爆進!ウマランナー!! ~逆転☆熱血青春編~ 作:はめるん用
ビワハヤヒデとライスシャワーは(本作では)同室なのでよく一緒に買い物にお出かけしてます。
人間というものは──ヒトもウマも集まれば意見のぶつかり合いはどうしても避けられない!
それがどれほど仲の良い──同じ学舎に通う仲間であったとしてもだ!
年末、大晦日。中央トレセン学園では実家に帰省しなかったウマ娘たちによる三つ巴の派閥争いが勃発していたッ! ──エビの調理法を求めてッ!!
「……ですから、海老は天ぷらにするべきです。大晦日に食べる年越し蕎麦は日本古来より続く伝統的な食文化のひとつです。私はたしかにドイツ出身ですが、だからこそ日本の文化には敬意を払いたい。今年の大晦日は天ぷら蕎麦、これは譲れません」
ひとつはエイシンフラッシュを始めとする“天ぷら派”であるッ!
大晦日のメインディッシュといえば蕎麦、蕎麦に添えるならば天ぷらこそが原点にして頂点!
温かい
「でんとーを守るだけならソバだけでも充分なのだ! それならエビはどんな食べ方をしてもいいのだ! 大晦日は1年のなかでいちばん大騒ぎしても誰にも文句を言われないとくべつな日なのだ、そんな日のごちそうにふさわしいのはエビフライなのだッ!」
対するはシンコウウィンディ率いる“エビフライ派”であるッ!
ハンバーグと並んで子どもたちを魅了するご馳走の定番であり各種イベントの食事を彩る新星!
最近メキメキと完成度を上げているサブトレ特製のソースで食べてもよし、タルタルソースをたっぷりと乗せても美味いのだ!
「ん~♪ 手作りのトマトソース、ペパロニ、オニオンとキャロットのスライスもギッシリ並べちゃいマショウ! あとは~……そうでした! サブトレさんのオテセイなアンチョビとオイルサーディンもトッピングOKでしたネ! 半分はシーフードをヤマモリ使っちゃいマスヨ!」
そして両陣営の攻防をまったく意に介さずご機嫌な鼻歌でピザを用意するタイキシャトルであるッ!
多種多様のトッピングとボリュームでパーティーを盛り上げてくれる誰もを魅了する花形!
きつね色に焦げたチーズの香ばしい香りにタバスコの酸味をアクセントに加えてガブリと噛みつき、あとはコーラで流し込めば完璧である!
「ウィンディさん、エビフライがメインディッシュに相応しい料理であることに異論はありません。季節のイベントの食卓を華やかにしてくれる料理であることは認めます。しかし、年越し蕎麦を食べるということは日本という国で新年を迎えるための神聖な儀式でもあるのです。年末年始を完璧に遂行するためにも、ここは天ぷらにするべきでしょう」
「フラッシュ、天ぷらがおいしいことぐらいウィンディちゃんだって知ってるのだ。そのまま食べてもおいしいし、あとでごはんに乗せてお茶漬けにしてもとってもおいしいのだ。だけど、そんなむずかしいことを考えながら食べる必要なんてないのだ。だいじなのはおいしいモノを食べて新年を迎えることなのだ。天ぷらにこだわらなくてもいいのだ」
「おぉ……。凄いな、このピザのボリュームは。普通のピザの何倍も分厚い。これはかなりの食べごたえがありそうでワクワクするな……!」
「フッフ~ン! シカゴピザはノーマルなピザとはヒトアジ違いマスよ? 寮のオーブンでは調理はムズカシイですが、みんなでビルドしたスペシャルなピザ窯がありマスからね! きっとvery very deliciousなピザができるはずデースッ!」
(くッ!? さすがは数々のイタズラで大勢のウマ娘たちを翻弄してきたシンコウウィンディというところですか……ッ! 伝統や常識に囚われることなく、恐れも迷いも抱くことなく己の道を突き進む。自分が歩んだ道こそが正当であると言わんばかりの大胆不敵さ。まるで三國最大の国力を実現したソウモウトクのようです……ッ!!)
(むッ!? やっぱりべんきょーができていろんなことに詳しいエイシンフラッシュは
「ねぇねぇタイキ! トッピングにこれを使ってみたらどうかな? お好み焼きに入れても美味しかったし、きっとピザにもピッタリだと思うんだ!」
「オゥ! ラーメン・スナックですネー! チキンベースのソイソース、それからパリパリでサクサクなテイスト、これは“キタイダイチャン”というヤツですヨ~♪」
フラッシュとウィンディの感想が偏りを見せているのはもちろん年末スペシャル番組で三国志のアニメを放送していたからであるッ!
長坂橋電撃スプリントから始まり、コウメイの奇策で100万本のにんじんを集める場面や鉄鎖連環の計で長江に船団を繋いだ3200の特別コース、コウガイ将軍の炎を使った渾身の
「ただいま~☆ みんなのウマドル、スマートファルコン! 新春スペシャルの収録もバッチリ──「ファルコンさんッ!!」「ファル子ッ!!」──しゃいッ!?」
「ファルコンさんはもちろん天ぷらを選びますよね!? この間も夜にこっそり緑のた○きをふたつも食べていましたし、当然お蕎麦には天ぷらですよねッ!?」
「ファル子ならエビフライを選ぶにきまってるのだ!! このまえも夜中にコロッケパンと一緒にエビフライのパンも食べてたのだ、エビフライが好きなのはカクテーテキにアキらかなのだッ!!」
「ちょ、なんでふたりともファル子のお夜食事情に詳しいのかなッ!? ……っていうか、天ぷらとエビフライ? そっかぁ、今年の大晦日は両方作っちゃうんだね! タイキさんもおっきなピザを準備してくれているし、今年の大晦日も楽しくなりそうだね☆」
「両方?」
「りょーほー?」
「違うの? だって、アレ──」
「いや~、サブトレが仕入れてきた海老ちゃんデカくて料理のしがいがあるなぁ! ウチのボリュームかさ増しスペシャルテクニック使わんでも充分すぎるほどのサイズや!」
「市場の若い人が発注ミスで頭を抱えてたのをまとめて自腹で買い取ってくるとか、サブトレくんもやることが豪快でイケイケよね~。ま、軽トラを運転するのも楽しかったけどね♪ うーん、私も賞金でトラック買っちゃおうかしら? サーキットも走れるエンジン積んだ真っ赤なヤツ」
「そんなんどこで売ってんねん……。スピード欲しいなら普通にスポーツカーあたりでええやろ」
「ムフ~。本日のラッキー食材はピクルスなんですがどうしたものでしょうかね~? タルタルソースに入れるにしても得意でない方もいらっしゃいますし……。開運のためとはいえせっかくの年越しのお祝いのご馳走、苦手なモノをオススメして我慢を強いるのは占い師としてのプライドが許せません」
「それなら、2種類作っちゃうのはどうでしょう~? エビフライもた~くさんありますし、もしかしたら天ぷらに乗せちゃう子たちもいるかもしれませんからね~」
「おぉ! それはナイスアイディアですね! それではひとつはタマゴたっぷりで優しく仕上げて、もうひとつはピクルスにバジルとパセリどっさりでスッキリサッパリ風味に調えちゃいましょう!」
「それじゃあ私は天つゆのほうを仕上げますね~♪ お蕎麦と一緒にいただくのもいいですけど、別々に楽しみたい子たちもいるでしょうから」
スマートファルコンの言葉のままにフラッシュ率いる天ぷら派とウィンディ率いるエビフライ派が視線を動かせば──。
タマモクロスが天ぷらを揚げッ!
マルゼンスキーがフライを積みッ!
マチカネフクキタルがタルタルを練りッ!
スーパークリークが天つゆを仕度するッ!
天ぷらとエビフライを食べたいと言う声を聞き、充分な兵糧アリと判断した者たちが2方面作戦を展開したのであるッ! まさに物量の暴力ッ!!
ちなみに一人暮らしのマルゼンスキーがいるのは、大晦日を部屋でひとり過ごすのが退屈だったからである。もちろん空き部屋の使用許可は事前に申請しているので問題はない。
「…………」
「…………」
「タイキさんもおっきなピザを用意してたし、今年の大晦日は去年よりもさらに賑やかになりそう☆ ……アレ? ふたりともどうしたの?」
「ウィンディさん、私はお蕎麦の用意を手伝ってきますね。いくら帰省によりウマ娘の人数が少ないとはいえ、それなりの量を……学園に残って下さっているスタッフの皆さんにも振る舞う予定ですから」
「そっちはフラッシュに任せるのだ。ウィンディちゃんは外の様子を見てくるのだ。きっとサブトレもかまどの火加減ばかり見てて退屈してるのだ、カワイソウだから遊んでやるのだ!」
「……え、え~と~?」
「あ、ファルコンさん。たまの夜食も心の栄養バランスのためと思えば黙っていますが、あまり限度を過ぎると勝負服のサイズが合わなくなりますよ?」
「ダートはパワー勝負とはいえ、アスリートならりそーてきな体重かんりを
「アッ、ハイ……」
──なんだか釈然としないスマートファルコンなのであるッ!!
◇◇◇
年末年始に学園に残る者の理由は多種多様である。1月の頭にレースを控えている者、単純に里帰りが面倒な者、重賞のトロフィーを勝ち取るまでは帰らないと意気込んでいる者、帰省してそのまま学園に戻れなくなってしまう未来を危惧する者、クリスマスにケーキをあーんしてもらっていい感じの写真が撮れてこれは優秀な姉(独身)にマウント取るチャンスなのではとちょっとしたイタズラ心で有ること無いことメッセージに盛り込んで送信したら短くひと言『ぶっコロ』と返信がきて実家に帰れなくなった
なので全員でそろって年越し蕎麦を堪能したあとはそれぞれの事情に合わせた寛ぎの時間となる。たとえば、レースのために体調管理が必要なウマ娘は除夜の鐘を待たずにさっさと就寝してしまう。
対して正月はガッツリお休みなウマ娘たちはここからが本番である。さすがに寮で騒ぐワケにはいかないので当然の権利のようにサブトレーナーである彼のルームに集結していた。ちなみに部屋の主はクリークやタイキなど何人かのウマ娘たちを引き連れて学園に残っているスタッフたちに蕎麦の出前の真っ最中である。年末の残業中に食べる温かい天ぷら蕎麦はこの上なく美味であっただろう。
まぁ、さすがに大量の蕎麦を全て手打ちとはいかず、市販の物を茹でただけなのだが。その辺りの改良は数話ほど後に入学してくる蕎麦打ちが得意なウマ娘の出番までお預けなのである。
とはいえ、市販の蕎麦でも仲間で集まり食べれば美味いものである。それがピザ窯の段階から手作りした特製ピザであればなおさら美味い。
タイキとオグリが運んできた特大ピザをタマが丁寧に切り分ける。さすがは長女の貫禄か、しっかり全員に均等になるように……配分しようとしたら耳をペタンとしてションボリする芦毛がいたので、そこには面倒なので一枚丸ごと与えておいた。ちなみにサイズのほうは2トントラックの冬用タイヤぐらいである。アイツ、蕎麦も天ぷらもエビフライも山盛り食っといてまだ入るんか? 胃袋どないなっとんねん。怖ッ。
なお、サブトレルームの常連たちは軒並み席を外している。
普段ほとんど連絡をしていないのだからとナリタブライアンは姉のビワハヤヒデに強制連行された。
アグネスタキオンはメジロアルダンの脚質改善に協力するためにメジロ家に出張中である。学園で(というかサブトレルームで)の年越しは魅力的であるが、そこはなんだかんだで流石のウマ娘。走るための可能性と比べれば悩むまでもない。
ナリタタイシンは学園での日々で自分に自信が持てるようになってきたおかげか、地元のウマ娘たちにバカにされていた記憶を乗り越えて堂々と家族に会うことにしたらしい。
ミホノブルボンは特に何事もなく普通に実家に戻った。もっとも、彼女の
「んぐ……もぐ……ひょういへは、はいへんはんーあーえうふぁいあううああうおあ」
「む? ああ、ほあはな。ひうほひはふほふふはひゅっほうふふほははゃふひうあおーあ」
「え~と? たぶん『そういえば来年はURAファイナルズがあるのだ』『そうだな、中距離はルドルフが出走するだろうが』みたいなことを言ってるんじゃありませんかねぇ~」
コーラが並々と注がれている特大ジョッキを片手にグッ! と親指を立てるウィンディとオグリ。フクキタルが容易く翻訳してみせたのは、サブトレルーム押し掛け仲間であるブライアンとタキオンがよくほっぺたをパンパンにしたまま喋っているのを聞いていたからである。行儀が悪いとヒシアマゾンとエアグルーヴに頭を鷲掴みにされて説教(物量)を何度も味わった末に改善したが。
「あたしはモチロン、マイルを狙う予定よ♪ 一緒にレースに出た子たち……グッドスピードやルシファーハンマー、トロンベたちからも宣戦布告を受けちゃってるもの。マイルの決勝でランデブーしましょってね!」
「ウチは……うーん……。とりあえず天皇賞狙いでトレーナーにはお願いしとるけど、年明けじゃあ賞金額足らんし、来年のファイナルズにはまず間に合わんやろなぁ」
「んぐ……ぷはぁ。チケットたちは三冠路線、皐月賞に出るらしいな。となると、春の天皇賞はクリークとライアン、それから──」
「ライスシャワーさん、でしょう。合同トレーニング時代にサブトレーナーさんも仰っていました。ライスさんはウマ娘の中でも純度の高いステイヤーであり、本来の適正距離は3000でもまだ短いだろう、と」
「ルドルフはどうするんかなぁ。有マ記念では絶好調やったし、そもそも菊花賞勝っとるし。でもまぁアイツも強くはあるが無敵ではないって証明されたし、クリークたちの勝ち目も──」
ああでもないこうでもないと来年のレースについて盛り上がるウマ娘たち。ついに新設レースである“URAファイナルズ”が開催されることもあり、やはり期待に胸が膨らむのだろう。
普通のGⅠとは違う、それぞれが得意なフィールドでの意地と意地とのぶつかり合いがついに始まるのだッ!!
それを言ったら普段のレースだって適正距離を選んで出走してるだろうなどという正論は野暮の極なのであるッ!!
ルドルフはクラスの友人たちと旅行中です。
なお、現シンボリ当主さまは娘に遊びに出かける友人がちゃんといることに内心ホッとしている様子。