やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。   作:角刈りツインテール

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初の試みとして由比ヶ浜視点で書かせていただきました。キャラ崩壊にならないように頑張ったつもり何ですがね…そんなやっはろーな感じの第十五話、よろしくお願いします。


第十五話 雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣は決意する。

♦︎♦︎♦︎

 

———ピコン♪

 

♦︎♦︎♦︎

 

『比企谷くんの手助けに向かおうと思うのだけれど』

それは帰宅後、午後八時くらいのことだろうか——電話がかかってきた。画面には『雪ノ下雪乃』と表示されている。ゆきのんから電話がかかってくること自体にすら驚いているのに、突然のその言葉で私———由比ヶ浜結衣は卒倒しそうになった。

だってそりゃそうでしょ?私たちが行ったところでって感じだし…それに、ゆきのんがそんなことを言うなんて思ってもなかったから。

あくまで部活だから、もしくは知り合いだから、ヒッキーを助けているんだと思ってた。でも最近気がついたことがある。

 

ゆきのん、やっぱりヒッキーのこと———

 

「ほ、ほんとうに行くの?」

『そのつもりよ』私にそう、はっきりと言った。

いつも通りに、強い意志を持って。

遺志になってしまいそうなほどの強い思いを———想いを持って。

『不思議ね。なんだかさっきから嫌な予感ばかりして———だから由比ヶ浜さんには何かあったら警察への連絡をお願いしたくて』ゆきのんの口からは私が想像していたものとは随分違う言葉が出てきてしまった。あれ、私は行かないの?

「…ゆきのんが行くなら私も」

『やめておいたほうがいいわ。危険すぎるから』ゆきのんは私の言葉を遮って即座に警告した。『それにひとつアドバイスするだけだから、大丈夫よ』と電話越しでも分かる、これもやはりいつもの微笑まじりの言葉を発した。

つまりそれは、ここでじっとしてろ、という戦力外通告だった。

この感情はきっと戦力外、と言われたからではない。

昔のゆきのんの言葉を思い出したからなんだろう。私は、頼られなかったことに対して酷く憤慨していた。

 

   『いつか必ず、あなたを頼らせてもらうわ』

 

「そんなことできるわけないじゃん!危ないのはゆきのんだって一緒だし!忘れたの!?ゆきのん言ったじゃん、いつか頼るって…それ、今じゃないのかな、って思うんだけど」

言葉を紡ぎながら私の思いは怒りから悲しみへとシフトした。もう、嫌だ。これ以上誰にも死んでほしくない。ヒッキーもゆきのんもいなくなったら私はどうすればいいの?もう分かんないんだよ…。

 

ねぇ、お願いだから…。

「私を独りにしないでよ……」

『……ッ』

 

 

 

それから二十秒ほどだっただろうか、携帯電話からずっと流れていた静寂がようやく途切れた。

『———そうね。ぼっちは比企谷くんだけで十分だわ。貴方まで孤独になるなんてキャラ被りも甚だしい。それにね由比ヶ浜さん。私』

嘘はつかないから。

安心しなさい。

荷を下ろしたようなその声に、私は脱力し、ベッドに倒れ込む。

「あはは…キャラって…何よ、もう…」

『…由比ヶ浜さん、ひょっとして泣いているのかしら』

ば、バレた。

私はパジャマの袖でゴシゴシと目を擦る。袖の先が眼球に当たってしまってちょっと痛かった。

「ぐすっ…ふぅ…うん、落ち着いた。ありがとねゆきのん。初めてゆきのんと———友達になれた気がする」

『そう、それでは今までは違っていたと言いたいのね。友達とは違うと』

「あっ、ち、違うから!今までも友達だったけど!」

『ふふ…冗談よ』

冗談か…ゆきのんの冗談、全く冗談に聞こえないからなぁ…ほんと、心臓に弱い。

『では、ららぽーとに深夜12時に由比ヶ浜さんの家の前で集合———というか由比ヶ浜さん、それ以前に家を抜け出せるのかしら?』

「余裕余裕。うちの親頭弱いからさぁ」

『それは貴方を見ていたら想像つくわ』

「ちょっとそれどういう意味!?…って切れたし」

私は電話が切れた画面を見てついむくれる。そして安堵の笑みを溢してしまう。

あっはは。

ほんっとうにゆきのんは———面白い人だなぁ…面白くて、優しい人だ。

「…やっぱり失いたくない」

私はそう、覚悟を決めて服を着替え始めた。

 

♦︎♦︎♦︎

 

11時30分。少し早めに玄関を出たのに、彼女はもうすでにそこにいた。

「あら、早かったわね」ゆきのんは驚いたような顔で言った。私、そんな遅刻魔だと思われてる?

「ゆきのんこそ早いじゃん…ヒッキーにいいとこ見せたくて居ても立っても居られないって感じ?」

「え———えっと…理解に苦しむのだけれどそれはどういう意味かしら、由比ヶ浜さん」

ゆきのんはとぼけたような顔をした。そんなことしなくていいのになぁ。

「分かるよぉ、だってゆきのん、ヒッキーのこと好きで———」

「違うわ」ゆきのんは真顔で即答した。…あれ、まじで?ヒッキーを間近で見てて好きにならないなんて…じゃ、なくって!あぁ違うから!好きでもないのにそこまで尽くせるのが不思議で仕方がないって話!あーもー何言ってんの私。言ってないけど。

「私、あまりストレスを感じないのよ。だから奉仕は得意なの」そう語るゆきのんの顔は、ちょっと自慢げに見えた。

その初めて見せる表情を前にくすりと笑ってしまった。ゆきのんは「…何かしら」と訝しむ。まぁ私が急に笑い出したんだからそりゃそうか。

「ううん、なんでもない、行こっ——————っきゃっ!?あ、ご、ごめんなさい!」

焦り過ぎたのだろうか、私は前も見ずに歩き出し、そして歩行者にぶつかってしまった。あちゃ、自分のドジ具合を舐めていた。というか忘れていた。私は誠心誠意謝って「行こっか」とゆきのんに促した。が、その次に聞こえた言葉は想像の斜め上のものだった。

 

「俺の時間を浪費させたな。金を払え」

 

「———え?」

「『え』ではない。俺の時間を無駄にしたことへの慰謝料を払えと言っているのだ。いいか、時間は有限なんだ。こんなところで立ち止まっている暇はない。だがお前は俺を立ち止まらせた。だから早く金を払え。ほら今だって時間は刻一刻と過ぎている。早くしろ」

「あぁ…えっと、その……」

 

私は初めて、その男の人の顔を見た。そして———絶句した。こんな不吉そうな雰囲気をした人間に初めて出会ったから。

 

不気味なほどに白い肌。

角ばった頬。

ヒッキーよりも腐った目。

 

「ひっ!?」

胸がざわざわした。本当に失礼なことはわかっている。けど、それでも私はこの男に恐怖さえ感じてしまった。

何から何まで、不吉なものを呼びそうな人間だった。私は不意に恐ろしくなり「ご、ごめんなさい!忍野さんを待たせているので!」とすくんだ足を無理矢理動かして(そういうのはキスショットさんで慣れた)ゆきのんの手を握って走り出した。こういうときは大人の名前を出した方がいいと思ったのだ。まぁよくよく考えたらその人が忍野さんを知るわけがないから『お母さん』とかのほうが良かったんだろうけどね。馬鹿だ。私はそういうところがやっぱり抜けている。

私たちは全力で走った。

そのままららぽーとまで———ヒッキーのいるところまで全力で。

 

走って。

 

走って。

 

走って。

 

走った。

 

 

だから私が、その男が呟いた言葉を聞くことは無かったのだ。

 

 

「……忍野、だと?」

 




ざわ…ざわ…というわけであの男の出演伏線をたてました。どこにでるのかはお楽しみに。

完結後の番外短編(もしかしたら普通に続きになるかも?)では何を書いて欲しいですか?

  • 阿良々木との会話
  • 羽川との会話
  • 怪異にあった俺ガイルメンバーの話
  • 日常編
  • その他(感想にてお願いします)
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