爆進!ウマランナー!! ~逆転☆熱血青春編~   作:はめるん用

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誤字報告、感想などなどいつもありがとうございます。

最近では嬉しさのあまり勢いで今後の展開に関する余計なことまでコメントをしそうなので返信を控えていますが、たいへん励みになっております。

お礼は、水と親父のギャグでいいかな?
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こばなし そのご

「今日から学園のコースは全部アタシたちのものだぁぁぁぁッ!!」

 

「「いぇ~~いッ!!」」

 

 

 7月。担当不在でメイクデビュー前の“居残り組”ウマ娘たちが人気の無くなったターフの上で大はしゃぎしていた。

 とりあえず全力疾走する者、意味もなく跳び跳ねる者、優越感に浸り拳を天に突き上げる者、ゴロゴロ転がって小石に腰骨のところがゴリッとなって悶える者など、それぞれの方法で喜びを表現していた。

 

 

「……チッ。おいキサマら、気持ちはわかるがさっさと準備運動を始めろ」

 

 

 先輩であり今日の指導役であるナリタブライアンの言葉に慌てて整列する後輩たち。思いの外聞き分けのいい態度に感心しつつも、なぜ自分がこんなことをしなければならないのだとタメ息のひとつでも吐き出したい気分のブライアンであった。

 

 本当なら自分のトレーニングに集中したい。かつて、1度は追い付き、そして追い越したはずの姉の背中が最近ではまた遠くへと離れていった。姉貴大好きブライアンとしてはビワハヤヒデが強敵として立ちはだかる姿を想像するだけでワクワクが止まらない。

 基本的にナリタブライアンというウマ娘は勝利以上に好敵手を求めているのだ。サブトレーナーの作るバナナパフェを幸せそうにパクパクしている姿は妹視点でもなんとも微笑ましいが、ターフに立つビワハヤヒデの放つプレッシャーはブライアンの闘走本能をこれ以上無いほど刺激してくる。

 

 なので後輩たちの世話に時間を使っている場合ではないのだが、こんなときくらい彼の負担を減らしてやるのも己の役目かと妥協することにしたのだ。あと、アウトロー気取りのシリウスシンボリですら真面目に指導しているのに自分だけ投げ出したら、なんというか……敗けた気がする。

 

「よし。いいかオマエら。これからオマエたちはそれぞれ“逃げ”と“先行”の位置取りを意識して走る。私はそれを後ろから追い立てる。後方からのプレッシャーの中でどれだけ冷静に自分のペースで走れるか試してやる。せいぜい死に物狂いで走ることだな」

 

 後輩たちの表情がキリッ! と引き締まる。メイクデビュー前ではあるが、ブライアンの走りについては学園中が注目するレベルである。そんなウマ娘にトレーニングを付けてもらえるとなれば、いつも以上に気合いが入るというものだ。

 その瞳の中に、憧れだけではなく挑むような視線が含まれていることにブライアンは少しだけ満足感を覚えた。もしかしたらこの中から自分のライバルと成るウマ娘が誕生するかもしれない、そう考えるとこの時間もなかなか有意義だろう。

 

 20人ほどのウマ娘が位置に付き、ブライアンの合図で走り出す。それなりに自主的なトレーニングもしていたのだろう、思いの外マシな走りだ。

 

「……フッ。案外、楽しめそうだ。さて、面倒な指導だが終わればアイツが豚ヒレと牛肉のダブルでカツを作ってくれる約束だからな。キッチリ鍛えてやるぞ後輩ども──ッ!!」

 

 

 ◇◇◇

 

 

「うん……うん……よォし! コッチの確認は終わったぜィ!」

 

「お疲れ。それじゃあ……そうだな、ちょっとトレーニングの様子でも見に行くか」

 

「オゥよ! んじゃ、ちょいと後ろにお邪魔させてもらうとするかい」

 

 自転車に跨がったままタブレット端末を操作するサブトレーナーの返事を待たず、イナリワンが荷台に飛び乗った。彼女が小柄であることもそうだが、学園内を様々な荷物を載せて走る彼の愛車は荷台も特別製で広く改造されている。

 

 ふたりはいま、学園内のトレーニング設備を点検している最中だ。デビュー済みのウマ娘とともに彼以外のトレーナーは全て合宿先に同行している。故に、唯一のトレーナーである彼が居残り組の設備使用についてある程度の権限があり責任がある。

 以前ならばここまで極端なことにはならなかった。ただ、ここしばらくはメイクデビューできるレベルに育つウマ娘が多すぎて新人トレーナーですら強制的に担当を押し付けられているような有り様というだけで。

 

 つまりは、 まぁ。いま、彼がこんな仕事をしているのは本人の頑張りすぎた結果である。

 

 もっとも、忙しさでいえば普段よりはずっと楽なのだが。居残り組でも本格化が完成しつつあるウマ娘たちも後輩たちの指導に積極的だし、デビュー組が不在であるぶん教官たちの手も空いているので積極的にフォローしているのだ。

 もちろん個性を伸ばすのが本業のトレーナーとは違い、教官たちはバランス良く基礎能力を底上げするのが仕事なので勝手は違う。それでもメイクデビュー前のウマ娘たちにしてみればいつもの数倍は濃い内容のトレーニングである。これ幸いとガッツリ鍛えてもらおうと張り切っていた。

 

 

「あたしも前は合宿に向かう連中を羨ましいと思っていたけど、トレセンの最新設備を悠々と使えるってぇのは……なかなか悪くないねぇ」

 

「こういうこと、立場的に言っちゃダメなんだろうけど俺もちょっと思ってる。やっぱちゃんとした設備でトレーニングできると皆のやる気も違うし」

 

「なに、お前ェさんがイロイロと知恵を絞ってトレーニングを考えてくれてんのはちゃぁんと知ってるさ。しかしまぁ、あんなバカみてぇにでかいタイヤなんざ、いったい何処で仕入れてきたんだい?」

 

「長老トレセン時代のツテ。タイヤ引きにはちょっとばかし心当たりというか、思うところがあってね。やっぱり、最後の競り合いで勝ちきるためには根性が……精神的なタフさがないと。そういうのはお上品なトレーニングでは身に付かないだろう?」

 

 

 挑発的な物言いをするサブトレーナーの様子に、なるほどこの辺りの意識の違いが中央一強時代の限界かとイナリワンは納得していた。

 

 なりふり構わず、他人から見てどれだけみっともなくとも足掻いて踠いて勝利を奪う。そういう泥臭さは、たしかに上の世代のウマ娘たちにはあまり感じられなかった。

 きっと、長老トレセンのGⅠウマ娘たちの恐ろしく()()()()()()()仕上がりも全てはこの男の仕業に違いない。苦手を克服するなんてことはハナっから考えていない、とことん自分の得意な走り方を鍛えて鍛えて鍛えまくった結果が“スキル”や“領域”なのだろう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 重機類の搬入通路を悠々と通り抜けて芝のコースを眺めてみれば、ふとした拍子にブライアンと視線が交差した。その表情はどこか険しく、はて? あのブライアンが後輩たちを追い回した程度でバテるものかと一瞬悩んだが──そうかそうか、そういやお前ェさんはそうだったなァ? とイナリワンのイタズラ心がくすぐられた。

 

 

 背中合わせで荷台に座っているのも好都合。そのまま見せつけるように、サブトレーナーへ身体を預けてニヤリと笑う。

 

 

 するとなんということでしょう、あんなに丁寧に中等部のウマ娘たちを追い込んでいたブライアンの気配がまるで重賞レースのように膨れ上がったではありませんか! 

 突然の本気に「「ピィッ!?」」と悲鳴をあげた後輩ウマ娘たちは完璧にとばっちりである。可哀想なくらいペースはガタガタだが、それでもなんとか持ち直そうと頑張っているあたり巨大タイヤを活用した根性試しは効果抜群らしい。

 

 ほかに面白そうな反応をしているウマ娘は……おいおいシリウスさんよぅ、()()()の中でストップウォッチがピシキシと悲鳴をあげてるぜぃ? そいつはお前さんの私物じゃねぇんだ、学園の備品は丁寧に使わなきゃダメじゃねぇか! 

 

 

 そんなアホなやり取りをしているウマ娘たちの様子に教官たちは微笑ましいような優しい眼差しである。このあと間違いなくイナリワンは勝負を挑まれるだろうが、本人もそれを見越しての挑発だろう。同レベルの相手との競走は一番手っ取り早いレベルアップ方法である。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「そういやぁサブトレよぅ。お前ェさんは担当を持ちたいって考えたりしないのかい? 中央に来てから結構たってるし、そもそも向こうのトレセンでもウマ娘の面倒を見ていたんだろう?」

 

 次の設備点検に向かう途中、ふと気になっていたことをなんとなく聞いてみる。

 トレーナーとしての能力“だけ”なら間違いなく優秀であることは証明しているのだから、あとは彼の羞恥心とウマ娘側の理性さえなんとかなればいつでも担当をスカウトしてもいいはずだ。なんとかなるならば。

 

「あー、うん、まぁ……。そうだな、たしかに昔は俺も担当を受け持ってトゥインクル・シリーズに挑んでみたいっていう気持ちはあったよ」

 

「昔は……ね。そいつァ、あたしが聞いちまっても大丈夫な話かい?」

 

「別になにか切実な理由があるワケじゃないよ。原石を磨くことよりも、原石を発掘するのが楽しくなっちゃった、ってだけ。才能溢れた()()()()()()()ウマ娘を育てるのもいいけど、新しい才能を見つけるのもトレーナーの役目としてアリだろう?」

 

「なるほどねぇ。そうやって鍛えられた観察眼がいま大活躍してるってワケだ」

 

 何人かのウマ娘たちの姿を思い浮かべてご愁傷さまと心の中で手をあわせるイナリワン。

 

 本音を言ってしまえば自分だって彼に担当してもらいたいという気持ちは多少はある。トレーナーとしての能力はもちろんだが、なによりも“面白そう”なのがグッとくる。

 

 育成のバランスの悪さは勢いが削がれれば一気に減速する危険性が大きいのは認めよう。だがピタリと歯車が噛み合ったときの強さはGⅠ勝利という形でしっかりと実証されている。

 イチかバチか、伸るか反るか、ゼロか百か。そういう極端な走りは好みがハッキリと分かれるが、好きな者にはとことん魅力的に見えて仕方がない。

 集団を置き去りにしての大差勝ちだったり、後方からの凄まじい追い上げでギリギリ差しきったり、魂が痺れるような熱い勝負を自分も……と想像するのだ。

 

 

「ま、そのうち機会があればひとりかふたり……数人くらいのチームを集中してサポートしてみたいって密かな野心はあるけどね」

 

「ほーん? ちなみに数人ってぇのはどれくらいだい?」

 

「15人」

 

「けっこう多いな!?」

 

「数百人のトレーニングプラン作ってる現状に比べれば数人だろ」

 

「比較対象が狂ってやがんだよなぁ……。いまさらだがウチのトレセン、お前ェさんが風邪でもひいて倒れたらどえらい騒ぎになるんじゃねぇか?」

 

「そのときは……タキオンに風邪薬でも調合してもらうか? あっはっは!」

 

「あたしが全力で看病してやるからそれだけは止めとけぇッ!!」




アプリのイベントとにらめっこしながら作品書いてますが……イナリワン難しい……。

参考資料としてぜひとも実装してほしいものです。

もしくはサポカでSSR“ウマ娘おじさん”TKYTKでも可。
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