↓前編から少し経ってます。
「ハンドルの握り心地はどう?」
運転手を交代し、ハンドルを握る高取に話しかける。彼は
「握り心地とかあるんですか?」
と返してくる。いや、確かに私もハンドルの握り心地とか言われても良く分からないけど。
「まぁ強いて挙げるなら、最初触った時先輩の手垢と乾いた汗でベトベトだったことですかね。」
と言い放ってきた。えぇ・・・(困惑)
「西署より西35!銃撃されているとの通報あり。直ちに向かい、状況を確認せよ。」
と無線が入る。そして現場は近かった。
「マジすか。手入れしたコイツの出番かな?」
後ろの座席を振り返り、Mini-14を取り出す。
「そーいえばそれ何で自分に支給されないんですかね?」
と高取が聞いてくる。パトロールライフルを持てるのは、追加の研修を受けたパトロールライフルオフィサー(PRO)だけだ。周りの知り合いで言えば、私や黒岩等西署の大体の警官が含まれる。・・・馬場警部補?「俺の柔道と、それに基づく回避術をもってすれば拳銃程度訳ない!」とか言って参加していない。
「今度探してみます。っと、・・・居ませんね。」
高取の言う通り、銃声は聞こえない。
「誤報かな?ま、少し周ってみよう。」
と指示を出す。少し行くと、林の道から2、3台の車が出てくる。と思った刹那、窓から発砲炎がきらめく。
「どわー!?」
高取がハンドルをきり、道のガードレールに衝突する。
「頭下げて!」
と高取に言うが、私はMini-14で何発か撃ち返しながら、パトカーを降りる。しかし撃ち返した10倍位の猛射を受け、地面に突っ伏す。この、遮蔽物の無い中突っ伏して弾丸が当たらない様に祈るのはとても怖い。が、あちらもこれ以上の戦闘は望まないようで、さっさと走り去っていった。
「頭下げてろって言ってましたよね?」
高取が呆れたような顔でパトカーから這うように降りてくる。エンジンブロックのお陰か、傷は見えない。
「何?逃げるとでも思った?」
「え、いえ。」
私は高取の先輩。後輩を置いて逃げられる訳がない。もちろん先輩や上司も置いていかないけど。
「またパトカーが死んでおられる。」
ふと呟くと高取が、
「もう先輩はパトカーの疫病神じゃないですか?」
と言ってくる。
「うるさい。」
*
「目は覚めたかね?」
目を開くと、見覚えのある人物が立っていた。見れば俺はベットのような物に縛られている。確か俺はさやかを助ける為に、エンジンもブレーキすら壊されていた車で奴らの車に体当たりをしようとして、失敗。そうだ。殺されたはずの米根戸に麻酔銃を撃たれた。
「まさか警察が来るとは思わなかったが、お互い無事で何よりだ。」
そう続けた人物。モン"元"大統領。統一朝鮮にて徹底的な半日を推し進め、対馬付近での日韓戦争を引き起こした張本人。結局の所俺と、俺が率いる特殊工作隊による作戦と反戦団体により大統領の椅子から引き摺りおろされた人物だ。
「君にここまでしたのはある頼み事をしたいからなんだ。・・・現大統領、銀大統領を暗殺してもらいたい。」
そんな元大統領は、短刀直入に言ってきた。
「そんなに戦争で人を殺したいか。」
と言い返すと、
「人聞きの悪いことを言わないでくれよ。これは領土回復の為の聖戦だ。君らに盗られた対馬や、数十年前の侵略戦争の反省を促す為のね。」
「お前が今更戻って政権を握れるのか?」
「なに、朝鮮に日本人を嫌ってる奴は多いが、金を積んでも転ばない奴は少ない。君が大統領を殺しさえしてくれれば私の集めた愛国心溢れる部下達がやってくれる。」
「・・・断ったらどうなる?」
「君の娘のバラバラ死体が届く。だが、果たしてくれれば皆五体満足で返す。」
その言葉には嘘が見える。戦時中、あれだけ日本人に対する侮蔑を叫び、「クソ日本人共が1億死のうが10億死のうが知ったことか!」と国際法を無視するように訓示した彼が、マトモだとは思わない。だが、断れば即刻殺される。ここは嘘でも俺が従うフリをした方が得策だろう。そう思い、癪だが首を縦に振った。
「手荷物は?」
キャビンアテンダントが聞くのに、
「いや、これだけだ。」
と、監視役の奴を指さす。
「今度余計なこと言ったら口を縫い合わすぞ。」
とソイツが怒るが、何とかしてここから抜け出す必要がある。
「おふ。」
隙を見て、監視役に肘打ち、
「おぶ!?」
そのまま跳ね返ってきた首を掴み、静かに引き抜く。ポキリという音がしたが、飛行機のエンジン音でかき消された。すまん。さやか。もう少しだけ人殺しに戻させてくれ。・・・あの婦警さんに助けは求められないな。
「頼みがあるんだが、連れを起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる。」
と、帽子で偽装した後キャビンアテンダントに念を押して、飛行機の前輪格納庫から滑走路すぐの海へ飛び込む。
*
「ブエックショイ!?」
「・・・なんか凄まじいクシャミしますよね。」
「うるさい。」
「っていうかなんですぐパトカーが支給されるんですか?」
高取が呆れたように言ってくる。
「そりゃ、今この世の中でパトカーとかの損耗が激しいからって、様々な所で最優先で生産されてるとかなんとか。」
そして様々な車種でパトカー型の試作も進んでるとかこれもう訳がわからない。
「そういえば、腹減らないですか?」
ショッピングモールの付近で高取が言う。丁度腹の虫が鳴りそうだ。
「じゃあ、ここで何か買いましょ。」
と言って、軽食屋を探す。
「ありがとうございましたー。」
ハンバーガー屋でハンバーガーを注文し、持ち帰り用の袋を持って出る。
「あー、この匂い。たまらねぇぜ。」
と高取が何か言っている。私は金欠のせいで安めのセットだ。・・・羨ましい。が、ここで悲鳴が聞こえる。見ると、電話ボックスを持ち上げ、ひっくり返し、警備員3人を一撃でノックアウトする男がいた。
「止まれ!」
高取が拳銃を構え、制圧しようと近付くが、男は垂れ幕を掴み、ターザンの要領で、吹き抜けを飛び越える。見れば、小柄な男を追いかけているようだ。
「こちら西35。ショッピングモールにて不審者!応援を請う!」
無線に怒鳴り、返答すら待たず不審者を追いかける。不審者達は駐車場にでる。車に乗るのだろうか?
「ウオッ!?」
不審者の方が横から出てきた車に跳ねられた。が、すぐに立つと、何事も無かったように走り出す。私も通路を横断しようとした時、
「グエッ!」
私も車に跳ねられた。
「イテテ・・・。」
全身を打ち付けて痛む。あの不審者は余程受け身が上手いのだろうか。
「あぁ!長谷川巡査が死んだ!?この人でなしー!」
高取の声が聞こえるが、勝手に殺されてたまるか。痛みがひかないまま後を追う。幸運にも骨とかは折れていないようだ。しかし、2両の車が、さながらカーチェイスの様に飛び出していき、取り逃した事を悟った。
「・・・今日って厄日?」
思わず呟いた私に、追い付いた高取は、
「いや、悪夢でしょう。」
と答えた。でも、あの男どこかで・・・。
*
「お前は最後に殺すと約束したな。」
「そ、そうだ一佐。た、助け・・・。」
「あれは嘘だ。」
「うわああああああああああああああぁぁぁ。」
危うく一味の1人に通報されかけたが、何とかなった。にしても、ショッピングモールでまさかあの婦警さんに会うとは思わなかった。車に跳ねられていたが大丈夫だろうか?流石に死んではいないはずだが。とにかく、今の奴から得た情報で、もう1人の一味がいるらしい。拝借した車はおシャカになったが、今の奴の車を使うことにする。奴にはもう必要ない。
「オラァ!」
「ナニッ!?」
一味の1人が泊まっているモーテルにカチコミを入れる。拳を構え、相対する。
「怖いかクソッタレ。当たり前だ。元特殊作戦群の俺に勝てるもんか。」
「試してみるか?俺だって元特殊工作隊だ。」
結果、奴は確かに腕が立つ奴だったが、ひっくり返ったテーブルの脚で胸を貫かれる憂うべく目に遭い、死んだ。これで連絡役は全て死んだ。後は奴が持っていた情報にある水上機で奴らの所へカチコミを入れに行くのみ。だがその前に、武器が無くては戦えない。近くで武器が手に入りそうな場所・・・。
*
「西署より各車。銃砲店にて強盗が入った。直ちに向かわれたし。」
そう通報を受けると、その銃砲店が軍放出品も扱う店だと知った。
「ヤバないですか?応援を待ちましょう。」
高取が不安げに言うが、
「でもさ、逆に言えばその応援達は敵情を知れるじゃん。」
と言う。
「まだ死にたくないです!」
高取が食い下がるので、銃砲店の手前で私が降りて、私が肉袋になった時の保険になってもらうことになった。パトロールライフルを背負い、備え付けの盾を持ち、銃砲店へ、遮蔽物を巡りながら向かった。本来なら室内であればショットガンが好ましいが、生憎無い。パトロールライフルは援護役の高取に渡すべきなのだろうが、彼はコッキングすら知らなかった。えぇ・・・(無茶振り)。しかしセミオートなのである程度は使えるだろう。
*
「動かないで!武器を静かにおろして。」
ジャキリとした音と同時に止められる。武器を片っ端から漁っていれば通報されるのは当然だろうが、やけに早い。近くにいたのだろうか。しかし、この声は・・・。
「もしかして、長谷川さん?」
そう言うと、
「え?・・・えぇ。」
と返答される。
「やっぱり。娘がお世話になりました。」
と言う。やっぱりこの警官はさやかを命を賭けて守ってくれた婦警さんだ。
「・・・何やってたんです?こんな凶悪な方だとは思えないのですが?」
しかし長谷川さんは声を低く、聞いてくる。仕方ない、一か八だ。
「娘が、さやかが誘拐されて人質に取られてます。・・・助けて下さい。見逃してくれるだけで良いです。」
「駄目です。」
早い。こうなったら、気は進まないが強行突破・・・
「私たち警察が何とかします。だから、自ら突撃しなくても良いんですよ。」
と言ってくる。正直時間が無い。飛行機が目的地に着くまでにさやかを助けなければいけない。
「・・・そうするとどれくらいかかりますか?」
「えーと、場所にもよりますが、1、2日・・・」
間に合う訳ないじゃないか(呆れ)仕方ない。
「あ。」
「え?」
と、窓の外に視線を誘導し、その隙にカゴを持って裏口へ逃げる。
「あっ!?」
と言う長谷川さんだが、直後に明後日の方向に銃撃をし始める。
「こちら西35。犯人と交戦中!応援を要請する。」
と無線に言い出す。多分ワザと逃がしてくれたのだろうか?
「・・・。」
何はともあれ、急いで敵地までの足を確保しなければいけない。しばらく路地を進み、道路に出ると、水上機が目に入る。
「よし動け!」
最初こそ燻ったものの、エンジンを点火し、敵地へ向かった。
ーー駒戸島爆発事件1次報告ーー
損害
負傷者:1
死者:10より多いので沢山です80
駒戸島の施設の大部分が原型を留めておらず、何かしらの爆発物が原因と推察。この島のオーナーと連絡が取れず、数時間後に死体で発見された。なお、オーナーはモン元大統領と判明。施設の残骸から多数の銃火器、装甲車両が押収。何かしらのクーデター、もしくはテロを計画していた可能性がある。(検閲済み)後の捜査は自衛隊に引き継ぐ。
ーー
*
「・・・それでね、パパが米根戸とかいう奴にね、「銃なんか捨ててかかってこい」って言ってね!」
翌日。私の元に遊びに来たさやかちゃんは昨日の父親の武勇伝を語っていた。だが聞いた話だとヘアピンで監禁部屋の鍵をこじ開けたのもどうかと思うが。・・・もしかしてあの時ウサギ跳びで逃げてきたのも、犯人を射殺できたのも、親の遺伝?・・・まさか、ないよね?
ちょっと筆が鈍ってきたのでしばらく失踪します。