爆進!ウマランナー!! ~逆転☆熱血青春編~   作:はめるん用

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レース描写が巧い人をただただ尊敬します。
私にはこれが限界です。


「黄金航路に同じ常識は通用しねぇッ!」

「そりゃな、こちとらトレーナーだし? 担当がGⅠ出られるってのは嬉しいよ? でもな、勝手に出走登録するのはダメだろ常識的に考えて」

 

「えぇ~? だってゴルシちゃんもおっきいレース走ってみたかったんだもん。いいじゃねぇかよトレーナー、これでアタシが勝てばアンタもめでたくGⅠトレーナーだぞ! したらお祝いに担当全員にドーナツをプレゼントする権利をプレゼントしてやるぜッ! いま100円セール中だしなッ!」

 

「それ私に対するプレゼントじゃないよな!? しかも微妙に懐具合に配慮してくるし。……ゴルシ、心配せんでも勝ったら盛大に祝ってやるよ。担当バがGⅠウマ娘になれてケチるトレーナーなんざいねぇさ」

 

「マジでッ!? さすがトレーナー、太っ腹だな! それじゃあレース勝ったらバーベキュー大会しようぜ! アタシは山行って伊勢エビ伐採してくるから、オマエの担当シャトーブリアンな!」

 

「1から一気に100まで飛びすぎだろ!? おま、そんなもん新人トレーナーの給料で賄えるか!! ウマ娘の食欲わかってんのか!?」

 

「は? なに言ってんだトレーナー。ゴルシちゃんウマ娘なんだけど。なんでもパクパク食べますわよ? 好き嫌いは良くないからな!」

 

「知ってるよチクショウッ!」

 

「え、えっと、その……。ライスはドーナツ、好きだよ?」

 

「私も別に……お肉にはそこまで……」

 

「ライス……スズカ……お前たちはそのままでいてくれ……いやマジで」

 

 

 担当バであるゴールドシップの自由奔放ぶりに振り回されるチーム・リブラの新人トレーナーは、同じく担当バであるライスシャワーとサイレンススズカの常識ある対応に癒されていた。

 勤務して早々にチームから声をかけられたときは喜んだし、すぐにウマ娘を任されたときには人生で一番ワクワクしたかもしれない。現実は甘くなかったが。

 

 それでも、練習には意外にも真面目に参加──ライスシャワーの謎の不運をフォローするのが主な目的だが──しているし、いつの間にかレースに登録していたとはいえ、それでステップレースを順調に消化してGⅠまでたどり着いているのだから能力は高い。

 それらのレースが7月と8月に開催ということで、初めての夏合宿だからと気合いを入れて準備をしたものが軒並みパーにされたことはともかく。例の“スキル世代”の一番槍として走れるのは悪くない。

 

「新人ウマ娘の最初の大舞台、オータムカーニバルか……。ほかのチームも夏合宿の成果を試すために気合い充分、なにより理事長とたづなさんからも気をつけるように言われたからな」

 

「あぁ、例のトレセンのウマ娘たちの話な。アタシもさっきチラッと見たけど……ひとり、ヤベーのがいたわ。たぶんセンパイが見してくれた“領域”ってヤツ、使えるんじゃねーかなぁ」

 

 領域。

 

 どうにもリブラトレーナーはその辺りがピンときていない。スキルはまだ走りの違いで見ても理解できるのだが、領域なる存在については半信半疑である。

 合宿中に開催された模擬レースにて、皐月賞ウマ娘であるリバーソーサーが後輩たちに見せた走り。日本ダービーでアビスグレーターと繰り広げたデッドヒートと同じ、最終コーナーからの超加速は見惚れるほどだった。

 だが、そのときにウマ娘たちが見たという光景については未だに信じられずにいる。そもそもウマ娘たちもあまり理解できていない様子だ。

 

 なんなら、そんなオカルトを当たり前のように受け入れている彼が異質な存在なんじゃないかとすら思っていた。だいたい天才と呼ばれるような存在は、頭のネジのひとつやふたつ、どこかにブッ飛んでるものだ。

 

 まぁ、彼の正体についてはともかく。

 

 普段はコミカルに全振りのゴールドシップが本気の顔をしているのだ。ならばトレーナーとしてグチグチ余計なことを言ってやる気を下げるのはよろしくない。

 

「ゴルシ」

 

「あん?」

 

「バーベキューの許可はたづなさんに確認しておいてやる。肉の手配もな。だからお前は余計な心配をしないで思いっきり走って──いや、思いっきり勝ってこい」

 

「おうよッ!!」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 中央トレセンに魔の手が忍び寄る! 恐るべきは地方のウマ娘! 自分たちをエリート戦士と信じていた中央のウマ娘たちにとってはまさに死角からの刺客! 

 GⅠレースの未来と平和と株価を護るため、深紅の勝負服で颯爽と登場するは純情可憐なウマ乙女! その名はゴールドシップ・レクイエムッ!! 別にレース中にサソリは飛ばさねぇけどなッ!! いや、そりゃ終わりがないと困るだろうし。だってレースだし。

 

 改めて、ゲートイン前のわずかな時間だが、ゴールドシップは出走するウマ娘たちをサクッと観察していた。メイクデビューでもそうだったが、全員からもれなくスキルの気配を感じる。

 だが、その中でもひとりだけ飛び抜けているヤツがいる。もちろんウワサの下剋上トレセン学園のウマ娘。たしか名前はチャージドシーズとか。

 

 ワクワクが止まらないが、同時にイヤな汗が背中につぅ~っと流れている。

 

 トレーナー相手には自信満々の態度を見せた。当たり前だが戦う前から敗けるかも、なんて弱気のメンタルで走りきれるほどGⅠの舞台は甘くない。そんなことはゴールドシップもよく理解している。

 ついでに言うならここで凡走して入着すらできないとなれば、間違いなくライスシャワーが自分のせいかもしれないと落ち込むだろう。ゴルシ的には当然それもアウト案件である。

 

 

 

 

 ──さぁて、楽しい楽しいレースの始まりだ。退屈の無い時間ってのは、サイコーだな? 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 今年のルーキーたちはレベルが高い。競バ関係者はもちろん、ウマ娘のファンたちも、序盤からハイレベルな走りを見せられて興奮していた。

 観客の興奮は声援に乗せられてウマ娘たちへ届く。冷静さを失って掛かるのとは違う、期待に応えるために自然と脚が前へ前へと進みたがる。

 

 ややハイペースのままレースは中盤に。そして。

 

 

 

 

「そろそろ行かせてもらうし。悪く思わないで欲しいし」

 

 

 

 同じ速度で走るウマ娘同士にだけ聞こえる呟き。中央も地方も関係なく、コースを走る全員が『やってみろッ!!』と言わんばかりに表情を引き締める。

 ならば遠慮なくやらせてもらおう。チャージドシーズは己の走りを極限まで研ぎ澄ませ、そのまま領域に入る。

 

 

『おぉ~とッ! まだまだ中盤のこのタイミングでひとり仕掛け始めたッ! チャージドシーズ、ぐんぐんと前に出るッ! 鮮やかなステップワークでほかのウマ娘たちを華麗にかわして前に出たッ! あっという間に先頭集団をとらえたッ!!』

 

 

 彼女が求めたイメージは“山”。

 

 陽の光が溢れる森林の斜面を、アスレチックのように入り組んだ大樹の幹を、走りなれたターフのように軽快に前へ前へと進んでいく。

 自分だけの世界。自分だけの理想的な走り方が噛み合ったときにだけ入り込める特別な領域。この状態の彼女を捕まえることができるウマ娘など、そうそう──。

 

 

「おぉ~ッ! これがオマエの“領域”かぁ! センパイが見せてくれたのよりハッキリ感じるぜ! それとも、そんだけアタシも成長してるってか?」

 

「へ?」

 

 

『もうひとり、最後方からどんどん加速する赤い勝負服ッ! ゴールドシップ、ゴールドシップが大外から前を狙うッ! 次々とウマ娘たちを追い抜いて前に出るッ! これはなんとも豪快な追い込みだぁッ!!』

 

 

 いる。というかいた。芦毛の赤い勝負服が当然の権利のように領域の中を走っている。

 

 

「いや、なんでいるし」

 

「なんだよケチケチすんなよ。学園は違っても同じスキル仲間だろ~? 楽しくタンデムしようぜッ!」

 

「メンドクサイし。丁重にお断りだし!」

 

 速度を上げるチャージドシーズに応えるように、領域内の木々もゴールドシップの進行を妨害するかのように変化を始める。

 簡単に追い付かせてたまるものか。突き放してやるという強い意志に、周囲の枝葉が反応して芦毛のウマ娘を捕縛しようと蠢き出す。だが。

 

 

 

 

()()()()()? 

 

 

 

 

「んげ」

 

「ホントにオモシレェなぁ~? レースってのはよ、マジで退屈しねぇわ」

 

 ゴールドシップが不敵に笑う。もともとが美人なだけに、思わず背筋が凍りそうな迫力がある。

 その手にはしっかりと掴んだ枝があり、その表皮がボロボロと崩れ始め──隙間からはこの森の領域には不釣り合いな金属の輝きが見えた! 

 

「テレッテッテ~♪ ゴルシちゃん、レベルア~ップッ!!」

 

「反則だし……。ウチの領域を利用して自分の領域をこじ開けるとか、コイツやることムチャクチャだし……」

 

「為せば成る、為さねば成らぬ、ゴルシなら。そぉ~らぁッ! こっから本番十八番、反撃開始はアタシの番ってなぁッ!!」

 

 

『レースは残り600、これは完全にふたりの勝負になったか!? 先頭はチャージドシーズ、しかしゴールドシップとの差はどんどん縮まっている! 後方のウマ娘たちも追い上げるがこれは厳しいかッ!? 先頭チャージドシーズ、ゴールドシップは二バ身差まで追い付いたッ!!』

 

 

 

「さぁ、面白くなってきたぜぇッ!!」

 

「ナメんなし。そのまま緑に溺れろしッ!!」

 

 

 

『残り400!! 先頭は変わらずチャージドシーズ、だが追走するゴールドシップが差を詰めるッ! チャージドシーズ! ゴールドシップ! チャージドシーズ粘るッ! ゴールドシップここで並んだッ! ゴールドシップ、ゴールドシップこのまま抜け出せるかッ!? ゴールドシップこのまま──あぁ~とぉッ!? ここにきてゴールドシップの脚が鈍ったッ!!』

 

 

「──ッ!? コイツは……想像以上に……効くなぁオイ……ッ!!」

 

「残念、スタミナ切れだし。けど、それでも充分過ぎるほどヤバかったし……」

 

 黄金の鎖と錨を自由自在に操って、チャージドシーズの領域を次々と薙ぎ倒しながら進んでいたゴールドシップだったが、ここにきて急激に身体から力が抜けていくのを感じていた。

 

 ギリギリ、足りない。

 

 適性がステイヤーであり、脚質は追い込み。それに合わせてスタミナもパワーも、そしてタフさも本気で鍛えていた。

 たが……どうやら領域とやらは一筋縄ではいかないらしい。スキルを使う走りでも独特の疲労感はあったが、今回はとびきり脚が重い。

 

 賭けには勝った。先輩の、リバーソーサーの話を聞いての思い付きだが、領域を使えるウマ娘と()()()()()で競り合うことで自分も領域に踏み込む。

 

 

「悪くはなかったし。まぁ、その……同じステイヤーならこれからも走る機会はあるし。仕方ないからリベンジも受け付けてやるし」

 

「上等。そんときはゴールドシップ様の領域でこの森全部海の幸で埋め尽くしてやるよ。一緒にマグロで燻製作りしようぜ!」

 

「マジでヤメロし」

 

 

 このあと、担当であるリブラトレーナーの計らいで反省会のバーベキューが開催された。ゴールドシップの領域の話を聞くために何人ものウマ娘が集まり、トレーナーのサイフは見事な大往生を見せたという。

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