やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。   作:角刈りツインテール

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第三話です。反響が大きすぎる…メインで書いている過負荷の刃よりモチベが上がっている状態です。どうしよう。


第三話 たまにラブコメの神様は酷いことをする。

「や、やー、ごめんね?ヒッキー……」由比ヶ浜は肩を震わせながら言葉を紡ぐ。「……あ、足が……動かないや」

 

俺たちは先ほど吸血鬼に出会った。いやなんだこの始まり方。頭おかしいんじゃねぇのか俺。待て。これ、おかしいのどっちだ?俺なのか、この状況なのか———。

まぁ———ここで動かないのは手足だけであるなら俺に出来ることは多い。少なくとも108個は何か出来ることがある。何故なら俺は教室で毎度の休み時間、机にうつ伏せになって動かず、孤独に様々なスキルを培ってきたからだ。なめんなよ俺のぼっちライフを。

今回はそんな108のスキルのうちの一つをお見せしよう———『観察眼』である。俺は眼球だけを動かし、あらゆるものを観察した。

 

——由比ヶ浜は足がすくんでおり、使い物にならない。いや確かにちょっと言い方が酷かったけどそれ以外に言い方がないし。暫くは動けないだろう。

 

——そして夜中の廃れた商店街だからか、歩行者も見当たらない。ところを通るべきだった……。

 

——さらにこの吸血鬼。手足がなく、凶暴性が無いように思えるが正直言って空想上の生き物なので想定外の行動をしてくる可能性は十二分にある。きっと逃げるのが最善策。だがその代わりに他の人が狙われるかもしれない。

 

「……いや……ちょっと、待てよ?」俺もまた、由比ヶ浜のようにカタコトながらも言葉を紡ぐ。

こいつ、本当に吸血鬼なのか?俺はその考えに至った。最初にその考えに至らない以上、俺も深層の中では吸血鬼の噂を信じていたのかもしれない。んなことは知らんけど。理系科目は苦手なんだよ。いやそんなことはどうでもいいんだよ…何故だろうか、思考が体に追いつかない。脳内で言葉が一人歩きしていく感覚。あぁ、なるほど、今の俺は焦燥している。それはかなり不味い。冷静な判断ができない状況下だということだからだ。落ち着け、俺。

そして深く深呼吸。落ち着いて、いつもの俺の約半分を取り戻した結果あることに思い至った。

———もしも彼女が吸血鬼ではなく人間だったら俺らは今、取り返しのつかないことをしていることになるのではないか。そういう事だ。彼女は今、四股を失っている。もし、ここで逃げたら?

見殺し。

迷っている一刻一秒が大事で、さっさと救急車を呼ばなければならない。だがもし本当に吸血鬼だったら———さて、何か見極める方法がないだろうか———

 

『影が無かったそうだ』

 

ふいに平塚先生の言葉がフラッシュバックした。あぁそうだ、吸血鬼は光に当たっても影ができないんだ———と俺はなんとか震える手で自転車の向きを変え、何者かに自転車付属のライトを当てた。

結果。

「ひっ…!?」と由比ヶ浜が可愛い悲鳴をあげる。だが今はそれについて語っている場合ではないことは分かっている。

「おいおい、こりゃまじかよ……」と、俺。これについてはいつ何時だって語る必要はない。何故なら需要がないからだ。

 

 

 

結果、路地に生えている雑草、そして用途の分からない機械にははっきりとあるのに、()()()()()()()()()()()()()()()

———いや、もう人とは呼ぶべきではないだろう。彼女は紛れもない。

 

伝説上の生き物———と先程までは思われていた吸血鬼。の筈だ。

「うぬの…血をよこせ」

ほら、こんなこと言っちゃってるし……。これが本当は人間でしたー、なんてことがあってたまるか。自慢じゃないが俺だったら叫び回ってる。痛いのは嫌いだ。痛いで思い出したが流石に厨二病の材木座であっても言わないだろうし況や他の者をや、である。だって手足千切られてるんだし。いやよくよく考えたらどういう状況なの?てか、()()()()()()()()()()。吸血鬼より上位の存在とかいるのかよ。まぁいるか、神とか、小町とか、戸塚とか?じゃない。また思考が一人歩きしている。だから落ち着けってば。

 

落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け。

 

さて、と……俺はこの現状を打破するために一度気持ちを切り替え、仕切り直す。出来ることならここでグイッとマッ缶を飲み干したいところだが生憎バッグの奥の方に入っている。このタイミングでそれを取り出して飲む奴がいるとすれば俺でも流石に危機感を疑う。

こんな軽口を言えるまで回復してきたところで、まずは作戦を立てよう。ん、108のスキルがなんとかって言ってたって?いやほら、あれは冗談だから……。

作戦———即ちそれは生き物である。戦況を見極めてそれに応じて切り替えていく必要がある。

 

作戦① 逃亡

由比ヶ浜が腰を抜かしているのでアウト。

 

作戦② 警察を呼ぶ

とんでもなく取り返しがつかないことになる可能性もあるので保留。最悪ポリスメンが殺されることもあり得る。

 

作戦③ 殺す

何言ってんの俺。なめとんのか。

 

作戦④ 魅了させる

腐った目の俺が?ははっ無理無理。それなら由比ヶ浜に告ったほうが可能性があるね。…あぁゼロか。ゼロだな。うん、ちょっと悲しい。

 

八方塞がりだった。そういえば以前俺が由比ヶ浜に『お前みたいな八方美人ですら云々』と言ったら由比ヶ浜が謎に照れ始めたことがあったが、俺は美人と言われても塞がりと言われても照れることはない。だって嘘に決まってるし。

この中で一番現実味のある作戦といえば②なのだが、もしそのせいで多くの警官が命を落としてしまえば———口先では俺は悪くないと言えるだろうが、やはりショックは残り続けそうだ。特に由比ヶ浜。彼女はメンタルが強いようで弱いからな。

「ひ……ヒッキー……?」と、先ほどから立ち尽くして入りだけの俺に対して由比ヶ浜がどうしたの、と尋ねる。勿論吸血鬼から目を逸らさずに。俺の方を向かずに。———そして俺はハァ、とため息をつく。

「何、俺ってそんなに信用されてない?まさか見捨てるとか思ってんの?」

「や、や、そ、そういうわけでは……」と当惑する由比ヶ浜。さすが俺、性格が悪い。だがしかし、そんな比企谷八幡ともお別れだ。今から俺はスマートでエリートなヒーローになる。

「安心しろ由比ヶ浜。俺がにゃんとか」と、まるで主人公のように……。

 

……………。

 

 

「なんとかする」主人公のように言った。あっ、今の八幡的にポイント高い!

……いやまじで何やってんの俺!最悪スマートどころかデリートされるぞこんなん!

そう思い焦っていた。しかし「……ありがと」と由比ヶ浜は何故か少し落ち着く。なんなのその可愛い…いや、なんでもない。

はい、ギャグパートはここで終了。とりあえず俺は目の前のターゲットと一度会話を試みた。

「なぁそこのお前。名前は?」

「わしの名前はキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード……鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼じゃ……」

古風な話し方だなぁ、と感動すると同時に材木座を思い浮かべてしまったのはナイショの話。てかなんだ鉄血で熱血で冷血って。冷めてんの?温まってんの?

「早く……儂にうぬの血を全てよこせ……」その吸血鬼———キスショットは汗を額に流しながら、苦しそうに言う。え、全部ってんな馬鹿な。てっきり多くても半分くらいで十分かと思ってたんですけど……いや待て。人間ってそれでも死ぬだろうが。駄目だ駄目だ。さっきから多量の血を見すぎて感覚が麻痺している節がある。

キスショットの手足があった部分からは、血がドクドクと溢れ出ていた。改めて考えると、その量はやはり化け物じみている。

どくどくと。

ドロドロと。

じゅくじゅくと。血が溢れ出ていた。

「悪い、それは無理だ…献血とか呼びたいんだけど待てますかね」言いながら、明らかに間違った行動だと思った。あと敬語で正しかったのだろうか。

「無理じゃ……あと。3分……」

そんな寝坊しかけの学生みたいな言い方されても…。流石に自分の血をあげるなんて、そんな———

 

ん?

自分の血をあげる、ねぇ……何か今ナイスアイデアを思いつきかけた。

 

吸血鬼———それは即ち血を吸って生きる生き物。だがその存在の特性はそれだけではない。

 

他に、何があったか。日光に当たったら灰になる。十字架に触れるとどうにかなる。聖水に触れると———違う違う、そうじゃない。何かもっと、根本的なやつが————— あ。

「……これだ」思わず頬が緩む。

そして俺は見つけ出す。

 

一つの最適解を見つけ出す。

 

俺も由比ヶ浜も、キスショットも———誰も傷つかない世界を作る方法を。

 

聞いたことがある———誰からかと言われれば、材木座からだ。アイツがここでキーパーソンになるのは少々腹立たしいがまぁ今回ばかりは許そう。いつだっただろうか、この話を聞いたのは。確か材木座が吸血鬼をテーマにした新作小説を持ってきた時だったはずだが。

 

 

  『吸血鬼というものはだな八幡よ!吸血されれば死ぬのではないのだ!そう———』

 

 

「……なぁ、キスショット」

俺は、足を震わせながらもなんとか、少しづつキスショットのほうへ歩く。ゆっくり、ゆっくりと、敵意を出さないように善処しつつ。

「……なんじゃ」3分、というのはあながち冗談ではなかったのかもしれない。もう首すらあげるのがキツそうなほど疲労しきっている。汗と血が混じってコンクリートを汚す。いや、それさえも美しく見えるほど、その吸血鬼は美しかった。

 

 

「お前に、血をやる」

 

 

「ヒッキー!?」由比ヶ浜が悲痛に叫ぶ。その声を聞くだけで罪悪感が湧くが安心して欲しい。俺は命を捨てたわけではないのだ。むしろ残機を貰いに行っている。

そう、これは言わば———無限増殖バグ。デメリットよりもメリットの方が確実に多い。

「誠か!?」キスショットがパァァ、と希望を見出したような笑顔を浮かべた。そんな子供のような笑顔ですら美しいと思わせた。こいつが人間じゃなくて本当に良かったと思う。もし同級生だったら確実に告って振られてた。いや振られちゃうのかよ…って何回目だよ、このこれからもお世話になりそうだ。

まぁいいや。『この先』があるっていうんならな。

「ただし」そこで俺はニッと笑った。腐った目で、いつも通りの、皮肉で、性悪で、最低で最悪な、見ただけで女子が泣きだすような卑屈な笑みを。

 

 

 

「俺を—————————吸血鬼にしろ」




はい、そんな感じです。やっぱヒッキーならこういう考え方するかなぁって思ったんですがどうですかね?よろしければ感想・評価などお願いします!

[登場人物]
・キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード
白い肌と金髪金眼で、時代がかった古風な口調で話す。「鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼」や「怪異殺し」の異名を持つ。完全体では身長180cm以上の長身で巨乳(外見年齢は27歳)。

完結後の番外短編(もしかしたら普通に続きになるかも?)では何を書いて欲しいですか?

  • 阿良々木との会話
  • 羽川との会話
  • 怪異にあった俺ガイルメンバーの話
  • 日常編
  • その他(感想にてお願いします)
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