Helpless   作:ZK

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タイトルから、あっ(察し)した方もいますかは分かりませぬが、はい。


「コマンドー、繰り返します、コマンドー。」前編

「あー疲れた。ちくせう。」

報告書を書き終わり、ペンを机に放る。

「ワイも1日休みが欲しいべー。」

黒岩もため息をつく。何故かと言えば、結局喧嘩事件の後に馬場警部補に柔道を仕込まれる羽目になったから。筋トレ、その後犯人に見立てた等身大のただのカカシを投げる。これを半日ずつやって疲れない訳ない。交代勤務制の勤務後の休み?・・・良い奴だったよ(血涙)。

「おはようございま・・・す。」

と、高取がやって来た。こっちの顔を見て何か気まずそうだ。そんなに酷い顔だろうか?まぁ休日の話をされるよりはマシ。だって無かったんだし(2回目の血涙)。

「おおっと!もうこんな時間だ!それじゃ!」

時計を見た黒岩はそう言って駆けていった。

「いや私達もじゃん。」

そう言って、二人で大急ぎで支度を済ませてパトカーに飛び乗った。

 

「西署より各車。住宅街にて死体が発見された。直ちに向かえ。」

暫く走ると、無線が飛んでくる。

「死体・・・。西35了解!」

ふと呟き、ハンドルを切って続報で知らされた現場へ向かう。まさかこの後何かヤバいことに遠巻きに触れてしまうとは思ってもいなかった。

 

「おーい!待ってくれ!」

そう言いながら、ゴミ袋を両手に持った男が寝巻きのまま走ってくる。体の芯がブレていないのは、やはり元特殊工作隊員なだけある。

合図を出し、発進しかけている収集車を停めさせる。

「行ったかと思ったよ。」

彼はそう冗談混じりに言ってくるが、俺たちの仕事はゴミ収集では無い。収集車の中に隠しておいたサブマシンガンを取る。

「飛んでもねぇ。待ってたんだ。」

構えられたサブマシンガンを見て男は逃げようとしたものの、直ぐに蜂の巣となった。

「よし。官憲が来ない内にずらかるぞ。」

と運転手に言って、さっさとトンズラする。そう。俺達の目的はコイツの抹殺だ。

 

「西35現着。」

そう無線に言って降りると、寝巻きの男性が体中から血を流していた。生死を確認したものの、既に亡くなっている。ごみ捨てに来たのか、ゴミ袋が近くに転がっていた。

「・・・南無三。」

と、言って手を合わせていると、

「・・・一体ここで何が?」

高取が聞いてくる。

「多分これは銃撃されたんだと思う。とてもナイフとかで刺せる傷の数じゃない。」

と、推論を述べる。そして、拳銃でもこれは中々難しいだろうけど。

「西35から西署。遺体には数十箇所の傷あり。」

「西署了解。刑事部と鑑識が向かっている。そのまま現場を保存せよ。」

とやり取りをすると、丁度良く刑事達を乗せた車両が何台か到着した。

「お疲れさん。全く凄まじい死体やな。」

刑事や鑑識達がそれぞれ仕事道具を手に出てくる。後は彼らが引き継ぐというので、パトロールに戻る事にした。

 

「モルカーがお好き?なら結構。ますます好きになりますよ。さぁさ。軽自動車のニュータイプです。」

ある自動車販売店。セールスマンに促され、なんかモルモットみたいなデコレーションがされた良く分からん車に試乗を勧められる。

「快適でしょう?あぁ、おっしゃらないで。シートがもふもふ。でも夏は暑いわ洗うのは大変だわロクなことが無い。天井もたっぷりありますよ。どんな長身の方でも大丈夫。どうぞ回してみてください。」

そうセールスマンが鍵を指したので、かけてみる。エンジンの音も聞かせるのが彼の流儀らしい。流石隊のエンジニア専攻だっただけある(謎理論)。

「良い音でしょう?余裕の音だ。馬力が違いますよ。」

セールスマンはそう言って得意げだ。

「1番気に入ってるのは・・・」

「なんです?」

「値段だ。」

そう言ってギアを入れ替え、後進。セールスマンは、止める為に前方に回り込む。

「あー!ここで動かしちゃダメですよ!」

そしてアクセルを踏み込む。ロケットのように急発進した車は、

「待って!止まれ!」

と近付くセールスマンにシュート。

「うあああ!!」

奴を跳ね飛ばし、道路に飛び出した。

 

「西署からパトロール中の全車へ。車販売店にて車強盗が出た。跳ね飛ばされた販売員が意識不明の重体。」

と無線が入る。オマケにまたこっちの近くだ。

「逃走中の車は・・・も、モルカー?みたいな車。」

と、困惑したオペレーターの声も聞こえる。と、前の丁字路をモルモットの様なカラーリングの車が走っていく。

「あっ!アレじゃないですか?」

高取がそう言う。

「こちら西35。逃走車両と思われる車を発見!追跡します。」

無線にそう話し、パトランプを稼動させ、アクセルを踏み込み、速度を上げる。

「そこの軽自動車、停止せよ!」

高取がスピーカーで呼びかけるが相手は逃走をやめない。法定速度以上で走る相手も私達も車を次々縫うように避け、追い抜く。この中では、ピットマニューバもかけられない。元より自信が無い。そんな膠着状態が続いたが、動いたのはアッチだ。運転席から伸びる腕、その先で黒光りする何か。これが何を意味するかは明白だった。

ー左だ。

「ぬおっ!?」

乾いた発砲音と、フロントガラスに入った弾痕。フロントガラスを貫通した弾丸は私と高取の間を通り抜けていった。

「撃った!撃ち返して!」

動揺した高取に言うが、

「無茶言わないで下さい!こんな状態で当てられますか!?」

と返事が来る。

「・・・確かに。」

今は法定速度以上で、クネクネ他の車を避け、弾丸も避けて、一般市民に当てないというのはそれこそ至難どころか難である。と思った時、踏切が見えてくる。丁度遮断機が降りてきて、流石に逃走車両もこれで止ま・・・

ら無い。速度を上げて、停車する車の間をすり抜ける

「ファッ!?」

「何だこのオッサン!?」

との声が聞こえる中、進む。だが、ふと右を見ると電車が走ってきていた。

「あぁ右から電車があああ!?」

高取が絶叫するのに反応して思いっ切りハンドルをきり、ブレーキを踏み込む。

「・・・ま、間に合ったぁ。」

電車の轟音の中、蚊の様に呟く。逃走車両は踏切をギリギリ渡りきってしまったようだ。

「・・・どうします?」

「応援の西24が追っかけてるらしいわ。他のPCも向かってるからお任せしましょう。」

鏡で見た私や高取の顔は暫く真っ青のまま治らなかった。

 

「・・・ガラスとか穴空いたままなのに大丈夫ですか?」

窓を閉め切ったままでも風が吹き込むパトカーの中で高取が言う。

「しかたないわ。私たち以外のPCが群がっても捕まえられず、事故で3両失ったらしいから。」

それで穴を埋めるべく、拳銃弾数発の被弾で済んでいるこのパトカーは後退を許されなかった。

「船・・・。」

ここは沿岸部。船が舳先を並べ、躰を休めている。そのほとんどは漁船だ。

「私もなー。暫く休日があれば船乗って旅行したいなー。」

そう言うと、

「旅行ですか・・・どこへ行くんです?」

と高取が聞いてくる。

「そうねぇ。・・・ドイツとか?」

そう答える。その瞬間、爆発音が響き、漁船の一隻が爆煙を上げる。

「うわ!?」

思わずバランスを崩す。

「まだ大丈夫まだだいじょ・・・」

ハンドルを握る私の目に写ったのは、こちらに向かって飛んでくる破片だった。

 

「どわぁぁぁ!?」

世界が回った。横方向に思いっ切り回った。長谷川巡査が飛んできた破片を避ける為ハンドルをきってスピンし、止まったのはガードレールの数cm前。これを突き破った暁には魚礁になっていただろう。

「あの、この後から運転変わります。このままじゃ幾つ命があっても足りませんから。」

そう長谷川巡査に言う。彼女は肩を落として、

「わった・・・。」

と言った。結局この時爆発したのは漁船の1隻で、所有者の漁師が中にいたという目撃情報があったが、死体は見つからなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 




すみません思ったよりも忙しく、急遽前後編で分ける構成となります。
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