人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!!   作:なちょす

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遅くならない内に、次の話を書き切るゾ!
独身兄貴たち、またお待たせしたらごめんね⋯⋯シャカール切れてない?大丈夫?いる??

あっ、ホームでアルダンがチヨノオーに告白してました。これはデジたんにならざるをえないし、覇王翔吼拳も厭わない。


2/2 : チェリーボーイ・ミーツ・ガールズ

「今のマスターも、共に三冠を目指してくれた以前のマスターも、私の気持ちを理解してくれました。ですが初めて私の夢を、父の夢を肯定したのは⋯⋯貴方です。」

「⋯⋯あったかな、そんな事。」

「ありました、そんな事。」

 

 

 ブルボンはじっとこちらを見てくる。シラを切ろうとするも無駄だった。

 えぇ、分かってますよ。覚えてますとも。

 高い短距離適正を買われ、スプリンターでなら強くなれると周りのトレーナーが言う中でブルボンはただ三冠の夢を追い続けた。意固地に、頑固に。それが父親との約束なのだからと譲らなかった。

 

 良く知ってるよ。それで担当が見つからなかった時、取り敢えず契約結んだトレーナーさんに契約破棄されてるもんな。

 けどなブルボン⋯⋯それを思い出すという事は、同時に俺の黒歴史を掘り返すことになるのだ。

 

 あの時スレてたんだよなぁ⋯⋯!諸事情で後が無かったし、意地でトレセンに受かった自分とブルボンが重なったおかげで、『ウマ娘がやるって言うなら絶対出来る』とか、『本当に惚れたトレーナーなら手伝ってやるもんだろ』とか滅茶苦茶に啖呵切ったんだ。若造が。適正距離は気合いと気持ちと根性でなんとかなると本気で思っていたのである。良くトレーナーになれたな?勿論今はそんな事は考えていない。

 

 ふふっ⋯⋯最近忘れてたのに1字1句思い出してきたぞクソがッ!!

 

『俺は最高に良い夢だと思うよ。』

 

 とかね。

 

『誰が何と言おうと、君なら出来る。だから自分を曲げるんじゃないぞ。』

 

 とかね。

 

 おぉぉぉぉおおぉッ!!!!くっ、こ、ヌゥンッ!!

 はっ、恥ずかしいッ!物凄く恥ずかしい!キョトンとしてたね君!そりゃするよね!しかもそこまで言っておいて契約結ばなかったんだもんね!

 

 こちとら言うだけ言ってクールに去るぜ⋯⋯みたいな場違いムーブかましてたけど、ベテランさん達にクッソ失礼な事しちゃってたんだよねッ!!やべぇ、変な汗出てきた。俺も倒れそう。今すぐ理事長室で転げ回りたい。

 

 ブッ、ブルボン⋯⋯良いか?お前が俺に何を求めてるのか分からないが、立派な答えなど期待するな。何も無いんだよ。だからこれ以上俺の古傷をエヴァンゲリオンみたいに広げていくのは止めてくれ。今ならATフィールド張れんぞ。

 

 

「デジタルさんを見ても思います。そして今のカレンさんへの対応も⋯⋯貴方はウマ娘が欲するものに理解を示す。望むものを共に追う。手を伸ばし、誰よりも前で道を先導する。」

 

 

 止めろって!そんなジャンヌ・ダルクみたいな尾ひれ付けないで!いたたまれねぇッ!こっちはオルレアンの乙女じゃない、ただの童貞だぞ!?掲げる旗はいつだって白旗じゃい!!は?掲げんが?

 

 

「⋯⋯ふっ、深い理由は無いさ。ただやっとの思いでトレーナーになれたんだ。力ぐらい貸したくなるし、当の本人達が必死こいてるならこっちもそれに見合うだけの事をしたいと思ってる。それだけだよ。」

「なら⋯あの時⋯⋯もしも、私が貴方の背中を追いかけていたら。手を取り、共に夢を叶えて欲しいと願っていたら⋯⋯私は叶えられていたでしょうか。」

「無理でしょ。」

「えっ。」

「えっ?」

 

 

 ミホノブルボンは、ひと目で分かる驚愕の表情を浮かべて俯いてしまった。膝に置いた手を固く握りしめ───もしかして泣きそうかお前。

 なに!?なんだと!?ちょっ、ちょっと待てぇいッ!!

 

 

「ちっ、違うぞッ!お前さんがどうとかじゃなくて、あの時の俺じゃ口だけだったから無理だって話だ!お前だろうと他のウマ娘だろうと、最悪怪我させてたかもしれないんだって!」

「⋯⋯⋯⋯私は⋯それでも⋯⋯。」

「ダメです。ダメダメ、許しませんよ。自分の体は労りなさい。お前に夢を託した親父さんは、夢の為なら身を滅ぼしても良いと言っていたか?」

「⋯⋯いえ⋯。」

 

 

 どう考えても絞り出している声。待て、今のは言い方キツかったし、ちょっとイジワルだった。傷ついたかもしれん。いや、でもブルボンだし⋯でも⋯⋯ヌッ!年頃の娘が何考えてるのか童貞に分かるわけないだろっ!!下向いてるから怒ってんのか泣いてんのか落ち込んでるのかも見えん!多分全部だわ。

 

 こっ、後輩ちゃん!ライス!!助けてくれッ!!くそっ、トレーナーの恥め!とりあえずきちんと説明しよう⋯⋯。

 

 

「俺の母親はウマ娘で、親父はトレーナーだった。」

「⋯⋯。」

「ド田舎だった地元じゃ、それはそれは期待されてたよ。ここから新しいウマ娘が生まれて、名を馳せてくれる───夢を見せてくれる子が出るんじゃないかってな。で、蓋を開けてみたら人間の小童(こわっぱ)。"外れ"だって言葉もあったらしい。」

「⋯⋯そんな風に言われる必要があるのでしょうか。」

「そういう時代だったんだよ。今とは違って、名だたるトレーナーはその道のお家が輩出するっていうのが当たり前だった。親父のように必死こいてトレーナーになった人間はまず期待はされないし、余程の物好きなウマ娘じゃない限り選ばない⋯⋯そんな時代だ。それでも俺にとっては、親父のトレーナー姿が誰よりもカッコよかった。」

 

 

 勿論直接見たわけじゃないし、周りの人らも俺の事は可愛がってくれた。だから恨み辛みがあるわけじゃないし、仕方ない事だったと納得もしている。当の本人達なんか1週間くらいで"外れ"発言忘れてたらしいし。

 爺ちゃん婆ちゃん達め。もっと長生きしろ。

 

 

「そっから色々あって、何度もトレセンの資格取得に失敗して⋯⋯ようやく受かった時には、親父は病気を患って病院さ。頑固で口の悪いアンタに目に物見せてやると思ってた。ウマ娘にはなれなかったが、アンタらの息子が名前を上げてやるってバカみたいに口先だけで突っ張ってた。何したいのかも決まってなかったのにな⋯⋯だから"怪物様"にも振られてるし。」

「⋯⋯?最初からデジタルさんでは無いのですか?」

「おぅ。最初に声を掛けたのは、兄貴分だった先輩のチームに居たマルゼンスキーだ。"今楽しいか"って聞かれたから、分からないと答えて⋯⋯そしたらあっさりNoと言われたよ。どうしてだ、何がダメなんだって、そのぐらい余裕が無かった。実績があって強い子なら誰でも良かったんだ。そんな半端で杜撰(ずさん)な人間が、必死に夢見てるウマ娘の面倒なんか見れるわけないだろう?」

 

 

 押し黙るブルボンをよそに、俺は心の中で悶絶と雄叫びをあげていた。昨日の事のように覚えてるぞ。忌々しい己の過去め。いつかデジタルやウチのカワイイウマ娘達と共に完膚無きまでに消し去ってくれるわ。

 勇者御一行を無礼(なめ)るなよ。ちゃんこの具にして無礼無礼(なめなめ)してやる。

 

 

「お前さんがこれからも後輩ちゃんの所で走り続けて、たまには違う気持ちで走りたくなったら───そしたら、あの時見れなかった面倒ぐらい見てやるさ。勿論お前さんが望むなら、だけどな。⋯⋯期待させるだけさせて悪かった。」

「⋯⋯⋯⋯私は、自身の選択に後悔はありません。成し遂げた功績も、積み上げた勝利も、胸を締めつけた敗北も⋯⋯今までマスター達と歩んできたその1つ1つの道を誇りに思います。そして今後も、その気持ちは簡単には変わりません。」

「ふふっ⋯⋯それでいい。だからお前さんは強いんだ。その強さがあるなら前を向ける。真っ直ぐ伸びた自分の芯があるから、しゃんと胸を張れる。そして⋯⋯まだ上を目指すんだろ?」

「当然です。」

 

 

 力強く顔を上げたミホノブルボンの眼に、闘志が溢れていた。

 よーしよーし、ここまで100点満点である。すっかり元通りじゃないか。実は優秀か、俺。何故愛バに同じ事が出来ないのか、これが分からない。

 

 

「そして理解しました。運命も過去も、置いていかなければならないと。やはり、私は貴方達を超えなくてはなりません。」

「えっ。」

「勇者御一行⋯⋯それを築いた2人の"絶対"を必ず置き去りにする。これを最重要任務とします。2度と遅れは取りません。覚悟をしておいて下さい。」

「えっ。」

 

 

 おっ、おかしい⋯⋯!何故だ!?完璧だったろう!?

 おしゃぶりから泣きそうになって割と本気の宣戦布告とか、情緒の振り幅バグってるだろお前!今の黒歴史語った数分でミホノネットワークに何干渉したんだよ!ヌッ、これでは俺の黒歴史がウイルスでは無いか。同じ事を愛バに出来なくて良かった⋯⋯いや、何も良くない。ブルボンまで本気モード(ガチ切れ)である。なに?俺はウマ娘に不満と怒りの炎を燃え上がらせるプロフェッショナルなのか?不名誉すぎるわ。

 

 だが待って欲しい。最近茶目っ気を覚えたミホノブルボンの事だ。お茶目なジョークも多少⋯⋯3%ぐらいはあるかもしれん。機械壊す癖にやたらと家電量販店に行きたがる女だぞ?これが茶目っ気でないのなら新手のサイバー攻撃である。グイグイ迫ってくるなら、こっちだってその綺麗な瞳を覗いてやろうじゃないか。今が茶目っ気何%か見せてみるがいい。

 

 ⋯⋯⋯無ぇな!

 

 瞳孔ガン開きだよ。お茶目の"お"の字も見当たらんわ。

 あったとしても、"お前だけは許さん"という意志だけである。これにはポニーちゃんも萎縮せざるを得ない。ヒヒン⋯⋯。

 

 ゆっくり目を閉じたブルボンは一転、穏やかな顔になった。微笑んだ顔で、ベッドに眠るカレンチャンを見る。

 

 

「ですが⋯⋯今はこの可憐なスプリンターが、桜の王様を悪い"ユメ"から覚ましてくれることを望みます。"絶対"出来ると、私も信じていますから。では、失礼します。」

 

 

 そう言ってブルボンは保健室(教会)を後にした。ジャケット置いていけよ。

 

 何だったんだ⋯⋯本当に、俺が何をしたと言うんだ⋯⋯こっちは黒歴史を自分から紐解いたと言うのに⋯⋯。どれだけあの時の俺に恨みを持っていたんだ。悲しい。

 彼女が出て行った部屋にはカレンの静かな寝息だけがする。

 

 どっ⋯⋯と疲れた。思わず下を向いてしまうが、仕方が無いだろう。ここまでの短時間に色々ありすぎてもう何が何だか。ホラーに遭遇するし、デジタルは不満持ってたし、カレンはぶっ倒れるし、ブルボンは人の黒歴史ほじくってガン飛ばして帰るし⋯⋯あー⋯泣きそ。

 

 カレンが目を覚ましたら即うまぴょいなんだろうか。教会は勇者が目覚める場所であって、『ゆうべはお楽しみでしたね。』する場所じゃない。宿屋でやれ。いや、やるな。相手は教え子だぞ。

 だがデジタルから借りた勇者手帳によると、カレンは合気道の有段者らしい。今ではその情報が何よりも怖い。無駄に抵抗しようものならあっという間にいなされてポニーちゃんが(いなな)くのだろう。

 

 カレン。俺はお前の兄さんじゃない。お前をこれでもかと愛してくれた兄さんには到底なれない。

 でも⋯⋯お前が俺をお兄ちゃんと言うなら、俺だってお前を妹の様に、家族同然に可愛がる。夢だって一緒に見る。どんな事があっても支えるし、絶対に離れん。それだけは約束するよ。

 だから───。

 

 

「ホント⋯⋯?」

 

 

 うまぴょ───何?

 顔を上げた瞬間、カレンと目が合った。お兄ちゃんの2つ目の心臓が、ゆっくり息を引き取った瞬間である。

 

 どっ⋯⋯⋯どっ、どどどど、どどっどこから聞かれてた!?また口に出してたのか俺!?いい加減にしろコラッ!最後の最後で自滅かましてんじゃねぇよッ!!あっ、いかん。涙出てきた。クソが、もうおしまいじゃあ⋯⋯。

 

 

「ホントに、一緒に居てくれる?」

「⋯⋯あぁ。」

「離れたり⋯⋯しない、かな?」

「勿論。」

 

 

 ゆっくり起き上がったカレンは、俺の手を取って大事そうに両手で包み込んだ。

 

 涙引きそう。

 

 お兄ちゃんはやはり童貞、少々ドキリとして早漏⋯⋯もとい候。

 ポニーちゃん、どう、どう。落ち着くのだ。俺は大人である。無様な様相を呈しているが、無様に貞操を散らすつもりは無い。これっぽっちも無い。ここは心を落ち着かせるのだ⋯⋯考えろ⋯こういうのは初めてじゃない。カレンチャンのスキンシップとしては日常茶飯事だ。それにアレだ。迷子のロリカレンと約束した時は俺が愛でていたじゃないか。そうだ、そういう日もあったぞ。なんてことは無い。ヌッフハハハ!あれ通報案件だな。

 

 

「カレン、約束しただろう?夢が叶う時、俺がそばに居ても良いなら笑ってやるって。こうしてチームという形ではあるが、ちゃんと夢を見させてもらってるんだ。そっちがもうイイって言うまで離れてやらんぞ?」

「っ⋯⋯!お兄ちゃん⋯⋯。」

 

 

 何びっくりしてるのキミ。あっ、カレンが抱きついてきた。うひゃ〜モチモチしてる〜⋯⋯えっ?い、良いの?これ⋯⋯ギュッとしても良いの?タダで?マジ?ひょっ、ひょえ〜⋯⋯。

 

 キッショッ!!!!!!

 

 落ち着けって、童貞!限界化はデジタルがやるから可愛いのであっておっさんがやるものでは無い!こんなもの、まだ記憶に新しい駿大祭の時に比べればなんだ!あの時の葛藤を思い出せ!!

 

 和装に身を包んだゴールドシチーやユキノビジンに混じって、カレンも和装に身を包んでいたあの日を⋯⋯⋯⋯⋯いやぁ⋯⋯。

 

 吉原に迷い込んだかと思ったね。

 

 1人だけ花魁なんだよ。真っ先に俺の所へ来た時にはあまりの色気っぷりに、『カレンチャン!?ハレンチやん⋯⋯。』と戦慄したし、『花魁はオイラんだ!』とでも言わんばかりにポニーちゃんが暴れ出した時はどうしようかと冷や汗をかいたりもしたよ。カレン、お前からすれば『良いでは無いか〜♡』とお兄ちゃんとお代官ごっこをする感じかもしれんが、俺からしたら羅生門(追い剥ぎ)だぞ。

 

 ヌッ?何故少し活気を取り戻したんだポニーちゃん。寝ろと言ってるんだ。ええぃ、止めろ!人をまるでロリコンの様にっ、このっ!!言う事を聞かない息子めッ!お前から分からせるぞ!!

 

 

「お兄ちゃん。カレン、お願いがあるの。」

「何だ?」

 

 

 うまぴょいだ。

 俺には分かる。これは完全にうまぴょいの流れだ。ビーストモードが発動したカレンゲリオンに為す術なくクソザコお兄ちゃん♡されて、俺は第2の使徒(リリス)の様に十字架で晒されるのだろう。

 

 

「ちっちゃなお願い⋯⋯聞いてくれる?」

「あぁ。」

 

 

 うまぴょいだ。

 お前にとってはちっちゃなお願いでも、お兄ちゃんにとっては人生のクソでかいターニングポイントだぞ。ちっちゃいのはポニーちゃんである。はっ?

 

 完全防音の保健室。夕方から夜に変わる時間。そしてこのカレンチャン。明日は休日。冷蔵庫に炭酸水とウコンも常備。

 

 場所、ヨシ!

 時間、ヨシ!

 1番大事なムードもヨシ!

 

 

 今日も1日、ご安全にーッ!!

 

 

 ご安全にじゃないが。

 何言ってるんだ俺は。自分から退路を断ってどうするんだ。

 

 カレンの手に僅かに力が入る。ヒェッ⋯⋯に、逃げられねぇ⋯⋯ッ!合気道ならぬ愛気道!

 やめろ、うまぴょい伝説。頭の中でイントロを始めるんじゃない。位置に着いたら終わりなんだぞ。ずきゅんどきゅんゴールまで一直線だ。ヤケクソで投げたビート板だって返ってこねぇ。代わりに返ってくるのはカレンフォロワーから浴びせられる罵声と袋叩き。

 

 あぁ、近いッ!カレンの顔が迫ってくる!ヌッ、顔が良い。

 待て!待てって!話せば分かる!ヌヌッ、彩フレグランス。

 分からせようとか思ったのは悪かった!だからまだ人生歩ませてくれっ!!

 

 

「バクシンオーさんに勝ったら、教えるね♡」

 

 

 このメスウマ娘がぁッ⋯⋯!

 紛らわしいんだよッ!しれっと人に死亡フラグ擦り付けるんじゃない!

 

 でも首の皮1枚繋げてくれてありがとうなッ!!




次回───『決戦 : 驀進王』
1章がそろそろ終わります。お兄ちゃんVSカレンチャンは⋯⋯今のところ五分五分ですねぇ⋯⋯。(ガバ)
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