この作品は、話が繋がってるようで繋がっていない、ように見えて所々繋がってるさざえさん時空を目指します。
ちなみにタイシンは原案のイラストが神すぎる。
FPS。
ファーストパーソンシューティングを略したそれは、大体の対戦型シューティングゲームで採用されている。多分。
で、何でこんな話をしているのかというと
「ふふっ、アタシの勝ち」
「あーまた負けた……」
私の隣で寄りかかってきながら座るナリタタイシンと、この娘がやりこんでいるというシューティングゲームをしているからだ。
ちな5敗目です。やだ、(私)弱すぎ……!?
「先輩は動きが正直すぎるんだって」
「そんなこと言われてもさー」
「私の画面ちら見して、のこのこ正面から来ちゃだめじゃん」
「げっ。やっぱバレてたか」
「とにかく、約束通りまたファミレスで奢りね」
全く容赦がない。
タイシンと先に5勝した方がファミレスでなんか奢ると約束してたのだが、まさかこんなにあっさり決まるとは。
誘われて始めたとはいえ、それなりには上達していたと思っていたのは間違いだったようだ。
ちなみに、ゲーマーでもあるタイシンはそれなりにゲームを嗜んでいる訳だが、そんな彼女でもゲーセンに置いてあるレースゲームで、唯一勝てない相手がいるらしい。
ほほう。そんな奴がいるんですか。ドコノダレダロウネー。
「はぁ……タイシン今日休みだっけ?」
「そうだけど」
「じゃ、今日行っちゃうか。何食べる?」
「ドライカレー」
「夕飯前に食べて大丈夫か? 小食だろ、お前。たまには喫茶店とかでも良いんだぞ?」
「……いや、ファミレスで良いよ。それより、先輩は生徒会の仕事とかあるんじゃないの。私は構わないけど」
「私はルドルフたちみたいに忙しくはないからな。仕事はもう終わった」
なので、今日の私はフリーだ。ここの所、仕事が立て込んでたのだが、ようやく片付いたのでお休みを貰えたのだ。
首のコリをほぐしながら立ち上がると、私によりかかっていたタイシンが、そのまま屋上のベンチに倒れる。
ジーッと向けられる視線にため息をつき、タイシンの手を引いて立ち上がらせる。
そうすると嬉々として立ち上がった後輩に先導され、屋上の出入り口へと向かう。
その時、前を歩くタイシンが振り返った。
「先輩」
「うん?」
「……やっぱ何でもない」
そう話すタイシンの首元のネックレスが、チャリンと音を立てた。
◇◇◇
そのウマ娘に会ったのは、最っ悪な日のことだった。
「あれー? タイシンじゃーん!」
ねちっこくて、粘っこくて、人をバカにしたような声。
アタシの目の前に居る女は、やはりそのねじまがった性格は健在らしかった。
「相変わらずちっさいねー。そんなんで走れるの? アハハ!」
トレセン学園に入る前から、何かとアタシの低い身長を小馬鹿にしてくる昔の同級生。ウマ娘じゃなくて人間の。
久しぶりに一人でゲーセンで遊ぼうとしたのに、その前にこいつらに合うなんて、なんて最悪な日なんだろう。
まあいいさ。アタシはレースで、ダービーで勝って見返してやる。
アタシをバカにする奴ら全員に、吠え面をかかせてやるんだ。
……だから……こいつらが満足するまで言わせておけば――
「そういえばトレセン学園に入ったんだっけ? アンタみたいなちっこい奴でも入れるんだったら、アタシも入れば良かったかも! 今のアタシでもアンタに勝てそうだし――」
「――いやそれは無理でしょ」
嫌味女の後ろに、いつの間にか一人のウマ娘がいた。
アタシはまあもちろんだけど、嫌味女よりも背が高いそのウマ娘は、多分アタシたちよりも年上。
突然言われたことに嫌味女が動揺していると、そのウマ娘はアタシの隣に来るやいなや、アタシの頭に手を乗せた。
なんだ? こいつもアタシのことを小さいと馬鹿にすんの? 上等、ターフに来い。
つい喧嘩腰に手を払いのけようとするよりも前に、そのウマ娘が口を開いた。
「悪いんだけどさ、アタシの後輩イジメんの、やめてくれない?」
「な、何よお前! いきなりでて来て……!」
「んー? 言わなかった? トレセン学園でこの娘の先輩。あ、それとさ。さすがに人間でトレセン学園は無理だと思うなー。トレーナーとしては別だけど」
顔を歪ませて強気に喋る嫌味女に、だけど先輩は余裕の笑みを崩さずに言葉を返す。
「それとさー、周りを見た方が良いんじゃない?」
「はぁ? 何言って……ッ!」
いつの間にか私たちの周りには数人か遠巻きに見ている人が居て、その全員が嫌味女に非難の目を向けていた。
この場における悪い奴が誰なのか、既に決まっていた。
「っ! ……何よ、バッカみたい」
周囲の状況を悟った嫌味女は、そう言い捨てて早足に消えていった。
とんだ災難な日だった。
それよりもお礼を言わなければいけないと思い、先輩に声を掛ける。
「その、たすか……ありがとうございました、先輩」
いつもの口調になりそうなのを、どうにかして敬語に直してお礼を言う。
「ああ、別にいいよ。気にしなくて。ほら、頭撫でちゃったし」
「むっ……」
「おっと、これは地雷かな?」
「本人の目の前で言う……言いますか?」
「アハハっ! 別に良いよ。無理して敬語にしなくて。ああ、自己紹介がまだだったな。私はミライクライ。ミライで良いよ」
そう言って、ミライ先輩は手を振って笑う。
感じのいいウマ娘だ。あの嫌味女とは比べ物にならないくらいに。
「それより立ち話もなんだし、そろそろお昼だからあそこのファミレス入らない? 私の奢りだから心配しないでよ」
「いや、別にアタシは……」
断ろうとした時、アタシのお腹が空腹を訴えてきた。ミライ先輩が爆笑した。脛蹴ってやったら悶絶してた。でも自業自得だと思う。
「それで、いつもああなの?」
その後、アタシたちはファミレスに入り、案内された席で注文を終えた。料理が来るまでの、少しだけ暇な時間に先輩がそう話しかけてきた。
「……何が?」
「さっきのやつ。身長が小さいからーってやつ」
「別に、あれはあの女がそういう奴ってだけ。学園じゃ、小さいからってバカにして来る奴はいないよ」
「ま、あの二人なら問題ないだろうな」
「知ってるの?」
あの二人……間違いなくビワハヤヒデとウイニングチケットの事だ。アタシがトレセン学園に入ってから、同期の二人とはよく話す。
それなりに仲が良い、とは思う。まあ、レースじゃ手加減しないけど。
「というか、タイシンを含めたお前たちはそれなりに目立つぞ? ほとんどウイニングチケットだけど」
「あいつめ……」
「『静かにしろ!』ってたまに怒られるもんな」
確かにアイツはうるさいけど、そこまで目立ってるなんて思わなかった。次からは実力行使で黙らせよう。
…………いや、余計にうるさくなるか。
「……で? 身長小さいの、気にしてんの?」
「っ! 別にしてない」
「うっそだー。だったらあの女が執拗にイジるのはおかしいでしょ。ああいう女は、相手が嫌がる事を的確に突いてくるし」
「だったら何? アンタもアタシには無理だから諦めろって言うの? アタシは今までバカにしてきた奴らを見返すんだ。レースで勝って、アタシの走りを認めさせてやるんだ! ……なのに、少しだけでも信頼したアタシがバカだった」
結局、こいつもあの嫌味女と一緒だ。アタシが小さいことを理由に、レースじゃ勝てないと言う連中の一人。
あの時、アタシを助けてくれたのだって、小さい身長が理由だろう。
……ほんのちょっとだけ、ハヤヒデやチケットみたいな人かもしれないと、思ったのに……。
裏切られた気持ちで悲しくなっていた時、アタシの気持ちを知ってか知らずか、またミライ先輩が口を開いた。
「でも良いじゃん? 私は好きだよ。そういうの」
「……え?」
「ん? 見返すんでしょ? 良いじゃん良いじゃん! かっこいいと思うよ」
ミライ先輩の顔には、同情も、嘲りも無かった。ただ、笑っていた。
「レース的には不利だとされる小柄なウマ娘が、数多のライバルを打ち破る。良い展開じゃないの~。応援してるよ? それに身長が小さいのだって、ちゃんとした長所じゃん。ウマ娘だって女の子なんだからさ。背が高かろうが低かろうが、立派な武器さ」
「あ、えっと……」
「どったよ?」
そう言ったミライ先輩は、呑気にドリンクバーのコーラをストローで飲む。
アタシはといえば、頭が混乱していた。
てっきり、レースで勝つのは難しいみたいなことを言われると思ってたのに。実際は全く別の事で、なんか応援されてた。
「……ミライ先輩は、言わないんだ。体が小さいアタシじゃ、レースに勝てないって」
「そう言ってほしいの?」
「そうじゃないけど」
「体の大きさってさ、結局は要因の一つさ。それが勝ち負けに繋がるわけじゃない。私だって、レースで勝てたのはGⅢまでだしさ。それに、ダービーで勝つんでしょ?」
「何でそれを知ってんの?」
「そりゃあ、ウイニングチケットがあれだけ大声で言ってりゃあねぇ」
またアイツか。やっぱり今度から、しゃべる前に黙らせた方が良いかもしれない。
「まあ、なんというかさ。私は見てみたいって思うよ。タイシンが下バ評覆して、ダービーで一着取る所。きっと、それはとてもいい景色だって思うからさ」
「……っ!」
どこか照れたような表情でそう話すミライ先輩に、アタシは何でか顔が熱くなっていくのを感じた。
なんで、こんな、いや、ミライ先輩が言ってるのはただのお世辞だから、深い意味なんてないし、仮にお世辞じゃなかったとしても別にそういうのじゃ……って何考えてんのアタシ!?
混乱する思考に狼狽えていると、不意にミライ先輩が呟いた。
「それにしても、少しだけでも信頼したアタシがバカだった……ねぇ。まさかもうそこまで言ってもらえるとは思わなかったなぁ」
「っ!? ち、ちがっ!? そういうつもりで言ったんじゃ!」
「ええー? そうなのー? 私はタイシンに信頼されてなかったのかー、残念だなー!」
「ぐっ……そ、そんなの言ってないから!
「それはさすがに厳しいと思うなー」
明らかにからかっている先輩が、今度はニヤニヤと笑みを浮かべる。
だけど、あの嫌味女と違って嫌じゃない。むしろ、心地良く感じる。
さすがに手を出すわけにもいかず、かといって机の下で足を蹴ろうとしても躱される。
「お待たせいたしました。日替わり定食とドライカレーでございます」
さすがに羞恥心が限界に達してきたタイミングで、頼んでいた料理がやってきた。
「お、料理が来たね。さあさあ! 美味しいごはんを楽しもうじゃないか」
「……後で覚悟しなよ」
「はいはい。そうだ、後でゲーセンでも行かない?」
「……ボコボコにしてあげる」
赤くなった顔を隠すようにドライカレーを食べる。
ピリッとしたドライカレーの辛さで、赤くなる顔を誤魔化せるように。
「負け、た……」
ウイニングチケット、ビワハヤヒデと戦った日本ダービー。
結果はウイニングチケットの勝利。アタシは、負けた。
「くそっ、くそっ、くそっ、くそっくそっくそっくそっ……ッ!」
ターフの上だと我慢した。我慢できた。勝利を勝ち取ったウイニングチケットに、ライバルにおめでとうと言うために。
だけど、控室に戻ってきたら、我慢できなくなった。
心配して来たのであろうトレーナーを放って、ただ自身の敗北に涙を流す。
皐月賞を勝って、ダービーを勝つためにトレーニングを一生懸命こなして、レースで全部出しきって、ライバルとぶつかり合った。
そして、負けた。
ここまでやったんだ。正々堂々、全力を出し切った結果に満足している。
――――
勝ちたかった!!
今までアタシをバカにしてきた奴らを見返す事なんて、もう
ウイニングチケットとビワハヤヒデに、アタシのライバルたちに勝ちたかった!
トレーナーと勝利を掴みたかった!
『まあ、なんというかさ。私は見てみたいって思うよ。タイシンが下バ評覆して、ダービーで一着取る所。きっと、それはとてもいい景色だって思うからさ』
……あの人に、勝つところを見せたかった……。
「……タイシン」
「ごめん、トレーナー。少しだけ一人にさせて。ライブにはちゃんと出るから」
「……分かった」
パタンと扉が閉まる音を聞いて、自己険悪に陥る。
アタシ、最低だ。トレーナーに八つ当たりみたいなことして。こんなんじゃ、先輩にだって……。
『タイシン、いる?』
ノックと共に聞こえてきたのは先輩の声。今、特に会いたくない人だった。
このまま居留守でも使おうか。そう考えていると、ドアが開いた。
「お、いた」
「……入ってきて良いなんて言ってないでしょ」
「さっき、タイシンのトレーナーが部屋から出て来るの見えてさ」
いつもと変わらない調子で話す先輩。あえてそうしてるのか、それとも何も考えてないのか、どうでも良かった。
「ごめん、先輩」
「どうしたー? 急に謝ったりして」
「勝つところ、見せられなかった」
「……その話か。よく覚えてたな」
さすがに気まずいのか、先輩は頭の後ろに片手を置く。
「あータイシン」
「ごめん、先輩出てって。一人にさせてよ。先輩に八つ当たりみたいなこと、しちゃうかもしれないし」
「いやだ」
「出てって……!」
「いや、駄目だ。これは言わなくちゃいけない」
「出てってよッ!」
「タイシン!」
「……ッ!」
滅多に聞かない、というか今まで聞いたことのない先輩の大声。
恐れていたように先輩にきつく言ってしまったこともあり、アタシは親に怒られる子供のように身をすくませた。
先輩が近づいてくる。なのに動くことが出来なくて、先輩が両手を広げたのを見て、思わず目を閉じる。
次の瞬間、アタシは先輩に抱きしめられていた。
「せん、ぱい……?」
「タイシン、ごめんな、怒鳴って。でも、これだけは言わせてくれ」
「――私が見たかったのは、タイシンが頑張ってる、カッコイイ姿なんだ」
先輩の腕の中の温もりを感じる中で、先輩の話に耳を傾ける。
「その、さ。タイシンは、カッコいいんだよ。周りから何を言われても、自分を曲げない。信念を貫き通して、誰にも邪魔させないって感じで。私は、それが出来なかったからさ」
秘密を打ち明けるように話す先輩は、ふと右足を擦る。
「そんなタイシンが、ダービーを勝ったらきっとカッコいいんだろうなって思ってさ。だから、私が言ったことがタイシンの重荷になったんだとしたら、本当にごめん」
「……違う。そんなことない! 重荷なんかじゃ、ないから……そんなこと言わないでよ」
「タイシン……」
「ん?」
「ダービーを走ってた時のタイシン……すっごく、カッコよかった」
その一言に、アタシは少しだけ救われた気がした。
頬が燃えるように熱いのは、先輩に抱きしめられて暑いからだと思うことにしよう。
「先輩、そろそろライブだから……」
「あ、そっか。悪いな、引き留めて」
「別に。ライブ、ちゃんと見ててよ。カッコイイ姿ってやつ、もっと見せてあげるから」
「それは嬉しいな」
「だから……」
「ん?」
「後で、ファミレスでドライカレー奢ってよ」
「喜んで」
街に雪が降り注ぐ中、アタシは駅の壁に寄りかかっていた。
やっぱり早く来すぎただろうか。楽しみにしすぎた……ではなく、待ち合わせの時間より早く来るのは当然だから、うん。
それにしても寒い。この時ばかりは、スマホで時間を潰すのも億劫だ。
街の明るい光が降る雪に反射して、誰かを照らす。
多くの人たちが行き交う中で、その光を眺めていると、何だか世界から認識されなくなったような気がする。
何となしに、ポッケに入れていた手を摺り合わせ、ハァと息で温める。
白い息が宙を舞って、その向こうに待ち合わせていた人物が見えた。
「――タイシン」
「あ、先輩」
「悪いね。遅れちゃったかな?」
「別に、遅れてない」
「そっか。でも、良かったの? せっかくのクリスマスなのに」
「どういう意味?」
「ほら、いつも仲良くしてる二人とか、トレーナーとかと過ごさなくていいのかなーって」
「……先輩は嫌だったんだ?」
「だったら誘われた時点で断ってるんだけどなぁ」
言外に嫌じゃないと言われて、頬が赤くなるのを感じる。いや、これは寒いからだ。
「それでどこ行く? まずは腹ごしらえでも」
「その前に。はいこれ」
「……? 何これ?」
持ってきていたものを渡すと、先輩はキョトンとした顔になる。
今日が何の日か、もう忘れたの?
「今日はクリスマスだし、その……」
「ああ、クリスマスプレゼントか! いやー、まさか渡されるとは思わなかった! ありがとう、タイシン」
「まあ、礼を言われるようなことじゃないし」
「じゃあはい。私からもね」
「……は?」
「いや、私からもクリスマスプレゼント」
先輩から渡された丸い箱。きっと今の私は、バカみたいな顔を晒してるのかもしれない。
「……開けてみても良い?」
「それじゃあ私も開けよっと」
アタシと先輩。同時にそれぞれのプレゼントを開ける。
「これって……腕輪?」
アタシが貰ったプレゼントは、銀色の腕輪だった。派手な装飾が無く、シンプルなデザイン。だけど、その光沢はキラリと光を反射する。
バカみたいに高いっていうわけではないだろうけど、それなりに高いものに感じる。
「腕輪……ねえ、これ付けてみてもいい?」
「ああ、うん。別に良いんだけど……ねぇ、これってもしかして結構な値段してない?」
「何が?」
先輩は、開けた箱の中身を見て固まっていた。
アタシが渡したのはネックレス。恥を忍んでチケットとハヤヒデに手伝ってもらって選んだものだ。
まあ、それなりな値段だとは思うけど、皐月賞の賞金やその後に勝ったレースの賞金があるし、その予算内だから大丈夫でしょ。
何故か二人には引かれたんだけど。
「どうかしたの?」
「いやぁ、まさかここまで立派なものを貰えるとは思わなかったからさ。なんだか私が渡した腕輪が釣り合ってないように思えて」
「……別に、貰ったクリスマスプレゼントの中で
「え、でもタイシン身長届かな「ふん!」いっつ!?」
脛を抱えて蹲る不届き者から、ネックレスを奪い取る。首元が下がってネックレス着けやすくなったし、ちょうど良いじゃん。
「動かないでよ……はい、できた」
「ありがと」
「それじゃ、はい」
「ん?」
立ち上がった先輩に、腕輪を渡す。
だけど意味が分からないのか、腕輪を見つめたまま首を傾げる。
ああ、もう! 鈍いなぁ!
「先輩に着けてあげたんだから、私にも着けてよ」
「でも腕輪だよ? 自分で着けたらいいじゃん」
「く……先輩、予備のチェーン入ってるでしょ。それ貸して」
「は、はぁ」
先輩から予備のチェーンを貰い、腕輪に通してネックレスにする。元が腕輪だから、少し不恰好になったけど仕方ない。
「はい、着けて」
「ええ……そこまでする?」
「また蹴られたい?」
「はいはい……動かないでよ」
アタシの後ろに立って、先輩がチェーンを首に回していく。
先輩の指がうなじを掠めるたびに、少しだけくすぐったい。だけど、嫌じゃない。
「ほら、着けたぞ」
「ん。ありがと」
「それで、まずは何か食べよう。腹減って仕方ないんだ。何か要望はある?」
「ドライカレー」
「好きだなぁ。んじゃ、ファミレス行こうか」
「その後はゲーセン行こうよ」
「良いぞ。上がった腕を見せてやるよ」
「返り討ちにしてあげる」
先輩と一緒に、聖夜の輝きに足を踏み入れる。
サンタクロースなんて信じてるわけじゃないけれど、アタシにとって今からの時間は、
一体何を書いているのだろうか?(サブタイ回収)
いやほんとマジで、最初はここまで長くなるつもりはなかったんですよ。
もっとこう、チケゾーとハヤヒデとは違うベクトルの友人みたいな立ち位置にしたかったんですよ。
これもそれもタイシンが湿度高いのが悪い(責任転換)