人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!!   作:なちょす

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木枯らし吹く肌寒い日々が続きますね。
独身兄貴たち皆様におかれましては、今日も今日とて部屋で1人育成に励んでいる事と思います。

さみしくない??(ブーメラン)

スコーピオ杯お疲れ様でした。皆つおいよ。
良バ場の中山だって取ったのに!(雨の東京)
右回りだって取得したのに!(左回り)
逃げ潰しカレンチャンだって育成したのに!(スタミナとパワー不足)
お前の育成ガバガバじゃねぇかッ!!!!

でもB決勝で勝たせてもらったので何でも言う事聞きます♡


第1R : #カレンの気になるお兄ちゃん

 部屋に入ってすぐ、お兄ちゃんは何かを考えるような素振りを見せた。

 

 

「カレン、少しだけ待っていてくれ。すぐに終わるから。」

「はーい♡」

 

 

 それだけ言うと、お兄ちゃんはデジタルちゃんを連れて隣の部屋に入っていった。

 

 トレーナー室の隣に併設されている開かずの間。チーム内でも、あそこは特定の人しか入れない秘密の部屋って言われてる。

 

 今のトレーナー室は、カレンも含めて皆がこぞって私物を持ち込んでるから凄く"カワイイ"。普通なら学園の人達や生徒会にだって怒られてもおかしくないけれど、お兄ちゃんは笑って『どんどん持ってきても良い』『責任は俺が取る』って言うから、ここはチーム皆の部屋みたいになっているの。隣の部屋だけは鍵が掛かってて、実際他の子が入ってるのは見た事ないけれど⋯⋯多分、お兄ちゃん以外で入れるのはデジタルちゃんだけだと思う。中がどうなっているのか、何があるのかは誰も知らない秘密の部屋。

 

 色とりどりのカワイイで満ちた部屋を見渡す。そこには控えめに───けれども確かに、強く、お兄ちゃんとデジタルちゃん2人の功績が所狭しと並んでいた。

 

 阪神JF、桜花賞、NHKマイルカップ、マイルCS南部杯、フェブラリーステークス、ヴィクトリアマイル、安田記念。

 芝もダートも関係無い。マイルG1のコースを尽く総ナメして、『マイル王』とか『戦場を選ばない勇者』とか色んな名前で呼ばれているデジタルちゃん。でも1番目についたのは、お兄ちゃんの机に飾られていた1枚の写真だった。

 

 

『祝、URAファイナルズ。"勇者御一行"。』

 

 

 心の底からすっごく嬉しそうに笑ってるデジタルちゃんと、泣きながら彼女を抱き締めているお兄ちゃん。この部屋は、そんな風にたくさんの成績を残してきた2人の3年間(軌跡)で出来た部屋。このチームは、そんな2人が先導して作り上げたチーム。

 

 

「⋯⋯ちょっぴり、妬けちゃうな。」

 

 

 そんな独り言がこぼれて、思わず笑ってしまう。スプリントのG1では結果を残してきたけれど、それでも勝ち続けられるわけじゃない。G2やG3クラスでも勝ったり負けたりしているカレンじゃ程遠い。スプリントだけの私じゃ、芝もダートも両方走れるデジタルちゃんとは比べ物にならないんだ。

 

 でも後悔は無い。それでも短距離で成績を残せるなら、それを極めたい。もっともっと可愛くならなきゃいけない。お兄ちゃんが素敵だって言ってくれた、カレンの夢のためにも。

 

 

「どうした?」

 

 

 ピクって、身体が跳ねる。とっくの昔にお兄ちゃんは戻ってきていて、カレンの後ろに立ってたみたい。全然気づかなかった。

 

 

「何でもなーい♪︎そっちは良いの?」

「あぁ、終わったよ。待たせて悪かったな。」

 

 

 そんなに待ったわけじゃないけれど、お兄ちゃんはなんだかバツの悪そうな顔。気にしなくたって、別にカレンは怒ってないよ───って言っても、きっとお兄ちゃんは気にするんだよね。だからカレンは何も言わない。デジタルちゃんからは、お兄ちゃんがカレンに手伝って欲しいことがあるって聞いてるから、まずはそっちを優先しなきゃ。

 

 ぱぱーって終わらせて、今だけはお兄ちゃんを独り占めしちゃうもんね♪︎

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。カレン⋯⋯何したらいいかな?」

「何もしなくていいぞ。」

「えっ?」

「えっ?」

 

 

 あれ?聞いてた話と違うような⋯⋯でもお兄ちゃん、最近また仕事が忙しそうだったのは確かだし⋯⋯んん〜?

 

 

「あぁーっ、と⋯⋯言葉足らずだった。俺はただ、カレンと話がしたかったんだ。ほら、2人でこういう時間取る機会ってあんまりないだろ?普段はチーム内であれこれしてるし、俺も一人一人とコミュニケーションを取らなきゃなって思ってさ。」

「へ〜⋯?お兄ちゃん、トレーナーみたい!」

「トレーナーだよ。」

 

 

 何言ってるんだーって顔でお兄ちゃんは笑う。

 ねぇ、お兄ちゃん。カレン⋯⋯嘘をついてるんだ。こうして余裕を見せてるけど、これは本当のカレンじゃない。

 だって───ずっと、胸が騒がしい。

 

 2人の時間が取りたいから、こうして呼んでくれた。その一言がどれだけ嬉しいか。

 

 ふふっ。お兄ちゃんは多分、分かってないよね。今のカレンがどれだけ貴方にぐちゃぐちゃにされてるか。小さい頃に出会ったあの日から。お兄ちゃんがカレンの夢を素敵な夢って言ってくれた日から。カレンは、ずっとお兄ちゃんに追いつきたかった。一緒に過ごしたかった。だからこうしてトレセン学園に来て、カレンはお兄ちゃんのチームに入ったんだよ?

 ここでなら⋯⋯お兄ちゃんが居てくれるから、きっとカレンの夢を叶えられそうな気がする。そんな気がして。

 

 でも自分からは言ってあーげない。お兄ちゃんが昔導いてくれた子が、今こうして目の前に居るんだよって⋯⋯教えてあげたいけれど、それはお兄ちゃんに気づいて欲しいもん♪︎

 

 

「じゃあいーっぱいお話しよっか!」

「ははっ、まぁそんなに慌てるなって。取り敢えずそこのソファにでも座ってくれ。」

 

 

 テーブルを挟んで、向かい合うように座る。決まっている訳では無いけれど、お兄ちゃんはどうしてかチームの子達がモチーフになったパカプチぬいぐるみで埋まってる方へと座る癖がある。今回もそう。ちょっぴりミスマッチだけど、お兄ちゃんはカワイイものに弱い。分厚い手帳(ノート?)をざっと流し見した後、お兄ちゃんは言った。

 

 

「ウチを志願した理由は?」

「面接かな?」

「あ、違う。ご趣味は?」

「あはっ、お見合い??」

「⋯⋯場を和ませようと思ってな。」

「うん、知ってる。不器用だね。」

 

 

 困ったように頭を掻き出すお兄ちゃん。多分本当に何かあるわけじゃないんだ。ただ話の始め方が上手く出来ないだけ。基本的にはデジタルちゃんか後輩トレーナーさんの前でしかスラスラ話しているお兄ちゃんは見た事ないもん。だから⋯⋯カレンがトーク術を教えてあげなきゃね?♪︎

 

 

「お兄ちゃん、そっち行っていいかな?」

「えっ?」

「ダメ⋯⋯?」

「いや、良いぞ。」

「じゃあ隣失礼しまーす♡」

 

 

 開けてくれたスペースに座ると、肩が触れ合うぐらい近くなった。お兄ちゃんは背が高いから、座って横並びになると見下ろされる形になる。

 ───じゃあ、よろしく。

 

 それだけ言って、少し照れくさそうに笑った。

 緊張してる?恥ずかしいかな?ふふっ、カワイイ♡でも⋯⋯それは、私も同じなんだよ、お兄ちゃん。

 

 

「ねぇお兄ちゃん、好きな色ってある?」

「好きな色?」

「好きな色でその人がどういう人か、どういう心理をしているか分かるんだって。」

「ふむ、色彩心理学ってやつか。」

 

 

 お兄ちゃんは顎に手を当てて、カレンの携帯と睨めっこしながら真剣に考えていた。

 

 

「ん⋯⋯これ、あっ違うな⋯いや⋯⋯。」

「こういうのは直感だよ?」

「そ、そうだよな。じゃあ⋯⋯ピンク⋯。」

「お兄ちゃん、ピンクが好きなんだ。」

「まぁ⋯⋯恥ずかしくてあんまり人には言ってないけど。」

「そう?カレン的にはカワイくて良いと思うな。」

 

 

 恥ずかしがる事ないのに。そんな会話をしていたら、携帯の画面は結果に切り替わっていた。ハッとして、思わず電源を切る。

 

 

「じゃあお兄ちゃん!カレンこの後用事があるから、先に帰りまーす♪︎明日も来ていい?」

「お、おう⋯⋯良いぞ。いや待って。結果は?」

「なーいしょ♪︎これは質問したカレンにしか見れないの!」

「えぇ⋯⋯ちょっとくらい⋯⋯。」

「だーめ♡」

「さ、先っぽだけ⋯⋯。」

「めっ。じゃあまたね、お兄ちゃん!」

 

 

 何か言いたげだったお兄ちゃんにお別れの挨拶を済ませて、トレーナー室を出た。先っぽってなんだろ?

 

 ふぅっ、と息を吐いて扉にもたれかかりながら座り込む。お兄ちゃんにはしっかり見せなかったけれど、色彩心理学だなんてそんなに仰々しいものじゃない。ただ、回答者(お兄ちゃん)質問者(カレン)に対して無意識に何を思っているのか、それを知る為のテスト。

 勿論確証は無いし、占いは自分の心を後押ししてくれるものだって思ってはいる。いるけれど⋯⋯。

 

 逃げるだなんて、カワイくない。

 鼓動は一向に治まらない。

 

 

 "対象に対して、愛されたいという気持ちの表れ"

 

 

 携帯の画面には、大きくそう表記されていた。

 耳が熱い。少し照れくさい。全部全部、お兄ちゃんのせい。ふふっ⋯⋯なーんて言ったら、きっと気にしちゃうよね。

 

 だから───。

 

 

「⋯⋯好きだよ。」

 

 

 扉の向こうに居るあの人に、精一杯の言葉を投げ掛けた。

 今日はもう帰ろう。そして、明日からまたお兄ちゃんとお話しよう。2人きりじゃないかもしれないけれど、このチームの空気はとってもカワイイに満ちているから大好き。

 

 

───ぶ──ゃ──。

 

 

「あれ?今なにか聴こえた気が⋯⋯ううん、気の所為だよね。」

 

 

 きっと明日も、楽しい日になると思う。ね、お兄ちゃん♡




ロリコン(トレーナー ): 30手前の見た目だけベテラントレーナー。中身は脳内ピンク中学生。可愛いものに目が無く、無意識のうちに収集したがる。言葉足らずが過ぎるために、かなりの頻度でウマ娘etcを引っ掻き回す。鋼の意志持たざる者、トレーナー成るべからず。但し股間には正直に生きなさい。ツッコミ兼下ネタ担当の大ボケ。

アグネスデジタル(変態) : URAを終えて覚醒済み。黄金の精神の持ち主。1度スイッチが入るとお巫山戯無しのガチンコ勇者に変わる。滅多に入らないのはお約束。唯一全ての勘違いを把握しているけれど、そんな事よりウマ娘ちゃん達の堪らんあれやこれやを見たい。章ごとのメインヒロインを喰うぐらい当作品では濃ゆい。ツッコミ兼限界オタク担当の愛バ。

カレンチャン(かわいい) : 私のウマ娘ですね。走るDLsite。ASMRでリアルトレーナー達を悉く陥落させてきたカワイイの権化。目を閉じて個別ストーリーを聴くと『あれ?えっちなゲームかな?』状態になる事に定評がある。お兄ちゃんガチ勢だけどデジタルと2人仲良くしてるお兄ちゃんも好き。他の子から取るのはカワイくないので何とかお兄ちゃんに好意を向けて欲しいお淑やかな女の子。但し誘い受けはしてみる。カマもかけてみる。勘違い最初の犠牲者にしてラスボス。チームの姉御的存在。

2章のヒロインは独身兄貴たちと決めたいですわ。

  • 分かっちゃった系天才ウマ娘
  • クソガキ系魔女っ子ウマ娘
  • とりあえず勇者とホヤ遊ばせ
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