世界が形を再構築してゆく。その奇妙な光景を俺は、
まず世界の全てが影に飲み込まれた。空の高く遠くで、強く光り輝いてきた一つの星が影に飲み込まれた時。世界が闇に堕ちて絶対的で完全な無が世界を支配する
「愛してる」
そんでもってお馴染み嫉妬の魔女のご登場だ
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる──愛してる」
騒音レベルの愛を叫んでも中身がねぇ猿真似じゃ響かねぇんだよ。愛し人すら間違えるようじゃ、お前はサテラと似ても似つかない。皮だけの存在なんだよ。ははっ、調子にのんなよクソッタレが
世界が独り善がりの愛を嘆き押し付け去って行く。時は戻り、異物を除き、全く同一の新たな世界が始まった
灰の焦土と化した森林には緑が芽吹き、暗く仄暗くなっていた雲は本来の白さを取り戻し、地面に空いた深い大穴は、まるで、存在自体が嘘だったかのように埋まる
全て全て何もかも、世界はいくつかの不具合を抱えながら、元の姿を取り戻した
さぁ、現状確認を行おう。薄々気が付いていたのだが、どうやら服は燃え尽きてしまっていたようだ。おかげで今の俺は全裸。何か服が欲しいと思うと、手元にはジャージ上下に靴下、シャツ、パンツとスニーカー。慣れ親しんだとも言える初期装備が何処からともなく現れたので即座に着用。ゆっくりと周りを見渡してみる
目の前にピエロメイクの変態は居ないし、地形の破壊は発生していない。つまりは世界の巻き戻し、ナツキ・スバルの死に戻りは成功したと言う事だ。そしてここは第二章、2週目の世界。ナツキ・スバルは何故死んだのか訳が分からず、原因を探るために一週目と同じ行動を取ろうとする
その姿は自分一人が頑張って、何度も繰り返せば幸せが来ると信じている、無知無力モラルの無い約束も守れない恥の塊。で、あるにも関わらず輝きを放つ一等星。なんとも矛盾した人間だと思う。だからこそ美しく醜いのだが
残念な事に道中で買い集めた保存食や魔石等は引き継がれていないようだ。辺り一帯を探してみたが、それらしき物は見つからない。残念、残念。本当に残念だが仕方ない
結局、新たに引き継げた物はビニール袋の中にしまってあった仮面と、ジャージのポケットに入っていた聖金貨5枚と火の魔石2個。不幸を嘆きたい気持ちが出て来るが、少しでも引き継げてるだけ万々歳だと思い直す
さて、今からどうしようか。二週目の世界でのナツキ・スバルの死亡地点は屋敷の中。魔獣に噛まれ刻まれた呪いを受発動され、もがき苦しみ助けを求め屋敷を彷徨っている最中レムのモーニングスターにより死亡
つまりこのままここで待機していれば、一週目と変わらない結果が訪れる。ロズワールに発見されてしまい、千日手の勝者の居ない戦いを強要されてしまう。それは少し面倒だ
俺は即座にこの場から立ち去る事を決めると、ある程度道と呼べるように整備された通りをアーラム村を目指して歩いて向かった
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
魔獣に遭遇する事もなく、誰ともすれ違わずに、俺はアーラム村にたどり着いた。現在、屋敷には原作主人公が居る筈なので、何かの拍子に原作主人公が村に降りてきた場合、偶然顔を合わせてもいいように仮面を装着し顔を隠しておく
さて、どうするか。正直アーラム村と言えば第三章の惨殺シーンの印象が強くてそれ以外は特に印象に残っている物、興味のある物は特に無い
今は第二章、2週目の世界なので、もう少し待たなければペテルギウス達に合流する事も難しい。考え無しにその場の勢いで魔女教を飛び出したのは間違いだったかもしれない。しかし今悔やむ事に意味は無い
幸いにも村の子供は距離を取り、遠目に俺の方を警戒した様子で見ているだけなので、子供に絡まれて行動を縛られる事は無さそうだ
一先ず俺は、今晩の寝床を確保する為に村の家を何軒か回ってみる事にする。そうと決まればまずは目の前の家に近づき、コンコンコンと軽い調子でノックをし、家の家主が出て来るのを待ってみる。しかし体感で五分程待ったが家主は一向に出て来ない。どうやら留守か、それても眠っているのか
しかし押し入って問題を起こす訳にはいかないので隣の家に移動し、またノックを三度繰り返して家の中からの返事を待つ。こんどは少し待っていて欲しいと言う風な返事があった後、しばらくして若い青年が扉を開き現れる
「こんにちは。どうかしましたか? 」
「すんません。突然悪いんだけど一晩泊めてもらえねぇかな? 」
軽い調子でみんなに愛される狂人を演じ、見様見真似の言葉を用いて青年に非常識な頼みを言う。本来であれば相手にされず終わるか、怒鳴られるか。どちらにせよ、要求が通る訳が無いのだが、いくつかの条件を整える事さえすれば、こちらの要求はすんなり通る
「いや! 待ってれ! 言いたいことはわかる。でも俺の話を聞いてから判断してくれないか? 」
「は? はぁ....? 」
「っとその前に自己紹介からだな。俺の名前は....■■■、珍しい品を扱う商人をやってる。今はカララギからある物品を届けてる最中なんだが....道中、魔獣に襲われて積み荷を駄目にされてな....とりあえず王都に向かおうと思うんだが、ここまで我慢してきた疲労が一気に来ちまって正直大分キツい」
最初に相手に怪しい人物だと思わせる。使い捨ての偽名を使い、原作主人公への対策も忘れてはいけない。これは後で別の印象で塗りつぶし、関係を錯覚させる為のかさ増し分なので少しぐらい矛盾があっても大丈夫だ
「そこで何日かこの村で休息を取らせて欲しいって言う最初の頼みに戻る訳だ。もちろん、タダでとは言わない。だけど手持ちもあんましあるわけじゃ無いから、聖金貨1枚で寝床だけでも用意してもらえないか? 」
すかさず一日を何日かと曖昧な表現に言い換え、目先の大金を代金としてチラつかせると、大抵の奴は面白いように忠実になる。結果として俺は、聖金貨一枚を支払い、使われていなかった空き家を数日間借り受ける事に成功した
床があり壁があり屋根がある。所々の損傷箇所は存在せず、目に付いたのは少しの汚れぐらいの物。俺はコンビニ袋を部屋の隅に置き、上着のチャックを開いて床に寝ころがり、現状、何をすればいいか、何が、出来るのかを再確認してみる
「っと! その前に...」
ふと、立ち上がって壁をコンコンと叩いて強度を確認してみたが、さすがに現代の建築物のような耐震性、防音性がある訳が無く、その音は思ったよりも響き、俺は不審がられてやしないだろうかと少しの不安を感じた
けれども、相手の感情なんて他人には分からないし、元いた現実世界、果てやここ、異世界でも....いや、死者の書、又は暴食の権能を用いれば十分可能だったか
それにしても、久々に一人でゆっくり考える時間を得た気がする。しかし何を考えると言うのだろう。既に俺は知っている。この物語の始まりを、進行を、結末を。全てを知ってしまっている
その場で即席の筋書きを建てたとして、その通りに進行させる事は簡単であるし、逆に物語を破綻させ、ナツキ・スバルをIfルートに、異なる大罪に染め上げる事だって出来る
路地裏のチンピラから火の大精霊。宮廷魔導師でも剣聖でも。大罪司教は勿論。大罪魔女も、ナツキ・スバルだって。殺せるだけの知識を、弱点を、好きな物も、嫌いな物も。全部全部知っている
まるで全知全能の神にでもなったかのように錯覚するような知識量が思考を巡らせようとすると奥底から湧き出してくる
「いや、おかしいだろ」
違和感。違和感が生じた
それは必然的に生じる筈の違和感が、死の副作用により遅延され、体に回るのが遅れただけの。麻酔のような一時的な停止であったが、いくらかの日時が経ち少しすれば簡単に気付ける程度の、その程度の、お粗末な物で
お世辞にも上手く騙せているとは言えない。ただ認識を逸らさせている程度の物であり、程度の低いと言っても足りぬような。まるで子供が必死に隠している物事を暴いてしまったような、そんな感覚がした
「なんてな」
知るか。お前が勝手にした事だろう
しかしどうするか。俺の不死性に脆弱性がまた一つ発見されてしまった。圧倒的格上相手には殺され続け、遠距離の多人数には近付くことすらままならず、重い物が落ちてくれば普通に潰され、体の修復の際には楽観的な思考回路を会得してしまう
ハッキリ言ってしまえば、俺はただ死なないだけの凡愚な人間なのである。それがどうしてあれほどまでに膨大な記憶を、知識を、情報を記憶しておける事が出来るのか。どこか重要な部分が抜け落ちてやしないだろうかと、いくら整合性を確認してもそれは成り立ってしまっていて、何度確認してみても綻びは生じてくれはしない。それがより、違和感を補強する
何故だ? この知識は何処から流れてきている? 疑問に対しての答えは既に頭に浮かんでしまっていた。クエスチョンに対するアンサー。その正解はオド・ラグナだ。しかし部分的に靄がかかってそれ以上がよく分からない
何故だ? 再び疑問を浮かび上がらせ、もう一度記憶の再確認を行ってみる。すると途中、まるで切断されたかのようにバッサリと浮かび上がらない部分が存在している事に気が付いた
断線が起こっているのは第三章。それ以降の話が全く見えない。断片的な情報であれば簡単に、自由に思い出せると言うのに、少し深い情報を収集しようとすれば、何者かに阻まれるように壁が生じて見えなくなる
「んー? ロックがかかってるのか? そりゃまた何で、誰が、何のために? 」
どうやら正確な情報は一章先までしか思い出せないらしく、何度試してみても第四章の正確な知識は頭に浮かび上がらない。第四章の断片的な情報なら思い出せるのだ。だけど詳しい事を考えると全然駄目
俺はコンビニ袋からコーンポタージュスナックのお菓子を取り出し、開封すると書き込むようにそのまま乱雑に、飲み込むような形で食べ進める
詳しい情報が思い出せない事で何か大幅な、修正不可能のミスをしでかしてしまうかもしれないと、少しの不安を感じたが、そもそも断片的な情報だけでも大きなアドバンテージになると思い直す
「しっかし、どうするかねぇ...」
しまった。どうやら途中で考えが脱線し、一人妄想を初めてしまっていたようだ。これだけの時間を無駄にして、まだこれからの事を一つも決める事が出来ていない。とりあえず、明日の事だけでも決めてしまわなければ。そう思い考えようとした。考えようとはした。しかし眠気が来たのだ
不眠不休で川に流され続けた時は一度も感じなかった、眠気が来たのだ。久し振りだなぁと眠気特有のふわふわとした、現実と非現実の境界が薄れて、崩れて、乱れで行くような。そんな感覚を楽しみながら、瞼が閉じでは開いてを繰り返し、視界が二、三度チカチカすると、俺は多分、眠りについた
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
臨場感のある映像が映し出される
扉を開けて、声を出した。正直に言えば怖かった。だけど彼女が心配で、怖さが恐ろしさに変わって、いてもたっても居られなくなって、薄暗く視界の悪い、建物の中へと足を踏み入れた。それから数歩歩けば、ポツリ、ポツリと血痕が見え始めた
心拍数が上昇し、これまでの人生で感じたことの無いような、酸素が無くなるなんて言葉じゃ生易しい、呼吸を無視して、短い距離を急ぎ、血痕を辿る
祈っていた。どうか無事で居てくれと。血痕を辿った先に居たのは、見知らぬ巨体の、死体だった。正直、安堵した。それと同時に酸っぱい液体を床に吐き溢した
とにかく、早く。彼女を連れてここから逃げ出さなければ。彼は弱腰になりつつも恐る恐る、最大限出来る限りの急ぎ足で彼女の名前を呼んで、返事を欲しがった。しかし帰ってきたのは返事では無く痛みだった
腹に何かが当たる感覚がしたあと、視界がゆっくりと低くなり、それまで以上に息が苦しくなる。熱い。腹部の熱が、毒のように全身に回って行き、鋭い痛みと共にゆっくりと意識を奪い去ろうとして行く
それでも、ここで終わってしまうのを諦めきれず、目を見開くと、彼女は、口から血を流し、複数の箇所に怪我を負った状態で隣に倒れていた
名前を呼ぶ。彼はその名が、彼女の本当の名では無いと知らず、彼女の寂しい優しさを知らず、ただただ喚く子供のように、縋るような、迫るような声で、かすれかすれになりつつも名前を呼ぶ。何度も、呼びかける
彼女の手がピクリと動いたような気がした。まだ、生きてる。そう確信を持った彼は、床を這いずり彼女に近付き、彼女の手に、手を重ねるようにして手を握る
まだだ。まだ、死ねない。この思いを、覚えて居なくちゃならない
死の匂いが漂う、薄暗く活気のない貧しい者達の住まう領域に建てられた盗品蔵にて、彼は決意を固めたらしい
「待っていろ」
いや、きっと固めていたのだろう。決まっていた、決めていたと言った方が正しいのかもしれない。それが正しい認識かどうかは彼しか知り得ない
「俺が、必ず」
血は流れていた。贓物は腹から姿を覗かせていた。死は、着々と彼に近づいていた。それでもなお、彼は己に呪いを刻み込むのを辞めようとしない
「お前を」
背負って、拾って。重くなった体を何度も何度も痛め付けて、屍を積み重ねて。何度でも、繰り返して。次は必ず、君を
「救ってみせる」
救ってみせる。それは押し付けだ。自己満足だ。不慮の事故で彼女は死ぬ運命だったのだ。けれども彼は抗った。運命様上等だと、打ち勝って見せたのだ。決まっていた結末を、覆してみせたのだ
それはまさしく、
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映像が切り替わる
轟々と空に暗影が立ち籠める。それは四百年前、遙か昔の過去の事。彼は何度も何度も繰り返した。試行錯誤を重ねに重ね。多くを救う事を諦め、ただ一人。彼女の為に全てを尽くした。それでも足りなかった
「大丈夫だ。まだ何か方法がある筈なんだ」
そんな物は無い。自分で解っていた。常識の範囲内でも、範囲外でも。明らかに倫理観を無視した行為ですらも、もう方法は試し尽くした。それでも、無理だったのだ。無駄だったのだ
「だからもう少し、もう少しだけ耐えてくれないか? 」
憎い憎い。彼女に苦しみを強要するこの世界が、いや、彼は自分自身を憎悪した。解決策が無いと理解していながら、終わりのない苦しみを与え続ける自分自身を、殺したくて仕方が無かった
「大丈夫。大丈夫だ。次こそは」
そうやって引き延ばして、引き延ばして、結局訪れたのは破滅でしかなかった。彼女は人格を乗っ取られ、魔女達は無残に殺害され。力を増した別人格は世界の半分を飲み込んでしまった
もう、時間が無いと一人が龍剣に手をかけた
ここまでだと、一人が双翼を羽ばたかせ、上空から機会を窺い始めた
「ま、待ってくれ! もう少し、あと少しだけ」
遅い。既にその段階は過ぎてしまっていると、現実を突きつけられた。わかってた。ずるずると何時までもあんな不安定な状態が続くわけが無いとわかっていた。それでも、彼女に死んでほしくなくて。どうしても生きててほしくて
「...わかった。だけど殺すのは駄目だ。そもそも、無理だ。だから封印する」
嘘だ。下手に封印するよりも、今の段階でなら、さっさと殺した方が簡単だ。別人格が目覚めてからそれほど時間が経っていない今なら、今ここに集結した勢力で十分殺せる筈なのだ。それでも彼は嘘を吐く
仲間達も、それが嘘だと解っていたのだろう。けれども誰も、その事について何かを言おうとする者は現れなかった
急ぐ、ただ急ぐ。小手先だけの権能を操り、その場しのぎで影の攻撃を避け、少しでも速くと、後先考えず彼女の元へと急ぐ
「ごめんな。俺じゃ君を救えなかったみたいだ」
何を言えば良いかも解らず、思った事だけを、紫紺の瞳を見つめながら、言葉として吐き出して。場違いに安心しながら、落ち着いた感情でゆっくりと言葉を紡ぐ
「でも大丈夫。今度こそ、今度こそは大丈夫だから。俺じゃ無い俺が、きっと君を救ってくれる」
自身の身を犠牲にした他力本願とでも言えば良いのだろうか。いいや、それではまだ足りない。そんな表現では温すぎる。ただ一人の為にソレを行うのは、不釣り合いな事を、この世界に住まう無関係な人々を巻き込んでまで行うのだ。普通は、駄目なのだろう。常人なら、こんな選択をしないのだろう
だけども彼は、常人では無く、賢人であった。悲劇を何度も乗り越えてしまった、
「だから待っててくれ」
それは苦痛の強要だ。地獄の強制だ。彼女を苦しめ続ける事でしか無い。いっそこのまま死んでしまった方が楽なのかもしれない。だけど、だけども。たとえそれが無責任だとしても、彼女に生きていてほしくて
「俺が、必ず」
これは決意なんかじゃない。愛なんて綺麗な物でもない。汚れ、穢れ、悍ましい。呪いの言葉だ
「救ってみせる」
絶対なんて無い。だから何度も繰り返す。次に託す。死体をいくつも積み重ね、屍の山の向こう側へと進むために、ハッピーエンドを掴み取るために、何度でも人の想いを踏みにじる
「なに、四百年なんてあっと言う間だ。俺も一緒に居るから、一緒に待つから。だから、安心して眠っていてくれ」
優しい笑みを浮かべ、人間らしい表情を少しの間浮かべた後、彼は表情が抜け落ちたように真っ新な顔をして、その身を黒い感情で包み、怒りを静かに放出する
「おい、嫉妬。どうせ今のも聞こえてんだろ? そんでもって怒ってる訳だ。みっともなく■■■■に嫉妬して、何で何でと駄々をこねる」
まるで大人が子供を叱りつけるように、ただし、決定的に優しさの欠如した、損傷したような、説教とは違う。子供同士の喧嘩にも見える無言と罵声の応酬が始まった
「愛してだぁ? 馬鹿かよ。お前の事なんて愛してやるか。身の程知らずも大概にしろよ。俺が愛するのはオンリーワン。■■■■ただ一人だけだ。そこにお前が入り込む余地なんて一欠片も空いちゃいないんだ」
一瞬、青い髪の使用人の姿がよぎったが、意図的に思考をシャットアウトする
「だから返して貰うぞ、嫉妬。俺は次のデートが楽しみで仕方ないんだ。お前なんて眼中にないんだよ」
影が大きく姿を揺らし、威嚇するように甲高い声を叫ぶ
「俺が、必ず」
影の波が彼を飲み込んだ。彼は無抵抗のまま影に飲み込まれた瞬間、プツリと映像が途切れた
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──まだ、足りない
賢人の声がした。四百年前、死したはずの、消滅した筈の、その人の声がした
──彼女を救うには、それでは力不足すぎる
その声は酷く冷たく、嘆き、侮り、軽んじていて。見下しているような声であり、期待と声援と恐怖の入り混じった声でもあった
──謎の不死の性質については、ある程度の有用性があるが...いや、それはいい
少し、人間らしく悩んでいるような姿を見せる賢人に対し、俺は何処かで視たことのあるような、そんな妙な既視感を覚えた
誰だ。お前は誰なんだ。頭の中で何度も何度も記憶を精査し、一人一人と照らし合わせる。ナツキ・スバル、違う。菜月賢一、違う。アルデバラン、違う。パック、違う
──今は、まだ────
記憶が薄れ、意識が現実へと回帰して行く。今、ここで答えを提示したとして、その記憶を保持する事は不可能なのだろう。それでも、だとしても知りたい。俺の中の強欲が、それを求めている
違う違う違う違う
レイド・ヴァン・アストレア、違う。ホーシン、違う。シャウラ、違う
フリューゲ
──おっと、そこまでだ。今回は時間切れで脱落だが、次はもっと大胆な活躍を期待してるぜ。これまでみたいに、いや、これまで以上に、努力して、不要なモノを捨てて、試行錯誤を繰り返して。いつか、最善でなくとも。なんでも良いから彼女を救えるぐらいの何かを得るために、どしどし頑張ってくれ
聞き覚えのある言葉を最後に、俺は意識を失った