Helpless   作:ZK

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そういえば長谷川巡査のプロフィールを前回載せ忘れてたので置いときます。

長谷川美夏(22)
身長170cm、体重55kg、好物:麺料理、お菓子
丸メガネを掛けたポニーテールの一般婦警。父に自衛官、母に警官を持つ。自ら公務員を志して警官となる。射撃、格闘技能は親からの手ほどきをうけて中の上程。善良な国民や仲間を守るのを信条とし、自己犠牲すら厭わないが、凶悪犯は死んで償えという考えを持つ。


何この新人君と思ったら何この誘拐野郎は編

あの強盗事件から数日経った。少しPTSDになりかけな感じがするが、私の体は至って元気。今日もパトロールをしていた。変わった事といえば、新人の補充がきて、そいつが助手席にいることだろうか。

「なんで僕はこんな最前線に!?僕はコントロールセンター配属のはずだったのに!」

さっきからこんな調子でうるさい。

「署に帰ったら抗議して良いからとにかくパトカー内で騒がないで!」

と返しているが、一向にうるさいままだ。・・・さっきからすれ違う小学生達が歩道でこちらの様子を見て笑っている。大の大人が、更に警察官が駄々っ子のように喚いているのは傍目から見れば確かに滑稽だろう。どうしてこいつをこの状態でパトロールに出したのかコレガワカラナイ。

 

ー1時間前ー

「さて、行くか。」

独りでそう言ってエンジンをかけた時、数人の同僚が一人の見知らぬ顔の男性警官を雁字搦めにして運んできて、助手席に押し込み、警部補が

「悪いが新人研修を頼む。こいつは高取二郎巡査だ。頼む。」

と言って署内に退散していく。

「ヤダ!小生ヤダ!!前線勤務なんて聞いてない!!」

新人こと高取巡査とやらはこんな感じで暴れていた。

 

そして言動から読むに、どうやら配属先が違うと言っているらしい。どこのフユーリー号のノーマン君かな?でも高取はそのノーマンよりうるさい(*当社比)。このままだと禿げてしまう。そんな時、行きつけのドーナツ屋が目に入る。

「・・・背に腹は変えられないか。」

そうボソッと呟いてパトカーを降りてドーナツ屋に入る。

 

「ほら、これあげるからいい加減黙って。」

買ってきたドーナツを渡すと、ムシャムシャ食べ始め、全て平らげるとちゃんと静かになった。

「ふぅ。すみません。取り乱してしまいました。」

食べ終わると、高取は別人のように落ち着いた口調で話しかけてきた。

「え、えぇ・・・。まぁ・・・いいわ。」

と思わず返すが、正直ついでに買った昼飯も消し飛んだので良くない。

「僕、安全に出世したくて、110番センター配属を希望したんです。ほら、最近物騒なので・・・。」

彼が語ってくるが、安全に出世したいとか糸で刻まれてしまえと思ったが、それは心の中にしまっておく。ともかく、新人が静かになったからまぁ良し。パトカーを出し、パトロールを再開する。

 

「なんか、この前ヤバい銀行強盗が出たってのに静かですね。」

高取がそう言う。確かに、あの強盗事件で沢山撃たれた後は、特に危険な事にはなっていない。(事件が起きていないとは言ってない。)

「ホント。治安がいい時と悪い時の差が凄まじいわよ。」

 

広至になり、数ヶ月の南北朝鮮との衝突による治安の悪化に警察が追いつけなくなり、2年度に、銃刀法が改正され、講習と簡単な審査を受けさえすれば銃を持てるようになった日本でも、財布を落としても帰ってくることは未だよくあるらしい。だがしかし、長谷川美夏は、また貧乏くじを引いてしまうことになる。

 

「はえー。こんな静かな所もあるんすね。」

ここは倉庫が集まる地区だ。高取が言うように、あまり人気が無いのを良いことにヤバい取引が行われたり、物品の盗難も行われるのでパトロールの対象になっている。私は前を向いたまま答える。

「まぁ静かだけど犯罪の温床ぅわァァァーっ!?」

しかし右の角からパトカーの目の前に子供が飛び出してきた。急いで左にハンドルをきってブレーキを踏み込む。止まると、すぐに飛び出し、

「だ、大丈夫!?」

とすぐに安否を確かめる。どうやら手足を縛られ、猿轡を噛まされた小学校6年位の女児だ。こんな所に子供、更に手足を縛られた子供がいるのは見たこと無い。

「ハフケテ(助けて)・・・。」

と女の子はポロポロ涙を流しながら訴えてきた。

 

 

偶然飛び出した先にお巡りさんがいた。良かった。助かる。家に帰れる。

 

「行ってきまーす。」

何気ない挨拶。でもこれが、最期の言葉になっていたかもしれないと思うとゾッとする。

「ねぇお嬢ちゃん。学校なんかよりもっと楽しいことしようよ。」

いきなり車から出てきたよく分からない白仮面によく分からない話を持ちかけられた。声が不気味だったし咄嗟に逃げようとした私は、後ろから引っ張られる感覚と、頭をぶつけた痛みを最後に、意識が飛んだ。

 

「・・・?」

目が覚めた私は何処か倉庫に運ばれたらしい。

さっきの白仮面は私に背を向けて何かしている。手足は縛られているが、何かに縛られている訳では無い。倉庫の扉も開いている。つまり、運動会で"ウサギ跳び障害物競走"で3連覇している私に不足無し!ゆっくり起き上がり、呼吸を整え、コースを見定める。良し!行ける。

「ん?あ、おい待てぇ!」

最初の1歩と同時に白仮面が気付く。だが私はそのまま倉庫を飛び出して・・・どうしよう。と思った時、

「・・・ぅわァァァーッ!?」

と素っ頓狂な声をあげて停まった第1車人はパトカーのお巡りさんだった。

 

「ファッ!?こんな所に警察かよ!?」

小学生が出てきた倉庫から白仮面を被った不審者が出てきた。

「ちょっとあなた、少し時間良いですか?」

私がそう言うと、

「え、わ、私は今その子が縛られているのを見つけたんです。話しかけたら逃げ出して・・・。」

怪しさは満点だが、だからといってそれだけで逮捕という訳にはいかない。とりあえず子供に聞くか・・・。そう思って女の子の拘束を解こうとした時、

「ぎぃやああ!!」

と高取の声が聞こえる。思わず仰け反った時、目の前を銃弾が掠めた。

「!?」

すぐに拳銃を抜き、犯人と相対する。しかし高取は、

「銃相手の訓練なんてしてない!こんな時は・・・逃げるんだよォー!」

と警官に有るまじき文言を吐いて全速で逃げて行った。

「こんな所で警察に見つかったのは想定外だが、婦警一人だったら、俺でも殺れる。」

と不審者は言い、

「思春期の前に、性の事に関して教えて差し上げようとしただけだが、見つかったのなら仕方ない。とりあえず、この婦警一人倒して、場所を変えるぜ。」

と言った不審者は拳銃を捨ててナイフを抜いた。

「生憎拳銃は当たった試しが無い。手合わせ願うぜ。」

と繰り出された素早い突きを身を翻して躱し、警棒を抜く。

「ヘヘヘ、怖いかポリ公。当然だ。元自衛官候補の俺に勝てるもんか。」

「試してみる?私だって現役警官よ。・・・ってか元候補生?試験落ちたんです?」

とつい煽ると、不審者は

「何をッ!?」

と怒り心頭の様子で斬撃のラッシュを放ってくる。下手に回避すると小学生に当たってしまう。なるべく警棒で受け流すが、額に受け流した余波を1発貰った。

「おっと、ごめんなさいね、顔は女の命だっけ?」

「アンタに言われたくないわ。色情魔。」

またラッシュが繰り出され、変則的に繰り出された突きやフェイント付きの斬撃でカスリ傷が増えていく。

「良い。良い!やっぱ必死に抗うも弱っていく姿は最っ高に勃〇モンだぜー!!」

その言葉に反発せず、同時に繰り出された突きを躱してナイフをそのまま犯人の拳から抜き取る。ナイフは勢い余って近くの電柱に巻いてあるカバーの根元に突き刺さる。後は背負い投げでもしてしまえば・・・。

「なっ!?」

ナイフはもう一本あった。とっさに左腕を盾に首への一撃を防ぐ。だがもう左腕に力が入らない。だけどまだ死ねない。奴を止めなければ小学生が危ない。

「ははは、かわいそーだぜ。弱い奴の為に命を張り、ズタボロ。なけるぜー。」

「はは・・・それが警官の使命よ。」

せめて時間を稼ぐ。痛みに耐えつつ、会話を紡ぐ。気休めだが、それに賭けるしかない。

「まぁ、そろそろ行かせてもらうぜ。」

奴がナイフを構え、突っ込んでくる。

 

生えた。

何が?

ナイフの先が。

誰から?

・・・お巡りさんから。

 

「グ・・・カハッ。」

「ヒヒヒ・・・。良い断末魔だぜ婦警さん。久々に良い気分だぜ。そう、干からびるギリギリに久々に水を飲んだような感覚だぜ。ま、もうお話も終わりだろうな。」

お巡りさんの手から棒が滑り落ちる。やだ。やめて。せっかく助けてくれようとしてくれたのに。おでこも左腕も、あちこち切られても助けてくれようとしてくれたのに。

「ハハハ。腰が抜けて立てないか?嬢ちゃん。大丈夫だぜ。後で相手してあげるからな。今はこのお巡りさんの最期を見届けてやりたいからな。そう、炎が、全て燃え尽きてしまう、どんどん冷たくなっていくあの感触。たまらないぜ。ヒヒヒヒヒヒ・・・。」

 

 

 

 

「ん?」

誘拐犯の腑抜けた声。見ると、お巡りさんの右手が、誘拐犯の襟を震えながらも掴んでいる。

「ほぉー。まだ生きていたか。まぁ良い。なんだ?最期に遺言くらいは聞いてやるぜ。」

「・・・。」

「あ?」

お巡りさんの口が誘拐犯の耳元へ行く。ナイフの先が少しづつ伸びていく。

「国の為に・・・死ね。」

直後お巡りさんは全力の膝蹴りを誘拐犯の股に叩きこんだ。

「ぎにゃああああああああああああああ!!!」

誘拐犯は白目を剥いてお巡りさんを突き飛ばす。バタリと倒れたお巡りさんの顔は、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁー・・・。こっ、このクソアマがぁぁぁ!!!」

この時誘拐犯から一切の余裕は消え失せた。殺す。殺す!はらわた全て引きずり出して、八つ裂きにして!電柱に飾ってやる!!もはや痛みは怒りで鈍感となっていた。しかしやはり歩くのが少し覚束無い。

 

「し、ここ、こ、今度こそ死にやがれぇ!!」

警官の腹のナイフを抜き、その顔面に突き刺そうとしたその瞬間。

「・・・あ"?」

銃声が聞こえる。傾ぐ風景の中見れば、あのガキが震える手で拳銃を構えていた。何か、怒りに震えるような目で・・・。

 

誘拐犯が倒れた。おでこに風穴を開けて、目も一杯に開いていた。私の手には、お巡りさんのポーチから飛び出た拳銃がある。後ろの電柱の所には、刺さったままのナイフと切れたロープが落ちている。

「ねぇ。お巡りさん。・・・お巡りさん。」

倒れているお巡りさんに近づき、揺する。お巡りさんの目はボーッとしていって、下に血の池がどんどん広がっていく。

「お巡りさん?やだよ。助けてくれたお巡りさんも死んじゃいやだよ。ねぇ。ねぇ!起きて!!・・・お願い・・・。」

そのままお巡りさんのお腹に突っ伏して大声で泣いた。

 

この後、実は高取がしていた増援要請によって西29が全速でドリフトすらかましつつ到着したのはこの30秒後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、もう来たのか。」

暗闇の中、聞き覚えのある声が聞こえる。

「はっ!?」

見れば、カフェにいる。身体中にあった傷はない。向かいの席に、1ヶ月前死んだ相方。運転するパトカーの助手席で気付いたら頭をぶちまけて死んでいた佐藤がこちらを見つめていた。

「さ、佐藤・・・君?」

「まったく。こんな早く来るとは思わなかった。どうせあんたの事だ。人の為に命張ったんだろ。」

図星だ。確かに私は足止めをしようとして・・・?

「そうだけど、ここって・・・あの世?」

私が急に話を変える。しかし佐藤は、表情も変えずに

「さぁな。ホントに死んだらわかるんじゃないか?」

と言って私を指さす。

「え?」

私の体には傷が戻っていた。

「少なくとも会えて良かった。じゃあ。」

そう言って彼は立ち上がって去っていく。

「いや、待ってこれってどういう・・・。」

私が手を伸ばすが、届かない・・・と思ったら何か異様にツルツルした何かを掴んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああ!!!???」

「きゃああああああああ!!!???」

「ひゃああああああああ!!!???」

「どわああああああああ!!!???」

病室に4人分の悲鳴が響いた。

「・・・?あれ?あの時の・・・。」

ベッドを囲んで居るのは30代後半位の男女に、あの小学校6年の女の子が座っていた。というか手に持っていたのはリンゴだった。

「お巡りさん!」

女の子が抱きついてくる。

「いででで!」

傷が痛み、思わず耳障りな呻きを上げてしまった。

「こら、さやか。すみません。・・・娘を助けて頂き、ありがとうございました。」

母親と思しき人に続いて(多分)父親が

「どう感謝すれば良いのか・・・酷い怪我までされて・・・。」

と言って、2人で頭を下げてくる。

「いえ、いいんです。これが警察官の義務ですから。」

そうにこやかに返す。あの女の子、さやかちゃんが無事でよかった。彼女はとてもにこやかに笑っていた。聞けば、西29を初めとする増援が到着した時、彼女が私の腹部の出血部を突っ伏して抑えていたのが功を奏し、私は生きながらえたらしい。・・・つまり私は逆にさやかちゃんに助けられたということになる。今でも彼女は学校終わりにお見舞いに来てくれる。聞けば、将来は私と同じ、警察官を目指すらしい。うれしかった。でもこの子ホントに小学生6年生か分からない位しっかりしていた。ひょっとしたら人生2週目なんじゃないかとか思ってしまった。

 

ー鈴木さやかちゃん誘拐事件第1次報告ー

 

死者:2名

1名(犯人のみ)

負傷者:1名(重体)

 

西地区〇丁目付近にて小学校へ登校中だった小学校6年生の鈴木さやかちゃんが、誘拐された。学校や親の行方不明届けが提出されたのとほぼ同時刻に、西署勤務の高取巡査より報告が入り、付近のPC、西29、西16を向かわせた。さやかちゃんは自力で犯人の隙を突き逃走。偶然遭遇した西35、長谷川巡査に保護されるも、犯人と交戦。詳しい推移は不明であり、西29の報告では既に犯人は射殺。長谷川巡査は出血多量で意識不明状態で発見。さやかちゃんに怪我は認められなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

高取が逃げたのは正直腹が立った。でも、彼が曲がりなりにも応援を要請してなかったら私は生きていない。人生とは分からないものだなぁ。そう思いつつ、見舞い品の和菓子を頬張る。・・・。応援ならあの場で呼べたんじゃ・・・。やっぱ許さん。

 

 




前回から薄々
「あれ、文字数少なくね?短くね?長く詳細描けないワイ文才無くね?」
と勝手に思ったので2連戦です。出来れば最低2000文字以上描きたい所さん。(出来るとは言ってない)

ちなみに4人の悲鳴のとこは
長谷川巡査
女児母
女の子
女児父
の順番です。
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