書ける人ってすごいんだなって思いました。
この惑星に降り立って数ヶ月が経った。自分はなんとか生きるためのものを確保する。
そして彼女達はこの施設を使って何かをしているが人間の自分にはわかるわけもない。
機体の整備。それは大切だ。いつ原生生物に襲われるかわからないこの星で戦えるようにバルキリーは動かせるようにしておかないといけない。
というのは建前だ。彼女達の目を盗んで統合軍と連絡を取る。勘ぐられても良い。最悪、信号を送れば誰かが偵察に来るだろう。
希望を胸に、コクピットのタッチパネルを操作する。
だが……。
[ERROR]
表示されるエラー表示。もう一度……。
[ERROR] [ERROR]
まただ。故障だろうか?
[ERROR] [ERROR] [ERROR]
だめだ。通信機器をもう一度見直すしかなさそうだ。
ため息をつく。どうやらまだ時間がかかりそうだ。
そう言ってディスプレイを操作し、もう一度信号を送ろうと指先がディスプレイへと触れる。
「───無駄よ」
瞬間、ピクリと自分の身体が跳ね上がる。聞いたことのある声だ。ゆっくりと後部座席の方へと振り返る。
長い髪の少女。草原のような豊やかな黄緑色の髪の少女だ。おでこの右側にはまるで鬼の角のようなものが生えている。
自分はこの子を知ってる。いや、今朝も会っているのだ。だが、ありえない。ここにいるなんてありえない。画面の中にいるならともかく後部座席に座っているのはありえない。
彼女達はAIシステムであり、生物ではない。実体を持っていることなどありえない。だが、今目の前にいる彼女は実体だ。
シートが沈んでいるのが見える。それを見て思わず息を呑む。
「どう。驚いた?」
彼女、レイナ・プラウラーの歌をディープランニングして生み出されたAI、通称"闇レイナ"。
彼女がニィッと
自分は何も答えられない。いや、考えられないと言った方が正しいかもしれない。
何が起きてる……?何、が……。なに……が……。
「この身体はあの遺跡の施設を使ってるのよ」
そう言って彼女の手が自分の頬を触れた。
「ほぼ生体パーツを使ってね」
さらにもう片方の手も反対の頬へと触れた。確かにこの感触は……。
「ほら、ちゃんと触って確かめて」
自身の両手を彼女の手に重ねる。この感触はまるで生きてるかのように……。
───訳がわからない。
一呼吸を置いてよく考え、整理する。あの遺跡には新統合が持つ技術を遥かに上を行く技術があって、彼女達はそれを使って自身の身体、つまり器を作り自身のデータを送りこんだということになるのか?
「どう?良いでしょう。この身体」
そう言って彼女がこちらの座席に身を乗り出してくる。思わず身体が逃げるように動く。だが、ここはコクピットの中、狭い密室になっている。
逃げるように動く事はできない。そしてすでに彼女がこちらの座席移動していた。
膝の上に跨るように座り、彼女と対面する。
大きく見開いた深縁の瞳がこちらを見据える。
「ほら、もっと触ってもいいのよ?」
そう言って彼女がこちらの頬をさわさわと撫で回してくる。なんだ……。彼女達は何がしたいんだ。
恐怖を感じた。敵であった存在でもあり、命の恩人。ただ、彼女達の事がわからない。何を考え、何を目的として動いているのか自分には理解できなかった。
怖くなって彼女の身体を押し返し、キャノピーを開けて席を立ち上がる。
「そうそう。いくら統合軍に連絡しても無理よ。この機体を修理する際に細工しておいたから」
ドクン、と自分の心拍数が跳ね上がる。バレていた。自分がやっていたこと、やろうとしていたことが彼女にバレているのだ。
「隠さなくていいのに。まぁ、お願いされても連絡させないけどね」
それではまるで半監禁状態だ。一体、何が目的で……。
「何も心配しなくていいわ」
まるでこちらの思考を読み取るようにそう囁いてくる。ますます不安になる状況だ。
敵に捕らえられ、統合軍との連絡もできない状態。
「貴方はここで暮らすのよ」
人質なんてものではない。どちらかといえば実験体に近いかもしれない。
今すぐこの場から逃げ出したいがそれもできない状態だ。武器もない、彼女を機体から放り投げて発進するのもいいが問題はその後になる。
逃さないためにあの新型ゴーストで追ってくるはずだ。そうなれば自身の腕と愛機の性能では逃げられない。
「こっち」
そう言って彼女がこちらの腕を引っ張る。考え事をしていたせいか、抵抗するのが遅かった。
いつの間にか座席に戻され再び彼女と対面した。
彼女がクスッと笑いながら顔をこちらに近づけてくる。
───綺麗だ。
彼女が顔を近づけた時、初めて気付く。いや、ちゃんと認識した。
確かに遠目から見て彼女の存在は誰もが一度は振り返ってしまうだろう。
だが、こんなに近いとほとんどの男が彼女の魅力されるだろう。自分もその一人かもしれない。
それ故なのか、無意識に彼女から視線を逸してしまう。
胸に彼女の体重を感じる。彼女が何をしようとしているのかはわからないが、敵意がないのはわかる。
だが、完全に逃げるタイミングを逃してしまった。
今のところ彼女が危害を加える雰囲気を放っていない。ここは大人しくしていたほうがいいかもしれない。
───?
ふと、自分の首に変な感触を感じた。何かがぶつかっていたり当たっているような感じではない。
少しくすぐったい感じのようなもものだ。
思わず自分は視線を下に向ける。
「スー…」
見れば彼女がこちらにもたれかかって首に顔を近づけてはまるで深呼吸をしている。
思考が何秒か停止する。彼女の取ってる行動はまるで……。
「くすぐったい?」
彼女が昏睡したかと一瞬思ったが違ったらしい。どうやら、わかっててやっているらしい。
なぜ、こんなことを……。
「なぜってそりゃあ気になるからよ」
顔をこちらに向けず答えが返ってくる。顔が見えないせいで本心か分かりづらい。
そもそもどちらも困惑する。敵同士以前に少なくとも彼女は女性でこちらは男だ。女性からこんなことをされて平気でいられるはずもない。下手したら一線を超える可能性も出てくる。
「貴方も嗅いで良いのよ?」
彼女の一言で自身の思考が完全に停止する。
無意識に彼女の頭に手を伸ばしていた。恐らくこれは本能で動いている。
息を呑む。それ以上はマズい事は自分でもわかっている。勝手に動く右手が視線に入り、やっとなんとか思考できる程度には戻る。
女性にこんなことを言われて綺麗に断る男なんてほとんどいないだろう。殆どの男は大抵、困惑するか言われたと通りに動くだろう。
自分もどうやらその一人らしい。手を伸ばした右腕を自分の意思で止める。
だが、彼女は止まらない。自分の耳に何度も鼻息が聞こえてる。
いつまで続けるつもりかわからないがこの状況はマズい。こんなことをされていれば理性を保てる男はいないだろう。
なんとかしなければならない。
───貴方達、何をしているの?
ピクリと闇レイナの身体が跳ね上がる。
そんな時、愛機に通信が届く。開かれるウィンドウには青髪の女性が映り込む。
もう一人の星の歌い手でありヤミキューレのメンバーの一人"闇雲"。画面越しにこちらを睨んでいる。
闇レイナがウィンドウの方へと振り返る。
『……。二人とも今すぐ私のところに来なさい』
ため息を着いた闇雲がそう言って通信を切る。
「良いところだったのに、ねぇ?」
通信が切れたところを見て闇レイナがこちらに顔を戻してクスリと嗤う。
どちらかと言えば危ない方だったかもしれない。だけど、通信が入ってきて助かった。
あのままだとどうなっていたかわからなかった。
その後、二人で闇雲のところに行ったら、なぜか怒られた。
『二人で一緒にいた』という理由だけで。
順番とかは特に決めてませんが、闇レイナはただ書きやすいと思ったから最初に書いてみました。
一目見た時からドSでお姉さんキャラだなって思ったからです。
ここからは私の妄想なんですけど闇レイナからの愛情表現で角の先端の所で優しく頬をグリグリしてほしいです。