広至3年10月下旬。
「親父さん、いつものをお願い。」
パトロールルート近くのいきつけのドーナツ屋の店主にそう注文する。
「おうよ。1人には慣れたか?」
そう返す親父さんに、
「えぇ、もうすっかり。」
と返すと、注文したドーナツを渡され、代金を支払う。
「毎度。気を付けてな。」
「・・・ありがとう。」
私は長谷川美夏。この世に生まれ落ちて22年のしがない1巡査。最近は警察は人員不足が深刻化して、パトカーの人員も2人という定数を割っているのも珍しくない。私の相方は3週間前の武器の密輸商人検挙の時に殉職した。でもそんなことはもう日常茶飯事だ。1ヶ月の間に顔見知りの誰かが殉職する。補充の警官も損害を埋めるので精一杯。そんな真実を並べつつ、パトカーへ踵を返す。
「・・・ん?」
向かいの銀行のホールに怪しい2人組が立っている。そしてその内の1人がこちらを指さしたと思うと、何か恐ろしい感じがしてすぐパトカーに隠れる、すぐさま獣の咆哮を思わす射撃音と風切り音が同時に襲いかかってきた。とりあえず応援を呼ばなければ。
「警視庁!警視庁!!こちら西35!」
「こちら警視庁!」
「四菱銀行西大通り支店に火器を所持した2人!こちらは軽機関銃と思しき火器にて射撃を受けています!至急マル援を要請します!!」
「警視庁了解。直ちにSATを送る。犯行グループと周囲の詳細を求む。」
よかった。SATは今動けるらしい。相手のリロードで銃弾の雨が止んだ隙に顔を出し、打ち返す。が、
「うわ。弾丸を受け付けない!?」
相手は防弾チョッキのような物を切り貼りした装甲を纏っていて、拳銃弾をものともしない。まさしく気分はガ〇ダムと遭遇したジーンの気分。しかし機関銃の相方がアサルトライフルで援護して、軽機関銃の猛射が再開される。
「警視庁!警視庁!!強盗犯は防弾チョッキを加工したと思われる防具を装備。こちらの拳銃が通じません!アサルトライフルと機関銃の射撃で身動きも取れません!」
と犯人達の詳細を送る。
「こちら警視庁了解。SATはたった今出動。到着まで犯人達を足止めしろ。奴らを好き勝手させたまま逃がすな!」
と返信がくる。
「に、西35了解!・・・できるか!」
盾となっているパトカーももう限界が近いらしい。エンジンに被弾していつ爆発して丸焼きになってもおかしくない。頼みのパトロールライフルも木っ端微塵だろう。とりあえず変則的にトランクやバンパーの影から反撃するがこっちが5発のシリンダーを撃ち切るまでに何倍もの数を撃ち返されている。しかしサイレンの音が遠方から響いてくる。待ち望んだ援軍だ。助かったと安堵の息を漏らすが、1発の弾丸がとうとう車体を貫通してきた。
「こちら西35!これ以上強盗犯を抑えられない!」
と無線に言うと
「西35、遅くなった。これより展開する。」
とSATが返し、短機関銃や散弾銃で鎮圧に掛かるが、強盗犯の装甲は丈夫で、有効な打撃を与えられていない。
「後ろだ!後ろに周りこめ!」
SATの隊長が部下に指示を飛ばしている。しかし相手は背面のも装甲がある。後ろからでもむずかしいだろう。しかしそんな時、軽機関銃を撃ち放っていた強盗の頭部に狙撃班の放った銃弾が突き刺さる。奴はそのまま赤い液体を撒き散らし倒れて動かなくなった。もう一人も、車に走ったが先に逝った仲間の元へ送られた。
ー四菱銀行西大通り支店強盗事件第1次報告ー
死者:2人(いずれも犯人)
負傷者:15人(警察官5人、民間人10人)
物的損害
PC:全損1台、小破2台
一般車両:全損3台、中破5台
四菱銀行西大通り支店に軽機関銃と突撃銃で武装した二人組の強盗が押し入り、現金5000万円を強奪しようとこころみるも向かいのドーナツ屋に西署勤務の長谷川美夏巡査のPCを発見。応援要請を恐れ発砲。しかし長谷川巡査は降車しており応援を要請、反撃するもこの後SATの到着まで機関銃弾の猛射をうけた。その後SATが到着し、短機関銃、散弾銃等で射撃を加えるも、防弾チョッキを加工した装甲服により有効な打撃を与えられず、やむなく狙撃班の狙撃により殺害。
なお、本件で強盗犯側が使用した弾薬は約1500発に及ぶ。今後は、警官の火力の拡充が必要との方針を固めさせた。
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「はぁ。生きてるのが不思議ね。・・・ありがとうね。」
すっかり大破しつつも私の命を救ってくれた相棒のボンネットに座って、そう呟いた。
この本編の事件のモデルは「ノースハリウッド銀行強盗事件」をモデルにしています。なんか"パトロールライフル"と調べたら出てきたので・・・。稚拙な文章でしたがありがとうございました。