レゼのハートに火を点けて   作:シャブモルヒネ

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残り3時間

「――人を殺すのはいけないことなのか?」

「へえっ?」

 

 がたんごとんと揺れる電車の最後尾、まばらな車両の窓から流れゆく景色を眺めていたポリーナは素っ頓狂な声をあげた。

 同じ火の魔人であるアナスタシアから向けられた質問はそれほどに意外だった。それは例えるなら「ナイフで心臓を貫かれたら生き物は死んでしまうのか?」と聞かれているも同然の、当たり前で話の種にするまでもない内容。

 

――人を殺すのはいけないことなのか?

 

 いきなり何を言い出すのだろう、とポリーナは首を傾げた。

 そんな話にいいも悪いもなく、エージェントとして育てられた自分たちからすれば遙か昔に決着したはずの問題だ。

 ポリーナは思わず隣に座っているアナスタシアの無感情な顔をまじまじと見つめてしまう。

 

「どしたの、急に」

「人を殺すのは、いけないことなのか?」

「……そんなのTPOによるとしかいいようがないよ?」

「例えば?」

「例えば……って言われてもなー。ええと、あのね? もうちょっとこう、何を聞きたいのか要点をハッキリしてもらわないとこちらとしても困りますよ?」

「だから、単純に、いいことなのか、悪いことなのか」

「それってさあ、善悪のハナシ? 法律のハナシ? お仕事のハナシ?」

「……」

「あ、これ自分でもよく分かってないって顔だ」

「…………かもしれない」

「はぇ~。そんなんじゃこっちも答えようがないんだなぁ」

 

 アナスタシアは腕組みしたまま動かない。

 自分から質問してきたくせに言葉に詰まってしまい、難問を解きにかかった受験生と化してしまった相棒をポリーナは横目で眺めて待ってみる。待ってみる。もうしばらく待ってみる。しかし変化は見られない。こりゃだめか~、と聞こえよがしに溜め息をついた。

 

「……ナスチャは何かを納得してないんだね」

「納得?」

「そ。これでいいのかな~ってもやもやがあるんでしょ。それが何に対してなのかも分からない。だから困ってる」

「そうなのか?」

「そうだよ」

 

 ゆっくりと言い含めながらポリーナは考える。

 電車はすでに目的地である山間に突入しつつある。標的であるレゼと遭遇する時も近付いてきており、公安の護衛たちといつ接触してもおかしくない。だからここにきてのアナスタシアの発言はまさしく「今さら何を」としか言いようのない内容でしかないのだが――

 

「もしかしてナスチャはレゼって人を始末したくないんじゃない?」

「いや、別に」

「ここにはソ連の監視員はいないよ? 何をどう喋っても怒られない」

「任務に関しては本当にどうとも思っていないんだ」

 

 アナスタシアは即答する。

 かつて仲間だった少女を始末することにためらいはない。慈悲や情けに左右されるような柔な精神構造からは最も遠い位置にいた。

 

「ふ~ん。ナスチャってさ、昔からそんな感じなんだよね?」

「ああ。最初は犬だった。モルモット一人につき一匹があてがわれ、育てさせられて懐いてきたところで殺せと命じられた。私は殺した。だって殺すか殺さないかの二択なんだ、こんなに分かりやすい話はない。なのに他のモルモットたちはあのとき揃って保留を選んだ。決断まで早い奴でも5秒はかかっていたな……」

「わーお、ひどい話。……あ、ちなみにその時の私はどうしてたの?」

「その5秒で決断したというのが、お前だ」

「薄情~」

「時間を稼ぐことにどんな意味があったんだ? 教官の印象が悪くなるだけだろう」

「人間、誰しも捨てたくないモラルというものがあるのだよ、アナスタシア君」

「モラル……」

「正しい人でいたい、って言い換えてもいいかな」

「その“正しい人”ってのが、分からない」

「うん、それがTPOになるね」

 

 アナスタシアは僅かに片眉を吊り上げる。

 長身の少女は、肩口でゆらゆら揺れているニット帽のてっぺんを眺めながら、続きを促した。

 

「モラルに固執するのは個人のこだわり。ただのエゴ。勘違いしてる人は多いけど、そんなのを優先させるのは正しい人とは言わない。正しい人・悪い人ってのはTPOで変わるんだ。ソ連だったら、偉い人に従う人。民主主義の国なら、多数派の意見に従う人。それは分かるでしょ?」

「……」

「ナスチャはどっちの正しい人になりたいの?」

「……」

「どっちなら納得できそうなの?」

 

 赤毛の少女はしばらく黙り込んでから、答えた。

 

「……分からない」

「ぶぶー、不正解」

 

 銀髪の下から爬虫類のように縦に裂けた金色の瞳が覗き込んでくる。

 

「ナスチャはどちらを選んでもけして納得することはできない」

 

 ポリーナは細身の身体で相棒に寄りかかる。彼女は近接格闘戦に向いていなかった。飲み込みも悪く、戦闘のセンスもない。すぐに落伍者になるとモルモットの誰もが思っていた。

 しかし実際は最終選考まで生き延びた。人の心理を読む術に長けていたから。

 

「共感性の欠如。ナスチャは人の心が分からないんでしょ? “正しい人”も“悪い人”も感覚的に理解できない。他人の生き方を真似したところで納得は得られない」

 

 電車は揺れる。景色は流れていく。

 ポリーナは淡々とした口調で囁くだけだった。

 

「ナスチャの納得はナスチャの中にしかない。誰も参考にならない。自分で決めるしかないよ」

 

 電車のアナウンスが流れ始める。

 ご乗車の皆様お疲れさまでした。次は終点、終点となります。お忘れ物のお荷物がないようご注意下さい――

 

 この世界で唯一つ、誰に対しても絶対的に平等で、泣こうが喚こうが目を逸らそうが容赦なく奪い取られていくものがある。

 時間。

 

 現在時刻、15時。

 アナスタシアの寿命は本日18時に尽きることになっている。

 

 

 

 

 

残 り 3 時 間

Осталось 3 часа.

 

 

 

 

 

 中国には黒孩子(ブラックチルドレン)と呼ばれる戸籍のない子どもたちがいる。

 

 

 6歳のとき、学校に通わせることはできないと親に知らされた。

 どういうことか理解できずに呆然としていると、同い年である姉の凜風(リンファ)が父に食ってかかった。

 

――いくらうちが片親で貧乏だからって小学校ぐらいは行かせられるだろう。どうしてもっていうなら自分が働く、だから妹だけでも通わせることはできないのか。

 

――できない。

 金の問題じゃない。

 お前たちには戸籍がないんだ。

 身分証明がないから学校には通えない。

 

 父の絞りだすような息遣いが印象的だった。

 酒も煙草もやらず、堅物だった父。

 工場勤めで、いつも手指が黒ずんでいた父。

 月に一度の給料日に本を買ってきて読み書きを教えてくれた父。

 その父が、今までに見たことのないような哀しそうな顔をしていた。

 

――お前たちは俺たちの本当の子どもじゃない。

 死んだ母さんが、妊娠できない体だったものだからつい市場で買ってきてしまったんだ。

 

 何を言っているのか分からなかった。

 いや、分かりたくなかったんだと思う。

 『お前たちは俺たちの本当の子どもじゃない』、その文字列が耳の奥から頭に入り込んだ瞬間、防衛本能が働いて、それ以上の咀嚼を力づくで拒否していた。無茶の反動は神経系に負担をかけ、足元はおぼつかなくなった。世界が傾いていくように感じた。

 薄暗い部屋のなかで沈黙がどれほど続いただろうか。

 私が耐えきれず、意味を成さない嗚咽を漏らしそうになったとき、

 

「……そっか、そうなんだ。だったら、しょうがない、か」

 

 姉の呟きがするりと耳朶に染みこんだ。

 後から思い返してみれば、その言葉が楔になったのだと思う。

 拠り所を失ってどこかへ飛んでいきそうになっていた私の精神を、姉が繋ぎとめてくれたのだ。

 これはもうしょうがないこと。終わったこと。だから気に病んでも仕方ない。

 姉の肩は震えていた。横顔は固く、青ざめていて、本で見た絵画のようだった。

 

 

 私たちのような黒孩子(ブラックチルドレン)は中国には1300万人以上いるらしい。

 一人っ子政策により陰へと追いやられた子どもたちは圧倒的に女の子のほうが多い。

 なぜかというと、古い観念にとらわれた農村では後継ぎに男の子を欲しがるからだ。先に生まれてしまった女の子の出生届は出されず、違法と知りつつも誰かに売るか、捨ててしまうか、こっそり育てるかが選ばれる。その後にやっと生まれた男の子だけが『第1子』として届けられる。

 

 父は私たちを義理の娘にしようと何度も申請したらしい。

 だけど地方政府は拒んだ。

 一人っ子政策での成果を競っていた地方政府にとって黒孩子(ブラックチルドレン)は存在してはならない厄介事でしかなかったから。

 私たちは戸籍に基づく身分証がなかったから病院で診察を受けることもできなかった。図書館で本も借りられない。もちろん学校にも通えなかった。それでも父が少しずつ勉強を見てくれたから、同年代の子どもたちには劣るものの、読み書きはできた。そこだけは他の黒孩子(ブラックチルドレン)たちより恵まれていたと思う。

 

 父が死んだ。

 

 道路の崩落事故に巻き込まれたらしい。遺体はコンクリートで埋め立てられてしまったため最期の対面も叶わないと近所の人が教えてくれた。そのおばさんは好奇の眼差しを私たちに向けながらこう続けた。

 

――政府が賠償金をたくさんくれるってさ、良かったね。

 

 しかし私たちには戸籍がない。

 受け取る権利など存在しなかった。

 

「……しょうがない。こういうこともある。だから朱亞(シュア)よ、ぴーぴー泣くんじゃない」

 

 姉は、やはり肩を震わせて、呪いの重みを振り切るように私の手を引いて夕暮れの裏路地を進んでいった。

 父が死んだ以上、私たちは家に住む権利さえ失っていた。

 

 

 

 

 

「――お姉ちゃんはクァンシさんの仇を撃ちたいんだよね」

「ああ、そうだ。今さら何言ってんだ」

 

 がたんごとんと揺れる電車の先頭車両、まばらな車両の窓から流れゆく景色を眺めながら私は思い出す。

 姉は、あの時も、あの時も、きっと泣きだしたかったはずだ。

 でも子ども二人がただ泣いていたところでどうにもならない。だから無理やり涙を引っこめた。

 

――アタシらは、支配の悪魔をぶっ殺すまではまともに生きることもできねえんだ!

 

 私はずっと姉に守られてきた。

 その姉が、クァンシさんが殺されたと聞いたとき、初めて「しょうがない」と言わなかった。

 それまでの我慢をかなぐり捨てて、仇を討つと決めたのだ。

 ならば。

 私のするべきことは一つしかない。

 今度は私が姉の楔になる。

 例えそのせいで共に奈落の底へ転がり落ちることになろうとも――

 

 

 

「クリスマスの時間です」

 

 サンタクロースが触れた者は人形と化す。その人形が触れた者もまた人形と成ってしまう。

 ドイツからやってきた悪魔遣いの少女は、人形の悪魔と契約しているとのことだった。

 彼女の周囲に立ち並んでいる人形たち、その約半数が規則正しく足を揃えて後部車両へと移っていく。

 その光景を私と姉はどんよりと暗い眼つきで見つめていた。

 

「また人形を作るのか……」

「プレゼントは一人では届けきれませんから」

 

 この先頭車両に乗っていた日本人の乗客たち。あの人たちも、ほんの数分前まで自分の人生を生きる人間だった。

 今ではもう非道の手先。こうして私たちがただ座っている今この瞬間も一車両ずつ進みながら犠牲者を増やしていっている。

 

「……うう」

 

 電車に乗るのは初めての体験だった。

 窓には美しい山々と谷間を蛇行する川の景色が縁取られていたが、のんびり眺めているような気分にはなれそうにない。

 原因はいうまでもなく、向かいの席で置物のように座っているサンタクロースと名乗った少女。

 

「それなりに数が揃いましたね」

 

 支配の悪魔を倒すために手を結んだドイツ人の周りには、老若男女、様々な日本人だったモノたちが立っている。皆が皆、一様に作り物じみた無表情。人間ではない。人形だ。

 

「なあ……人形にされたら二度と元に戻れないんだろ?」

「はい」

「そこまでやることはねぇんじゃねえか……?」

 

 歯噛みする姉。

 サンタクロースは白々しく首を傾げてみせる。

 

「数は力です。目的を達成するためには必要でしょう」

「こいつらが何をした? 何の罪もねえ人間だっただろ」

「誰しも少なからず命を奪って生きています」

「これはメシを食うためじゃないだろ。他のやり方はなかったのかよ……」

「妥協は失敗のもとですよ」

 

 サンタクロースを取り巻く人形たちは微動だにしない。

 皆が明後日の方向を虚ろに見つめている。彼らは、彼女らはもう人間ではない。生き物ですらなくなっている。人生を奪われた。私たちが目的を達成するために。

 悪魔遣いの少女は緑色の瞳を怪しく光らせる。

 

「例えば、支配の悪魔を追い詰めたとしましょうか」

「ああ?」

「支配の悪魔は民衆のなかに逃げ込んだ、ここで見失ってしまえばチャンスは二度とこない……そんなとき、あなたの手元に手榴弾があったとします。投げ込みますか? 諦めますか?」

「そんなの……」

「やる気がないなら呪いの悪魔は返してほしいですね」

 

 姉は言葉に詰まる。

 4回刺された者を必ず殺すという悪魔の釘は、もはや手放すことのできない私たち唯一の武器だった。

 睨みつけはするものの、それ以上の反抗はできない。

 

「……クソッ! 悪魔遣いってのは皆こうなのかよ!」

「お姉ちゃん……」

 

 サンタクロースは私たちより年下の少女の姿でありながら、その中身は何十年もの人生を積み重ねてきたプロの悪魔遣い。成果のためなら何でもやる、弱者を踏みつけにすることも厭わない。

 私たちは知っていたはずだ。

 それも承知で手を組んだ。

 でも、本当にそれでよかったのだろうか。

 そのやり方は、私たちを社会の隅へ追いやってきた冷たい政府の役人たちと同じではないのか。

 

「プロは全力を尽くすからこそプロなのです。クァンシもこの場に居たならきっと似たようなことをしたでしょう」

「クァンシは、そんなことしねえ!」

「さあ、どうでしょうか。彼女の通った道には多くの屍が残されていたと聞きます。わざわざ一般人のために労力を割くとは思えませんが」

「てめえに何が分かる!? クァンシは……クァンシはなぁ、アタシらを助けてくれたんだ! 何の見返りもねえのにだ!」

「そ、そうだよ……。クァンシさんは、ひどいことなんてしない……」

「そうですか。クァンシはずいぶんと“崇拝”されているようですね」

「そんな大そうなもんじゃねえ……。人として当たり前の話だ」

「モラルを守りたいなら復讐などすべきではありません」

「……」

 

 初めて声をかけられたときから薄々感じていた。

 サンタクロースは血の通わない冷たい社会構造が人の形を得たような存在だ。情は無く、合理で物事を考える。弱者などいともたやすく切り捨てる。

 姉はそんな悪魔じみた存在と対等に張り合っているつもりのようだけど、そんな考えはきっと甘い。通じる相手ではない。

 これまでの人生で何度も味わってきたから分かる。

 弱者を利用する側の人間は、強者だからこそ、その位置にいられるのだ。

 金と権力を持ち、理知に聡く、暴力を備え、そして何よりそんな強者たち同士で太い繋がりを持っている。

 私たちのような物知らずの孤児姉妹が抗えるような相手じゃない。

 きっと骨までしゃぶられる。

 

 

『キミの姉は、未来で最悪な死に方をする』

 

 

 怖気が走る。

 私たちはずぶずぶと底の無い泥沼に嵌りつつある。

 思い返すまでもない。復讐を誓って走り出したあの日から、一歩進むごとに不吉の手が食い込んできていた。

 未来の悪魔との契約。

 復讐の悪魔との契約。

 サンタクロースとの同盟。

 呪いの釘。

 ……精神と寿命が一寸刻みにされていく実感があった。

 

(誰か……誰でもいい……。この淀んだ状況を変えてほしい……)

 

 いっそ悲鳴をあげてしまいたい。

 助けてほしい。

 誰でもよかった。この深みから抜け出してくれるなら。それが例え更なる邪悪な悪魔でも、殺戮しか知らない魔人でも――

 

 

 その願いは届いたのかもしれない。

 

 

「おや」

 

 唐突に驚きの声をあげたのはサンタクロースだった。

 

「あの……サンタクロースさん?」

「どうしたよ?」

 

 ドイツ人の少女はそれきり無言となる。

 私たち姉妹の問いかけにも反応しない。

 ほんの僅かに目を細め、手勢を増やすために後部車両へと送り込んだ人形たちの姿を透視するかのように、じぃっと後部車両へ続くドアを見つめている。

 

「敵」

 

 周囲の人形たちが一糸乱れぬ動作で腕を振る。ぎゅうんと形を剣状に変化させ、ドアに向けて陣形を組み始める。

 

「敵が来ます」

 

 小さな音がした。

 後部車両から、ガラスが割れるような音、鉄屑同士がぶつかるような音、トラックの荷台から木材が落ちたような音――しかし私が知るような日常の延長戦上にある音とは何かが決定的に違った。

 それらは破壊がもたらす音だった。

 耳を澄ませば断続的に、少しずつ大きくなってくる。

 人の声は無い。機械的に何かを粉砕する音だけが確かに近付きつつある。

 

「敵ってなんだ……? 公安のデビルハンターでも乗ってたか?」

「いえ。日本人ではない。東欧……スラブ人?」

 

 サンタクロースが身じろぎすると、唐突に、後部車両から人間の叫び声が沸きあがる。

 

「なんだ!? なんだ!?」

「あれ、私のウデ……?」

「体なんか勝手に動くぞ!?」

 

 わっと津波となって怒号と悲鳴が押し寄せた。

 大混乱の様相、私には何が起きたのか分からない。この電車は先頭車両から順番に人形だけの世界になっていったはず。無言で、無情で、無生物しか居ない空間。そこからいきなり人間の声が沸きあがる……人形たちが、人間に戻った……?

 ドアを凝視する。

 

「いやああああ!」

「魔人! 魔人だ!」

「なんでええ!? 足動かっええええ!?」

 

 何か、とてつもないことが起こっている。

 しかし実感がない。

 敵……? 人形……? 全て遠い国で起きているヨタ話のようにしか思えない。

 そもそも私はどうしてここに居る?

 復讐のためで、姉のため。そんな名分だけがちらついて、けれど何一つ掴みどころがない。

 サンタクロースという殺し屋と、突如現れた謎の敵――人殺しのプロたちが容赦なく推し進めていく現実のスピードにまるでついていけない。

 

「――魔人。2人とも格闘技術の訓練を受けている。知性も保持している」

 

 サンタクロースは淡々と言葉を並べていく。

 

「人形に人間のフリをさせても躊躇わない。かといって殺戮に酔うわけでもない。冷静にここを目指している……手馴れてますね」

 

 それが敵の分析だと遅まきながら気付く。

 後部車両からの破壊音はどんどん大きくなる。近付いてくる。

 

「なのに、この若さ。ずいぶんちぐはぐな存在です。これでスラブ人ともなれば可能性は一つしかありません」

 

 凄まじい衝撃音。分厚い合金製のドアが吹き飛んだ。

 がらがらと床を回転しながら滑っていく音だけが鳴り響き、場は一瞬の静寂に包まれた。

 人形兵たちが構えを深くする。

 

 ぬるり、と。

 後部車両から長身の女が現れた。

 

「……」

 

 ニット帽をかぶり、学生の制服らしき衣服に身を包んだ女。

 その両手には人間の――否、人形の、刀剣化した腕が握られている。

 無言で車両内の私たちを睥睨し、ただの乗客さながらのゆったりとしたペースで三歩だけ車両に足を踏み入れる。

 その後ろから現れたのは、自分たちとそう変わらない背丈の少女。

 

「おやや~? 先頭車両についちゃった。ってことはここに本体さんが居るのかな~?」

 

 長身の女と同じ格好をして、にんまりとあどけなく場違いに明るい笑みを浮かべていた。

 遠くを眺めるときのように瞼の上に手をかざし、一人ずつ順番に視線を走らせた。迎撃陣形をとっている人形たち、半分腰を浮かせかけた私たち姉妹、そして最後に、座ったままのドイツ人の少女のところでぴたりと視線を留める。

 

Guten Tag (こんにちわ)、サンタクロース! 生きていたとは驚きね!」

「Здравств(こんにちわ)уйте 、ソ連のモルモットさん。一体何の用件でしょうか」

「本体を駆除しにやってきたの! この人形たちにいきなり襲われたから」

 

 くい、と持ち上げたその手には人形の頭が掴まれていた。

 

「あう……あう……命だけは……」

 

 ばきり、と首をへし折った。

 

「困るんだよねー、こういうことされると」

「どうやら誤解があるようです」

「あはっ、誤解って?」

「私の標的はあなたたちソ連の者ではありません。居合わせたのは偶然です」

「ふうん、そうなんだぁ。ナスチャはどう思う?」

 

 長身の少女は両手に握った剣状の腕をぶぅんと振るう。

 それだけの動作になぜか美しさを感じた。堂に入っている。父と見た映画にでてきた主役の姿が重なった。

 

「お前、ドイツ人だろう?」

 

 どうして見入ってしまうのか。

 不意に父の言葉が蘇る――

 

 

『そこに本物の功夫があるからだ』

 

 

 父、曰く――素人でも優れたものを目にすれば美しいと感じるものらしい。

 長身の女。

 全身の力みは抜けて、剣もどきの握りは浅く、それでいて背筋は伸びて股の開きと膝足の角度が十全に地を噛んでいる。

 表情こそ周りの人形たちに近い無表情だったけど、存在感が違った。

 彼女は今すぐどこにでも全力で飛び出せる。どうとでも身を捩り、恐らく銃弾さえも悠々と避けながら反撃に移ることができる。そう確信させられるだけの合理を素人の私でも肌で感じることができた。

 

「お前、ドイツ人だろう?」

 

 女は電車の揺れを意に介さない。

 堂々と仁王立ちで、この世の真理を突きつけるかのごとき断固たる口調で繰り返す。

 

「ドイツは、邪悪な侵略者だ」

「侵略者……? いったい何の話でしょうか」

「邪悪な侵略者は、始末しなければならない」

「そんな歴史はないはずですが」

「私は、そう習った」

 

 不意に女は腕を振るった。

 人形たちが一斉に反応し、金属音が鳴り響く。

 破片、壁となった人形たち、その一体が崩れ落ち……私はようやく気付く。その人形の頭部に剣もどきが深々と突き刺さっている。

 投擲したのだ。

 

「お前は悪い奴だ。始末する」

「わけが分かりませんね」

 

 ――と、腕を掴まれた。

 姉の凜風(リンファ)が、必死の形相で、

 

「ぼけっとすんな! こっち来い!」

 

 思い切り引っ張られた。

 車両の最前方、運転席へのドアへと押し付けられ、背中に走った衝撃で咳き込みそうになる。けれどそれどころではなかった。

 耳をつんざく金属音――プロ同士の戦闘が始まった。

 20体を超える人形兵たちが一斉に魔人の女に襲いかかる。

 女は動く。先の先をとって下りの手刀を滑り込ませる。

 同時に他の人形たちの幾多もの突きが放たれて、しかし空しく打ち鳴らされる。その内側に女は居た。膝が回転する。

 

「不干渉条約はいいのですか?」

「いいんでーす。私にはもうソ連なんて関係ないもーん」

 

 代わりに答えたのは、後部車両への入り口に背を預けたまま静観している小柄な少女。

 ずん! とすさまじい振動が車両に走る。如何なる原理か、成人大の人形が3体同時に宙に浮く。

 

「関係ない? あなたたちはソ連のモルモットでしょう」

「うん。だけど辞めたの。モスクワの騒動、知ってるでしょ? あれやったの私たち」

「脱走兵ですか」

 

 女は踊る。被っていたニット帽と赤い髪が弧を描き、人形2体を打ち据えて、刃諸共、破片と化した。

 目を奪われる。女の額の部分にはびっしりと赤い竜を思わせる異形の鱗が生えていた。

 

「私は、辞めてない。辞めたとしたら、向こうの方だ。向こうがソ連でなくなった」

「ええ~?」

「ソ連はここに在る。私がソ連だ」

「あははっ、意味分かんな~い」

 

 何の躊躇いもなく女は無造作に人形の首をへし折った。

 女に向けて振るわれた刀剣の数々が斬り飛ばされて消失し、あらかじめ決められた台本のように人形兵たちが倒れこんでいく。血飛沫があがらないのが不思議なくらいだった。

 それはあたかも即興の舞踏。

 動作は淀むを知らず、緊密にして途切れない。

 古来より伝わりし剣と拳の法を修めた武人が蘇り、現代に跋扈するサンタクロースという名の邪悪を成敗しにやって来た――幼稚な発想だと頭の隅で呆れながらも、胸の鼓動は収まらなかった。

 ヒーローは居た。誰も見ようとしない弱者たちを救ってくれる本物の武侠の徒が。

 知れず、幼稚が漏れた。

 

凉爽的(かっこいい)……」

 

 竜と目が合った。

 いかなる俗世の懊悩からも解き放たれた悟りの闇がそこにある。

 すぐ隣で姉が何かを言っている。私の服を引っ張り立ち上がらせ、非常時脱出用のドアコックを引くためにカバーを叩き割る。「逃げるぞ!」と叫んでいたが私は目を離せない。

 

 誰も助けてくれないと思っていた。私と姉は世界中から嫌われていると思っていた。

 けれど、多分違う。

 あの竜のような赤い女の人を見て分かった。この世のどこかには私たちのような存在しない孤児にさえ味方してくれる人がきっと居る。あの人がそうかは分からない。けれどクァンシさんみたいな人は必ず他にも居てくれる。私たちは孤独じゃない。生きていく希望はあるのだと、そう思えた。

 

 サンタクロースが静かに立ち上がる。

 人形兵は数をすり減らし、眼前には暴れ狂う魔人が迫りつつある。

 ドイツからやってきた少女は泰然と目を細めた。

 

「“プレデター”」

 

 1体の人形が時間稼ぎに突撃し、残り4体の人形たちが揃って背筋を伸ばして口を開く。

 一斉に言葉を紡いだ。

 

 

「わたしのすべてをささげます」

「わたしのすべてをささげます」

「わたしのすべてをささげます」

「わたしのすべてをささげます」

 

「そのかわりに」

「そのかわりに」

「そのかわりに」

「そのかわりに」

 

「あのまじんたちをころしてください」

「あのまじんたちをころしてください」

「あのまじんたちをころしてください」

「あのまじんたちをころしてください」

 

 

 大気が歪む。

 何かが、現れた。

 サンタクロースと赤い魔人、その中間地点に鎮座している。

 姿は見えない。しかし確かに存在している。奥の景色を光学迷彩のように歪ませながら際限のない悪意を撒き散らしている。怖気が走った。サンタクロースを血の通わないロボットとするならば、たった今現れた見えない何者かは血を啜り肉を食い散らかす獣でしかない。すさまじい臭気、けして拭えない血の臭いが漂ってくる。

 

「ア・ア・ア……」

 

 それは車両の天井に頭をつけるほどの大きさで、おそらく無数の腕が生えていた。傍らの4体の人形たちの頭を同時に掴み、脊椎ごともぎ取った。

 

「ボ・ボ・ボ……」

 

 赤い女が動きを止めた。

 不可視の獣を見上げ、腰を深く落として対峙する。

 

「くそっ、ドアが開かねえ!」

 

 叫ぶ姉の声に重なって電車のアナウンスが流れ始める。

 ただいま電車内で悪魔が発生した為、緊急停車いたします。両側のドアが開くので乗客は速やかに外へ非難してください――

 

 甲高いブレーキ音とともに減速が始まる。だが獣と魔人の激突には間に合いそうにない。

 私でも理解できる。数秒後には死闘が始まる。この車両内は地獄と化す。

 姉がぎゅうと私を抱き留めた。

 

「リ・リ・リ・リィィイイイ!」

 

 私は見た。

 後方で静観していた小柄な魔人、その瞳孔が、獲物に照準を合わせるために収縮していくのを。

 火が、

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫? 荷物重くない?」

「平気!」

「もうちょっと持つよ?」

「平気ぃ!」

 

 謎の外国人2人組を撥ねたせいでロングバンは損壊した。速度はほとんど出なくなり、デンジ君とナユタちゃんと自分(レゼ)の3人は徒歩で進むことになった。

 

 食料その他諸々が詰め込まれた大荷物を一人で抱え、デンジ君はえっちらおっちらアスファルトを踏みしめていく。その顔はどこまでも明るい。うきうきとした喜びさえ滲ませている。レジャー気分というのは本当らしい。

 今の自分たちは刺客をおびき寄せるための餌でしかないんだけど……。

 呆れつつも、ほんの少しだけ想像を巡らせた。

 

 レジャー。遊び。

 それってどんなだろう。

 

 辿り着きつつある奥多摩の地は暖かく、平和だった。

 初夏の陽射しがむせかえるような緑を輝かせている。谷底の曲がりくねった川からは涼やかなせせらぎの音が届く。聞けばこの周辺の山々はハイキングコースとして有名らしい。

 刺客を撃退したら遊べる……デンジ君ではないけれど、そんなこと本当にやってもいいんだろうかと思う。

 

「山ねー」

 

 山といえば山中行軍訓練とサバイバル訓練しか浮かばない。

 あれはきつかった。なにせ大人でも根をあげる質量の背嚢を背負わされて極寒の雪道を進まなければならない。子どもだから見合った重量にしてあげよう、などという配慮はソ連軍には存在しない。ただ画一的で厳粛なルールがあるだけだ。

 唐突に、電話が鳴った。

 

「もしもし?」

『岸辺だ。刺客が現れた』

「どこです?」

『電車』

「へー、そんなバレやすいルートを使うんだ。どんな奴ですか?」

『人形の悪魔を使うやつと、ヘンな魔人』

「え。人形の悪魔……? それってもしかして……」

『おそらくサンタクロースだな。生きていたらしい』

「えええ~。ヤバくないですか?」

『もう片方の魔人のほうもヤバいぞ。外見の特徴が以前お前が提供した情報と一致した。秘密の部屋の住人だ』

「え」

『ネームドモルモットのアナスタシアとポリーナで間違いない』

 

 冷や水を浴びせられた気分だった。

 “生真面目”アナスタシア。

 “嘘つき”ポリーナ。

 彼女たちについてはよく知っていた。

 

『何故か知らんがサンタクロースと戦い始めた。そのまま共倒れになってくれたらよかったんだが、電車が炎上したせいでどっちも見失っちまった』

「……そうですか。何の魔人でしょう。能力は?」

『分からん。あいつら、サンタの人形どもを全部肉弾戦でぶっ倒してたからな』

 

 いかにもアナスタシアのやりそうなことだった。

 人間は棒人間と思え――それが彼女の教えた格闘戦の基本思想だった。

 人間の関節の数は68、つまり瞬間瞬間で実現できる可能性は68乗ぶんのパターンでしかない。あとは有効な可能性を削り取っていけばいい――

 

「……。私の忠告、覚えてます?」

『アナスタシアなら相手にするな、だったか? そんなに厄介か』

「岸辺さんの中で殴り合い最強って誰です? ……あ、答えなくていいです。クァンシでしょう?」

『……』

「私にとってはアナスタシアです。彼女は他のスキルが全部ダメなのに強さ一本で最終選考まで残った女です。戦わなくていい、スルーして下さい。私とデンジ君でやります」

『そういうわけにもいかんだろ』

「どうしてもっていうなら狙撃だけにして下さい」

 

 その他の注意点も伝え、電話を切る。

 思わず溜め息が漏れた。

 最も敵に回したくないモルモット仲間を挙げるとするならアナスタシアだった。

 そして最も会いたくなかったのはもう一人のほう――

 

「ポリーナのほうはどうなの」

 

 隣のナユタが無機質な瞳でこちらを覗き込んでいた。

 

「聞いてたの? 耳がいいなあ」

「一緒に歩いてれば気付くでしょ」

「そりゃそっか」

 

 一度言葉をきって、軽く息を吸いこんだ。

 

「おーい、デンジ君も聞いて。どうやら刺客が来たようです」

「お~? そうなんか?」

「そのうち2人は私もよく知ってるやつ。ソ連の戦士。背が高くて髪が赤い女はすごく強いから一緒に倒そう。背が低くて銀髪のほうは強くはないけど嘘が上手いから話を聞かないこと。分かった?」

「ん~~……。でもクラスメイトだったんだろ?」

「へ?」

「俺ぁ知らねえ奴だから別にいいけど、レゼにとっちゃ友達みたいなもんなんだろ? 倒しちゃっていいの?」

「しょうがないでしょ。敵なんだから」

「ふーん……」

「あのねえ、デンジ君?」

 

 どことなく不満げな少年から手荷物の一つを奪い取る。

 

「なんでもかんでもはできないの。デンジ君も公安で働くデビルハンターなんだから責任ってもんを考えないと」

「なにそれ?」

「ナユタちゃんだってきっと狙われてる。攫われちゃってもいいの?」

「そりゃ、つまり……真面目にやれってコト?」

「そうですよ」

 

 今ある生活を守るために多少の不満は飲み込むのがオトナだろう。

 ナユタちゃんを挟んで向こう側を歩くデンジ君の横顔を眺める。

 ……私はいわば軽い気持ちで祖国を裏切ったけど、この生活を続ける為だったら何でもするって思っている。

 

「俺ぁさあ……」

 

 渓谷にかけられた立派なアーチ橋に足をかけ、対岸を見据えて一歩踏み出した。

 

「これまでな~んにも自分で決めてこなくって、誰かの言われるがまま生きてきた。決めてたのは昼飯になに食うかくらいでよ。心ん底じゃあ、死ぬまで女と付き合えねえと思ってた」

「……いきなり、何の話?」

 

 デンジ君は遠く正面の寂れた町と終点の駅を眺めている。そこは東京都の最奥地。

 だが道はまだ続いている。鬱蒼とした山々の深みへと。

 

「今じゃ夢みてーな生活よ。でも、まだまだだ。もっと色々やってみてえ」

 

 人里を離れてしまえば山道の傾斜は更に激しくなる。一休みするための人家も無い。

 けれど何十Kmもの苦難の道のりを乗り越えてしまえば隣の県に辿り着く。そこには栄えた町があって、東京とはほんの少しだけ違った文化が出迎えてくれるだろう。

 

「俺ぁ決めたぜ。自分だけじゃねえ、周りの奴もちっとは助ける。暗い顔されてっと俺までイヤ~な気分になるからな」

「ふ~ん……。まあ、いいけどさ、なんか付き合ってる女の人がいるみたいな言い方だね。それって誰?」

「え? そりゃ、その、」

「知らなかったなー。そっかぁ、デンジ君、恋人ができたんだ~。ナユタちゃんは知ってた?」

「私も知らなかった。デンジ、おめでとう」

「ええっ?」

 

 大きな橋の真ん中でデンジ君はぽかんと大口を開けて立ち止まる。絶対に勝つと信じて大金を賭けた馬がスタートでしくじったときの男の顔だった。

 

「バカ」

「あほ」

「な、なんだよ」

「現実見ろって言ってんの。分かってないでしょ」

「かっこつけ」

「はあ~~!? 俺はバカじゃねえんですけど!?」

「バカでしょ」

「超バカ」

「んだと~!」

 

 私とナユタちゃんが同時に肩を竦める。

 と、妙な音がした。

 

 ギシッ

 

「ん?」

 

 振り返る。

 橋の欄干に、棘のついた紐のようなものが巻きついている。

 どこかで見たことがある気がする。棘つきのチェーン……。

 

「ギャアーハッハハァ!!」

 

 橋の下から何者かが勢いよく飛び上がる。

 ぐるりと空中で一回転、橋上のアスファルトにスーパーヒーロー着地をきめて、そこからわざわざ後ろに向き直り、「ふっふっふ……」と数秒間の溜めをつくってから勢いよく振り向いた。

 

「俺の名はァ! 俺の名……俺の名ぁ!? 俺は、誰だ、誰なんだァ!?」

 

 午後の渓谷、初夏の陽射しに焼かれたアーチ橋の中央に、1人の男が立っていた。

 眉間の上から凶器を生やした電ノコ男。何人もの悪魔を葬ってきた地獄のヒーロー。

 悪魔に最も恐れられる悪魔――

 

「俺はチェンソーマン! 早川デンジぃ! お前を成敗するゥ!!」

 

 びしィ!

 突きつけられた指先を、ゆっくりと、ゆっくりと辿ってみる。

 デンジ君が呆然と口を動かした。

 

「ちぇんそーまん……?」

 

 両腕には回転する悪魔の刃。

 鋭い牙に、特徴的な金属頭。

 

「俺じゃん……」

 

 私は慎重に周りを見回した。

 深い渓谷にかけられた橋の前後には誰もいない。一応下の川辺も覗いてみたが、やはり誰もいなかった。

 こいつは1人だ。たった1人で襲撃に来た。

 デンジ君という本物のチェンソーマン、この私ボムガール、そして支配の悪魔の3人を相手に、正面きっての勝負を仕掛けてきた。

 

「あ、なっ……俺が2人になってるよオ~!?」

「ユユユ・ユー・エス・エー! ユー・エス・エー! じゅっじゅじゅじゅっ10人くらいィ彼女ほしいいいいい!!」

 

 ものすごいバカだった。

 


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