Re:× ゼロから止まった異世界生活   作:這いずる蛞蝓

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第一章 『常人≠狂人≠■■』
第1話 『始まらないなら終わりは無い』


 

 

 

瞬きを忘れてしまうほどこの世界が美しいかったという訳ではない

 

 

 

この世界が自分の常識が何一つ当てはまらない、異常な世界であったが故に、脳が意識を保つ以上の事を出来なかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

着用した覚えの無いジャージに、買った覚えの無いコーンポタージュスナックとカップ麺

 

 

 

 

ここ数年切った覚えの無い髪に、自身のものとは思えない程にそこそこ鍛えられた体

 

 

 

 

周りには現代では見かけない馬車のような物や電柱の無い道路、そして目に飛び込んでくるのは果物屋

 

 

 

 

果実屋の赤い果物は、リンゴではなくリンガと呼ぶ。値札を思わしき板に書き記されている文字は日本語ではなく、ましてや地球上のどの言語とも合致しない

 

 

 

 

 

「おい、大丈夫か? 」

 

 

 

 

 

心配そうにこちらを見つめてくる緑色の髪をした男の名前はカドモン。確か妻と娘が居た筈だ

 

 

 

 

 

俺はそれらを知っていた

 

 

 

 

 

「は? っは、あぁあああ! 」

 

 

 

 

 

俺はカドモンの言葉に返答すらせず、奇声を上げながら街の外へとただひたすら走った。不味い、非常に不味い。もしこの記憶(知識)が正しいとすればこの後──

 

 

 

 

 

『眠れ、永久に』

 

 

 

 

 

氷のように冷たいの声が響き渡る。それから刹那もしないうちに、白が街を包み込んだ

 

 

 

 

全身から寒気が、痛みが襲ってくる。どうにか身体を動かそうとしても指一本動かない

 

 

 

「い、いやだ! 死にたくな────ぁ 」

 

 

 

 

生きようと、必死にもがいても体はまるで永久凍土の氷に包まれてしまったかのようにピクリとも動かない

 

 

 

 

凍てついた眼球が最後に捉えたのは、街を滅ぼす、白き終焉の獣の姿だった

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

黒いまどろみの中で、俺は彼女の姿を感じる

 

 

 

 

何か言葉を発しようと試みるが不可能だった。声を出すための声帯がないのだ。けれども彼女の言葉はおぼろげながらに聞こえる

 

 

 

 

『貴方じゃ無い。だけど貴方は────』

 

 

 

 

『愛してた。愛したかった。愛せなかった。愛さなかった』

 

 

 

 

寂しそうに彼女は小さく笑い、頬に残る温度が小さく口づけを認識させる

 

 

 

 

 

『生きて、死なないで、──愛してる』

 

 

 

 

薄れゆく意識の中で、一目顔を見ようと無理矢理目を開き、触れようと手を伸ばす

 

 

 

 

重く薄らと開いた目が捉えたのは、彼女が悲しそうに泪を流す顔だった

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、嘘だと言ってくれよ」

 

 

 

 

 

 

昼間の日差しに照らされて、忙しなく動く街の風景を横目に、俺は路地裏に逃げ込み頭を抱えてうずくまる

 

 

 

 

 

「これってアレか....」

 

 

 

 

 

いやだ。なんでだ。そんなありきたりな言葉で今を否定したい。けれども言葉で時は戻らない

 

 

 

 

 

「異世界召喚キター....だなんて、喜べねぇよ。よりにもよってRe:ゼロだなんて....」

 

 

 

 

 

Re:ゼロから始める異世界生活。ひきこもりの凡人、ナツキ・スバルがコンビニ帰りに異世界へと召喚され、死をトリガーに発動する『死に戻り』という魔女からの祝福を手に、死んで死んで死に続けて、何度も世界を繰り返し、自身の屍山を築きながら、困難をギリギリで切り抜け、幸せを手にする物語

 

 

 

 

 

 

客観的に見る分にはとても面白いモノだった。特に優れていない凡人が、足りない知恵を巡らせ、人に助力を求め共に最悪の結末を覆すために、運命に抗うストーリー。それは俺の心をおおいに踊らせた

 

 

 

 

 

 

しかし主観的に見てみるとただの地獄でしか無い。死をトリガーに発動する死に戻り? 

 

 

 

 

 

凡人は、人間はそう何度も死を経験出来るような精神構造をしていない。痛み、恐怖、後悔、絶望、エトセトラエトセトラ。いとも簡単に精神を崩壊させてしまうのがオチだ

 

 

 

 

 

たとえ、なにかの奇跡が重なって死の要因を取り除いても、自身の死を引き換えに手に入るのは束の間の休息だけ、また少しすれば死は背中を追いかけるようにして着いてくる

 

 

 

 

 

 

 

何故それほど頑張れるか、その理由が、

 

 

 

 

『君を助けたい、君の力になりたい。君が好きだから』

 

 

 

 

なんて言うんだから笑いを通り越して恐怖を、狂気を感じる

 

 

 

 

 

「っつてもこの場合は憑依か? 俺ってば『ナツキ・スバル』になっちゃったよ! 死んでも頑張って君を救うよ! ってでも言えと? ハハッ、無理だね」

 

 

 

 

 

さて現実を観るとしようか、一度冷静に今の状況を確認する……間もなくどうやら最初のイベントが発生したようだ

 

 

 

 

 

「おいテメェ、よくも逃げやがったな....」

 

 

 

 

「さっきは精霊術者が居たが今は一人みたいだな」 

 

 

 

 

「逃げられると思うなよ....」

 

 

 

 

 

トン、チン、カン。ナツキ・スバルの三回目の死因となった集団だ

 

 

 

 

 

ナツキ・スバルが対峙してきた中でも最弱クラスのチンピラ達だ。逃走に徹すれば俺でもなんとか逃げ切れる

 

 

 

 

 

チンピラ達は血走った目で俺を睨み付ける。はは、今にも人を殺しそうな目だ。まぁ、死なない程度に頑張っていこうか

 

 

 

 

 

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