やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。   作:角刈りツインテール

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なんとか一話だけ更新できました…こっから一週間また投稿できないのですみません…。


そういえば夏休み明けって原作では雪ノ下さんとヒッキーがいざこざってましたがこの話では無かったことになっています。合宿後は平塚先生の奢りで一緒にラーメンを食べて普通に帰っています。やったぜ。

というわけで13話、スタートです。


第十三話 何故、忍野メメは全てを見透かせるのか誰も知らない。

♦︎♦︎♦︎

 

「超ウケる」

舞台は某大型ショッピングセンター。俺と第二の吸血鬼ハンター、エピソードはにらめ合っていた。いや、その言い方は適切ではなかった。確かに俺は睨んでいたものの、エピソードは俺を睨んでいなかった。

笑っていた。

もしくは嗤っていた。

「はっ…何が受けてんだか」

ちなみに口に出して「ウケる」と言っているやつは8割方内心で「くだらねぇ」って思っている。ソースは俺だ。だから油断すべきではない。そう思い俺はそのまま睨み続けた。

そして口を開ける。

さて。

「そろそろ始めるか」

 

♦︎♦︎♦︎

 

「次の敵の名前はエピソード。なんとびっくり、吸血鬼と人間のハーフなのさ」

忍野メメはいつもと変わらない口ぶりでそう言った。———え、なんて言った?ハーフって…あのハーフか?アメリカと日本の、みたいな……んなもん成立するのか?

「成立するよ。だってほら、人魚だって人と魚が合わさってるわけでしょ?」忍野はなんでもないように言った。いやまぁ、言われてみればたしかにそんな気もするけど。

「…そんな適当な感じでいいんすか」

「まぁ今のは比企谷君にとって分かりやすく言っただけだから厳密には違うんだけどね。その話はまた今度にしようか。それに比企谷くんは屁理屈とか好きなタイプだろ?なら細かいことは気にするなよ」

「はっ、言えてますね」

 

吸血鬼と、人間のハーフ。それは言い換えれば()()()()()()()()()()()()()であり、もしかしたら日光にも当たれるのかもしれない———と、大きな十字架を持つ金髪男を思い出しながら考えた。素直に受け取れば、少なくとも彼は十字架に触れても大丈夫なのだろう。だとするとそれはドラマツルギーよりも強敵であり、あれ以上の過酷な戦いを強いられる可能性もあるし、むしろその可能性の方が高い。

何故なら俺は、十字架に触れないのだから。

「…で、どこで戦うんすか」

「ららぽーと」

「え?」

ららぽーと———つったかこいつ。一応説明しておくとららぽーとというのは日本初の車での来場を重視したアメリカ型の大型ショッピングセンターであり、ショッピングモールとしては、イオンレイクタウン、イオンモール幕張新都心に次いで国内第3位の規模を誇る。基本的にここに来れば何でも揃うし、何でもできる。ららぽーとは文字通り千葉県民の誇りなのだ。で、そこで戦うと言うのはどういう話であろうか。ふざけてんのか。舐めとんのか千葉県民を。

「いやぁ、エピソードがそこだけは譲ってくれなくてね。理由を聞いたら『日常が非日常に変わるっつーの?そういうのって超ウケるじゃん?』って返されたよ」

「なんだそりゃ。お遊び気分じゃねぇか。はっ、こりゃあ余裕で勝てるかもな」

「はっはー、何を言っているんだい、比企谷君は。お遊び気分———だから怖いんじゃないか。戦いだったら、武士道とか、まぁそういう縛りがあるし自身や自陣の利益なんてものも考えなくちゃいけない。だが遊びは違う。彼ならきっと、遊びの範疇であれば何でもやってのけるだろうね」

それを聞いた俺は不思議と納得した。遊び人は、縛りに囚われない。だから恐ろしい。

「…まぁ、それを聞いたところでだから何だって話なんだけどな」

結局することは変わらない。戦って、勝って、キスショットのパーツを集める。ただそれだけの単純なお仕事。正直労働は嫌いだがやるしかないとなれば本気でやる。

絶対勝ってやる、と自分を鼓舞させて、俺は腹筋をしながら由比ヶ浜と雪ノ下が来るのを待った。

 

♦︎♦︎♦︎

 

「9998……9999………10000っと」

「はっはー、お疲れ様」

忍野は腹筋を終えた俺を労った。だからお前に慰められても嬉しくないんだっつの。

にしても俺は1万回の腹筋をした事になるのだが、なんとびっくり、汗ひとつも垂れていない、ときた。

俺は後ろを向く。そこには椅子をベッドにして眠っているキスショットがいた。まだ日が出ているので仕方がないことなのだが、人間だった頃の感覚が多少はあるのだろうか、俺は少し早めに起床できた。

吸血鬼———不死身。

そんな存在にとって、腹筋なんて行為は海にコップ一杯の水を注ぐようなものなのかもしれない。その考えには100回の時点で既に至っていたが、俺はやめなかった。暇だったからというのも勿論あるのだが、忍野や由比ヶ浜、雪ノ下に全てを任せるのは申し訳ないように感じたのも理由の一つだ。

養われる気はあっても、施しを受ける気はないのだ。

「あ…そういや忍野」と俺は声をかける。なんやかんや呼び捨てし始めたことについては言及しないでほしい。

「ん、どうしたんだい、比企谷くん」と忍野。

「あー…質問があるんすけど」

「うん、なんだい」

忍野はこちらを見ない。だが不思議と、俺の内面を見透かされているような気分になる。不快だ。だがわざわざそれを伝えることはしない。言ってもコイツは見透かしてくるだろうし。

そして俺は以前から持っていた疑問をぶつける。

 

「俺って———本当にキスショットを完全体にしたら戻れんのか?」

 

ふぅん?という風にここで初めてこちらを向いた忍野。その目は、子供を諭すような目だった。そんなに子供に見えますかね俺。卑怯な嘘をついたり姑息な手を使ったりと割と大人っぽいと思うんですが。

「ハートアンダーブレードがそう言ったんだろ?なら戻るんだろ」

忍野は『何を当たり前のことを』といったように答えた。違う。そういうことじゃなくて———

「そうじゃなくてですね…その、それが嘘だったりしたら———」

「こら」

俺は言い終わる前に頭をこつんと叩かれた。優しく、撫でるような強さだった。

「命の恩人に、そんなことを言っちゃいけないよ」

「あ———」

そうだった。俺は一週間ほど前、キスショットによって文字通り命がけで助けられた。不死性はほとんど消えているであろうキスショットが、である。それを疑って———そうだ、前も自分で『命の恩人を疑いたくない』とか雪ノ下に言ってたじゃねぇか。なんで忘れてたんだ、鳥頭かよ。それとも俺はそこまでのクズだったって話か?それは信じたくないな。死んじまいたくなる———死ねないのに。

「はっはー、なんて顔をしているんだよ、比企谷くんは。何か良いことでもあったのかい?」忍野がいつもの口調で言った。なのに不思議と、いつものようなウザったらしさは無かった。

「………。」

「まぁけどたしかに()()()()()()、そういう部分って難しいところだよねぇ、何せ———」

「ちょっと待て」俺は忍野の言葉に割り込んで聞いた。「今———お、俺のこと人間って言いました?」

「うん、そりゃ勿論」忍野は当然のことかのように言った。「人間でありたいと思っているうちは、君は人間さ」

その言葉を残して———この一週間、俺が一人で思い悩んでいた問題の解を即答してから忍野はドアを開きベランダへ出て行———く前に「あぁそう、もうすぐだから身だしなみは整えとけよ。あと椅子の片付けもしておくと吉。僕はタバコ吸ってくるから」と言った。そして今度はちゃんと外へ出た。

もうすぐってなんだ。何が起きるんだ。エピソードが来るのか?

……..。

「流石に一人の時には火つけるよな?」

少し気になったのだが確認しに行くのは面倒だったし何かがもうすぐらしいので言われた通り腹筋で乱れた服を着直した。そして時刻は5:24。ズボンのベルトを巻き終えたところで———ギィ、とドアの音がしたので後ろを振り向く。するとそこには。

 

「やっはろー!」

「こんばんは、比企谷くん」

 

「…っす」

そこには、朝と変わらず制服姿の由比ヶ浜と雪ノ下がいた。はぁん、なるほど。すぐとはこれのことだったか、なら納得…っていやちょっと待て。

あいつ今までずっとこの部屋にいたよな?んでスマホで監視なんかもしてなかった。

 

 

「なら———どうやって?」

 

 

「ん?どったの?」由比ヶ浜が俯いた俺の顔を見ながら尋ねる。

「いや…なんでもねぇよ」それに俺はシンプルに答えた。すると由比ヶ浜は「冷たいなぁ…」と頬を膨らませた。可愛い。

「ま、どうでもいいや」

俺はそう思い直し、彼女らに「それ、着替えだろ?悪い、まじで助かる」と言って雪ノ下から紙袋を受け取るために右手を突き出した。

「えぇ、それから漫画も買ってきたわ。今朝話していためだかボックスというもの…で合ってるかしら?幸いなことにあの時まだ海老名さんが家から出ていなかったから学校へ持ってきてもらうことができたの」

「へぇ、そりゃラッキーだった…って、海老名さん…?」

あれ、おかしいな。

こいつら、遅刻するって焦ってたんじゃなかったっけ。

「じゃあちょっと着替えるわ」

そう言って俺は受け取った紙袋の中身を覗いた。

パンツが入っていた。

もう一度言おう。

パンツが入っていた。

「……………えっとだな」

「比企谷くんの好みは分からなかったからブリーフとボクサーの両方を買ってきたのだけれど」雪ノ下が俺の言葉を遮って羞恥心ゼロでそんなことを言うもんだからこっちが恥ずかしくなって「あ…そうでしゅか…」とキョドってしまった。

失礼、噛みました。っつてな。あー恥ずかしい。軽く死にてぇ。

「…まじかよこれ。どんな拷問?」俺は小声でひとりごちった。

いやいやいや。本当に言ってるんですか雪ノ下さん。服を買ってきてとは言ったけどさ…女子の買ってきたパンツを穿くってかなりくるものがあるぞ…あ、由比ヶ浜の場合もある…いやねぇな。あの照れ具合は。恐らく下着は雪ノ下に全て任せている。「私はズボンと上の服買ってくるから!役割分担ってことでよろしくね?」なんて言って誤魔化したのだろう。

「……おう、ありがとな」俺はなんとか言葉を紡ぎ出して言う。それに対して雪ノ下は「構わないわ」と本当になんでもないように一言。ユキペディアには羞恥心という単語が無いんですかね。

まぁ、とにかく着替えよう。単体であるから逆に気になるのだ。着てしまえば別に何も感じなくなる。だからさっさと着てしまおう。うん、それがいい。これに深い意味なんて無いし訓練されたぼっちである俺ならばこんなものに深い意味を見出そうともしない。今までだってそうだっただろ。雪ノ下は雪ノ下のやり方を貫いた。なら今回も俺のやり方を貫くまでだ。俺はそう思いながらズボンを脱いで、パンツを————————

「あれ、お前らなんで外出ねぇの?」

 

「「え」」

 

♦︎♦︎♦︎

 

その後、由比ヶ浜の手によって俺の顔に椅子が投げられたのは言うまでもない。最悪の気分だった。一瞬目の前が真っ暗になった。

「……はぁ」

ドアの閉まる音を聞いてから、俺は大きなため息をついた。

あのですね、あなた方。吸血鬼性によって傷はすぐ治るとは確かに言ったよ?でも思い出して欲しい。俺、痛みは普通にあるとも言ったはずなんだけど。なんでそう都合のいいとこだけ忘れられるんだよ…ったく…いってぇ…。

 

———椅子の片付けもしておくと吉。

 

「…はは」

全く、あのおっさんはどこまで見透かしてんだか…。俺はふっと苦笑いにも似た微笑を浮かべながら既に痛くなくなった頭をさすりながら立ち上がった。

もしかしたら彼にはもうすでにこの物語の結末が見えているのかもしれない。

俺が人間に戻るハッピーエンドなのか。

それとも吸血鬼ハンターに殺されて死ぬバッドエンドか。

はたまたなんやかんやあって一生吸血鬼として生きていかなければならなくなるのか。

戸塚エンドか。

そんな結末を知ってなおあのように、ニヒルに笑っているのならば俺は素直に彼を尊敬する。他者に興味を持ちすぎない。ぼっちの基本だからな。

「まぁ何はともあれ着替えるか」

そして一度ぐっと背伸びをしてから、紙袋の中身を取り出す。

念のため床に並べて置いてみたが流石は由比ヶ浜、男子の俺ですら分かるオシャレ具合だった。それも格安の、貧民に優しいチョイス。あいつ料理以外ならほんと女子力高いよな…裁縫とかもできるんだろうか。まぁいいや。それはともかくあとで2人にはしっかり感謝しておこうと心に決めてから俺は再びパンツに指を添え——————

 

「だからなんでまだいんの?」

そこにはこちらを真顔で見てくる雪ノ下雪乃がいた。

 

はっきり言って怖い。

 

え、何考えてんのこいつ。

 




ちなみに戦闘場所のららぽーとですが、僕は行ったことがないので空想で書きます。つまり名前を借りるだけなので映画『傷物語』と同じ感じのものを想像してください。

完結後の番外短編(もしかしたら普通に続きになるかも?)では何を書いて欲しいですか?

  • 阿良々木との会話
  • 羽川との会話
  • 怪異にあった俺ガイルメンバーの話
  • 日常編
  • その他(感想にてお願いします)
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