日韓ランキング20位に乗ってました。ありがとうございます!
今回、後半部分ほぼ会話です。
それは、ある日のルドルフから唐突にもたらされた。
「お悩み相談所ぉ?」
「ああ。理事長とそういう話になってな。ぜひミライにやってほしいと御指名を受けたわけだ。聞けば、理事長の悩みを解決したんだって?」
「いや、理事長の悩みって、いつも頭に乗っけてる猫が機嫌悪いからどうにかしてくれってやつでしょ? 結局猫が同じキャットフードに飽きたってだけの」
理事長の扇子が引っかかれたり、猫が学園の内を暴走してちょっとした騒ぎになったり、猫を捕まえたスーパークリークから離れなかったり、その後理事長が猫を抱いたらめちゃくちゃ威嚇してたりと、中々に大変だった。
その割に原因が軽すぎたのがまた何とも。
「それでも悩みは悩みさ。どうだい? 受けてはくれないだろうか」
お悩み相談所ねぇ。概要は分からなくもないが、一つだけ疑問がある。
「何で私なんだ? ルドルフやエアグルーヴ、ブライアンでも良いとは思うんだが……」
「私としては構わないがね、私は生徒会長として忙しいし、エアグルーヴは話を聞くよりも意外と行動派だ。ブライアンに到っては……まあ、ね?」
「あー。私が聞いておいてなんだけど、確かになぁ」
確かにルドルフはこれでも忙しい身だ。これ以上の時間は厳しい。
エアグルーヴは普段からトレーナーをみつけられていない後輩を指導していたりと、割と行動派だ。お悩み相談所というからには、やはり胸の内に溜め込んだものを吐き出させるのが主な内容。後腐れがない一期一会の対応が求められる故に、いささか不適任。
ブライアンはない。
「それに、あまり大きな声では言えないんだがな。表向きは、相談所では相談者と対応者の顔は互いに見えないということになっている。しかし、対応者だけには顔が見えるようにするつもりなんだ」
「そりゃ、なんでまた」
「トレセン学園の生徒とはいえ、立派なアスリートでもある。それ故に繊細だ。表情なんかが見えた方が、言葉を選びやすいだろう?」
「逆に相談者は、顔が見えないということで胸の内をさらけ出しやすいってことね」
普通、こう言ったカウンセラーは対面式なんだろうが、学園は既に数人のカウンセラーを雇い、カウンセリングを実施している。だからこその対応だろう。
「でも、それだと私の質問の答えになっていないぞ。なんで私なんだ? 別に生徒会である必要はない」
「こういうことは外部には相談しづらいんだ。それに、ミライなら問題はないと、私は確信しているしね」
「……さいですか」
相談を受けようとしてる側が相談しづらいとはこれいかに。
「受けてくれるかい?」
「ま、めんどくさいけどね」
「そうか。それじゃ、明日から学園の関係者にアンケートを実施するつもりだ。そこで希望があれば、さっそく実施することになる。頼んだぞ」
「あんま期待しないでよ」
「そうだ。もし話をしてみて、何かしらの改善案が必要だと思ったら教えてくれ」
こうして、お悩み相談所の開設が決まった。
あれから一週間後、空き部屋の一室を改造した相談所で、私は相談者を待っていた。
理事長のポケットマネーで改造されたという一室は、リラックス効果を持った配色など、相談しやすいような部屋にされている。
加えて、ボイスチェンジャーを通して話すため、声からの判別は不可能。
ただし、部屋の中央を区切るように立てられた壁は、相談者側からは見えず、逆に私は相手が見えると。金かけてんなー。
今日相手するのは、なんと5人。加えて他にもいるらしいので、やはり思春期にとって、ストレスや心の悩みは切っても切り離せないことらしい。
っと、そろそろ相手が来たようだ。
「はいどうぞー」
「失礼します」
入って来たのは……ん?
「そ、その、よろしくお願いします」
「えーっと、よろしく。それで、相談内容は何でしょうか?」
「それがここ最近、どうも他のトレーナーさんたちや生徒たちから避けられてる気がして……いえ、それなら特に気にはしてないんですが」
「…………それは、何時頃から?」
「担当を持った日からだと思います」
「何か心当たりはありますか?」
「いえ、特には……強いて言えば、担当のウマ娘が作った薬を飲んだくらいですかね? あでも、避けられる日と避けられない日があるんですよね。なんででしょうか……?」
「それなら、大丈夫じゃないすか?」
「最近、どうにも疲れが取れないのよねぇ」
「そりゃ歳、じゃなくて休みとか取ってます?」
「取りたいのは山々なんだけどね。担当の娘たちもいるし、休みが取りづらくてね」
「でも、ちゃんと話したら分かってくれると思いますよ? 強豪チームだからって、周り以上の働きをしなくちゃいけないわけでもないし」
「……それもそうね。ありがとう。近々休みでもとって、担当の娘たちとどこかに出かけにでもするわ」
「ちなみに、何をしに行くんで?」
「そうねぇ。そういえば、最近気になるスイーツがあるんだが、それでも巡ってみるか」
「いや歳を考え「何か言った?」いえ、何でもありません!」
「なんか、肩が重い気がするんです……」
「休みとか、取られてます?」
「休日なんかは、ちゃんと休んでます。ちゃんと毎日、担当の娘が淹れてくれるコーヒーを飲んでゆっくりする時間を作ってもいます」
「そう、ですか。まあ、病は気からと言いますし、そこまで気にしない方が良いっすよ? 本当にきついなら病院……いや、担当のウマ娘に相談でもしてみて下さい。マジでヤバそうなら、神社をお勧めします。それと、お墓には近づかない方が良いと思います」
「神社にお墓、ですか? まさか、幽霊が憑いてるわけでもあるまいし!」
「……それもそうっすよね! あはははは!」
「そうですよ! あっはっはっはっは! 何か気が楽になりました。相談に乗ってもらって、ありがとうございました! それでは!」
「…………しばらくあの人には近づかないでおくか……あれ? なんか寒気が……」
「最近、担当の奴らにプロレス技を掛けられたりすることが多くてなぁ。いつも金欠だし、もうちょっとどうにかなんないもんかねぇ」
「とりあえずセクハラまがいの事やめれば?」
「上司の行動がいつも急で困ってるんです! いつもいつも、私に何の相談もなしにポケットマネーで大きな買い物をして!」
「は、はぁ……」
「最近なんて、巨大な整地用のローラーなんか買ってるんですよ! いくらポケットマネーだからって、それを学園に配置しようとするのは大変なんです! 毎回毎回どれだけ私が苦労してると思って……!」
「その、落ち着いて」
「今回のこれだって!? いきなり業者の方が来られて驚いたんですよ! まさかと思って話を聞きに行ったら、話が盛り上がった流れでそのままーなんて言うんですよ!?」
「え、まじか」
「これだけ苦労してるのに、上司のネコちゃんは私に触らせてくれないし! なのに上司は本気でウマ娘のためを思っているから、尚更性質が悪いんです! 生徒の事を思えるなら、もうちょっと私に気を使ってくれてもいいじゃないですかーー!!」
「……苦労してるんですね」
「うう……そういうところが魅力な人でもあるんですけどね……」
「ええ……」
「お疲れ、ミライ。それでどうだった? このトレセン学園で改善が必要だと思うところは見つけたかい?」
「職員やトレーナーにまとまった休みをあげるといいと思います」
相談者が誰か、みんなは分かったかな?