やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。   作:角刈りツインテール

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舞台は学習塾跡へ戻ります。

そしてついにお気に入り登録者100人です…!本当にありがとうございます!来週から僕が修学旅行やらテストやらあるので一時中断になるかもですがこれからも頑張ります!


第十話 依然として彼の状況は変わらずに、祭りはもうすぐカーニバる。

「全く、勝手に出て行った挙句無策で突っ込むとは、やはりうぬはたわけじゃのぅ」

「いや、まぁ、はい…俺が悪かったです」

現在時刻午前6時。俺は忍野に例の学習塾跡へ連れて行かれ、そしてキスショットに久しぶりの対面をした。無策ではない、とは言うまい。情報の無い状況での作戦なんて無策に等しい。俺たちはそれに気がついていなかった。だからこんな結果になったのだ。

失敗。ただそれだけのこと———なのだが、悪いことばかりではない。こちらには確かに得られたものもある。むしろそちらの方が大きいかもしれない。

一つは、3人で作ったノート。これは今後の生活において大活躍するはずだ。

二つ目に経験。彼らの強さを生で体感できた。ならそれを次に活かせる。

そして三つ目に———俺はじろりと視線を動かす。

 

「ん、なんだいその情熱的な目は」

 

目の前でニヒルにタバコを吸っているおっさんを見つめた。そう、こいつとの出会いだ。

 

「………。」

 

なんだかなぁ…もっとこう、美青年とか美女とかが助けてくれるのがセオリーじゃないんですかね…なんでよりにもよってアロハシャツのおっさんなんだ。誰得だよ。

それによくよく見たら煙草の先端から煙は出ていなかった。つまり彼は吸っていない。え、じゃあ何やってんのこいつ。かっこつけてるだけか?

んで誰なの。

その数々の疑問が届いたのだろうか、彼は徐に「僕は忍野(おしの)。忍野メメ———通りすがりのホームレスさ」と自己紹介をした。正直、そこに関しては言われずとも分かるのでできればそれ以降の説明が欲しいのだが…と言おうとしてやめた。彼だってキスショットと同じように俺の命の恩人で、ズカズカと踏み入るべきではないとの判断からだ。

「…うっす、比企谷八幡です」

「あぁ、君の方は大丈夫だよ。このキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードから色々聞いたからね。あと敬語も大丈夫」忍野はタバコを口から離しふぅ、と息を吐いた。だから何を吸ってるんですか。

それにしても色々聞いた、ねぇ…キスショット、一体何を話したんだろうか…根も歯もないこと喋ってないだろうな。

「ていうか比企谷くん、電話とかしなくていいの?ご家族も心配してると思うぜ?」と忍野。

そういえば———と思い出す。

雪ノ下と由比ヶ浜は今、俺のことが気が気でない状態なんじゃないだろうか…そして事情を知らない小町はもと心配しているのでは?最悪親に告げ口されたり…俺は親父のゲンコツを思い出してゾクっと震える。

ここで電話してもいいですか、と聞こうとしたがその前に『お好きにどうぞ』といった風に手をひらひらさせてきた忍野。見透かされたようで何だか嫌な気分になるが、移動するのは面倒なのでお言葉に甘えてここで電話させてもらう。時刻は朝方。眠気やら何やらで体が重いのだ。

 

ちなみにここからのセリフは、俺が彼女らに電話をした時のものである。正直俺自身もうろ覚えだしも物語には一切影響を及ぼさないので別に流しで読んでもらって構わない。

 

まずは我が妹・小町。

『お兄ちゃんどったの!?いやぁ昨日は全然帰ってこないしさぁ心配したんだよ…え、戸塚さんちに泊まってるって?なぁんだそういうことなら先に言ってよー!…ってなるか!こちとら戸塚さんにはとっくに電話してるから!『知らない』って言ってたよ!?第一ゴミぃちゃんが友達の家に泊まりに行く訳がないじゃんか…全くもう…ま、いいや。なんか事情があるんでしょ?親にはなんとか言っておくから安心しなされ!あ、今の小町的にポイント高い!というわけで、じゃあまたいつかであります!」

 

 

雪ノ下。

『あら、そう負けたのね。で、今は学習塾跡にいるということかしら。…そこまで驚かなくてもいいじゃない。初歩的な推理よ。それにしても、私の作戦の何が問題だったのかしら…あの計画で死にかけるとなると比企谷くんのミスとしか思えないのだけれど。………なるほど、相手が想像以上に強すぎた、と…それに関しては私たちにはどうしようも無い話だわ。責められても思いのやり場に困るというものよ。———けどまぁ、一応任務を達成できなかったことには詫びておくわ。ごめんなさい。じゃあそろそろ切るわね」

 

由比ヶ浜。

「ヒッキー大丈夫!?昨日から音信不通で心配したんだからね!?朝から一睡もできなくってさぁもう…ほんとどんだけ心配させたら気がすむの…え、作戦ミス?まじかぁあれ完璧だと思ったんだけどなぁ…うん、うん、そっか。今学習塾にいるんだ。なら安心だね?近いうちに行くかもだから…だから、その。えぇっと…待っててね、ヒッキー。 …じゃ、じゃあねっ!』

 

 

こんな感じだ。こうやって雪ノ下、小町と並べて見ると由比ヶ浜のいい人感がより強調されるなぁとつい失礼なことを考えてしまう。

小町、ドライすぎないか。

どのみち教えることはできないにせよ、もっと聞きに行ってほしかった。

彼女らへの報告を終えた後、小町から俺が帰ってきていないことを聞いてしまったようなので戸塚にも電話しようかと迷ったが、あいつの可愛らしい声を聞いて嘘をつけるとは思えないので俺は苦渋の決断をした。まだ吸血鬼になったことがバレるわけにはいかないのだ。さらば、マイエンジェル…。

「はっはー、君は面白い友達をたくさん持ってるねぇ」俺が戸塚のことを想っていると突然横から割って入る声がした。忍野だった。

「盗み聞きかよ…まぁ、そっすね。友達…友達かは知らんけど…」

「おいおい勘弁してくれよ。こんな近くで電話してるんだから聞こえるに決まってるじゃん。それに人間、話せば誰だって友達だろう?ほら僕と君だって」

「それが本当なら俺は休み時間一人で音楽聴いてませんよ」

「あぁあれね。最近流行りのぼっちか」

「だから流行ってたらもっと人気者ですって———俺は好きでぼっちやってるんですよ。だから同情しなくて大丈夫でしゅ」

突っぱねてやろう、と言い返したのだが最後の最後で噛んでしまった。恥ずかしさのあまり顔を背けたが、きっと忍野は俺の顔をニヤニヤと見つめていることだろう。まじでやめてほしい。そもそも俺は他人に顔を凝視されること自体に慣れていないんですよ。

「…で、貴方何者なんです」俺はようやく聞きたかったことを聞く。

「あー、まぁあれだよあれ。怪異の専門家だ」

「…怪異」俺はその名詞のみを繰り返した。

 

怪異の専門家。

なんて怪しい肩書きなのだろうか。

 

「そ、怪異———化物とか、妖怪とか、神とか———そういう類のもの。今はそんな認識でもいいかな」

「専門家っつーことは、あの吸血鬼ハンターと同じじゃねぇのか」

「いやぁ違う違う。僕は彼らのような野蛮な『退治屋』じゃあない。『バランサー』———あるいは『交渉人』なんだよ」怪異と人間、中立の立場を取っているのさ、と続けた。

中立———つまり、怪異に片足を突っ込んだ状態。人間は、そんなことで生きていけるのだろうか。俺だって死んでんのに。無茶だろ、と疑いを持つ。

「事実じゃよ」その思いを汲み取られたのか、キスショットが言う。「こやつは儂らに対して無害じゃ。安心してよかろう」

「…お前、俺の心読めんの?」

「まぁ、主と眷属の関係じゃからのぅ———多少は思考も繋がっておる」そう言って自分の頭をぐりぐりするキスショット。中身があの巨乳なのであれだが、この風景だけを見ると幼い少女がひとり遊びを楽しんでいるようだった。

にしても、思考が繋がる、ね。

「あんまいい気分ではねぇな」

「どうかしたか、うぬ」

「いや、なんでも」

 

 

そこで一度会話はストップし、少し気まずくなる。そのタイミングで忍野はタバコを咥えなおし、キスショットは寝転び始めた。寝るなよ。

「んで、忍野さん———は、俺を、助けてくださるんですか」俺は聞いた。

その質問に対して、忍野は———

 

 

()()()()

と、はっきり答えた。

 

 

え…と俺は絶句する。うそ、ここまでやってくれて助けてくれないの?だったらなんで俺を守ったんだ?そんな考えがグルグルと頭をめぐり混乱させる。だが。

「———君が一人で勝手に助かるだけだよ、比企谷くん。僕はその手伝いをするだけなのさ」

忍野のその一言で、全てがはまった。

こいつの考え方は雪ノ下以上に、俺によく似ている。

「……一人で」

ぼっちであろうとぼっちでなかろうと人は最後には一人になる。そこで手を貸してくれるのは自分自身のみ———これが俗に言う『ぼっち終末論』。テストにゃ出ないぜ。

「200万」

忍野がぽつりと漏らした。しかし、何か数字を言ったというくらいしか聞き取れなかったのでもう一度尋ねてみた。

「なんて?」

「200万って言ったの。———僕への依頼料」

「———っはぁ!?」俺はのけぞり帰る。「ジンバブエドルとかじゃなくて?」

「円だよ。ジンバブエドル貰うくらいならボランティアでするだろ普通」

「え、馬鹿じゃないんですか貴方…高校生にその料金は逆の意味で破格ですよ!?」

「ん、そうかな?人間に戻る費用としては、正しい意味で破格だと思うけど」忍野は微笑を浮かべる。

そして分割払いもオッケー、と軽く言った。そういう問題じゃないんだけどなぁ。

まぁけど確かに、そうなのかもしれない。昔聞いた話によると、性転換手術では70〜200万円はかかるそうだ。同じ種で、性別のみを変えるだけでこの値段である。ましてや異次元の存在と人間如きをトレードするのに200万という数字はむしろ少ないのかもしれない。

「…かもしれないけどなぁ…」

やはりそう簡単にに踏ん切りをつけられることではない。高校生には荷が重すぎる話だ。

だが、俺はそこでふと気がついた。そして思った。そしてちょっともう一度迷って———そして決断した。

 

 

「分かったよ」俺は依頼をする。奉仕部と忍野、ダブルブッキングの形となってしまったがまぁなんとかなるだろう。貰えるものは貰っとけ、である。

「…へぇ」忍野が興味深げにこちらを見る。だから俺も、こいつの真似をして相手が喋るより先に、見透かしたように言ったのだった。

「よくよく考えりゃ、これが普通の判断だな。なんせ———伝説の吸血鬼だからなぁ。その肩書きのほうが比べ物にならないくらい荷が重い。さて、忍野———俺を手伝ってくれ」

 

 

「毎度あり、なんちゃって———それじゃ、反撃の時間だ」

血祭りといこうか。

 

 

 

 




そんな感じです、如何だったでしょうか?感想・評価などくれると嬉しいです!

完結後の番外短編(もしかしたら普通に続きになるかも?)では何を書いて欲しいですか?

  • 阿良々木との会話
  • 羽川との会話
  • 怪異にあった俺ガイルメンバーの話
  • 日常編
  • その他(感想にてお願いします)
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