私の周りには、才能持ちが多すぎる   作:神咲胡桃

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遅れましたが、明けましておめでとうございます。

これからもぼちぼち、やっていきます。


主人公サイドのサイコな奴って案外人気が出るよね

「――はい、こちら生徒会室。……はい……はい。すぐに向かわせます」

 

なんてことない日中。生徒会室の固定電話に掛かってきた一本の電話。

それを取ったルドルフは、二、三言話すと、電話を切る。

 

そして私を見た。おいやめろ。

 

「ケースATJだ。ミライ、頼んだよ」

「ただいま留守にしております。ピーという音声の後に……」

「うん。とりあえず、早めにお願いするよ」

「……はぁ」

 

つまりは会長命令と。分かりましたよ、行けばいいんでしょ!?

 

 

――ちなみにケースATJとは。

 

(アグネス)(タキオン)(実験)の略である。

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園の片隅にある研究室という名の元理科室。

 

ルドルフから命令を受けた私は、その部屋の前にいた。

 

「いやだなぁ……」

 

詳細は聞いていないが、間違いなく厄介事だ。

 

とはいえ、回れ右して帰るわけにはいかない。意を決してドアを開け――

 

「――ぶぉ!?」

 

開けた瞬間、中から勢いよく煙が噴き出てきた。

 

「ゲホッゲホッ! いきなりなんだ!?」

「……そ、その声は、庶務くんかい? ドアを開けてくれて感謝するよ」

「なんで、こんな目に合わなければ……ケホッ」

 

煙の中から出てきたのは、制服の上から白衣を着たウマ娘アグネスタキオン。そしてその隣には、黒いロングヘア―が特徴的な神秘的な雰囲気のウマ娘マンハッタンカフェ。

この部屋に居ついている二人であり、アグネスタキオンにいたってはこの煙の原因だろう。

 

「おいアグネスタキオン。なんなんだこの煙は。外にも漏れているから火事騒ぎになりかけてんぞ」

「いやぁ。いつものように実験していたんだがね。途中までは上手くいっていたんだよ。しかし急に煙が溢れ出してね。てんやわんやとなってしまったのだよ。アッハッハッハ!」

「アッハッハッハ!……じゃねえよ。おま、これ収まるんだよな?」

「うーむ。材料的に考えて害はないだろう。だから外に出したいんだけどねぇ」

 

タキオンがそこまで言ったところで、部屋の中の煙が一斉に吐き出され始めた。

 

「なんだ、換気扇でも入れてたのか?」

「…………」

「タキオン? どうした急に黙りこくって」

「……この部屋の換気扇じゃ、ここまでの速さで換気されない。窓なんて開けてすらいない」

「は? いやでも、現にこうして煙が晴れていって……」

 

完全に煙が晴れた部屋を見ると、確かに部屋の窓が全て開け放たれていた。

 

……え、でもタキオンは開けてないって言ってて、でも開けられてて…………え?

 

「……どうやら、私の友達が開けてくれたようです」

 

私の思考がフリーズしてると、ふとカフェがそう呟いた。

彼女の言う友達が私たちを指しているわけではないことは明白で、というかカフェの顔は私たちに向けられていなくて……。

 

「……そうか。礼を言っといてくれ」

「フフ。だそうですよ」

 

私はそのお友達が見えないが、カフェには姿が見えているようで微笑んでいた。

 

……虚空を見つめて微笑んでいなければ、良い絵なのだが。

 

「……まあ、とにかく。この際部屋の窓はいい。というか気にするな。それよりも、あの煙は実験の失敗でいいんだよな?」

「まあ、そうだね。火は使っていないし、火事ではないから大丈夫さ」

「じゃあ私は戻るぞ。もうやめろよ、こんな騒ぎ」

「あ、ちょっと待ちたまえ、庶務くん」

 

軽く注意だけして生徒会室に戻ろうとした時、タキオンに呼び止められた。

 

「まだ何かあんの?」

「えっと……実は新しくできた薬があってね。その試飲を頼みたいんだが」

「え、もうできたの? 前に薬が出来たから試してくれっつったの、三日ぐらい前じゃなかったっけ?」

「そ、それはだね……そう、前の薬を改良したやつなんだ。君は前の薬を飲んでいるからね。ぜひ君に飲んでほしいんだ」

 

タキオンの薬……飲みたくない。飲みたくないのだが、これも契約だ。

 

「ほらほら、入ってくれたまえ!」

 

大人しく部屋の中に入ると、部屋半分には無機質な様々な実験器具が並んでおり、もう半分はまた何というかオカルトチックな内装になっている。

タキオンとカフェが共同で使っているためにこうなっているのだ。

 

「さぁさぁ! これが今回の薬だ。グイッといきたまえ、グイッと」

 

差し出されたグラスの中には、半透明の液体が注がれていた。

 

前回の試飲した薬と見た目はほとんど変わらない。あれは飲んでも特に効果はなかった。タキオンに聞いてみるとどうも失敗だったらしい。

 

飲むかどうか迷っていても仕方ないので、促されたようにグイッと飲み込む。

意外にも、ほのかな甘みが口の中に広がった。飲みやすいように甘くしたのだろうか? 

 

 

――10秒経った。

 

――30秒経った。

 

――1分経った。

 

 

「……何も起きないな」

「そうか。それは仕方ないな。まあ、もしかしたら時間経過で何か起きるかもしれない。何か感じたら、また教えてくれ」

「分かった。それとまさかとは思うが、通りすがりの奴で実験したりしてないよな?」

「当り前じゃないか。それが庶務くんとの契約じゃないか」

「そうだ。実験するならお前んとこのモルモッ……トレーナーか私かカフェにしとけよ」

「いや、私を巻き込まないでください」

 

カフェがなんか言ってるが無視だ。タキオンのトレーナーはともかく、私だけなのは嫌なんだよ。お前も巻き込まれろ。

 

「そろそろいくぞ。じゃあな」

「もう行くのかい? ゆっくりしていけばいいじゃないか。何なら紅茶でも淹れるよ?」

「タキオンさんの紅茶はどうでもいいですが、コーヒーでも飲んでいかれては?」

「悪いな。私はお茶派だ。自分の派閥に引き入れようと無駄だぞ」

「「なっ!?」」

 

茶葉とコーヒー豆を手に固まる二人を置いて、部屋を出る。

 

 

……なんか肩が重い気がするが、気にしないことにしよう、うん。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

ミライがお茶派ということが判明し、愕然としていた二人だったが、ずっとそういうわけにもいかずやがて再起動した。

 

ミライが飲んだグラスを片付けるタキオンの背中に、カフェの声が飛んできた。

 

「……タキオンさん。何度も言いますが、私を巻き込むのはやめてください」

「それはすまないと思っているんだけどねぇ。でもカフェ? ()()()()()()()()()()?」

「わざわざあなたが、この時間に実験すると伝えてきましたから。私を遠ざける気じゃないですか。ここは私の部屋でもありますし、監視しておかないといけないと思っただけです」

「ふぅん? いつもなら実験にお小言を言う君が、何も言わずに監視だけかい?」

「それを言うなら、今日はタキオンさんらしくありませんでしたよ。()()()()()()()()()()()()()。いえ、失敗ではないですね。元々ああするつもりだったんですよね」

「言いがかりはよしてほしいなぁ」

 

いつものように人を食ったような笑みを浮かべるタキオン。しかし甘い誤魔化しはカフェには通じなかった。

 

「遺憾ですが、私がどれだけあなたに付き合ってると思ってるんですか? さっきの()()()に、私が気付かないとでも?」

「…………」

 

こんどこそ、タキオンは沈黙した。それが、答えだった。

 

だがカフェは責めるために言及しているわけではない。

カフェにも、実験の被害を我慢してまで居座る理由があったのだから。

 

「……いい加減、普通に話しかけれるようにならないんですか」

「な、なんの話だい!? 私は別に、庶務くんと話したいがために実験しているわけではないんだぞ!」

「誰もそんなこと言ってませんよ」

「ぅ……」

 

見事な自爆を披露したタキオンが、顔を赤くする。マッドサイエンティストなどと言われているタキオンが顔を赤くするなど、いつもの様子からは想像できないだろう。

 

慌ただしく実験器具を片付けるタキオンを横目で見ながら、カフェはコーヒーを淹れる。

 

しかし、タキオンにはいい加減実験を口実にするのはやめてほしいものである。

実験のたびに被害を受けるのは、いつもカフェなのだから。

 

大きな音を立てて実験器具を落としているタキオンを見るに、その日は遠そうである。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

初めてだった。

 

 

『お前が問題児か? 私はミライクライ。生徒会庶務だ』

 

『退学勧告だ。これ以上、だんまりは決め込めないぞ』

 

『トレーナー見つかったって? 良かったな!』

 

 

トレセン学園の問題児。

 

マッドサイエンティスト。

 

変人。

 

狂気のウマ娘。

 

そんな風に呼ばれてきた私に近寄るウマ娘もトレーナーもいない。

 

それを気にしたこともなかったし、それで構わないと思っていた。

 

なのにあの人は、私の領域にズケズケと、厚かましく、無遠慮に、踏み込んできた。

 

 

『お前……ミキサーでってそれはないだろ。ちゃんと食べろ』

 

『おい、また苦情が来たぞ。通りすがりで実験しようとするな』

 

『……分かった、契約だ。私が実験台になる。その代わり、他の奴で実験はしない。それで我慢しろ』

 

 

トレーナーくんやカフェよりも先に出会った、私に嫌悪感や軽蔑を向けてこなかったウマ娘。

 

問題行動を起こさせないように自身を実験台にし、その上私に悪感情を向けない。むしろ向こうから何度も絡んでくる。

 

……分からない。

 

 

『おいー!? なんで他の奴実験台にしてんだ!? マンハッタンカフェに同意もらってるんだろうな!?』

 

『お前んとこのトレーナー、よくその薬飲めんな』

 

『タキオン、皐月賞出んの? あの問題児だったお前がよくやるもんだ。ま、がんばれ』

 

 

……分からないんだ。

 

なぜ顔を思い出すだけで頬が熱くなる。

 

なぜ研究室に来ないだけで寂しいと感じてしまう。

 

なぜもっと、もっと近くにいたいと思ってしまうんだ。

 

 

『――タキオン! タキオン!』

 

『……お前、足……』

 

『プランA……プランB……? ……いや、お前が良いなら、私が口を出すことじゃないな』

 

 

実験にかこつけて、あの人を呼び出すことしかできない自分が情けない。

 

まさか私がこんなことで悩むようになるとは思ってもみなかった。

 

だが仕方ないんだ。

 

あの人は私の瞳を、狂ったような瞳だと言った。

 

だけど私は、どうしようもなく――

 

 

『ウマ娘の限界の先ねぇ……大層立派な研究だ。羨ましいよ、私は』

 

『お前の研究でウマ娘が限界超えようが勝手だ。その研究で救われる奴もいるだろうよ。でもよ、それで超えちゃいけねぇもん超えたらしめぇだろ。研究の過程で救われねぇ奴が出た時点で、誰も救われやしねぇよ』

 

『少なくとも、お前の言う救われねぇ奴を気にする奴はここに、いや、お前の周りにたくさんいること、覚えてろバカやろ』

 

 

 

 

 

 

『……復帰すんの? そっか……がんばれよ』

 

 

 

 

――――あの人の壊れた瞳に、魅了されて仕方がないんだよ。

 

 

 

 

 

 




この話書いてるとカフェが欲しくなった。(持ってない)

タキカフェこそ至高! タキカフェこそ至高! タキカフェこそ至高!
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