やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。 作:角刈りツインテール
「儂を———殺してはくれんか」
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キスショット曰く、俺が人間に戻る方法は大まかに言うと『主従関係が消滅すること』だそうだ。だがこの場合の主従関係というのは文字通り血縁関係であり、簡単に無かったことにはできない。というかもはや不可能な話である。人間だってそうだ。いくら書類上で公的に絶縁できたとして、それで生物学的な関係性が消えることにはならない。
血は水よりも濃い。
血は争えない。
分けた血を再び一箇所に集めることは出来ない。
まさに血も涙もない話だ。
そう思っていたのだが。
人間ならともかく吸血鬼ならば———血を分けた仲であればどうやら方法がひとつだけあるらしい。
相手から血を吸い直すことでその関係をリセットでき、相手が死ぬことで関係を無かったことにできる。まぁ聞いたところ、どうやら俺でない誰かがキスショットを殺した場合でも解除されるらしいので俺ごときに理解できるようなそう分かりやすい話ではないのだろうが…今はとりあえず『血を吸い直す』というような感覚でいいとキスショットが説明をしてくれた。
そして、自分を殺して欲しいと願った。
そうしなければ俺が人間に戻れない、という言い訳もわざわざ添えて。
「…何なんだよ、そりゃ」
現在、俺が眠りについている相模を交番の前まで届けて全力で戻ってくる途中である。キスショットを待たせているので早く帰る必要があるのだがどうもそう言う気分にはなれず思考を繰り返しながら歩いた。同じ道を通っているのに感情ひとつでこうも世界が薄暗く見えるのかと驚嘆した。
『儂を———殺してはくれんか』
その言葉が脳内で繰り返され、その度に居た堪れない気分になった。
彼女曰く『疲れた』。それだけ聞けば良くある若者の悩みのようであるがそうではない。キスショットは500歳の———500年の人生を送っているのだ。それは俺たちが想像するような劇的なものではなく、真新しいものも見当たらない退屈なものに他ならなかった、と彼女は語った。
退屈は人をも殺す。
吸血鬼でさえも殺してしまう。
と、いうことなのだろう。
持たざる者は持つ者を羨み、持つ者は持たざる者を羨む。永遠の命なんて、そこまで素晴らしいものではないというのに。
「はぁ…殺すっつってもなぁ…」
迷うまでもない、断固拒否である。たしかに俺にも怒りに任せてエピソードを殺そうとした過去があるもののそれはあくまで由比ヶ浜を攻撃されたからで———冷静沈着な状態で吸血鬼を———人と同じ形の存在を簡単に殺せるとは思えない。
ひとまず話がしたい。そう思っているうちに学習塾跡に辿り着いた。
と。
「ん…?」
室内に入る直前、ふと違和感を覚え、俺は上を見上げる。吸血鬼の五感が感じ取った何か———何かが足りていない…?
なんだ?
何が———そうだ、今まであった禍々しい雰囲気が消え去っている…。
消えて———。
「…おいおいおい」
まさか。
「冗談じゃねぇってのッ!!」
俺は無駄な思考を投げ捨てて階段を駆け上がり、すぐに今まで俺たちが寝泊まりしていた箇所へ着く。だが。
そこはもぬけの殻だった。
違和感が間違いでなかったことを知り、こればかりは俺の見当違いであって欲しかったと下唇を噛む。
キスショットは俺が自分を殺せないことを知っている。だから彼女はきっと俺をキレさせたいのだろう。つまりこの先何が起きたとしてもそれは全て俺の責任で、弁明のしようもない。もし彼女が民間人を殺したとしても、加害者は俺だ。当たり前だろう?
ここにキスショットがいないのは。
俺が彼女を殺せるようにするための配慮———優しさにすぎないのだから。
次回、比企谷吸血鬼時代編が終わりいろはへと語り終わった頃の現代に戻ります!
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