに。
ひょっとして、あれは夢の中でのことだったのだろうか。
「………いいよ」
「……………うん?」
道化師は首を傾げる。
「……歌って、いいよ」
「………バレてたかぁ~、そっかぁ」
お気楽トンボ。
そう思わせるような、おどけた声色。
あれだけ「べそをかき」、苦悶の表情を浮かべていた怪物の顔。
その表情を、まるでこちらに見せようともしない。
「次は、どこ、行くの」
「I don’t know?」
手のひらを顔の横に持っていて、ひらひらとおどける。
「どうして、逃げないの?」
「えー? そりゃあ、もちろん」
きっと、この道化師は。
本当に笑わせるためには、どこまでも泣き言を隠し続けるのだろうな。
「―――“人生は誰も皆 一度きりさ”!」
ほら、まただ。
そう思って間もなく、
「―――“思いのままに”! ……だね。」
「…………そっか」
なあんだ、
おどける声色を演じきれず、にじみ出た真剣な声を聞き取る。
安全な場所だから、この怪物についてきたのか。
信じられる人間がいなくなったから、怪物を妄信して追いかけたのか。
きっと、そのどれでもないと。
雪音クリスは確信する。この「おとな」なら、そう期待する自分がいる。
仏経ともラップとも区別がつかない、珍妙な歌*3を歌いながら。
道化師は笑みを絶やさず、自転車を押し続ける。
視線の先には、わずかながらも見えてきた、なにかが燃えあがる煙。
自転車のグリップを握る、道化師の手が。
ぎりぎりと音を鳴らし、どこまでも次の街への進路を曲げない。
道化師の怒りと、嘆きの音。
そのすべてを耳に収めながら。
「道化師の舞台を見届けよう。」そう決めた。
だれよりも道化師に近い、最前席で。ショウが終わる、最後まで。
バル・ベルデの戦争が終わったら。
「彼はどこに行くのだろう?」と、自分の不安を認めながら。
ママチャリに女の子を乗せるだけで1話使うの初めてなんじゃが。