人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!! 作:なちょす
年内も残り僅かだね。今回が2021年最後の投稿なんだ。少しだけ書き溜めさせておくれよ。
レース編とか言っときながら(レース描写ほぼ)ないです。
また年明け、ラッコ鍋食って一緒に相撲しようね!(存在しない記憶)
帰省兄貴たちは気をつけて!それでは良いお年を!!
来世で会お♡
「1987年に始まったセントウルSは、その名前にギリシャ神話のケンタウロスが使われていると言います。当初は1400mでした。」
「はい。ですが今では芝1200m。スプリンターズSの前哨戦としては申し分ないレースと記録していますが。」
「カレンちゃんの適正距離が1200mだから⋯えっと⋯⋯か、勝てるって事だよね!」
『それな。』
「君達打ち合わせでもしたん?」
どうした急に───そうツッコミを入れてしまうところだった。
アグネスデジタルを筆頭に何を始めてるんだ君らは。ブルボンもそんな口調じゃないだろうが。しれっとライスも合流してるし⋯⋯いや、うん。確かにボーノがさっきライスをお米様抱っこしてきてたんだけどさ。
なんならブルボンがそれ見て『今日は山形ですか?』って言ってたし、『ライス、はえぬきじゃないよ?』って言った後本人はどうしてかツボに入ってたし。
良いのかライス。米ネタイジリは許されるのかライス。なんでそんな詳しいんだライス。
君根っこが真面目で良い子なのは良く知ってるんだけど、ボケ方のタチの悪さはブルボンと同じだと思っているからな?何なら狙ってるのか素なのかわからん分、ブルボンよりタチが悪い───いや、それは無いわ。
言っとくがもうツッコまんぞ。俺はレース中だけは真面目と評判なんだ(自分の中では)。どんなボケをされたって安定のスルーである。
チラリと横に目配せすると、こちらに気づいたボーノがニコニコと笑っていた。ふふっ、一昔前のフシギバナみたいに笑いやがって⋯⋯可愛いなコイツ。
おや?どうしたどうしたそんなに近づいてきて。トレーナーさんドキドキしちゃうなぁ。こっそり何を耳打ちしてくれるんだい?ん?
「トレーナーさん、今日は塩ちゃんこだよ♪」
「どうした急に。」
『各ウマ娘、一斉にスタートしました!!』
始まっちゃったよ。なんならツッコミもしちゃったよ。
えっ、なんで献立言ったの?
俺今そんな顔してた?
これからカレンのレースが始まるぞって時に飯の事考えてるような顔してたの?だったらゴメン⋯⋯生まれつきなんだ。
生まれつき飯考えてる顔ってなんだよ。
そうか⋯ヒシアケボノさんもそっち側だったんだな⋯⋯俺は完全アウェーである。1対4。ツッコミきれん。
「カレンさん、思った通り調子が良さそうですねぇ。」
「だなー。スタートダッシュも決まったし位置取りも悪くない⋯⋯よし、カレンがどう勝つか予想するか。俺は外から回って差し切り勝ち。」
「内ですよ。1番内を突っ切って、最終直線での加速勝ちです。」
うぅむ、流石アグネスデジタル。何の迷いもなく即決とは。芝1200の短いコースとは言え、まだまだ先の展開は幾らでも変わるかもしれないと言うのにこの判断力。流石偉大な俺トレーナーの半身だけはある。
まぁそのトレーナーはまともにカレンの世話出来てなかったんですけどね!クズゥッ!!
ヌッ。ライスとブルブルボンボンがこちらを不思議そうに見ているではないか。なんだなんだお主ら。こっちにも構えと申すか?ええい頭が高いわ!控えおろう僕早漏。誰が早漏だ。
「⋯⋯カレンさんが勝つのは決定事項なのですか?」
「うん。負ける理由無いし。」
「ど、どうしてそう思ったの⋯⋯?」
「どうして⋯⋯デジタル、教えたげて。」
「いえいえ、ここはトレーナーさんこそ。」
『へへへっ⋯⋯。何となく。』
ほ〜、ダメだ納得出来ねぇって顔してる。
俺とデジタルの意見だぞっ!勝つって言ったら勝つんだよ!
やる気絶好調なウチのスプリンターが、何をどうしたらコケるのか逆に聞きたいまである。短距離のエースぞ?
今だって見てみろ。カレンの胸部でターフを駆け抜ける"カレン"と"チャン"を。これで負けるわけないだろッ!
デッッッッッカ⋯⋯ッ!お前中等部でそれなのか!?勝負服だと身体のライン隠してるくせになんで体操服で本気出すんだ!!子供だって来てるんだぞッ!?駆けろ閃光乙女。巻き起こせよカワイイ旋風、栗の花の香りを乗せて。最低だよ。
話が逸れてしまった。
『レースに絶対は無い』との名言は、トレセン学園のウマ娘達やトレーナーの間ではあまりにも有名だ。別にレースに限ったことじゃなく、何かスポーツやら勝負事に関わってきた者なら似たような事は思うのだろう。
実力が。
気持ちが。
運が。
何が起因して何が起きるかなど、あらかじめ予知出来るはずもない⋯⋯が。
そんなの知らねーーー!!!!
それが"勇者御一行"である!!準備は万全。気持ちもアゲ↑アゲ。運なんて誰にも扱えない難儀なものは、来たけりゃ勝手に寄ってくる。
なら後は勝つと言い続けるだけだし、信じるだけなのだ!だってそれで勝ってる勇者がいるもの!長距離レース2〜3回出て勝ってるロリが居るもの!
逆にこれ以上のトレーナー精神を俺は知らない。はい、勉強不足です。後輩ちゃんにこれ語ったら『ぶちのめしたいっす』って言われた。凹む。
まぁ要するに、だ。
「俺らが勝つって信じてたら、それがウチの"絶対"なのさ。」
「⋯⋯ふふっ、興味深いです。是非ともその"絶対"を打ち破りたいと思いますが構いませんね?」
「おぅ。出来るもんならな。」
「必ずぶち抜きます───勇者御一行。」
「泣いても知らんぞ───無敗二冠のサイボーグ。」
眼は口ほどにものを言うとはよく言ったものだ。よくもまぁそこまでギラついた瞳が出来る。往々にして強者に共通して見られるのはその闘志である。それこそ背筋に寒気が走るほどの、瞳の奥底にあるウマ娘としての本能。
ミホノブルボンは、勇者御一行と言った。何を言ってんだか。
ハナっからアグネスデジタルしか見ていないレース狂いめ。上等だよ。
「まぁ俺らに勝つのは三冠取るぐらい大変だからな。」
「あっ。」
「えっ?」
「菊花賞の話はしないでッ!!」
「どうした急に。」
「ライスに菊花賞を連想させるワードはNGです。泣ーかせたー。」
「圧倒的無表情。電池あげるから静かにしてなさい。」
「わーい。」
「どこ見てんの?ラ、ライスもほら⋯悪かったよ⋯⋯だから泣き止んでくれ⋯な?」
「ライス泣いてないよ?」
「なんだし。」
好き放題やり過ぎでしょこの子ら。
そうこうしてたらカレンが最後の直線入っちゃうじゃん!全然レース見れてないって俺のバカッ!!
もしこれがカレンにバレたら⋯⋯。
『えー!?お兄ちゃんカレンのこと見ててくれなかったの⋯⋯?じゃあ今からカレンのことだけ見てて。もちろん朝まで⋯⋯ね?♡』
ヌッ。実際カレンは無敵メンタル過ぎて何をしても搾り取ろうとする未来しか見えない。結論、お兄ちゃんはどう足掻いたところで社会的死亡である。今日って大安吉日!?い、嫌だっ!まだすっぴんわっしょいしたくねぇ!!
あっ、カレンが内側ぶち抜いてる。加速えげつな。何で女の子走りでその速度が出るんだウマ娘よ。これでデジタルの予想が当たったのは23戦中21回である。お前トレーナーやる?俺がウマ娘⋯⋯もといヒト息子やるから。適正距離は120m以下で頼むな。
『最後の直線、最初に抜けてきたのはカレンチャン!後続をどんどんと突き放していく!1着はカレンチャンです!!』
「勝ったな。知ってたけど。」
「勝ちましたね。分かってましたけど。」
「あれ。ブルボン達は?」
「居ないんですか?」
辺りを見回してみるが、先程までボケ倒していた2人の姿がどこにも無い。勝ちが分かって戻ったのだろうか。どうせならカレンに言葉でもかければ良かったのに。
ほら見ろ、カレンがこっちに手を振りながら小走りで───デッッッッッカ⋯⋯ッ!お前中等部で(ry
「そういやなんであの2人が応援に来てたんだろうな。そんなに接点あったっけ。」
「そりゃ勿論、坂路トレーニングを手伝ってもらったからですよ!」
「俺それ知らない。」
「えっ、言ってませんでしたっけ?言ってませんでしたね。」
「なに秒で自己完結してんだー?鳴かせんぞお前ッ!耳出せオラッ!!」
「ウマァァァアアアアッ!!」
「思ってたのと違う。」
そんなこんなで無事レースは終わり、カレンチャンと合流を果たしたのだった。
◇◆◇◆◇
「ねぇお兄ちゃん、今日のカレンどうだった?」
「終始最高にカワイかったぞ。」
帰り道、カレンはそんな事を聞いてきた。満足気である。
ち、近い近い⋯⋯何でレース後なのにそんな
ほら見ろ!そこでデジタルが感嘆の涙を流しながら拍手してんだろ!あれが結果なんだよ!だから見栄張って全部見てた風醸してるお兄ちゃんをそろそろ許して下さいお願いします!!
「カレンさん、今日は絶好調でしたね!」
「ありがとうデジタルちゃん!きっとデジタルちゃんが力を貸してくれたお陰だね♡」
「ヌッ!!」
あっ、気絶した。ヌッ、てお前。
街中で奇声あげるんじゃないよ!変な目で見られるでしょっ!?
「お兄ちゃんも応援ありがとね♡」
「ヌッ!!」
なーんでこっそり耳打ちするの?不意打ちはダメって言ったでしょー?耳開発されたらどう責任取るんだお前。平静装ってるけど実は腰抜けそうだったからな!産まれたての子鹿みたいに足ガックガクしてるんだからな!
誰かバ鹿って言ったか?
まぁいいさ⋯⋯。とにかく、これでカレンの勢いもついた事だろう。元から実力はあったのだ。何に不安を感じていたのか分からないが払拭出来たのなら万々歳である。
取り敢えず帰ってご飯だ。今日は塩ちゃんこだもんな、ボーノ?
そうしてボーノの方を向こうとした時、後ろからけたたましい足音と拍手と呼ぶにはあまりに大きなクラップ音が同時に聴こえてきた。
「えぇ、えぇ!素晴らしい走りでしたよカレンチャンさーんッ!!」
「は?とま、止まれッ!止まれ!バクシンオーッ!!」
「はいっ!私こそが全ウマ娘を代表する超模範的優等生にして学級委員───!」
止まりきれなかったのか、何かを叫びながら向こうへ行ってしまった。なんだし。
あっ、帰ってきた。
「サクラバクシンオーですとも!!」
「はい、そうですか。お疲れ様です。」
「いえいえッ!市中見回り兼後輩のレース鑑賞も委員長の勤めですからねっ!!」
サクラバクシンオー⋯⋯見ての通りである。後輩ちゃんのチームとは別所属ではあるが、自分こそがキングオブ学級委員長である事を疑わず、常に猪突猛進バクシン街道まっしぐらのウマ娘。色んな人達に愛されて育ったんだね⋯⋯そのままの君で居て。ただ少しは落ち着こうな。
カワイイダービー♪ではウチのカレンに敗れはしたものの、もしウマ娘において最強のスプリンターが誰だと問われれば万人が答えるだろう。『それはサクラバクシンオーです』、と。
ウ、ウチのカレンだって負けてないし!?見ろこの万人を虜にする魅惑的なボディに愛嬌のある仕草や言動!ヌッ、テロじゃないか。
「それで?そんなに急いでどうしたんだよ。」
「皆々様方がお疲れでしょうという事で、この私自ら差し入れを作って参りました!なんとッ!委員長お手製の桜もち!美味ッ!!お1つどうぞ!」
「やよいちゃん混ざってるな。うん、でも確かに美味そうだ。サンキュー、委員長。」
手渡された桜もちは、本当にこのバクシンウマ娘が作ったのかと思われる程に綺麗に作られていた。そういえば昼も食ってないし、小腹もそろそろ呻きを上げ始めている頃合だ。素直に助かる。
「カレンチャンさん!今日の走り、この私も強く感動しましたよ!これは負けてられませんね!」
「えー?バクシンオーさん、ただでさえ早いのにもっと早くなるんですか?♪」
「もちろんですとも!学級委員長に限界はありませんからね!目指すは全距離制覇ですっ!いつかまた、ターフの上で競いましょうッ!!それではッ!!」
踵を返したサクラバクシンオー。
丁度俺の前を横切った時───その顔に、笑みは無かった。
「えぇ、いつか───お会いしましょうとも。」
季節外れの桜の花弁が見えた気がした⋯⋯気の所為だろうか。
貰った桜餅を口に含むと、柔らかさの中に明らかな違和感がある。
これは⋯⋯紙?なんだし。間違えて食ったらどうすんだ⋯⋯あぁ、なるほど。
「⋯⋯いつか、ねぇ。」
開いた紙には、たった一言。
『スプリンターズS』
「⋯⋯トレーナーさん。」
「起きてたか、デジタル。どうやら宣戦布告らしい。受けて立とうじゃないか。ウチのカレンが何度だって打ち破るさ。」
「それなんですけど⋯⋯回避、しませんか?」
そう言ったデジタルの顔は、何かを憂いている表情だ。そんな顔は初めて見る。
こちらの袖をきゅっと掴み、サクラバクシンオーの背を見送りながらアグネスデジタルは言った。
「あの人はあたしと同じ⋯⋯"
ヒシアケボノさん(フシギバナ) : 美味しい塩ちゃんこの作り方♡まずは材料を用意します。材料を鍋にぶち込んで煮詰めます。それ以上の詳しい作り方は目の前の端末で各自調べて下さい。その為の情報社会です。最後に愛情をたーーーっぷり入れましょう!!食べてくれる人の笑顔を思い浮かべて⋯⋯あっ⋯兄貴たち⋯ごめん⋯⋯。正式にチームに入ったわけじゃなく、気づいたら居た。絶賛ロリコンの胃袋を鷲掴み中。ロリコン、勇者と3人で食べる晩ご飯はボーノだね。
さくらばくしんおー(いいんちょ) : トレセン学園が誇る超模範的優等生であり、全ての学級委員長の上に立つ学級委員神。優等生らしく、疲れた体には甘いものを差し入れます!えぇ、えぇ、美味でしょうとも!何故なら私が学級委員長だからです!!カワイイダービー♪でカレンチャンに敗北後の再戦希望者。その真意は───。
P.S.こんな終わり方したけど年明けはまたコメディ(カレン編)に戻るゾ〜。