やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。   作:角刈りツインテール

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第二十一話 そして、雪ノ下雪乃は。(後篇)

「うおおおおおおおおおおおおおおおお死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!!」

ギロチンカッターによって宙へ投げ出された俺は今、ほとんどの建造物より高い位置かた落下していた。

ほとんどに含まれていないのは東京スカイツリーくらいで、それさえももはや超えてしまいそうだった。ちなみに比喩ではなく吸血鬼の視力で見えたから事実である。

というかそれ以前に、雲よりも上だった。

———ってそんなことはどうでもいいだろ馬鹿か俺は!流石の吸血鬼でも跡形も残らず砕け散るだろこれ———ちょっと待て、肉片も無しに生き返れるのか?血液を媒介に蘇生しているから理論上は可能かもしれないが———いややっぱ怖い怖い怖い!!!!恐怖心に理論じゃ勝てねぇ!!!

 

『大好きだよ、お兄ちゃん!』

 

『ようこそ奉仕部へ』

 

『ほんとお兄ちゃんは小町がいないと何もできないんだから…』

 

『ヒッキー!』

 

『うわぁーい!ありがとうでありますお兄ちゃん!』

 

まずい、走馬灯が見え始めた…ていうかなんで過半数小町なの!!人との関わり少なすぎだろ!!まじでやばいってなんで死ぬ間際ってこんなに余計なことしか考えないの!?現実逃避か!?ふざけんなよもう!!

 

とりあえず、一旦落ち着け俺———!

深呼吸。

ふぅ。

ふぅ。

ふぅ。

よし、いける!

考えろ。

生きろ比企谷八幡。

仮にもし生き返ることが可能だとしたらどうだろうか。その場合それだけでは生き延びれない。

そこには多少のタイムラグが生じる。そこをギロチンカッターに狙われておしまいだろう。

「な———なんか、ねぇか?」

飛びそうな意識の中で策を練ろうと頭を働かせる。

 

安全に着地し、ギロチンカッターからの攻撃をかわすことができ、更にあわよくば攻撃を加えられるような方法———

 

 

「こっ……れしかねぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!」

 

俺は地面に腕を向け、そして念じた。つまりは『物体生成能力』。この能力のデメリットは———というよりも俺が使いこなせていないだけなのだと思うが———自分がはっきりと想像できるもの。自分の体の一部がそうなっても不思議でないと思うようなものでなければ今の俺には作れない。なら正解は———

 

  『俺は、熊になりたい』

 

以前、平塚先生に激怒された作文を思い返しながら目を閉じて念じた。手に血が集まってくる感覚に目を開くとそこには()()()()()()()()()()()()()()

「よっしゃあああああああああ!!」

独りでも生きていけるような、頑丈で最強な俺の右手。幻想殺し(イマジンブレイカー)ほど格好良くはないが悪くはないんじゃないかと思う。そんでこれをどう使うのかといえば。

どう使うのかといえば。

「……………………。」

 

あれ?

 

これ、どう使えばいいんだ?

 

「うわああああああああああああ!!!」

この馬鹿八幡が!!たかが熊の右手でどうしろっていうんだよ!!———と、口からも脳内でも叫んでいたそのとき、目に入ったのは木陰から心配そうにこちらを見ている雪ノ下だった。今にも泣きそうなその表情を見て俺は———

俺は、笑った。

「ったく…んな、顔すんなよ」

黒歴史になるって知ってながら———ついうっかり格好つけたくなるじゃねぇかよ。

そう、この能力においてもっとも重要なのはイメージだ。熊のイメージといえば、例えば毛深いこと。太いこと。それから———爪が長いこと。

これだ、と閃いたその瞬間に、俺は先ほどと同じように祈り始めた。地面に向かって、指先を向けて、爪が伸びるように想像した。

「伸びろ伸びろ伸びろ伸びろ———うおっ!」

地上までの距離およそ10mにまで近づいた時のことである。眼下を見るとそこには、地面に突き刺さるほどの長さの爪が伸びていた。そしてそのおかげで落下の勢いは軽減。驚きの表情を隠せないでいるギロチンカッターに対して笑みを浮かべられるほどには余裕が生まれた。いいぞ俺、やればできるじゃねぇの。

 

そして、笑う余裕があるのであれば———当然戦う余裕もある。

この数日間で感じたことである。笑えているうちはまだ冷静に行動できる証拠になる。

 

「———伸びろ」

その言葉とともにヒュン、と風を切る音がして爪が恐ろしい速度でギロチンカッターの方向へ伸びる。ゴォォン、と地面にぶつかり砂埃のせいで何も見えなくなる。「やったか」、と言ってから気がついた。

「素晴らしい」

あぁ、これフラグだ、と。

俺の背後には吸血鬼の速度で俺の背後に回ったギロチンカッターがいて———そして、手刀で俺の体に穴を開けていた。

「!?か———かはっ!」

ガシリと体を掴んで離さない。

彼はポケットに入れていた聖書を取り出す。

まずい、声が出ない。

体が動かない。

まずい。

殺される。

いや、でもルール———ちげぇ、それは交渉決裂したんだ。なら俺はここで降伏しなければ。

「死———?」

嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。

でも負けたらどうせ死ぬ。さっきの余裕はどこに行った。笑え、俺。なんとかしろよ比企谷八幡!いつもこんな

時、一人で何とかしてきただろうが!生きるんだよ俺は———

「¥#¥#「¥)…;:¥-¥」…「]・$£々<『$!———」

ギロチンカッターが何語かすら不明の言葉を読み上げたその時のこと、心臓が鷲掴みされたような感覚に襲われる。

「は———ぐ———あぁぁあ!!」

そしてそのまま、胸ぐらを掴まれているかのように宙へと上がる。体が再生する気配も、ない。

嫌だ。

待って。

死にたくない。

死にたくない。

痛い。

痛い。

苦しい。

息が。

目が。

嫌だ。

音がもう。

おれは。

俺は。

オレは。

オレハ———

 

「———比企谷くん!!!!」

聞こえなくなったはずの耳に、聞き覚えのある声が、それだけがはっきりと流れた。

ここに本人がいる訳がない。

ならこれは、走馬灯みたいなもんだろうか———なんて考えていたそのとき、ばさりと何かが倒れる音がして思考が中断される。というよりも倒れていたのは自分だった。じゅくじゅくと体温が上がる感覚ととも五感も回復してくる。つまりギロチンカッターが聖書を読み上げるのをやめたということだ。

なんだ。何が起きた———俺は立ち上がって周囲を見渡した。そしてその事実に俺は、目を丸くする。

 

 

———雪ノ下雪乃と、ギロチンカッターが向かい合っていた。

 

 

「———まて、雪ノ、下…!無」

無謀だと伝えようとしたのだが「大丈夫よ」と遮り、雪ノ下は笑った。俺は絶句する。

それはこんな場面でも雪ノ下が笑っていたから———だがそれだけではない。

気のせいだろうか。

気のせいであってほしかった。

 

 

 

 

 

 

笑顔を見せたとき、一瞬だけ見えた雪ノ下の八重歯は———鋭く尖っていたように見えたのだ。

犬のように。

吸血鬼のように。

 

 




次回、ギロチンカッター戦終了です。物語自体終盤に近づいてきましたね。今後とも是非宜しく頼みます。
それから、良いお年をお過ごしください。

完結後の番外短編(もしかしたら普通に続きになるかも?)では何を書いて欲しいですか?

  • 阿良々木との会話
  • 羽川との会話
  • 怪異にあった俺ガイルメンバーの話
  • 日常編
  • その他(感想にてお願いします)
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