戦争狂じゃないんです!!(リメイク版)   作:ベーコンエッグトースト

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私は無限に(創作を)求め、無限に(読者の皆様によって)求められるのだ。

無限に(フラグを)滅ぼし、無限に(フラグによって)滅ぼされるのだ。

だから私は、エタりの危機と永遠の五月病を超え今ここに立っている。

さぁ、新話が来るぞ...。クソのような茶番と共に...!!




それでは本編をどうぞ!!


ながもんとうぉーもんがー

『長門や起きなさい』

 

 

───ん...?

 

 

『長門や』

 

 

(声...?)

 

私はそっと目を開けた。

 

 

「お前は...、誰だ?」

 

 

ぼんやりと誰かが見える。

 

『私はあなたの艤装、長門艤装の精です』

 

 

オッサンが中に浮いていた。

 

......。

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

『あぁッ!!逃げないで!!って言うか引かないで!!』

 

 

 

 

ひとまず冷静になってから話を聞くに、どうやらこのおっさんは私の艤装の精?らしい。

 

(こんな薄汚いオッサンが私の艤装の精とは...。どうせならロリっ子の方が良かった...)

 

地味にショックを受けた私そっちのけでおっさんは話を進める。

 

『今日は頑張る君に私、応援しにまいりました』

 

『さぁ、この精霊様に何でも言ってみんさい、ドバーっとね』

 

 

む?そういうことなら無いわけでもない...。

 

 

「そっ、それじゃあ精霊殿。一つだけ聞きたいことがある」

 

「ここの所、少々過激なスキンシップを駆逐艦の子たちにやろうとすると保護者組によって遠ざけられてしまうのだが私のこの不幸はこれからも続くのだろうか?」

 

 

『まぁね』

 

 

返ってきた返事は私にとってあまりにも無情なものだった。

 

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

『まちなさい、長門!!今のノーカン!ノーカン!』

 

 

『長門、よく聞きなさい寝ている場合じゃないよ』

 

『今君の愛する駆逐艦娘達に、ゴイスーなデンジャーが迫っているところだからね』

 

 

 

「ゴイスーって?」

 

 

『スゴいってこと』

 

 

「デンジャーって?」

 

 

『危険なこと』

 

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハ...ッ?!!!!」

 

 

 

私は今度こそ目が覚めたようだ...。

 

(全く...、ココ最近は駆逐艦娘達と戯れたり、駆逐艦娘達と遊んだり、駆逐艦娘達を愛でたりといった幸せな夢しか見てなかったのに何故薄汚いおっさんの夢なぞ...)

 

 

てッ?!!!!などと言っている場合では無い!!

 

あの精霊?の話が正しければ、今日駆逐艦の子達が危険な目に遭うのだ。

 

駆逐艦娘達へ危険が迫っていることを知りながら見過ごす?答えは否!!断じて否である!!

 

(そんな目に遭わせるものか!!私があの子達を守り抜く!!)

 

 

 

ということで愛するロリっ子たちを危険から守るべく、私は駆逐艦の子達に今日の予定を片っ端から聞いてみることにした。すると今日出る予定があるのは第六駆逐隊の子達のみだと言う。

 

なんでも鎮守府近海で不審な影をとらえたとの事で、偵察を目的として出されるらしいのだが...、正直不安である。

そこで私は、何がなんでもついて行くために計画を練り始めたのだった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

まず私の計画の第一段階として引率の天龍を何とかする必要があったので...、

 

「おう、なg...ッ?!!!!」

 

「フンッ!!」ガッ

 

 

正面から強襲し一撃。縄で手足を縛り、口をガムテープで塞い...「ンーッ!!ンーッ!!ンーッ!!」塞いだ後、シーツで包んでロッカーに突っ込む事で処理した。これは日頃目の前でイチャつかれている怨m...コホン。

 

 

もちろん駆逐艦娘達の安全がかかっているので仕方の無いことである。

 

 

 

こうなれば後は簡単だ。

 

 

駆逐艦の子達を何とか言いくるめて私が引率役となり沖合まで乗せていってもらい、鎮守府からこちらが見えなくなるくらいの距離まで行ったところで艤装を展開すれば良い。(いくらこの時期書類仕事が忙しく提督が見送りに来れないとはいえ、流石に私の艤装は大きすぎて目立つからな)

 

 

これこそが、私の考え出した完璧かつ大胆な作戦である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________

 

 

何とか駆逐艦の子達を言いくるめることのできた私は今現在海の上にいる。

 

 

天龍が体調不良故に来ることができないため、かわりに来たことを伝えた時の第六駆逐隊の子達の心配そうな表情は天龍へ対する嫉妬と同時に深い罪悪感をもたらしたが『これもこの子達のため』と思い、そっと仄暗い感情を胸の奥へとしまいこんだのであった。

 

「今回の偵察、何も出てこないといいのです......」

 

「何が出てきてもこの私にかかれば問題なんてないんだから!」

 

「どんな任務でも華麗にこなしてこそ一人前のレディーと言うやつなのよ!」

 

「ハラショー」

 

 

 

うん、可愛い。

 

ただ、そこに立っているだけでも私を魅了して止まないのにその『尊み』が、互いに顔を合わせ会話しているという事実だけで米俵一俵はいけそうだ。

否、眺めているだけで姫・鬼級を軽く一千は屠るだけの力を得ることもできるだろう。

 

(とてつもない尊みに溢れている...)

 

気を抜いたら鼻から尊みが溢れ出てきてしまいそうだ。私を萌え死させる気だろうか?

正直なところ今すぐにでも、向こうの艦に飛び移ってかき集めて両手でギューッとしたいところだが任務中なので我慢しておくことにする。

 

 

そんな役得を味わいつつ深海棲艦の目撃場所へと向かっていたのだが...。

 

_______________________________________________

 

 

 

(完全に迂闊だった...ッ!!)

 

自身の船体スレスレに着弾し、天高く水柱を上げる砲弾を尻目に冷や汗を垂らす。

 

 

思えば完全に油断しきっていたと思う。

 

だがそれも仕方の無いことであろう。なんと言ってもここは横須賀鎮守府の管轄区域。

日本でも三本の指に入るほどの安全地帯であり首都東京に近いここには絶対防衛ラインが引かれているのだ。

 

地元漁師が目撃したと言う影も恐らく何かの見間違えかとタカをくくっていた。

 

 

それがいけなかったのだろうか。

 

 

事の始まりは測的担当の艤装妖精からの報告であった。

『...ッ?!!!電探に感あり!!』

 

焦りを孕んだ艤装妖精の一言により艦全体に一気に緊張が走る。

 

 

次の瞬間海底から浮上してくる()が見えた。

 

紺桔梗の波を割り裂き、仄暗い水底の世界より這い上がってくる存在。

 

 

 

深海棲艦だ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はハッキリ言って焦っていた。

 

手前の駆逐、軽巡の群れは刺し違える事さえ覚悟すれば何とかこの子達が鎮守府へと逃げる時間くらいは稼ぐ事ができただろう。だが、その後ろに控える相手が分が悪いとしか言いようが無かった。重巡リ級、戦艦ル級そして...

 

 

戦艦棲姫だ。

 

 

 

(何故よりによってコイツ(・・・)がいるんだッ?!!!)

 

戦艦棲姫と言えば深海棲艦の中でも特に討伐が難しいと言われる姫級の一体であり、精鋭の艦娘が艦隊を組んでやっと討伐できるような相手だ。

 

そのような奴がどうしてここにいる?

 

 

 

確かに浮上してきた深海棲艦からの奇襲を受けたと言うのはよくある話ではある。

だが、それはあくまでも深海棲艦の占領海域内の話であって潜水艦娘や軍の哨戒艇が目を光らせている人間の領域内ではほぼ不可能に近い行為なのだが...。などと考えていてもこの海域内に深海棲艦、それも姫級がいるという事実に変わりはないし、先程から逃げ続けてはいるものの一向に逃げ切る事ができないと言うのも事実だ。

 

 

─────どうやら覚悟を決めるしか無いようだな。

 

「私が殿を務める。ここは任せて先に行け」

 

「長門さん?!」

 

「あんた何言ってんのよッ!!」

 

「置いて行けるわけないでしょ?!!!」

 

「うるさいッ!!ここでコイツらを全滅させることは現実的ではない上に、このまま連れて行く訳にもいかないという事ぐらい考えれば分かるだろう!!分かったらとっとと行けッ?!!!」

 

あぁ、やってしまった...。

打開策が他に無いことへの焦りで頭に血が昇ったことにより衝動的に怒鳴りつけてしまった...。

 

「わかった...。けど死んだら承知しないんだからね!」

 

「長門さん、死んじゃダメなのです......」

 

「必ず助けを呼んでくるから...!」

 

「助けを連れて来るまで頑張ってて!」

 

「...ッ!!あぁ、もちろんだ...」

 

 

 

あぁ、本当にこの子達はいい子達だと思う。

そんなことを言われてしまったら生き残るしか無いじゃないか。

 

 

 

 

 

さぁ来い、亡霊共。

ココから先へは一歩足りとも行かせんぞ?

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

これから絶望的な勝負を挑むというのに不思議と心は軽い。艦内の艤装妖精達もやる気充分といったところだ。

 

そうして覚悟を決め、砲弾の装填を行っていると不意に空から聞き覚えの無い()が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

キィイイイ────

 

 

 

キィイイィイイ────

 

 

 

その音(・・・)の主はどんどん近づいてくる。

 

 

 

キィイイィイイイイ────

 

 

 

キイィイイィイイイイイイン!!

 

 

 

その音(・・・)ははっきりと聞こえるようになった。

 

 

 

耳障りな低い音が聞こえた瞬間測的担当の艤装妖精から報告が入った。

 

『上空より、飛翔体接近中その数六十四 !!』

 

 

 

キイィイイィイイイイイインッ!!

 

 

 

次の瞬間、分厚い雲をかき分け飛来した無数の薄墨色の柱は、目の前に立ちはだかる無数の駆逐、軽巡クラスの深海棲艦達へ......

 

 

ドォゴオォオオオオオン!!

 

 

圧倒的なまでの破壊の暴力を叩きつけた。

 

 

(なんだ?!!!なんなんだコレはッ?!!!)

 

 

 

防御力の薄い駆逐、軽巡クラスの深海棲艦達は船体に大穴を開けられ炎上し、今正に沈みゆく真っ最中であり、さらに再び追加で降ってきた飛翔体によって重巡、戦艦そして姫級までもが大破にまで追い込まれていっている。

 

そんな状況に唖然とした長門をよそに事態は更に動き出した。上空から飛翔体とはまた違った、別の何か(・・・・)が降ってきた。

 

人間の目では小さすぎて見えないそれも艦娘の目ではハッキリと捉えることができた。あれは───人?いや、違う!! あの気配は艤装妖精?!!!)

 

空から降下してきたのは武装した艤装妖精だったのだ。

 

(な?!!!しかしこのままではッ!!)

 

パラシュートもつけていない艤装妖精がこのまま海面に叩きつけられる。そう思っていたのだが────

 

 

スタッ────

 

 

何事もなかったかのように一人また一人と海面へと落着した、群狼(艤装妖精)は紅い残光を引きながら、(海上)を駆け獲物(深海棲艦)へと喰らい付いていく。

 

 

 

 

(私には彼女らが何者なのか解らない。

何者なのか解らないが、彼女らが何であるかは知っている。全て彼女らの腕章が示していた。

未だ世界で忌み嫌われ続け、ドイツ艦娘達からは信仰対象の様な扱いを受ける存在『鉤十字(ハーケンクロイツ)』)

 

だとしたら何故彼女らが日本近海に...?

 

様々な憶測ををめぐらせていた長門の耳に新たな音・が飛び込んできた。

 

先程の飛翔体の様な低く耳障りな音ではなく零戦等の艦載機に積まれているエンジンの様な音。

 

 

分厚い雲の少し向こう側が無数の光に照らされている。

 

最初に雲から顔を出したのは無数の鉄骨であった。

 

絡み合い、ワイヤーや空中線でつなぎ止められたソレ(・・)は長門の目にも異様にうつったが、艦娘である長門にはすぐにそれが何であるかは直ぐに合点がいった。

 

 

(あれは電探?)

 

 

続けて出てきたのは客船上半分をひっくり返した様な異様な何か(・・)

 

そして最後に出てきたのは赤と黒に塗装され、戦艦さながらの装甲を付与されたツートンカラーの円外套であった。

 

 

 

雲を割って現れたのは...、絶望的な戦力差を瞬く間にひっくり返した怪物の正体は────

 

 

 

(な、こんな巨大なッ?!!!)

 

 

 

たった三隻の飛行船であった。

 

 

 

 

 

 

正に圧倒的と言う他に無かった。

大袈裟かもしれないが姫級を相手取るというのはそういうことなのだから。

 

敵であるならば脅威であったが今回ばかりは、どうやら味方の様だ。

 

(とりあえず窮地を救ってもらった礼、そして確認事項を兼ねた通信を入れてみよう)

そう思いながら無線機を手に取ったのであった。

 

 

 

『こんにちはお嬢さんフロイライン』

 

無線機から入ってきたのはやけに気取った様な声であった。

 

 

 

『私はドイツ第三帝国所属 last battalion ミレニアム旗艦 級空中戦艦Deus Ex Machinaだ。此の度は旗艦らの艦隊が窮地に陥っていると見て助力させてもらった』

 

なるほど、やはりかつて大日本帝国の同盟国であったドイツ第三帝国の艦娘だった様だ。

 

それより、今回はこちらが助力を受けた立場であるにもかかわらず先に挨拶をさせてしまった事を申し訳なく思いながら私は無線機を手に取った。

 

 

「私は日本国海軍横須賀鎮守府所属、長門型戦艦一番艦長門だ。旗艦らの助力においては感謝の言葉も無い」

 

事実この言葉に嘘偽りは無い。

彼女らの助力が無ければ、私も第六駆逐隊の子達も無事ではすまなかっただろう。

 

(あの子達は無事に鎮守府へと行き着いたのだろうか...)

 

そんな事を考えていると、再び通信機から声が入ってきた。

 

『いや、なに...、諸君らへ温情を売りつけそれに漬け込む形となってしまうことについては非常に申し訳ないのだが...、折り入って頼みがある。どうだろう?今から直接顔を会わせて話をすることはできないだろうか?』

 

 

何でも折行って頼みがあるので直接会って話をしたいとの事だった。

 

私は一瞬考え込んだものの恩人の願いを無下にはできないと思い了承の返事を返した。

 

 

「了解した、私自身も直接会って礼を言いたい。今、内火艇の受け入れ準備を......」

 

と言ったところで相手側から静止の声が入った。

 

『あぁ、その必要は無いよ、別の移動手段があるからね。

では、甲板上で会おう』

 

「あ、あぁ...」

 

そう返事を返したところで通信が切れてしまった。

 

 

 

_______________________________________________

 

 

 

とりあえず約束の通りに甲板上にて待っていると、突然背後から声をかけられた。

私が何とか動揺を隠しながら振り返ると、

 

そこには、四人の艦娘...いや、艦娘が一人と三人の艤装妖精がいた。

 

 

まず真っ先に目がいったのは、艦娘───の隣にいる白衣の艤装妖精だった。

 

スラリとした体型に肩口辺りで切りそろえた金髪、奇妙なメガネをかけているが、あれについては覚えがある。以前青葉のカメラが故障してしまい、丁度忙しい時期の明石を頼るに頼れず、地元のカメラ屋に付き添いで行ったことがあるのだが、その店の店主が似たような拡大鏡をつけていたのを覚えている。

 

であれば、あの艤装妖精は技術職とも見れる訳だが......異様なのはその格好だ。

身につけた白衣にはべっとりと赤黒い血がついており、時折こちらを品定めする様な目つきで見てくる。

 

次に目がいったのは、駆逐~軽巡位の見た目の少年?(少女?)であった。頭には猫耳の様なものをつけ、その笑顔からは快活な印象を受ける。

普段の私なら真っ先に飛びつくのであろうが......

 

不思議とその気はおきない。

何故だろう...その笑顔の裏にどす黒い何か(・・)があるように思えてならないのだ。

 

 

その次に目がいったのは、猫耳の少年?(少女?)の横に立っていた大柄の艤装妖精だ。

2mはある身長に、銀髪褐色肌で能面の様な無表情の奥の目は先程の白衣の艤装妖精とは別の意味で品定めをする様な目つきをしている。

 

最後に目がいったのは、この中で唯一の艦娘であった。服装は黒衣の軍服、その上から真っ白のロングコートを羽織っている。くすんだ色のセミロングの金髪を右側のみバックで固めており、その顔は整った顔立ちをしていたが、その他の要素がそれを台無しにしてしまっている。

人形の様な精巧な顔は、底冷えする様なニタニタとした薄ら笑いを浮かべており、その半月形のメガネの奥の目は、泥の様に濁りきっている。

 

(何だ、何なんだコレは......)

私はこの感情を知っている。

骨の髄まで凍てつく様な感覚と共に吹き出る冷や汗。

 

この感情はそう......恐怖だ。

 

 

ビッグセブンとまで呼ばれたこの私が、

たった一人の艦娘(・・・・・・・・)に恐怖している。

明確な根拠はない。

ただ私の中の、歴戦の猛者長門としての本能が

この艦娘を危険だと言っている。

 

 

動揺を必死に隠しながら会話をして、わかった事としては、彼女らは気がついた時には海のど真ん中にいて、所属先も無いため私の鎮守府へ所属できる様提督に掛け合ってほしいと言うのだ。

 

ここで私は悩んだ。

所属させる事でのメリットとデメリット、

 

先程私自身が本能的に感じた恐怖、手元に置くことでできる監視、今の日本に必要な戦力、ドロップ艦を発見した際は即座に連れ帰る様に明記されている軍法、

 

それらを含め考えた結果私は彼女らの要求をのむことにした。

 

無線機を手に取り待つこと数瞬、乱暴に無線機を取る音と共に提督の酷く焦りの伺える声が入ってきた。

 

『長門?!長門無事なの?!』

 

私は提督のそんな様子に深い申し訳なさを感じた。

 

「あぁ、私は無事なのだが、実は......」

 

私を助けてくれた未所属の艦娘がおり鎮守府への所属を望んでいる。

 

という内容の話を伝えると『まあ!仲間が増えるのね!』と言う提督の嬉しそうな声を聞き、見るからに危険(ヤバ)そうな奴らということを伝えにくくなってしまったので、そのまま通信を終えようとしたのだが...。

 

『あぁ、そうそう帰ってきたら天龍も含めてお話があるから......』

 

帰りたくない...。

 

 

 

 

そんなこんなで話し合いにもまとまりがついてきた頃、白衣の艤装妖精(確かドクと言ったか)が何やら無線機片手に報告をしていた。

 

何でも先程の戦闘にて捕虜を捕らえたそうなので連れてくるよう指示を出したらしい。

 

「ん?そういえば、流れで連れてくるよう指示を出してしまったが、そちらでは捕虜の扱いはどうなっているのかね」

 

と質問してきたので二年前におきた捕虜の脱走事件とその後の対応について話していると、

武装した艤装妖精達が二名の深海棲艦、重巡リ級と戦艦ル級を連れてきたのでさっそく尋問を始めたのだが......

「自分達ハ何モ喋ラナイ」「我々はタダ人間共カラ海ヲ守ッテイルダケデアル」の一点張りなのだ。

 

これについては予想はついていた。

というのも過去に深海棲艦を尋問してきたことは度々あったのだが、一度として口を割ったことは無いからだ。

となればもう殺すしかない。

 

可哀想ではあるがここで逃がした敵が、明日の味方、明後日の自分を殺すかもしれないからだ。

 

(ここはせめてもの情で痛みなく殺してやろう...)

 

そんな事を考えていると、隣にいた艦娘 Deus Ex Machinaは底冷えする様な笑みを浮かべながら重巡リ級へと、ツカツカと歩み寄ってゆき...。

 

ジャキ

「さて、ここで喋らなければお仲間がどうなるかは、わかっているだろうね?」

 

リ級の口へと拳銃を押し込み、あたかも今日の空模様でも尋ねるような気軽さで話しかけたのであった。

 

「お、おいッ...!!」

確かに戦場において敵兵へ対し情けをかける必要はない。しかしいくら敵とは言えど、何をしても良いかのと言えばそのような道理は通らないと私は思っている。

 

咄嗟に制止の声をかけようとしたその時...。

 

突如背筋にヒヤリと走った感覚に思わず声を抑えた。

 

 

 

捕虜として捕らえられた深海棲艦をグルリと囲む形で展開された艤装妖精。

しかしその中で2名の艤装妖精は深海棲艦ではなく私へ対して(・・・・・)銃を突きつけていた。

 

(妙な動きをすれば即刻銃殺するという腹積もりか...!!)

 

 

銃を突きつけられ、行動しようにも行動できないという状況下であっても時は刻々と進み、場は進展してゆく。

 

「さて、もう一度聞こうか?君の知っている情報を話したまえ?全てだ」

 

 

「グッ、グググググ...!!」

 

先程からの何番煎じ、一向に喋ろうとしないル級へ対して普通であればシビレを切らす、もしくは情報源としての有用性を見いだせずに処分するところだろう。

 

しかして私のこれまでの修羅場を潜り抜けてきた経験は、戦艦娘長門としての勘は、今も尚興味深げに深海棲艦を見つめる『Deus Ex Machina』の目に一瞬宿った好奇の目を見逃さなかった。

 

(まさか...ッ?!!!)

 

引き金へとゆっくりと指をかける。

 

「ヤ、ヤメロ!!ヤメテクレッ!!分カッタ話ス!!」

 

 

本気でリ級を殺そうとしていることに気がついたのか、焦燥感にかられたように叫ぶル級。

しかし、そのような状況は最早彼女の目には写っておらず、彼女の興味も捕虜を見ているようで全く違うモノを見ていた。

 

ドォン

 

一発の銃声が響き渡り、数瞬遅れ血と硝煙の華が吹き上がる。

 

 

先程まで確かに思考を持ち、意思を持ち、死にながらも生きていたそれは恐怖に塗れた目をあらん限りに見開き、表情を強張らせ物言わぬ骸と化していた。

 

 

その光景(惨劇)を満足気に眺めるDeus Ex Machinaは、座りこみ理解の追いつかぬといった様子のル級の元へと歩を進めてゆく。

リ級の血が、べっとりとついた拳銃を眺めながらDeus Ex Machinaは嘲るように、出来の悪い教え子を諭すようにル級へと話しかけた。

 

 

「その傲慢さが彼女を殺したのだよ」

 

 

「...ッ!!殺スッ!!殺ス殺ス殺ス殺スッ!!殺シテヤルッ!!」

 

 

殺意を宿らせ血走った目を限界まで見開き、鎖による拘束をものともせずに飛びかかってゆくル級。

 

しかし...、

 

 

 

そんな最後の抵抗は無情にも、彼女の合図一つで無に帰すこととなる。

 

カッ

 

子気味良い靴音を合図に前へ踊り出る艤装妖精達。

 

そして

 

ダダダダダダダダダダダダダッ!!

 

思わず目を細めてしまうほどのマズルフラッシュと共にけたたましい唸声をあげる短機関銃。

 

その凶弾の一発々がル級の身を削り取ってゆく。

 

 

『ア゙ア゙ァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァア゙ア゙ア゙...ッ?!!!!!』

 

視界の端をナニか(・・・)の破片が舞った。

悲鳴が、金切り声が、

ボチャボチャと、粘着質な水溜まりにナニか(・・・)の破片がこぼれ落ちていく音がする。

 

永遠に続くかのような一時であった。

 

 

 

銃声も、水音も、悲鳴すら聞こえなくなった。

 

細めていた目を薄らと開けていく。

 

目に飛び込んできた景色は一面の赤。

最早、原型すら留ないほどに損傷し打ち捨てられた肉塊。

 

 

 

 

 

背筋に走る、身の毛もよだつような悪寒を自覚しながらも、この惨劇の主────Deus Ex Machinaを見やる、否『見てしまった

 

 

(ッ...?!!!)

 

 

(あぁ...)

 

 

嗤っていた。

 

 

(あぁ...ッ!!)

 

ただひたすらに嗤っていた。

 

(あぁッ!!)

 

しかしてその嗤みは、

 

決して殺しの悦びから来るものでは無いということを長門は理解していた。理解してしまった。

 

(何と...いうものをッ!!)

 

嗚呼、ただ殺しの悦に浸るだけの者であればどれほど良かっただろうか。

 

こんな世界だ。こんな戦場だ。

探せばそんな手合いはゴロゴロといる。

 

しかして彼女の、否彼女らの嗤みは決して、そう決してソコに由来するものでは無い。

 

 

だからこそ

 

 

コイツは

 

 

こいつらだけはダメだ

 

 

狂ってる

 

 




どうも、投稿主です。
最終投稿日から、早3ヶ月半以上...。

遅れてすんませんしたァッ!!┏○┓ザッ
い、いやぁ、理由としてはですね...?
何と言うかかんと言うか...、はい、言い訳しません。素直にサボってました(勘が戻らず結構苦労しました...)

とりあえず、投稿主の気力が尽きたのとこのままだと総統閣下のお誕生日dayが終わってしまうので中途半端なところではありますが投稿することにしました。

このような小説ではありますが、これからも何卒ワタクシベーコンエッグトーストをよろしくお願い致しますm(_ _)m

旧作からの変更点:
・天龍を正々堂々?正面から撃破した。
・処刑シーンの変更に合わせて長門の内心を調整。

こうしてみると今回はマジで変更点が少ないような...(3ヶ月半待たせた挙句、内容は殆どが旧作からのコピペとか...、これは読者の皆様からお叱りを受けても当然というものです...)

次回投稿日はいつになることやら...、
出来うる限り、早めに済ますつもりです(大本営発表)

それでは次回、お楽しみに!!


追記:本日4/20は総統閣下の生誕日です!!
ハッピーバースデー、マインフューラー!!

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