【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】 作:ウェットルver.2
雪音クリスと旅を始めて、それほど長くない週を跨ぎ。
これまでの道中から作った地図、勢力図を片手に、自分の
その中の。
ひときわ規模の小さなグループの活動範囲と、周囲の地形を見渡す。
「…………ここだな」
ついにバル・ベルデでも主要なテロリスト集団
その拠点にたどりつけそうだ。
エリアの簒奪、分断、市民を味方する遊撃隊への助力。
さすがに怪物故に堂々と、真正面から協力を申し出ることはしないが。
怪物故に、“悪魔”と呼ばれる者故に。
幼い少女同伴で信心深い者と会えば、彼女が“魔女”と呼ばれてしまう可能性があるので。
かなり気を遣ったが。
それらを何度も繰り返し、相手の逃走先を読んで容赦なく追い打ちをかけて。
ようやく、ここまで規模を縮小させたグループを、いくつか作ることができた。
あとは大型の組織を最後に潰す前提で、一時的な同盟だの軍部の一派閥との癒着だの、そういった余計なことをやられるとしても、この地域周辺の街が「複数の方角から侵攻を受けないように」できればいい。
いつだって強大な個よりも、足元を掬いにくる無数の群が厄介なものだから。
これだけでも、かなり治安を取り戻しやすくなるはずだ。
「…………うしっ!」
怪物の手ではなく、ひとの手で。
「……どうしたの?」
「ちょっと本気出すから、この辺で待っててくれる?」
「………やだ」
「危ないよ?」
「……………ひとがいる、よ?」
自転車のスタンドを立て、少女を座席から降ろす。
人差し指を立て、彼女を窘めるかのように口元に近づけ、「
「………ありがとうね」
「……うん」
そのまま、両腕から鎌を引き剥がし、勢いよく。
彼女の音感による賜物だろうか。彼女の、
「――――は? あいつ、なんで気づきやがった!?」
「聞こえるかっ、こちら
『ノイズもどきが気づきやがった!』、撤退を――――!」
迷彩柄の、ぽつんと浮かぶ丸いボールに向かって。
切っ先の軌道を飛ばし、潤いのある赤いものへと変換させた。
【世界観が】ジョーカーアンデッドに転生しました【迷子】3スレ目
12:ジョーカーアンデッド?(>>1)
どうしよう。クリスちゃんがクッソ強い。
13:名無しの装者
そうだろう、そうだろう、クリスはな、可愛くてな……うん?
おい、まだシンフォギアを纏っていないよな?
14:ジョーカーアンデッド?(>>1)
適当な森林地帯の、木の洞にクリスちゃんを隠してさ。
分断しておいた勢力のひとつを潰しに行こうとしたんだよ。
なんか後ろにつかれていたの、気づいてたみたいでさ。
耳にソナーでもつけてるの??? どゆことなの
15:名無しのアンデッド
落ち着けよジョーカーニキ。
だいたいわかった、クリスちゃんに助けられたんだろ?
16:名無しの装者
だから! 貴様らの!
そういう戦闘面での状況把握能力はなんなのだ!?
17:名無しのアンデッド
18:名無しのアンデッド
クウガ? クウガの転生者もいたの!?
19:名無しのアンデッド
だって俺ら、オタクって………なあ?
20:名無しのアンデッド
クウガぁ!? おまえよく掲示板見る余裕あるな!
21:クウガ(コテハン変更)
ここジョーカーニキのスレだから、オレ静かにしてるね。
22:ジョーカーアンデッド?(>>1)
あ、はい、お疲れ様です。
グロンギ*3退治頑張ってください。
23:クウガ
>>22
(*OΨO)b
24:ジョーカーアンデッド?(>>1)
>>23
(*^^)b
25:名無しの装者
………大物なのか?
26:名無しのアンデッド
神聖なる泉(心)を枯れ果てさせず、最後まで戦い抜けるなら。
簡単に言うと、ビッキーが連続殺人犯の古代民族と、なにひとつわかりあえずに殺しあいを繰り返すようなもんだよ。マジOTONA。
27:名無しの装者
(心が)化け物の間違いでは?
28:名無しのアンデッド
否定できねぇ。
29:ジョーカーアンデッド?(>>1)
ビッキーって誰?
30:名無しの装者
>>29
【シンフォギアの世界】の主人公……の、ようなものだな。
並行世界によっては、まったく別の装者が中心に立っている場合もある。
フルネームは……待て、これは言わないほうがいいのか?
31:名無しのアンデッド
>>30
あー、そういう話は隔離スレでやるか。
今、クリスちゃんのことで【シンフォギアの世界】関係のことはいっぱいいっぱいだろうしな。テロリストに私掠に走る軍部の末端にノイズ対策、やること多すぎだし。
つーか、ノイズが古代兵器で「バトル・ファイトがある」ってだけでも、こっちで話してもジョーカーニキが混乱するだけの案件が多すぎるからな………。
32:ジョーカーアンデッド?(>>1)
隔離スレ? 古代兵器?
33:名無しのアンデッド
イッチは見なくていい。考えるな。クリスを頼む。
>>31 つーか書くなやテメー、今そっちの世界行くから覚悟しろ♡
34:ジョーカーアンデッド?(>>1)
>>33
はい。
35:名無しのアンデッド
ぴぃ、
36:ジョーカーアンデッド?(>>1)
ふーん、そっか。
クウガみたいな子がいるのか。楽しみだな。
37:名無しのアンデッド
やめ、
38:ジョーカーアンデッド?(>>1)
あっ、あれが「ノイズ」?
ふーん、これがノイズなのね。
卵を思わせる愛嬌あるフォルム。
スーパーロボットのカメラアイを思わせる意匠。
なんとなくテディベアを連想させなくもないシルエット。
そのうえでカラフル、どことなくファンシー。
え、こんなのがノイズなの?
ぽかんと口を開けながら、ジョーカーアンデッドは目を瞬かせる。
事実なのだろう。周囲の人間たちは悲鳴をあげてノイズから逃げ惑い、逃げた先にいるグロテスクで等身大の怪物を見て、さらに混乱する。
ノイズを見て、(
奇しくも、ノイズという【シンフォギアの世界】の脅威が眼前にあることで、さらなる未確認生命体への恐怖心が麻痺してしまったのだろう。
さすがのテロリストとて、なんらかの意志があるらしい未確認生命体よりも、なんの感情も読み取れないノイズのほうが恐ろしいのか、武器を放棄してジョーカーアンデッドの横を通り過ぎる。
気のせいか、ジョーカーアンデッドに向ける目線は、これまで浴びてきた目線よりも敵意や拒絶の意志が希薄なものとなっている。なぜか信頼された気すら錯覚させる。
しかし、ここまで愛嬌のある怪物を人類の敵であると認識するには、もう少しグロテスクさが足りないような。
そんなふうに捉える余裕があるほど、恐怖を感じない。
見た目の恐ろしさであれば自覚はあるが、みかけの恐ろしさを伴わない、ノイズほどに中途半端な愛嬌を持つ、生き物っぽくないし兵器っぽくもない、の微妙なラインを見せつけられて、「実は古代兵器です」と言われても理解が追いつかないのだ。
さらり、と。
ひとの形をした灰が、煙となって通り過ぎた。
ひとだったなにかが、かわいたものとなって消えていく。
あ、でも、そういうことなら理解できるかも。
しばらくして、頷く。
どちらでもない、ということは。
人間の知性では言語化できず、正体不明な外観を持つ、ということでもある。等身大の怪物で動植物じみた外見で、苦しみばった表情を基本形とし、さらに人間の衣装に近い意匠も肉体にある、それが各種族の文明の礎となる
相手は、人間に理解される存在ではない。
怪人は、人間に理解可能な怪物であって。
ノイズなる、魂すら持たない古代兵器には。
なんの慈悲も持たなくてよいのだ、と。
「――――っ!」
ぱぁん、と。
脳裏で弾けたなにかが、ジョーカーアンデッドの喉奥を震わせる。
死の鎌は
あらゆる生命のことごとくを滅ぼす「他種族の進化を否定する」現象こそJOKERたる所以だとすれば。あれに進化を望み、進化できないがゆえに他種族を憎むような本能などない。まともな敵意すら持っていない。まともな生命体ですらない。
バトル・ファイトに参加する資格など、最初からない。
それぞれの種族の
ふざけるな。
これから雪音クリスが、その
そんなモノだというのか? ここまで空っぽな虚無の敵だというのか。
ジョーカーアンデッドは咆哮する。
“あれは存在してはならない。”
“バトル・ファイトの障害を排除せよ。”
―――そんな統制者の
そうだよ。でも、だからこそ、現実にしたいじゃない。
本当は綺麗事がいいんだもん。
人質にできるかと思った。
軍服を濡らす少女の涙は、怪物のために流されていた。
己を人質にしようとするものよりも、もっと恐ろしいものへ向けられていた。
眼前の少女を抱きかかえたまま、少女の手を伸ばす先を、目で追う。
緑色の体液。もしや血液なのだろうか。
それを体表から伝い滴らせ、ノイズを相手に、自分たちを守ろうとする“怪物”を見る。あれだけの銃火器で傷ひとつ与えることも敵わない“怪物”が、同じ無敵のノイズを相手に傷つきながらも、あれだけ敵対した自分たちごと「少女を守ろう」と立ちあがる。
ちいさく、日本の
右腕を前に、左腕を腹部にむけたポーズをとると、なにかを呟いて前に進む。
「………くうが?」
少女がつぶやく。
“怪物”の声を拾えたのだろうか、首を傾げて“怪物”を見る。
「………ジョーカー、なんて言ったんだろ」
ジョーカー。
そうか、あの“怪物”はジョーカーと呼ぶのか。
「お嬢ちゃん。
あいつは、ジョーカーって言うんだな?
「うん」
トランプ・ゲームの最強の
ノイズに対抗できる、たった1枚の。
ああ、ちくしょう、そういうことかよ。
天を仰ぎ、太陽を見つめ、果てにいるやもしれぬものへと祈ると。
少女の背中を叩き、“怪物”に向かって、
「―――負けるんじゃねぇぞ、“ジョーカー”。」
ありったけの声で、叫んだ。
自分にとって、それは、己の聖戦が終わることを意味している。
己こそが罰せられるべき“悪”であると、神に告白することにも等しい。
そうだとしても。他の仲間に、部下に、すべてから見捨てられるとしても。
こいつにだけは、逃げてはいけないのだと。
男の最後の矜持が、仮にも思想を掲げた者としての
ジョーカーと呼ばれた“男”は。
その声に応じて、「まだ戦える」と叫ぶように。
親指を立てたような、気がした。
39:ジョーカーアンデッド?(>>1)
クウガニキありがとう、思い出せた。こわかった。頑張れたよ。
40:クウガ
(*OΨO)b
「RED DESIRE」……いいよね。
クウガの。
蛇足。
クウガと「男」に使用したカラーコードは、color:#d20000です。