爆進!ウマランナー!! ~逆転☆熱血青春編~ 作:はめるん用
出すとすればまた名前を考えて領域を考えての半オリジナルキャラみたいな感じになると思います。
名前の候補はカムシーンとか、オブシダンソードとか、ファイアブランドとか、そんな感じの方向性になるかと。
「私たちのレース然り、ウイニングライブ然り、世の中には見せる、あるいは“魅せる”仕事というものはいくつもある。広義的には芸術作品……彫刻や絵画などもそれに含まれるだろう」
「ドラマ、アニメ、マンガ等もそれらのカテゴリーに該当するものと判断します」
「そうとも。そしてそれら芸術というものは、第三者が評価することで初めて意味を持つ。自身のアトリエでコツコツ作品を作り出しては眺める自己完結型のアーティストもいるだろうが……衆目に晒すということは、誰かに見てほしい“承認欲求”があるのだよ。多かれ少なかれ、ね。つまり──」
「つまり?」
「ダートコースを駆けるサブトレーナーくんの
「なるほど」
「タキオン、ブルボン、お前ら何しにきたんだ」
「呼吸を乱すな~。速く走ることより自分のリズム意識して脚動かせ~」
「はっ、はっ、はいッ!! っ! はっ、はっ……ッ!」
入学式を終えて即春休みとなった新入生。だが休みといっても彼女たちにのんびり遊んでいる時間は無いと言ってもよい。本格的に授業が始まる前にやるべきことは沢山ある。
いまは高等部の新規入学生たちがダートで走り方のトレーニングをしている最中だ。確認のため、かなりのスローペースでとなりをサブトレーナーが併走しながらの基礎練習だ。
このトレーニング。見た目の地味さのわりにかなりキツい。
新入生は大抵自分勝手な走り方をしていたウマ娘ばかりなので、正しい姿勢をキープしながら走るのは全身の筋肉からブーイングの嵐である。
イケメン過ぎないのが逆にイイ感じの男性トレーナーとのトレーニングとか楽勝じゃん! ……と軽く考えていたウマ娘たちは軒並みベンチでダウンしている。
もっとも、ぐったりしつつもその表情はかなり明るい。レースのための“勝負のため”の走りを学んでいる実感が、彼女たちのウマ娘としてのプライドを心地よく刺激してくれているのだ。
サブトレーナーの脚や尻の動きを眺めてニヤニヤしている上級生とは雲泥の差である。おかしい、彼女たちも去年や一昨年は同じようにキラキラとしていたはずなのだが。
「羨ましいことだ。私が入学したころはあんなふうに丁寧に教えてくれるトレーナーはいなかったからな。……アイツらの中からもいずれ強敵が現れるかと思うと──フッ、悪くない」
「ブルボン君、鍛えられた筋肉ほど柔らかいという話は知っているかね? トップクラスのウマ娘の筋肉は指が沈み込むほどの柔軟性を持つらしい」
「知識としては。しかし知識は体験を経て初めて意味を持つものです。私にはまだ体験のデータが不足しています」
「私もだよ。まさか会長サマにお尻を揉ませてほしいなどと言えるワケもないからねぇ。そもそも女同士でその絵面は勘弁願いたい。となれば……ウマ娘の可能性のために、サブトレーナーくんに誠心誠意お願いするのが妥当ではないかね?」
「たしかに、スローペースとはいえウマ娘と併走できる彼の筋肉は実質ウマ娘と同等の条件であると推測できます。冷静かつ的確な判断だと評価。いつ実験しますか? 私も参加しましょう」
「うむ。ともに可能性を導こうじゃないか!」
「タキオンお前ちょっと黙れ。コイツを順当にスケベブルボンにアップデートするんじゃない」
サブトレーナーのトモの躍動見守り隊の筆頭格であるアグネスタキオンとミホノブルボンがキリッ! とした表情でアホな会話をしていることに、となりにいたナリタブライアンはただただ呆れていた。
彼に性的興味を抱くことそのものを否定はしない。走る、ということに特別な想いを──本能に基づく切り離せないモノを持っているウマ娘にとって、走るために鍛えられた身体を有するサブトレーナーは魅力的な存在なのだ。
「うずうず……うずうず……」
「言葉に出してウズウズ言うひと初めて見ましたよ……。ダメですよ~スズカさん? サブトレーナーさんと走りたいんでしょうけど、前にも言いましたけど危険ですからね~?」
「けどフクキタル、世の中には3秒ルールというものがあるらしいわ。3秒以内であればあらゆる事象が赦されるという……。つまり、すれ違う時間を3秒以内に納めれば何も問題はないはず」
「ソレおばあちゃんの知恵袋どころか迷信レベルの話ですよ? 床に落としたおせんべいとかのゴミをフーフーして食べるヤツじゃないですか~」
「3秒……三女神……どちらも同じ数字……もしかして3秒ルールは三女神さまの展開した領域の一部の可能性が……?」
「ゼッタイ違うと思います。とにかく! ちょっとぶつかっただけでも事故になっちゃうんですからガマンしてください! 安全第一、無病息災! 健康が一番大切ですからね~」
「でも私のほうが速く走れるわッ!!」
「速いから危ないつってんですよッ!!」
……興味の方向性が違うウマ娘もいるが。
────。
「よし、全員終わったか。最初はキツいかもしれないが、基礎さえしっかり覚えればそこからアレンジもできる。今後は脚質に合わせたプランも作ってくから、よりレースを意識することになると思う。お前ら、覚悟はいいな? ……出来てなくても容赦しないけど」
「アハッ、訊いた意味ねぇーし!」
「覚悟なかったらトレセン来ないッて~」
「フフ、ふ、ふぅ……この程度、どうってことないですわ……」
「はい深呼吸しようね~?」
彼に煽られるように励まされ、よりワクワクを隠せない様子のウマ娘たち。
高等部からの挑戦というのは実際のところかなり厳しい。スタートラインがほかの学生たちよりも遥か後方にあり、1度も勝てないまま終わる──そもそもメイクデビューすら怪しいことも普通にある。
そんなことは彼女たちが一番よくわかっている。だからこそ、こうして自分が強くなっていく実感は自信となり活力となり勇気となる。
しっかりと身体を休めるように。その指示でトレーニングはお開きとなり、汗が冷える前にとウマ娘も彼も早足で校舎のほうへゾロゾロと移動する。純粋に新入生の様子が気になっていた者たちも満足したのか方々に散っていったのだが──。
「……おや? あれは……ふぅン、もしかしてサブトレーナーくんのタオルかな? 珍しいね、トレーニングや仕事に関すること“だけ”はしっかりしていると思っていたが……。いや、彼も忘れ物くらいはするか」
「まぁ、完璧な存在なんてヒトでもウマでもそういないだろ。アイツの場合、面倒見ているウマ娘の数も多いしな」
「地方のトレセンはトレーナー希望者が増加しているらしいのだがねぇ。さて……日頃も世話になっているし、タオルくらい届けてあげようか」
持ち主不在で放置されたタオルへ向かってゆっくりと歩き出すタキオン。基本的には自分が最優先の行動をする彼女でも、たまには他人の世話を焼くこともあるらしい。だからなに、ということもなくブライアンはぼんやりとその様子を眺めていた。
口許に薄い笑みを見つけるまでは。
「まて」
「……どうしたんだいブライアン君。急に腕を掴んだりして」
「タオルなら私が
「いやいやブライアン君、こういうものは
「タオルの1枚程度で困るものか。そんなことより貴様が不埒なマネをするほうがよほど困るだろう」
「失敬な。私はなにもしないよ? あぁそうさ、三女神に誓って
そのひと言でブライアンも、ブルボンも、周囲でやり取りを見ていたウマ娘たちもタキオンの狙いを理解した。きっと彼女の言葉は100パーセント真実だ。正真正銘タオルを届けるだけで終わるつもりだろう。
だが、彼の行動については全く別の話となる。もはや自分たちウマ娘を女として認識してないんじゃないかというレベルで生活しているサブトレーナーならば、もしかしなくても余計なトラブルが起こるだろう。
いよいよブライアンはタキオンを掴む腕に力を込める。不慮の事故ぐらいなら目くじらを立てるほどでもないが、そこに意図したモノが含まれるならば見逃すワケにはいかない。事実上の彼の唯一無二にして至高のオーバーホースであるナリタブライアンには彼を守護らねばならない使命がある。
だからと言ってタキオンも簡単には譲らない。日頃の言動からやる気の低さを指摘されることのある彼女だが、内に秘める勝負への熱量は尋常ではない。己の能力に耐えられないと診断されていた脚の脆さを独学で克服するほどにはアグネスタキオンは勝利に餓えているのだ。如何なる事象でもそうそう妥協などするワケがない。
「──はなしたまえよ、ブライアン」
「──キサマこそ退がれ、タキオン」
一触即発。タイプは違えど、身の内に唯一己が抜きん出ることを渇望する獣が宿るウマ娘同士。もちろん拳での決着とはならないが、どちらかが決定的な敗北を喫しない限り鎮まることは無いだろう。
ブルボン含め周囲のウマ娘がオロオロし始めたそのとき。
「根性根性ド根性~♪ 気合い熱血必中幸運~♪ あれ、ブルボンさん。なんかブライアンさんとタキオンさんが見つめ合ってるッスけど、なにやってるっスか?」
「バンブーさん。じつはかくかくしかじかで……」
「はぁ……? よくわかんないッスけど、サブトレーナーさんがタオルを忘れて帰っちゃったんスね? なら、ちょうど用事もあったし、パパッと届けてくるッス!」
「あっ」
「あっ」
…………。
「そんな……バカな……ッ!? 私が可能性をみすみす逃すだなんて……ッ!!」
アグネスタキオン、完全敗北。
「いや、お前。止めた私が言うのもなんだが、そんなに落ち込むほどのことか?」
「科学者が可能性を手放すなどあってはならないのだよぉ~。……いや、まてよ? これは幸運に頼るなという三女神からの忠告かもしれない。ラッキースケベに頼るのではなく、己の頭脳で道を切り開けと。それでこそ科学者であるのだとッ!!」
「科学者に謝れ」
「タキオンさんの立ち直りの早さは相変わらず見事です。まるでお湯で膨張するピンポン玉のような耐久力であると評価します」
「お前それ本当に褒めてるか?」
……なんにせよ一件落着である。少なくともバンブーメモリーであれば余計な心配は必要ないだろう。
仮にも風紀委員なのだ、不埒なマネはむしろ取り締まるほうだ。これで心置きなく自分もトレーニングに集中できる。
「えーと、次はたづなさんのところにこれを届けて──あら? バンブーちゃん、どうしたんですか?」
「クリーク先輩……」
「なにか悩み事ですか? 私でよければ相談にのりますよ?」
「いえ、悩みとかではないッス……。その、やっぱり部屋に入るときはノックは必要なんスよね……」
「? そうですね~。うっかりお着替えの最中にドアを開けちゃうと大変ですから。さすがに女の子同士でも、下着姿を見られちゃうのは恥ずかしいですから~」
「着替え……下着……ッ!!」
「バンブーちゃん?」
「────コフッ」
「バンブーちゃんッ!?」
感想、評価、誤字報告などなどいつもありがとうございます。好きで書いて投稿しているとしても、やはりとても励みになります。
ときにはグサッとくる手厳しい意見もいただきますが、そのおかげで作者と読者の考え方や捉え方の違いを知ることができます。とくにサブトレーナーくん関連。おかしいな、どちらかと言えばウマ娘たちの扱いで苦情がくるだろうと覚悟していたのに……。
えー、ともかく。皆様のおかげで作者もやる気絶好調ということです。これからも本作をどうかよろしくおねがいします。
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