やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。   作:角刈りツインテール

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第六話です!一話で回想を終われそうにないので前半後半に分けようと思います。


第六話 ようやく彼と彼女の始まりが終わる。(前篇)

         ♦︎♦︎♦︎

 

        回 カイソウ 想

 

 

         ♦︎♦︎♦︎

 

 

8月23日。俺は()()()()()()()初めての朝を迎えた。とはいえ俺はまだその時、自分が本当に吸血鬼になっているなんて思っても見ず———なんて言ってしまうと『自分から吸血鬼になりに行ったのに何言ってんだこいつ』と言われてしまうただの阿呆になってしまうのでやめておく。まぁそう思ってくれる友達がいないんだけどね。悲しいのでここで深掘りはしない。うん。…うん。

 

「で…?どこだここ」

 

ぼーっとする頭をフル回転させて思い出せたのは、自分が吸血鬼に血を与えたことまでだった。いや、もしかするとそれも夢かもしれない、とまだ一抹の期待も持っていた。だが。

 

 

  『え…じょ、冗談だよね、ヒッキー…?吸血鬼に、なる、とか…』

 

  『うぬ……儂を…助けてくれるのか……』

 

  『ヒッキー待って!わ、私嫌だよそんなのッ!嫌だってば!!ねぇヒッキー!』

 

  『あ……ありが…とう……』

 

  『あ—————————』

 

 

俺は昨日のそんな一幕を確かに覚えている。だからこれは現実———だと思う。強い期待はするまい。

次に、眼球だけを動かして自分が置かれている状況そして空間を確認すると、机や椅子があることからもそこは古びた学校———いや、塾か?と言うことが分かる。だが、かつて子供たちで賑わったであろうその場所に、今は人気(どちらの読みでも可)などある由もなく、穴の空いた壁から風が虚しく吹き付けるのみだった。ちなみにどうしてこんな所にいるのかは不明。誰が引きずってきたのかも不明。不可解な点が多すぎる。

まぁ何はともあれ、まずは一度起き上がろう、と腕を動かす———と同時に、手の先に何かが触れた感覚が神経を通って脳に伝わる。

ぷに。

ん…柔らかい。これは一体なんだろうと不思議に思い、恐る恐る掴む。うわ、すげぇ柔らかい。そして揉む。

ぷにぷに。

うわぁ…人肌の温もりと適度な弾力が手を引っ張って離さない…なんだこの安心か…いやちょっと待って。

 

「これ、もしかして由比ヶ浜の…?」

 

その考えが脳裏に浮かんだ瞬間、俺の額に一滴の水分が流れた。それを合図に、まるで枷が外れたようにダラダラと全身から汗が吹き出し、体温が上昇した。5度くらい余裕で上がってると思う。え、嘘。ラブコメの神様ってここまでしてくれんの?まじかよ流石すぎるだろ…んなもん一生ついていくぞおい。

脳内でそんなくだらないことを考えつつ、そろり、と伝統舞踊のように手を離す。ちなみにそこまで趣のあるシーンではないことを註釈として加えておこう。起こさないように、ゆっくりゆっくりと手を呼び戻す。———よし、抜けた。さて、さぞ可愛いであろう由比ヶ浜の寝顔でも拝見する——いやちょっと待って。

 

「誰だお前」

 

2度目の『ちょっと待って』のあと全力で起き上がり確認した結果、俺の真横にいたのは先日の、俺の生死に関わった場面を共にした由比ヶ浜結衣ではなく(彼女は床ではなく俺の後ろの方で椅子をベッドにして寝ていた)、謎の金髪ロリだった。

「スゥ…スゥ…」

か———かわいい!人形みたい!

ちょっとほっぺた触ってみたり…うわぁ柔らかい!これか、さっきの胸もどきは!

「……………うわぁ」

これはやばい…って。

いやいやいやいや。

いやいやいやいやいやいやいやいや。

『柔らかい!』『うわぁ…』じゃねぇんだよ。阿保か…うん、冷静になって今の自分を客観視して吐き気がしてきた。気持ち悪いな今の俺。鎮まれ比企谷八幡。これ以上の行為は流石に救えないぞ。小町だ。小町を思いだせ。

小町が一匹、小町が二匹。小町が三匹、小町が四匹…よし、落ち着いてきた。

「それはそれで気持ち悪いな…っと」俺は立ち上がる。多少の立ちくらみがあったがノープロブレムだ。

 

ていうか、誰だよこいつ。何だよこの状況。なんだか怖くなってきたので端的にまとめてみると、『男子高校生一名、そして女子高校生一名と少女が一名、廃れたビルの一室にいる。』というもの。

 

…これ冗談で済まされないと言うか警察沙汰になりかないと思うんですが…ていうかもう既に…。その考えに至った今、俺に流れている汗は冷や汗へと変わり、鳥肌が立ち始める。忙しいなおい。変温動物かよ。

まぁ、何はともあれこの子を起こそう。そこからだ。由比ヶ浜はひとまず放置する。

 

「おい…おい、起きろ」俺は触れてもあまり問題がなさそうな肩を揺さぶって起こす。

「うーん…」その少女は寝返りを打つ。「あと五分…」

えぇ…初台詞がそれでいいんですか。

「お前は休日の俺かっての。いいから起きてくれ」さらに強く揺さぶりながら言った。言ってから、平日もさして変わらないことに気がついた。

「うーん、あと…」ふぁぁ、とあくびをしてから「気分…」と言った。どれだけ眠るつもりなんだよこいつ。

それからしばらく迷い、「まぁ、後でいっか」と思い直した。時刻は午後6時。ここ最近の周期から考えるとあと30分ほどすれば日が沈むであろう。ヒガシズム。なんかありそうだな。どうでもいいな、うん。

さて、俺が本当に吸血鬼になったのかについて調べてみよう。ここから飛び降りて日の光を浴びればそんなのは一目瞭然なのだが、あまりにも自殺行為である。灰になるのか燃えるのか知らんが死ぬのは嫌だね。

多分、最もそれらしいのは『怪力』だろう。吸血鬼の力が強いなんて話は聞いたことがないが少なくとも人間如きに叶うものではないはず。せっかく目の前に鉄筋の柱がある。ふふふ…所有主には申し訳ないがこれで試させてもらうとしよう。準備運動も兼ねて俺は空に向かって軽いジャブを繰り出した。流石に衝撃波とかは出ないようだ。ちょっと期待していたので残念。ちなみに俺の未来のジョブは専業主夫。

 

今回使用するのはビルの辺の真ん中にある柱。ここであれば壊れたとしても被害は最小限で抑えられる。

そう思っていた。

今だから言える。

もっと他にいい場所があっただろうが、バカ八幡が。本当にそんなんでスカラーシップ取ろうとしてんのかよ…。

『———ワンパンチ』

まぁ当時の俺はそれが最善だと思っていたため、後で思い出せばトラウマになるレベルでカッコつけながら、全力で柱を殴った。

すると。

 

 

ドッシャァァァン……——————

 

 

地響き。

静かな土地に不吉な音が響いた。そして突如、浮遊感。

あれ、なんだこれ。そうやって自分の体に違和感を感じた時にはもうすでに遅かった。足元を見ればそこに確かにあったはずの床はなく、それが自分の全力パンチで崩れた結果であることが容易に想像できた。———後悔する。俺はいつもそうだ。調子に乗れば後で必ず後悔する。特に人間関係。あれは駄目だ。まぁ、要するに今はとにかくヤバい状況であるという話で、俺が人生で初めてそこそこの高さの場所から地面に打ち付けられようとしているという噺だ。下が土である可能性に期待して地面を一瞥するがそこは金属だらけだった。終わった。

 

 そして。

体が。

 浮い

   落ち

やば

 これ

死ぬか

      頭

 下に

死ぬ

 

待っ

  体

     ふわり

飛ん

 落ちる

     外に

やば

 日の光が

出始め

    て

あれ?

  なんかいつもより

早くね——————

 

 

 

「———ヒッキー!!!!!!!」

 

 

 

そして、俺はここ最近になって妙に聴き慣れたその声を聞きながら自由落下した。




後編へ続く。

完結後の番外短編(もしかしたら普通に続きになるかも?)では何を書いて欲しいですか?

  • 阿良々木との会話
  • 羽川との会話
  • 怪異にあった俺ガイルメンバーの話
  • 日常編
  • その他(感想にてお願いします)
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