やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。   作:角刈りツインテール

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思ったより反響が大きくて嬉しい…というわけで早めの投稿をしました!ついに奴が…

それと一つ訂正です。この物語は『春休み』の出来事ではなく、夏休み明けの平日の話です。奉仕部と出会っているので時系列的にそうなりますね。前回では原作に引っ張られて春休みと書いてしまいました。本当に申し訳ないです!というわけで今話はその謝罪も込めて少し長めでお送りします、よろしくお願いします!


第二話 きっと、誰しも等し並みに悩みを抱えている。

♦︎♦︎♦︎

 

「うっし……やっと終わった」

「おぉ、ようやくか。2人とも一緒お疲れさん」

俺と由比ヶ浜が平塚先生に頼まれた雑務(肉体労働)を終えたのは午後7時を過ぎた頃であり、それはもはや運動部でさえ帰宅している時刻だった。正直言って俺らが手伝う意味って無かったと思うんですけどね…どれだけ楽したかったんだよ。これを人は職権濫用と呼ぶんだ。そう先生に愚痴ってみたが『でも君たちは奉仕部だろう?』と返されて終わった。

 

「悪いな、こんな時間まで手伝ってもらって。はいこれ、比企谷にはマッ缶、由比ヶ浜にはココアだ。んじゃ帰りには気をつけろよ。———特に、()()()にはなぁ」

 

先生がニッとして言う。悪いと思っているんなら途中で中断して欲しかったところではありますかね。まぁマッ缶を貰えるのは純粋にありがたかったよ?ありがたかったけどありがたかっただけと言う感じだ。何言ってんの俺。

いやてか、吸血鬼って何だ。少年漫画の読みすぎじゃねぇのか———そう思っていたら伝わったのか、拳をグーにして睨まれた。やめてまじで怖い怖い怖い。ふつうにそこら辺の吸血鬼より恐ろしい。いやそこら辺に吸血鬼がいるのかなんて知らんが。

「あ、吸血鬼って…最近クラスで噂になってるやつですか?」と由比ヶ浜。えっ何その噂。なんで同じクラスなのに知らないの、俺……あそっか、友達いなかったからか。おいおい、こいつは盲点だったぜ。

 

「あぁ、多分それだ。私も生徒から聞いたからな。夜中に電灯の下に美しい女性を見た人がいるらしいんだ。その女性はなんとも美しい金髪の外人で———」先生は息を吸い込んでから、怖がらせる気満々の声で言う。「そして、影が無かったそうだ」

 

「「……………。」」

影が無かった、ねぇ。ふーん。まぁその容姿を聞く限り、きっとその吸血鬼は巨乳なのだろうし、是非とも一度目に入れてみたいものだが———

 

「ありえない」と俺は速攻で否定する。「だって考えてくださいよ先生。もし吸血鬼に会ったって言うんなら助かっているはずがないし、それに吸血鬼がいたとして、なんでそいつは電灯の下にいたんだよって思いませんか?人間には正体普通バレたくないだろ?」

と、都市伝説に対して正論をかます俺。別にこういう自分がかっこいいと思っているわけではない。ただ目の前の虚偽が広まっていくのが正義の味方としてはやはり許せないのだ。

なんつって。

まぁ流石に大の大人が本気で信じているわけもあるまい、といった考えもあったし、とそう思っていたんだが。

「ま、まぁ…私も信じてるわけじゃないが……」

と平塚先生。え、何その焦りと悲しみの入り混じった顔。

ま、まさか……。

「……先生、信じてたんですね……」と苦笑いの由比ヶ浜。まじか、由比ヶ浜なら絶対信じると思っていたのに。疲労で逆に脳が活性化しているのだろうか。自分で言っててあれだがどんな理屈だ。

「いやぁそれにしても、平塚先生にも意外と可愛いところがあることが判明しましたね。こういうとこをアピールすれば男も寄っ」

「ふんっ!」

「ガハァァァ……ッ!」

「……ヒッキー大丈夫?」

土手っ腹をおそらく全力で殴られた。大丈夫なわけがない。痛い、痛い、まじで痛い。

それにしても、やはり世の男どもの目は節穴である。誰も彼もが『俺に彼女は釣り合わない』『高貴すぎて近寄れない』と言っているが……俺からしたらこいつのどこが高貴でクールなんだ、と問いたくなる。

すぐ殴るしね。

本当に平成の教員なのか、この人は。

まぁ、何はともあれ。

 

誰か、貰ってあげてくれよ…………。

ぐはっ。

 

♦︎♦︎♦︎

 

「中学が一緒だった友達の話なんだよね。さっきの話」

暗闇をライトの光だけで下校する最中、由比ヶ浜が突然そう言った。いつももうちょっと分かりやすく話してくれないかなと思っているのはナイショの話。

「あ?さっきの話って?」

「吸血鬼」

ちなみに両者自転車だが、流石にこの夜道では危ないというわけで解散するまでは歩きで進もうということになった。ちなみに貰ったドリンクは両者飲まずに持って帰ることにした。うん、実に聡明。もうとっくに温くなってるからね。

…いやまぁ、ね?この時間が終わってほしくないっていう思いのありますよ?だって男子高校生だし。仕方ない仕方ない。目の前に可愛い子がいたら誰でも引き止めたくなるものだ。

ま、そんなことは口に出さない。あくまで夢は夢のままだ。だからこそ美しい。

「あの子ね、吸血鬼を見たってクラスメートに言ったらしくて、でも信じてもらえなくて、でもその子、結構頑固な人だったから———気づいたら『嘘つき』って無視されるようになってたらしくて…」由比ヶ浜が言う。

ほう、それはそれは……。

「典型的ないじめだな」

「……うん」と切なげに言う。その声色で、由比ヶ浜が本気で悩んでいることが分かる。嘘はつけないからな、こいつ。

「で、お前はどうなの?」

「わ……私はそりゃあ———」

「あ、そっちじゃなくて吸血鬼のほう」

人を信じるか、ではなく鬼を信じるか、である。

———世にも美しい金髪の、吸血鬼。

「やー、まぁ信じるかどうかって言われたら…信じない、かな?」と困惑しながら答える。

「由比ヶ浜ですらそう思ってんならそいつが悪いだろ。人間諦めが肝心だ」

俺がそう言った瞬間、由比ヶ浜が俯いた。勿論俺にも理由はわかっている。

「……そんな言い方」

「まぁそうだな。それを聞く限り周りにも問題はありそうだし———てかそもそも、それだけで無視してくる奴が本当に友達なのかと疑いたくなるね」と俺は手のひらを返した。

というよりもどちらも本心なのだから仕方がない。そんな面倒なものだったんならはっきり言って友達なんかいらないな。内輪揉めは見ている時が一番楽しい。参加する必要は皆無だ。俺の近くにいるのは戸塚だけでいい。あいつはほら、天使枠だから。

「はは……ヒッキーらしいや」と由比ヶ浜が笑う。「ヒッキーって悩みとかないの?」

「悩みか……自分の家の近くのコンビニにマッ缶が売ってないことかな」

なんで売ってないんだよ、と俺は正直本気で怒ってもいいと思う。これのために俺は政治家になってもいい。いやそれは言い過ぎました。やっぱり専業主夫がいいです、はい。

それを聞いた由比ヶ浜は「私もヒッキーみたいに強くなりたいな」と一言。

俺が——強い?

 

まぁたしかに嘘の告白には騙されないし女子が落とした消しゴムを拾ってくれても前の女子のプリントの渡し方が他の人のときと違っても勘違いで好きになったりしないし、確かにそういう面では最強かもしれんが。いいな、最強。いい響きだ。

 

「あ、あのさヒッキー」

「なんでしゅか」噛んじゃった。どうやら気づかれていないようだが当然恥ずかしい。いや気を使われているのかのしれないが。それならもっと恥ずかしいね。

「もし、もしもだよ?その……」由比ヶ浜は頬を赤らめた。

頬を、赤らめた。

 

 

え。

 

 

待って、そう言う感じ?そう言う感じなの?告白されちゃうの今から。心の準備できてないよ?

「私がヒッキーこと————」そしてもう一段階、イチゴのように顔を赤らめる。

「……お、おう……なんだ」俺は由比ヶ浜の顔をあえて見ることなく、ぶっきらぼうにそう問いかけた。

その…、ともうひと区間置いて、そして覚悟を決めたような鼻息をしてから、そして

「———す」

そして停止。えぇ……。まじですか。

由比ヶ浜の足が止まりそれと同時にその言葉はプツリと途切れた。今なんて言おうとしたんですか、ガハマさん?

まさか好き———なわけないか。いや、まさかね?ラノベじゃあるまいし。

むしろ、好かないと言われるのかもしれないし———てかもし本当にそうだったら立ち直れる気がしない。ショック死しちゃいそうだ。

全く、そうやって無自覚に勘違いを増幅させようとしてくるのはやめてもらえませんかね。そう思いつつ一応何かあったようなので「どうした」と言って俺とは反対側を向いている由比ヶ浜の顔を見た。

その顔に浮かんでいる表情はこれが想像していたもの全てと違っていた。

「あ……あ……れ」

 

 

恐怖だった。

 

 

やっとの思いで、というような感じで絞り出したその小さな言葉を俺は数秒かけてなんとか理解し『あれ』とは一体何なのだろうかと由比ヶ浜が見ている方向、即ち俺とは反対側にある路地裏を眺める。

由比ヶ浜は目がいいのだろうか、俺にはあまりよく見えなかったのでまじまじと凝視した。そして『あれ』とは何かを理解するのにかかった時間は約5秒。その間も由比ヶ浜は立ち尽くしていた。

俺はその物体が人型であるということをに気が付いた。なんだ、酔っ払いか?

『あれ』———と、いうか彼?彼女?どちらにしろ人間をモノ扱いするのはいけない———って。

 

 

「ん……?」

 

 

あれ…..。

()()()()()()()()()()()()

俺はもう一度路地裏をまじまじと見つめる。そして俺はようやく気がつく。俺の記憶と現在の出来事が結びつく。

 

 

 

———『んじゃ帰りには気をつけろよ。特に、()()()にはなぁ』

 

 

———『あの子ね、吸血鬼を見たってクラスメートに言ったらしくて、でも信じてもらえなくて』

 

 

 

「ひっ……!?」

というのは俺の声。別にそれはその路地裏にいる人間に自己紹介をしようとしたわけではなく、由比ヶ浜と同じように恐怖を感じたからであった。いやどこに需要があるんだ俺の悲鳴なんて。まぁ友達がいないからそもそも誰にも聞いてもらえないんだけどね。

まぁ今は俺の自慢話はどうでもいい。そう、そこにいたのは。

 

「………うぬら」

 

その人物———いや、ソイツは———

 

 

 

 

「儂に、血をよこせ」

 

 

 

 

噂通りの、そして想像通りの、金髪で巨乳でそして世にも美しい———伝説の吸血鬼だったのだ。

それも、四股を全て失い血まみれになっている状態の、である。由比ヶ浜はさっき俺のことを『強い』と言ってくれたが、生憎ここで振り絞れる勇気なんて持ち合わせていない。つまり俺はついに腰を外して倒れてしまった由比ヶ浜の動きをトレースするように立ち尽くす他無かったのだ。まぁ何はともあれ今マッ缶を片手に下校していなくて本当に良かったと思う。持ってたら確実にこぼしてる。そして多分尿意も増幅されてそちらもこぼれていたと思う。……ていうか———。

 

 

まじで誰か助けて……。

 

 




はい、如何だったでしょうか。次回、ヒッキーは由比ヶ浜の前で男を出せるのか!それとも逃げるのか!いや全力で逃げそうだな!なんなら由比ヶ浜置いて行くまである!

[登場人物]
・平塚静(ひらつかしずか)
総武高校の国語教師。生活指導と奉仕部の顧問を担当している。座右の銘は『真ん中から打ち砕く!!俺の自慢の、拳でぇぇッ!!』。黒髪ロングに巨乳とそれなりの格好をすれば周囲から注目を集めるほどの美人であるが、反面、ヘビースモーカーかつどこかおっさん臭いところがあり、加えて相手との距離感の詰め方のせいもあってか、かなり強い結婚願望に反して男っ気が全くない。

完結後の番外短編(もしかしたら普通に続きになるかも?)では何を書いて欲しいですか?

  • 阿良々木との会話
  • 羽川との会話
  • 怪異にあった俺ガイルメンバーの話
  • 日常編
  • その他(感想にてお願いします)
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