人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!! 作:なちょす
以下の前書きは当時の物そのままです。
内容が気になった方はすこって下さい。嫌な予感がした方は引き返すと見せかけてすこって下さい。臭そうと思った方はそのまますこって下さい。
このうまぴょい伝説の章は番外かつ不定期更新の予定。他トレーナー達との絡みだったりあーちゃんだったりカゼノコちゃんだったりサブヒロインズはこちらでラブコメさせます。岡山の県北にある川の土手でコメディーがしたいぜ、と作者がそんな気持ちになったらタイミングを見計らって投下しますので。要するに⋯⋯いつも通りです。脳死で、どうぞ。
あっ、SSRスイーピーは天井しました。2凸止まりなの。魔女ガキが⋯⋯相変わらず生き様カッコイイな⋯⋯水着の次は着物とか、そんなのもう大人じゃん。結婚しよ。
その① : だっちな事したんですね?
「コタツ⋯⋯
目の前のウマ娘は、こくんと頷いた。
そりゃそうだろう。新年早々、学園のジャージを着て朝の5時から人ん家の前で突っ立ってたんだから。かく言う俺もジャージなのだが。
「やっぱさ⋯⋯今日、走るの止め───」
「その
無敗2冠のサイボーグ──ミホノブルボン。隣でミカンをつまんでいた彼女はいつも通りのポーカーフェイスのまま、今度は正月太りした俺のお腹をムニムニとつまんできた。いやん。
「この感覚は、恐らく4〜5kgの増加かと思われます。毎年こうなるから、チームの皆さんに対して恥ずかしくない体型を維持したいと願い出たのはマスターだったと記憶していますが」
「うっ⋯⋯そうです⋯⋯」
「なら走りましょう。何事も早い内が良いです。それに⋯⋯」
「それに?」
「───いえ。こちらの問題です」
そう言ったブルボンは人の顔を見るなり、ゆっくりと目線を俺の手元に下げていった。な、何だよ⋯⋯ミカン剥いたばっかなんだからこれだけは食べさせてくれよ⋯⋯。
いや、これ食いたいのかな。ちょっと餌付けしてみようか。ほーれほれ、美味しいミカンだぞ───なんて、食うわけねぇよな。一応は後輩ちゃんから預かってる身だし、なんてったってサイボーグ。ふふっ。
食ったわ。
そうして束の間の餌付けタイムを終え、人のミカンを全部食い尽くした娘と共に外に出てきたのだが⋯⋯。
「さっ、ささささみぃ〜~~~ッ!!ブルっ、ブルブルボン、やっぱもう少し暖まろう!中で過ごして、暖かくなったら走ろうって!」
「いえ、それでは遅過ぎます。それにデジタルさんからは既に特別な
「おデジぃ〜⋯⋯?アイツ何言ってたんだよ?」
「『どーぅせボーノさんの料理食べ過ぎて丸くなった後で後悔するんだから、徹底的に絞り上げて下さい!』と」
「お前デジタルの真似ちょっと上手いな。マスター、今困惑してるよ」
それはそれとして既に行動を読んでいたとは、流石相棒。いや、毎年夏前に後悔してたからかな⋯⋯そうかも⋯⋯。
「では」
「ま、待って!待ってくれブルボン!お前の意見も、デジタルからの
「⋯⋯マスター」
走り出そうとしたブルボンは止まり、優しい笑顔を浮かべながら僅かに下を向いた。あっ、良かった⋯⋯伝わった⋯俺たち、ちゃんと分かり合えたんだ⋯⋯うふふっ⋯⋯。
「四の五の言わずに走りなさいッ!!!!」
「ヒヒィンッ!!」
違ったらしい。何も分かり合えてなかった。
僕、ブルボンちゃんが怒ったところ初めて見た⋯⋯いや⋯結構、ガチギレさせてるな⋯⋯。これが中央トレセン学園のトレーナーか?そうだよ。
たった2人だけの新春早朝マラソン大会は、そんなこんなで始まってしまった。やはり街の中は鼻がつんっ、となる冷たい空気で満ちているし、吐く息は真っ白だし、喫煙者故、脇腹と肺はめちゃめちゃ痛いしでここ最近でも1・2を争う辛さ。涙出てきた。
だが何より気が散るのはあれだよ⋯あの⋯⋯隣を行くサイボーグの胸部パーツが⋯⋯ブルンボルンが⋯⋯。
「よきみ、尊み」
「マイ女神⋯⋯」
「よきみ、尊み」
「マイ女神⋯⋯」
クソァッ!!ランニングの掛け声に集中出来ねぇッ!!気にしたくないのに視界に入ってくる!ちょっと前を走ってペースを合わせてくれてるから余計に目に入る!!お前サイボーグ名乗ってるけどその跳ね方は絶っっっ対サイボーグじゃねぇからな!?坂路で何やったらそんな本格化すんの!?そういうのって条件とかあるのかよ!
じゃあロブロイとかとんでもねぇ文明開化レベルの進化じゃねぇかッ!!
お、おお落ち着け童貞⋯⋯何をそんなに慌てる必要がある。相手はブルボン。ジャージで走る姿など、後輩ちゃんの所に居た頃から見てきただろう。センシティブなのは勝負服⋯⋯つまりいつも通りで良いんだ。冷静に、クールに、スマートに。俺は出来ない大人だが、やる事意識したら出来ると自負してる。見てろよ見てろよ⋯⋯。
「よきみ、尊み」
「ブル、ブル、ボン」
「マスター」
「違うんだ聞いて欲しい」
ダメじゃねぇか。えっ?何で出来ると思った?ブルボン足止めちゃったじゃん。おぁぁ⋯⋯これ
「たまには掛け声を変えて気分上げようかと思ってな」
「マスターはその掛け声なら気分が上がるんですか?」
「うん」
「状況の把握を確認。これより掛け声を変えたランニングに移行します」
イけちゃった。今のでイけんの?あっ、どうしよう⋯⋯俺この子の将来が物凄く心配になってきた。
「ミーホーノ」
「ブル、ブル、ボン」
「気分、高揚してますか?」
「はい。ところでこのランニングルート、物凄く見覚えが有るんだけど」
「デジタルさんから教えて頂いたコースです。少々悩んでいた様子でしたが」
「あぁ⋯⋯まぁ、だろうな」
走りながら僅かにこちらを向いたブルボンは、頭にクエスチョンを浮かべているようだった。
デジタルなら間違いなくそうなる⋯⋯光景が目に浮かぶよ。
『何でもない』と言って、そのままランニングを続ける事にした。
相棒が選んだルートに沿って辿り着いたのは、勿論神社。チームが出来上がるまで⋯⋯いや、出来上がった時も大概このルートの終着点は初詣も兼ねて神社に向かう事にしている。ようやく日が登り始めて境内を照らしている様は実に目出度い。あけおめムードに満ち満ちている。
こっちは虫の息だがなッ!!
「お疲れ様でした、マスター」
「ヒュー⋯ヒュー⋯⋯おぅ⋯⋯」
「ゆっくり休んだ後、商店街経由で戻りましょう。そちらのルートも予め───」
「待った⋯⋯」
手元から取り出した地図を眺めるブルボンに静止をかける。最近感情表現がお上手になりつつあるサイボーグだが、1つだけ言っておきたかった事がある。
「ブルボン⋯⋯お前さん、デジタルに言われたろ。『絞りあげるメニューは一任します』とか何とか」
「⋯⋯?はい」
「それでデジタルにコースを聞いたんなら、あいつは確かに悩む。だってあいつは、ミホノブルボンが決めた事を俺にやらせろって話をしたんだから。今日は俺とお前さんの2人だけなんだからよろしく頼むよ、専属コーチ」
「2人⋯専属⋯⋯任務、了解。5分程時間を下さい」
そう言って、ブルボンは再び地図を眺めた。5分と言わず30分でも1時間でも構わんぞ俺は。
ライス曰く、ブルボンは事トレーニングに関しては"鬼"らしい。鬼を宿した娘が何言ってるの、とかその時は思ったが、中々にどうして既にハードモードだよ。休憩5分しかないの?新年の抱負とか、願掛けとか、甘酒とか⋯⋯色々有るよ?本当に良いのか??次来るのは来年だぞ???
「行きましょうマスター。ルートの変更、完了しました」
ダメだったらしい。あっ、そう言えば明日チームの皆で神社に来るんだった⋯⋯じゃあうん、要らないね⋯⋯鬼ッ!鬼ィちゃんッ!!お兄ちゃんは俺だ。何だポニーちゃん、文句あるのか。
「なら行くか。どこ経由?」
「商店街です」
そこは変わらねぇのな⋯⋯心做しか意気揚々とした様子にも見えるブルボンだが、俺は冷や汗かいてんよ。気付いてコーチ。
虫の息のまま神社を後にした俺達は、ブルボン厳選坂路コースを通ったうえで商店街へとやって来た。
朝も早いと言うのに、凄い人だかりだ───主に俺の周りが。マダムでいっぱいである。
「⋯⋯あの」
「あれまぁ、また少し良い男になったわね〜!」
「その子新しい子?来る度違う若い子連れてくるから、お正月から賑やかで嬉しいわ〜」
「いや、その言い方はちょっと⋯⋯と言うより、動けな⋯⋯」
「あっ、そうそう!さっきお正月限定のコロッケ揚がったのよ!食べてって!紅白コロッケなんだけどね!」
「あら、あれ本当に商品化したの?私にも後で下さる?」
「ちょ、あの⋯⋯」
あっ、あっ!ブルボンがめっちゃ見てくる!違うんだコーチ!言い方が悪いだけで俺が女遊び激しいわけじゃないんだコーチ!
若い子って全員中等部だよ!何なら見た目ロリだよ!おっきいのとかおセンシティブなのも居るけど基本ロリ!!信じてよコーチ!!助けてよコーチ!!
あとなんだ紅白コロッケって!!
集まったマダム達の間を縫って、1人のご老輩が姿を見せた。この商店街の中でも顔の広い、商工会の男性である。
彼は俺の顔を見るや否や、その眼に熱い闘志を滾らせていた。
「⋯⋯やはり⋯⋯今年も来ましたね。この時を1年間待ち侘びました。来る日も来る日も、どうすればトレーナーさんを打ち負かせるのかと⋯⋯そればかり考えていたんです」
「他に過ごし方あったでしょう⋯⋯」
「さぁッ!どちらの運が良いのかを決めましょう!我々商店街一同か、貴方か!今年こそ、温泉旅行券は渡しませんッ!!」
「いや⋯⋯今日は引きませんって」
「奇遇ですね。私も今日は1歩も引きません」
「そういう意味じゃねぇよ。福引券も持ってないですし───マダムッ!!」
俺の所からブルボンコーチの元へ居場所を変えたマダム達は、あれよあれよという間に福引券の束を握らせていた。何あれ100万円?えっ、こわ⋯⋯この商店街こわぁ⋯⋯。
「トレーナーさんの福引大会はウチの商店街の名物だもの。それに、この子も何だか娘を思い出して可愛いわ。ウマ娘では無いけれど、元気にしてるかしら」
「眼がとても綺麗な子⋯⋯それに
「マスター。ここが例のマダム十番でしょうか」
「麻布十番みたいに言わないの。商店街有るけど。マダム達居そうだけども。それどこ情報よ」
「ナイスネットワークです」
「よし分かった。後で言っておくから、取り敢えずボケにボケをかまさないでくれ」
『まだボケてないわよ。』
「そういう意味じゃねぇよ。もー!話が進まないでしょ!!」
ほらぁ⋯⋯お父さん福引きのテーブルとガラガラ1式持ってきちゃったじゃぁん⋯⋯早朝だから中身はフルで入ってるとは言え、今日温泉旅行券出したら、俺正月中は出禁になるんだって⋯⋯。
お父さんもどうしてそんなにウキウキしてるの。えっ、そんなに?そんなに悔しかった?マジで俺の事ボコボコにしたかったの??凹む。
勝てば名物継続。しかし出禁。
負ければ商店街に来れる。しかし名物は終わる。
助けてデジたん。いや、ブルボンコーチ。
「いやはや⋯⋯でもね、嬉しいんですよ。都内にあるとは言え、商店街は商店街。私らがどれ程若い子達の関心を引こうと考えても、時代はそれよりも早く流れてしまいますから。こうしてトレーナーさんやウマ娘の子達に新年に来て頂けると、活気が出て今年も頑張れる!と思えるんです」
「お父さん⋯⋯」
「でも出したら出禁ね」
「お父さん⋯⋯ッ!」
先手を打たれた事で、引くに引けない状況になってしまった。ブルボンは既に臨戦態勢整ってるし、マダム達はなんか期待の眼差し向けてくるし⋯⋯うごごご⋯⋯。
あっ、そうだ。そもそも俺が引く必要無いじゃん。ブルボンに引いてもらおう。そうすれば有耶無耶に勝負が終わる筈。ヒュー、冴えてるぅッ!
「ブルボン、1回勝負だ。お前さんがビシッと決めてくれ」
「⋯⋯デジタルさんが」
「うん?」
「デジタルさんが言っていました。マスターには、"勇者バフ"と言う力が備わっていると。チームの皆さんが本来の実力以上の力を発揮出来るのも、望む結果に近付けるのも⋯⋯マスターが居てくれるからだと」
「あっ⋯⋯スゥー⋯⋯」
何言ってんだあのロリ。ねぇよ、んなもん。100歩譲ってバフ持ちだとしたらお前の方だろ。ブルボンちゃん信じちゃってるじゃん。
あ〜~~あ!俺この後の展開分かっちゃった!!
「引きましょう、マスター。共に」
「無理だって⋯⋯バフなんか無いって⋯⋯力強いなぁ、もうッ!!分かった、分かったから!引くから!!」
一切の抵抗を許して貰えず、俺とブルボンは1つのハンドルを握り締めた。えっ、吐きそう。緊張感半端じゃない。俺正月から何してんの?あと思った以上にブルボンの手が小さい。
「では」
「はい⋯⋯せー、のっ」
福引セットがガラガラと音を鳴らし、3周回ったところで───白い玉がコロンと転がった。
「⋯⋯は、外れた⋯⋯?外れだよな?白ってティッシュだもんな!そうかそうか外れたか!やっぱりバフとか無かった───お父さん、何で温泉旅行券持ってきちゃったの?」
「⋯⋯もし、金色の特賞玉が出たら⋯⋯"今年は白でした"、って言いたくて⋯⋯」
「あっ⋯⋯スゥー⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯えっ、気まずっ。
この空気よ。俺大罪犯したみたいじゃん。そんな事ある?じゃあ何⋯⋯俺、中身フルの状態から当たり引いたの?出禁??嘘だと言ってよバーニィ。
ヤダヤダヤダ!だって俺、"いや〜今年は負けました!あっ、お父さん裁縫が趣味なんですよね!この記念に後で教えて貰って良いですか?"とか言って平和に済ますつもりだったんだぞ。盛り上がってるのマダム達だけじゃねぇか。
いや、ブルボンコーチも耳の動きがどえらい事になってる。それ喜んでんの?バグってんの?
「⋯⋯お父さん。この旅行券は受け取れません」
「それは⋯⋯出禁になるからですか?冗談だったのに」
「なにこの?じゃなくって!普通に考えたら、特賞が無い福引をこれから回すことになるお客さん達って絶対複雑じゃないですか⋯⋯」
確かに、と言いながらお父さんは納得してくれた。逆に何で気付かなかったの。どんだけ俺の事負かしたかったのよ。
あっ、あっ!ブルボンコーチがこっち見てブルブルしてる!!お前もお前でどうしたの!?何か今日ちょいちょい情緒が読めないよ!それマナーモードか怒りかどっちだ!!後輩ちゃんじゃないからマスター完璧じゃないの!!
しかし───これが後者の震えなら頂けない⋯⋯ならよぉ⋯見せるしかねぇだろ男気をッ!!
「彼女は⋯⋯ミホノブルボンは、俺が責任を持って温泉に連れて行きますから。自費で」
「マスター⋯⋯」
「温泉で責任取るって言ったわよ」
「あら、青春ね〜」
「コロッケにお赤飯詰めなくちゃ」
「マダムッ!!!!」
一言も言ってねぇだろうがそんな事ッ!!温泉で教え子に責任取ったらそれは事案だよ!無垢ノブルボンがそんな事思ってるわけないでしょ!あと、コロッケ屋のおばちゃんはコロッケをなんだと思ってんださっきから!!
「ふふっ⋯⋯確かに見ました。貴方のトレーナーとしての姿勢を。完敗です。ですが、来年こそは負けませんからね」
「えぇ⋯⋯望む所です。いや、本当はごめん被りたいですけども」
なんか⋯疲れたな⋯⋯取り敢えずはお父さんと固く握手を交わし、互いの健闘を讃えあった。いつの間にかマダム達が増えていたが、まぁそこは良いだろう。来年もこの商店街に来る事が出来ると分かっただけで、良し!終わり!解散!
そんな時だった───コーチが俺の袖を引っ張ってきたのは。
ヌッ。どうしたニコニコと可愛いな。そんなに嬉しいの?実は特賞狙ってたの?じゃあ俺も緊張の中引いた価値はあると言うもの。感情表現が本当に豊かになったなぁ⋯⋯マスター嬉しい⋯⋯。
「あの」
「どうした?」
「私は"勇者バフ"が実在するのか知りたかっただけなので、温泉とかは特に」
「頬っぺ出せこの野郎」
全てを台無しにする一言を吐いたブルボンの頬っぺをモチモチしながら、この後滅茶苦茶坂路を走らされた。お前やっぱキレてるだろ。
この日帰ってきたブルボンさんは、ウサギさんのぬいぐるみを抱きながら印の付いたカレンダーを見てニコニコ笑っていました。(同室のお花ちゃん談)
2章のヒロインは独身兄貴たちと決めたいですわ。
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分かっちゃった系天才ウマ娘
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クソガキ系魔女っ子ウマ娘
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とりあえず勇者とホヤ遊ばせ